金属とは?
金属(metal)とは、展性、塑性(延性)に富み機械工作が可能な、電気および熱の良導体であり、金属光沢という特有の光沢を持つ物質の総称である。水銀を例外として常温・常圧状態では透明ではない固体となり、液化状態でも良導体性と光沢性は維持される。
単体で金属の性質を持つ元素を「金属元素」と呼び、金属内部の原子同士は金属結合という陽イオンが自由電子を媒介とする金属結晶状態にある。
地球の環境下において、天然の状態で得られる純金属はごく少数に限られ、ほとんどは酸化物、硫化物、炭酸塩、ケイ酸塩、ヒ化物といった化合物となっている。これらから他の元素を排除して利用に耐えうる金属を取り出す手法を精錬、冶金と言う。
その方法は加熱して行う乾式精錬法(乾式冶金法)と、電気分解(電解精錬)や溶液内で抽出する湿式精錬法(湿式冶金法)があり、これらは金属と他の元素間に働く結合力(親和力)などから選ばれる。
金属利用範囲の拡大に伴って高純度の金属が求められるようになり、これらに対応する精錬法も開発されている。ゾーンメルト法(帯域溶融法)は、溶融させた不純物を含む金属を徐々に冷やし、偏析を利用して純度を高める。
単一の金属を「純金属」というのに対し、複数の金属の化合物を「合金」という。合金は単体の金属が持たない性質を持つことがあり、工業用材料として用いられる金属は多くが合金である。
合金とは何か?
合金(Alloy)とは、単一の金属元素からなる純金属に対して、複数の金属元素あるいは金属元素と非金属元素から成る金属様のものをいう。元々は金属の材料強度を上げることが主眼であった。現在の説明では、純金属に他の元素を添加するとその性質(例えば融点、磁性、機械的強度、耐食性、自己潤滑性など)は大きく変化するといった多岐にわたる性能向上に用いられる用語となった。組成を調節することで、様々な用途に応じた性質を持つ合金が生産・利用されている。
一言に合金といっても様々な状態があり、完全に溶け込んでいる固溶体、結晶レベルでは成分の金属がそれぞれ独立している共晶、原子のレベルで一定割合で結合した金属間化合物などがある。合金の作製方法には、単純に数種類の金属を溶かして混ぜ合わせる方法や、原料金属の粉末を混合して融点以下で加熱する焼結法、化学的手法による合金めっき、ボールミル装置を使用して機械的に混合するメカニカルアロイングなどがある。ただし、全ての金属が任意の割合で合金となるわけではなく、合金を得られる組成の範囲については、物理的・化学的に制限がある。
合金の成分のうちのある元素が主成分と見なせる場合、その元素の名を冠して、“マグネシウム合金”・“アルミニウム合金”などと呼ぶ。ただし、歴史的、あるいは商標として独自の名称をもつ合金も多い。例えば、黄銅は銅(金属元素)と亜鉛(金属元素)の合金で、鋼は鉄を主体とした合金という意味がある。また、主要成分元素の数が2つなら2元合金、3つなら3元合金、4つなら4元合金…と呼ぶ。主体となる金属によって、合金鋼、銅合金、ニッケル合金…と呼ぶ。
鋼とは何か?
鉄合金の場合、過剰あるいは僅少な炭素添加のものは歴史的に鋳鉄、純鉄と呼ばれ、それらの総称として鉄鋼材料という呼び方がある。鋼の原義は0.6mass%を中心にその前後の炭素量のものを鋼(刃金)と呼び、金属組織的にはマルテンサイト構造と呼ばれるものであった。
単純に「鋼」であれば「はがね」と呼び、「 - 鋼」となっている場合「 - こう」と呼ぶ。)が開発されるにあたり、炭素を必須とした合金以外でも鋼と呼ばれるようになった。しかしこれは鉄を主体とした合金であることには変わりなく、鉄含有量が50%以下になると、鉄が含有されているものでも鋼ではなく合金と呼ばれる。
ステンレス鋼(Stainless steel)は、さびにくくするためにクロムやニッケルを含ませた合金鋼である。「ステンレススチール」や「不銹鋼」(ふしゅうこう)、「ステンレス」、または「ステン」などと呼ばれる。JISにおいて主に「SUS」の略号が付けられる事から「サス」とも呼ばれる。鉄合金
黄銅とは何か?
黄銅(おうどう、brass)は、銅Cu と亜鉛Zn の合金で、特に亜鉛が20%以上のものをいう。真鍮(しんちゅう)と呼ばれることも多い。
適度な強度、展延性を持つ扱いやすい合金として、約350年ほど前から広く利用されるようになった。青銅に比べて歴史が短いのは亜鉛の沸点が約900℃と低く、開放式の還元法では単体が得られなかったからである。前記の特性ゆえに、昔から精密機械や水洗便所の給水管や便器給水スパッド、理化学器械類や鉄道模型等の素材、弾薬の薬莢や金属模型などに広く使用されている。
日本では仏具、多くの金管楽器などに多用されている(金管楽器の別名であるブラス(brass)は黄銅の英名に由来している)。また、2013年現在までに日本で発行されている五円硬貨の素材としても使われている。 また、金に似た美しい黄色の光沢を放つことから金の代用品にもされ、poorman's gold(貧者の金)と呼ばれる。日本の時代劇において小道具として使われる偽の小判も真鍮製のものが多い。
青銅とは何か?
