糖尿病の“常識”が変わる!
糖尿病治療には、食事制限や運動など、身体に我慢を強いるので、なかなか長続きせず悪化させるケースが多く、やっかいな病気だ。ところが先日、NHKクローズアップ現代で、糖尿病が「治る病気になった」として紹介していた。治療方法はこれまでとほとんど変わらないが、違うのは、糖尿病のパターンを細分化して、その人に合った方法で治療すれば、少しの努力で糖尿病も治療可能になるということだった。
例えば、9年もの間糖尿病に悩んでいた女性は、糖質制限食に変えることで、約1ヶ月で血糖値が正常になった。肉や揚げ物ワインも自由に楽しめた。糖質の量だけを制限し、他は今まで通りの食事だ。ただし制限する量を自己流ですると、体調を崩すことがあるので、専門医と相談すること。
一方、糖尿病に効果のある食品成分や、治療薬にも新しいものが発見・開発されている。一つは、食品に含まれるマグネシウム。これを多く取る人は2型糖尿病になりにくいことが分かった。マグネシウムは豆や海藻をはじめ、精製していない食品に広く含まれるが、一般の人は不足気味なのだそうだ。
もう一つは治療薬。古い胆汁酸を排出し、胆汁酸の合成を促す薬をとると、エネルギー代謝が高まって脂肪燃焼や血糖値低下が進み、さらにインスリンの分泌促進に関係するホルモンも増え、糖尿病が改善することが分かった。
治療薬の名は「胆汁酸吸着レジン」。これと同様に胆汁酸吸着作用がある、日本古来の食事であるモズクやコンニャクなど、食物繊維を多く含む日本食にもメタボリックシンドローム発症の予防効果があると考えられる。
身体というのは実に複雑で神秘的だ。一つの病気がさまざまな要素で引き起こされている。豆や海草類、コンニャクなどが、糖尿病に効果があるとは思いもよらなかった。これからも、健康的に明るく生きるための情報を探っていきたい。
「マグネシウム」が糖尿病抑制 豆や海藻に含まれる
食事でマグネシウムを多く取る人は、生活習慣病の2型糖尿病になりにくい-。欧米の疫学研究では以前から指摘されていた傾向が、福岡県久山町の住民の健康診断データを21年間にわたって追跡した九州大チームの調査で確認された。アジアでの研究は少なく、結果も一致していなかった。
チームは、昭和63年の健康診断で糖尿病ではなかった40~79歳の住民1999人を平成21年まで追跡。このうち417人が糖尿病を発症した。
住民が食事で取るマグネシウムの量は、昭和63年に70項目にわたる質問で把握。1日の平均摂取量によって4つのグループに分け、糖尿病発症との関連を調べた。
それによると、マグネシウム摂取量が148.5ミリグラム以下の最も少ないグループと比較すると、摂取量が増えるほど糖尿病のリスクが下がるという結果になった。また、インスリンの効きが悪い「インスリン抵抗性」の人、習慣的に酒を多く飲むなど一般に糖尿病のリスクが高いとされる人で、マグネシウム摂取による予防効果がより高い可能性も示された。
データは、横浜市で開かれた日本糖尿病学会で発表された。
マグネシウムは豆や海藻をはじめ、精製していない食品に広く含まれる。厚生労働省は30~49歳の男性に1日370ミリグラム、同年代の女性に同290ミリグラムの摂取を推奨しているが、実際の摂取量は男性平均250ミリグラム、女性同224ミリグラム(平成22年国民健康・栄養調査)で、だいぶ下回っている。
食品による取り過ぎの報告はないが、サプリメントなどで過剰に摂取すると下痢などを起こすことがあるという。(産経新聞 2012年9月25日)
胆汁酸の排出で肥満や糖尿病が改善
肝臓から腸に分泌される「胆汁酸」の体外排出を促し、高コレステロール血症治療薬として使われている「胆汁酸吸着レジン」が肥満や2型糖尿病などを改善するメカニズムを、慶應義塾大学大学院の渡辺光博教授とスイスのローザンヌ工科大学の研究チームが解明した。日本古来の食物繊維を多く含むモズクやコンニャクなどにも胆汁酸吸着作用があることから、「これらにもメタボリック症候群発症の予防効果があると考えられる」という。
肝臓でコレステロールから合成される胆汁酸は、腸管内での食物脂質の消化吸収を助けるが、長く腸内に残ると機能が低下し、新しい胆汁酸の合成も抑えられてしまう。このため、腸管内で古い胆汁酸をレジン(樹脂)に吸着させて、便と一緒に体外に排出させると、新たな胆汁酸の合成が促進され、血中のコレステロール値が低下し、脂肪肝の抑制にもつながる。こうした効果を持つ「胆汁酸吸着レジン」は2008年に米国で、インスリンの分泌減少などによって起きる2型糖尿病の治療薬として適応が追加されたが、詳しい作用のメカニズムは明らかになっていなかった。
渡辺教授らはマウスを使った実験で、胆汁酸吸着レジンによって新しい胆汁酸の合成を促すと、エネルギー代謝が高まって脂肪燃焼や血糖値低下が進み、糖尿病も改善した。さらにインスリンの分泌促進に関係するホルモンも増えることが分かった。
高血糖や高コレステロール血症になると、脳梗塞や心筋梗塞などの血管疾患のリスクが約5倍に増加するとも言われる。薬剤を飲むほどでない健常な人でも、食物繊維を含む食材を日ごろから積極的に食することで、日本人の死因の30%を占める血管疾患の発症抑制にもつながるのではないかという。
研究の関連論文は英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」と米科学誌「プロス・ワン(PLos ONE)」にそれぞれ発表された。(サイエンスポータル September 3, 2012)
参考HP 慶応大学プレス:メタボリックシンドロームを改善する新たなメカニズム NHKクローズアップ現代:糖尿病の常識が変わる アイラブサイエンス:毒トカゲから糖尿病新薬
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東洋経済新報社 |
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