発見から100年、宇宙線の起源特定
 宇宙線(Cosmic ray)は、宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線のことである。主な成分は陽子であり、アルファ粒子、リチウム、ベリリウム、ホウ素、鉄などの原子核が含まれている。地球にも常時飛来している。1912年以降、ビクター・フランツ・ヘスは、気球を用いた放射線の計測実験を繰り返し、地球外から飛来する放射線を発見した。

 この業績により、彼は1936年にノーベル物理学賞を受賞している。宇宙線のほとんどは銀河系内を起源とし、超新星残骸などにより加速されていると考えられている。

 今回、京都大学の田中孝明助教や広島大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、米国 SLAC国立加速器研究所などの国際研究チームが「決定的な証拠を見つけた」と発表した。発見から100年、ついに宇宙線の源が特定された。

 宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線(一次宇宙線)の大部分(90%)は陽子で、9%がヘリウムなどの原子核、1%が電子だという。最近の観測によって、宇宙線の電子成分は超新星残骸が起源であることが分かってきたが、陽子や原子核については観測的な裏付けはなかった。

 研究チームは、ふたご座の方向にある「IC 443」とわし座方向にある「W44」という2つの超新星残骸について、日欧米が打ち上げた「フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡」の2008年から12年までの観測データを解析した。その結果、いずれの超新星残骸からも、陽子や原子核が周囲のガスと衝突することで発生したガンマ線に特有なエネルギー分布が得られたという。(サイエンスポータル)


 

 宙線加速時の磁場の向きは磁力線と平行
 さらに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月18日、土星探査機「カッシーニ」のデータを解析した結果、太陽系を含む銀河系(天の川銀河)においてどのように高エネルギー粒子(宇宙線)が作り出されているのかという問題に関する新たな知見を得ることに成功したと発表した。

 宇宙空間には磁場が存在していることから、宇宙線の研究を進めていくためには磁場の効果を理解する必要があるが、磁場の効果を地上の常識から予想することは困難であるため、実際の測定データに基づいた研究が求められていた。

 しかし、数千光年の彼方で起こる超新星爆発に伴う衝撃波を詳細に分析することは難しいという課題があった。また、太陽系にも電離ガスの超音速流は存在しており、衝撃波を観測することが可能ながら、弱いものがほとんどで、超新星残骸が発生させるレベルの強い衝撃波に関する知見をそこから得ることは困難であったという。

 しかし、1997年10月に打ち上げられた土星探査機「カッシーニ」が土星周回中の2007年2月3日に太陽風が土星の磁気圏に衝突することで生じた強い衝撃波を観測。これにより、太陽系における観測史上最大級の高いエネルギーを持つ電子(相対論的電子)が、強い衝撃波にともなって実証に基づいた形で確認されたという。

 研究グループが解析を実施した結果、この時の磁場の状態は従来の観測などの知見から、電子加速を起こさない条件として考えられていた、流れの向きが磁力線とほぼ平行であることが判明したという。従来の知見と今回確認された成果が異なることについて研究グループは、従来、太陽系で観測されていた対象が弱い衝撃波であったことにより条件が異なることが、相違が生じた原因だと考えられると説明している。

 なお、研究グループでは今回の成果について、相対論的電子加速のための条件が実証に基づいて把握され、従来考えられていたものとは逆であることが示されたことは、今後、超新星残骸における磁場の状態を考えていく植えて大きな意味を持つことになると説明している。(JAXAが定説を覆す新知見を発表 2013/02/18)


 宇宙線とは何か?
 宇宙線(Cosmic ray)は、宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線のことである[2]。主な成分は陽子であり、アルファ粒子、リチウム、ベリリウム、ホウ素、鉄などの原子核が含まれている[3]。地球にも常時飛来している。1912年以降、ビクター・フランツ・ヘスは、気球を用いた放射線の計測実験を繰り返し、地球外から飛来する放射線を発見した。この業績により、彼は1936年にノーベル物理学賞を受賞している。宇宙線のほとんどは銀河系内を起源とし、超新星残骸などにより加速されていると考えられている。これらは、銀河磁場で銀河内に長時間閉じ込められるため、銀河内物質との衝突で破砕し、他の原子核に変化することがある。実際、Li、Be、B、Sc、Vなどの元素の存在比が、太陽系内のものと宇宙線中とで大きく異なることが知られている。このため、宇宙線の元素比や同位元素の存在比を測定することで、宇宙線の通過した物質量を推測することが出来る。

 地球大気内に高エネルギーの宇宙線が入射した場合、空気シャワー現象が生じ、多くの二次粒子が発生する。寿命の短いものはすぐに崩壊するが、安定な粒子は地上で観測される。 このとき、大気中に入射する宇宙線を一次宇宙線、そこから発生した粒子を二次宇宙線と呼ぶ。 一次宇宙線の大部分は陽子をはじめとする荷電粒子である。それに対して、二次宇宙線は地上高度では大半がμ粒子である。

 粒子加速器などで人間が作り出せるエネルギーは、重心系で最大1013 eVのオーダー(CERNで計画されているLHCが 1.4×1013 eV)であり、実験室系に換算しても、1017 eV程度である。 それに対し、宇宙線のエネルギーは実験室系で最大 1020 eVに達する。このため、宇宙線によって超高エネルギー領域での素粒子反応について重要な知見を得ることができる。 実際に、様々な新粒子が素粒子実験より先に宇宙線中から見つかった。

 一般にはGZK限界を越えるエネルギーを持つ宇宙線(超高エネルギー宇宙線)は観測されないとされているが、その観測を目的とした実験計画(テレスコープアレイ実験)がある。


参考HP JAXA:宇宙線陽子の生成源を特定 銀河宇宙線の加速の謎に土星探査機のデータで迫る


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