青銅(せいどう)は、銅Cu を主成分としスズSn を含む合金である。ブロンズ (bronze)や、砲金ともいう。オリンピックの銅メダルも青銅(ブロンズ)で出来ている。
一般にいう青銅色は彩度の低い緑色であるが、本来の青銅は光沢ある金属で、その色は添加物の量によって様々である(例えば黄金色など)。添加する錫の量が少なければ日本の十円硬貨にみられるように純銅に近い赤銅色に、多くなると次第に黄色味を増して黄金色となり、ある一定量以上の添加では白銀色となる。
そのため、古代の銅鏡は錫の添加量の多い白銀色の青銅を素材とするものが多かった。硬度は錫の添加量が多いほど上がるが、同時にもろくなるので、青銅器時代の青銅製の刀剣は黄金色程度の色彩の青銅が多く使われている。
また中世・近世の銅鏡はもろい白銀色の青銅ではなく、強靭な赤銅色の青銅で鋳造し、水銀で磨いてアマルガムを生成させて鏡面とする方法が主体となっている。
しかし、青銅は大気中で徐々に酸化されて表面に炭酸塩を生じ緑青となる。そのため、年月を経た青銅器はくすんだ青緑色、つまり前述の青銅色になる。 青銅色の名からも分かるように青銅といえば緑色と思われがちである。
しかし、本来の青銅は前述の通り黄金色や白銀色の金属光沢を呈する。その見た目から古代において金銀に準じる金属として利用された面があると考えられる。例えば先述のように銅鏡の反射面は白銀色に輝いていたし、弥生時代の国産鏡には錫の含有量を下げて黄金色に鋳造して、太陽を模したのではないかと考えられるものがある。
白銅とは何か?
白銅(cupronickel)は、銅を主体としニッケルを10%から30%含む合金である。
ニッケルの含有比率には多少ばらつきがあるものの、含有量の多いものについては銀に似た白い輝きを放つので、銀の代用品として貨幣などに使われる。一例として、昭和30年代頃は銀貨だった100円硬貨は、その後の銀価格高騰を受けて白銅製に切り替えられ、現在に至る。
日本の100円硬貨、50円硬貨、旧500円硬貨は Cu75%-Ni25% の白銅である(現行500円硬貨は銅・亜鉛・ニッケルの合金であるニッケル黄銅製)。 また、海水に対する耐食性が高く、海水淡水化の設備や船舶関連の部品に多く使用されている。
展性に優れるので小銃の薬莢に用いられる。黄銅製のものに比べはるかに薄くできるので航空機搭載の機銃の薬莢に使われた。現在ではピストルの薬莢にも使われている。
ジュラルミンとは何か?
ジュラルミンとは、アルミニウムと銅、マグネシウムなどによるアルミニウム合金の一種である。
ジュラルミンは、1906年ドイツ中西部のデュレン (Düren) で、ウィルム (Alfred Wilm) によって偶然に発見された。このデュレンとアルミニウムの合成語が、ジュラルミン (duralumin) である。また、ウィルムによって、ジュラルミンの時効硬化現象が見出された。
もともとは薬莢の材料として、銅と亜鉛の合金の黄銅を用いていたが、「もっと軽いアルミニウムを銅と混ぜたらよいのではないか」という発想から得られたものである。結果としてその試みは失敗したが、思わぬ大きな成果を得た。
1910年代、ツェッペリン飛行船やユンカースの輸送機への導入を機に、航空機用資材として広く用いられるようになった。日本の零式艦上戦闘機をはじめとする軍用航空機にも、住友金属工業が開発した超々ジュラルミン (ESD) 等のジュラルミン材が多用された。
もっとも、このジュラルミンには水、特に海水に対する耐食性に問題があり、飛行艇の底面や水上機のフロート(舟)の喫水下部分には、「銅を含まないアルミニウム材」を使用せねばならなかった。
第二次世界大戦後、GHQによる航空産業の禁止で余剰となったジュラルミン部材が、川崎航空機と縁の深い川崎車輌が製造を担当した国鉄向け新製鉄道車両の一部(国鉄63系電車や国鉄オロ40形客車など)に使われ、特に63系電車の場合は「ジュラ電」などと呼ばれて注目を集めたが、耐食性が低い材料であるにもかかわらず塗装を施しておらず、車両自体の電装品の絶縁が不十分であったことなどもあって急速に腐食と電食が進行し、このため製造後わずか7 - 8年程度でいずれも鋼製車体に置き換えられ、短命に終わっている。
また、東京駅の戦災復興に際しても、軽量であることからドーム部の骨組にジュラルミン材が使用された。 日本が戦後唯一製造した国産旅客機YS-11は総ジュラルミン製である。
![]() | 見方・考え方 合金状態図 |
三浦 憲司,小野寺 秀博,福富 洋志 | |
オーム社 |
銅・銅合金 (現場で生かす金属材料シリーズ) | |
クリエーター情報なし | |
丸善出版 |
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