男と女はどうやってきまる?
 男と女はどうやって決まるのだろう?…そう、遺伝的には性別はY染色体があるかどうかによって決まる。だが話はそう単純ではないらしい。

 人の場合、自身の性別、「男性または女性であることの自己の認識」を持っており、これを性同一性という。大多数の人々は、身体的性別と性同一性を有するが、稀に、自身の身体の性別を十分に理解しているものの、自身の性同一性に一致しない人々もいる。そうした著しい性別の不連続性(Disorder)を抱える状態を医学的に性同一性障害という。

 性同一性障害はいかにして起きるのであろうか?これまでは、何らかの原因で、生まれつきの身体的性別と、性同一性に関わる脳の一部とが、それぞれ一致しない状態で出生したと考えられてきた。

 今回、ニワトリを使った実験で、オスとメスの脳を入れ替えた「キメラニワトリ」を作製したところ、脳がメスで体がオスのニワトリでは、通常のオスと区別がつかなかったが、脳がオスで体がメスのニワトリの成鳥では、行動や性ホルモンの血中濃度はメス型であるにも関わらず、性成熟の遅れや産卵周期に乱れが生じることから、生殖機能に障害が現れることがわかった。


Chimera_Chicken

 人にあてはめると、女性は正常な男性になれるが、男性は正常な女性になれないということだろうか?…人の場合、ニューハーフなどの中には性同一性障害の人が多いと聞く。性同一性障害を抱える人は、自身とは反対にある身体の性別に違和感や嫌悪感を持ち、生活上のあらゆる状況においてその性別で扱われることに精神的な苦痛を受けることが多いとされる。

 そうした、終生まで絶え間なく続く苦痛の無い、普通の生活を送るために治療を要し、時に身体や生活上において、自身と一致する性別への移行、すなわち性転換をすることもある。…人の場合はかなり複雑だ。

 脳はオスで体はメスのキメラニワトリは産卵などに障害
 国立環境研究所(NIES)、北里大学、東京医科歯科大学(TMDU)、広島大学、早稲田大学(早大)の5者は1月23日、生殖腺ができる前のニワトリの胚を用いてオスとメスの脳を入れ替えた「キメラニワトリ」を作製し、脳がオスで体がメスのニワトリの成鳥では、行動や性ホルモンの血中濃度はメス型であるにも関わらず、性成熟の遅れや産卵周期に乱れが生じることから、生殖機能に障害が現れることがわかったと共同で発表した。

 成果は、NIES 環境健康研究センターの前川文彦主任研究員、北里大 一般教育部および大学院 医療系研究科の浜崎浩子教授、TMDU 難治疾患研究所の田中光一教授、広島大大学院 生物圏科学研究科の都築政起教授、早大教育・総合科学学術院の筒井和義教授らの共同研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、英国時間1月22日付けで英国オンライン科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。

 ヒトを含む脊椎動物では、オスとメスでは体の作りや生理機能において多くの違いがある。メスでは卵巣、オスでは精巣の分化・発達が起こり、それぞれの器官から分泌される性ホルモンの働きによって、これらの性差のほとんどが生じるということが通説だ。

 一方、性分化に別のメカニズムが関与することも近年になって示唆されるようになってきているが、まだ不明な点が多く残されている。また、ヒトでもさまざまな脳の疾病で、男性と女性で罹患率や病態が異なることが報告されているが、その原因は必ずしも明らかにはなっていない。


 キメラニワトリを作製して分かったこと
 今回、脳の性によって決まるオスとメスの性質を調べるために、脳とそれ以外の体の性が異なるキメラニワトリが作り出され、解析が行われた。鳥類はご存じの通りに卵の中で胚が育つので、外科的操作を行いやすく、発育初期の胚で脳を交換することが可能だ。なお、脳の交換は精巣や卵巣ができる前に行われた。

 キメラとは、一つの個体に2つ以上の異なるDNAをもつこと。今回は、将来脳になる部分を、胚の段階でオスとメスとで入れ替えた。このため脳の部分のDNAと体の部分のDNAは異なっている。また、脳と体の性が異なるようにキメラニワトリを作製した。

 そして、成長したキメラニワトリを観察。脳がメスで体がオスであるニワトリの行動は、性行動も含めて、通常のオスと区別がつかなかった。一方、脳がオスで体がメスであるニワトリの行動は通常のメスと同じだったが、産卵開始の遅延や産卵周期の乱れによる産卵数の減少が見られた。

 なお、血中の性ホルモンの濃度が脳の性によって変化することはなかったが、体がオス型かメス型かに関わらず、脳に含まれる女性ホルモンの1種である「エストラジオール」の量が、オスの脳ではメスの脳よりも高いという結果も得られた形だ。

 今回の研究成果は、メスを特徴づける性質の内、性成熟のタイミングと性周期は遺伝的にメスである脳による制御が必要であり、遺伝的にオスである脳ではその機能を完全には担うことができないことを示したものとなった。

 オスとメスの脳には、精巣や卵巣からの性ホルモンに依存せずに、発達様式がもともと異なる神経回路があり、その回路の異常がメスまたはオスの持つ特異的な機能に障害をもたらす可能性が考えられるという。

 なお、今後このような神経回路を詳細に調べることができるようになれば、脳の性差、性特異的な機能障害の原因、さらに脳疾患の男女差の解明に近づくことが期待できると研究グループはコメントしている。(国立環境研究所


 性同一性障害とはどんな病気か
 性同一性障害とは、医学的な病名。すなわち、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信をもち、かつ、自己を身体的および社会的に別の性別に適合させようとする」障害である。

 この障害は、生物学的性別とジェンダー・アイデンティティ(性同一性)の不一致によって引き起こされる。生物学的性別は、単純化を恐れずにいえば、受精の際に精子にY染色体があるかどうかによって決まる。一方、ジェンダー・アイデンティティは2歳半ごろまでには決定づけられて、その後の変更は極めて難しいとされている。

 いまだ不明のことが多いが、胎児のころの脳の形成過程が深く関与していると考えられている。

 自分の身体的な性に対する持続的な不快感、あるいは嫌悪感、またその役割についての不適切感がある。それと同時に自分とは反対の性に対して、身体的にも同じようになりたい、社会的にも反対の性で受け入れられたいなどの強い気持ちをもつ。

 たとえば、体が女性で心理的に男性であれば、スカートをはくのがいやでズボンばかりはくとか、思春期になって胸がふくらんでくると、さらしを巻いて隠すというようなことが起こる。また、反対であれば(体が男性、心は女性)、ペニスや睾丸がいやでたまらない、ヒゲが生えているのが自分らしくないなどと感じ、できるだけスーツを着たりネクタイをするのを避けるようになったりする。

 性同一性障害はトランスセクシュアルともいい、当事者が、自らのことをトランスジェンダーと称することもある。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:性同一性障害 国立環境研究所:雌になるためには遺伝的に雌の脳であることが必要


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