緑色蛍光タンパク質
蛍光タンパク質というと、2008年のノーベル化学賞の受賞対象となった緑色蛍光タンパク質(GFP, Green Fluorescent Protein)が有名だ。これは、1960年代に下村脩博士によってオワンクラゲから発見された。
そして、30年が経過して1990年代にGFP の遺伝子が単離され、生きた細胞にその遺伝子を導入するだけで蛍光を作り出すことができることが明らかになって以来、生物学研究における重要なツールとして、多くの研究者に利用されている。
しかし、蛍光を発するのはオワンクラゲだけではない。葉緑体も蛍光を発しているし、サンゴやイソギンチャクなど、オワンクラゲ以外のたくさんの生物種から新しい蛍光タンパク質が発見されている。色も緑色以外に、様々な蛍光色を発する蛍光タンパク質が発見されている。
鹿児島大学の林征一教授(当時)らは、緑色蛍光タンパク質がニホンウナギの筋肉にも存在し、精製に成功したことを2009年に報告したが、蛍光の仕組みについては不明だった。
今回、理化学研究所がその発光の仕組みを解明。研究グループは、ニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)から、緑色蛍光タンパク質に対応する遺伝子を単離。その遺伝子が作るのは139個のアミノ酸からなるタンパク質で、それを“ウナギ”由来の「UnaG(ユーナジー)」と命名した。
蛍光タンパク質「UnaG」は、何らかの化合物が結合することで初めて蛍光を発することが分かった。研究グループは、その物質は「ビリルビン」であることを特定した。「ビリルビン」は赤血球の色素ヘモグロビンが分解してできる物質である。
血中のビリルビン量が異常に増えると血管外の組織に沈着して黄疸症状が表れる。また、ビリルビンが変化したものが、尿や大便の色素になっている。
このため血中のビリルビン濃度は、溶血や肝臓機能を評価する指標として一般的な健康診断の検査項目にもなっている。この方法を使えば、少量の血液サンプルで血清ビリルビン濃度が測れるようになるという。
ウナギの蛍光タンパク質でビリルビン定量法開発
ニホンウナギの筋肉にある緑色蛍光タンパク質がヒトの黄疸(おうだん)などの原因物質「ビリルビン」と結びついて蛍光を発する仕組みを、理化学研究所脳科学総合研究センターの宮脇敦史チームリーダーや熊谷安希子・基礎科学特別研究員らが解明し、血清などに含まれるビリルビンを従来法よりも1000倍以上も高感度で、簡単・迅速に検出する蛍光定量法を開発した。ヒトの健康や疾病診断などへの活用が期待されるという。
緑色蛍光タンパク質は、下村脩(おさむ)博士(2008年ノーベル化学賞受賞)が発見したオワンクラゲからのものだけでなく、サンゴやイソギンチャクなどにもある。鹿児島大学の林征一教授(当時)らは、緑色蛍光タンパク質がニホンウナギの筋肉にも存在し、精製に成功したことを2009年に報告したが、蛍光の仕組みについては不明だった。
理研の研究グループは、ニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)5匹を材料に用いて、緑色蛍光タンパク質に対応する遺伝子を単離することに成功した。その遺伝子が作るのは139個のアミノ酸からなるタンパク質で、それを“ウナギ”由来の「UnaG(ユーナジー)」と命名した。
UnaG の蛍光を詳しく調べると、何らかの化合物が結合することで初めて蛍光を発することが分かった。UnaGの遺伝子を大腸菌や哺乳類培養細胞に入れて蛍光を調べると、大腸菌では光らず、哺乳類培養細胞では光かった。
このためUnaGに結合する化合物は哺乳類培養細胞にあるとみて、さまざまな動物サンプルを使った探索実験を行った結果、ビリルビンがその化合物であることが分かった。実際に、大腸菌で作らせた光らない無蛍光性UnaGにビリルビンを加えると、一瞬にして緑色の蛍光が出現するのが観察されたという。
ビリルビンは、赤血球が壊れる(溶血する)ことによって「ヘモグロビン」の赤色素「ヘム」が変化した化合物で、血中のビリルビン量が異常に増えると血管外の組織に沈着して黄疸症状が表れる。そのため血清ビリルビン濃度は、溶血や肝臓機能を評価する指標として一般的な健康診断の検査項目にもなっているが、いくつか用いられているビリルビン比色法では検査工程が複雑で、測定に時間もかかっていた。
そこで研究グループは、UnaGがビリルビンに直接結合して発する蛍光を測定することで、既存の測定法に比べ3桁以上も高感度で、1桁以上高精度な「ビリルビン蛍光定量法」を開発した。この方法によれば、少量の血液サンプルで血清ビリルビン濃度が測れるので、新生児黄疸を診断する上での採血時の負担を軽減できる。また、UnaGを凍結乾燥させた蛍光試薬は、輸送や保管においても冷凍・冷蔵の必要がないので、発展途上国や辺地での新生児医療もサポートできるという。
なお緑色蛍光タンパク質はニホンウナギ以外にも、長距離の回遊を行うヨーロッパウナギとアメリカウナギの筋肉からも見つかっている。今回解明されたビリルビン結合や緑色蛍光の「意義」については不明だが、研究グループは「ウナギ科全19種を比較検討することで、ウナギの生態や進化に関する謎を解く鍵が得られるかもしれない」と述べている。
今回の研究は、JST戦略的創造研究推進事業〈ERATO型研究〉「宮脇生命時空間情報プロジェクト」の一環として行われた。研究論文“A Bilirubin-Inducible Fluorescent Protein from Eel Muscle”は、米国の科学誌『Cell』(オンライン版、13日付け)に掲載された。(サイエンスポータル:ウナギの蛍光タンパク質でビリルビン定量法開発)
血液検査の指標「ビリルビン」
人間、規則正しい生活と適度な運動、そして控えめな食事をしていれば、普通は健康的にいられるものである。しかし、それが食生活や睡眠などが不規則だったり運動不足だったりしていると、若い内ならまだしも、だんだんと年齢を重ねてくると、不健康になってくるのはいうまでもない。筆者のように、40を過ぎた身体で、血液検査をすると、あっちこっちの数字がイエローだったりレッドだったりといった状態になっている覚えがある人も結構いたりするのではないだろうか(筆者もだいぶ持ち直してきたが、一時は入院を勧められるような数値もあった)。
一般的な血液による生化学検査では、肝臓や糖尿病関連、肥満、血液そのもの数値がいろいろとわかるわけだが、その中の1つに「ビリルビン」という肝臓系の数値がある。数値が健康な人はあまり注意しないかも知れないので少し説明すると、「直接ビリルビン」と「間接ビリルビン」と、それを足した「総ビリルビン」の3種類があり、検査によっては総ビリルビンもしくは3種類すべてを教えてくれる具合だ。
この数値は、直接ビリルビンは0.00~0.40mg/dl、間接ビリルビンは0.20~0.70mg/dl、そして総ビリルビンは0.20~1.10mg/dlに収まっていることが望ましい。それ以上の数値が出ていると、「なんらかの疾病の可能性があるから、精密な検査をしてください」などとなる(一番高い可能性は胆石だそうだが、がんなどの可能性もある)。
筆者の場合、2013年2月時点の測定時の自身の数値としては低めで総ビリルビンで1.23(それでも通常版以外)だったが、高い時は3.07もあり(2012年7月の測定時)、「通常の3倍だよ、おいおい、筆者のビリルビンはシ○ア専用か!?」などとステレオタイプなツッコミを自分に入れてしまったりする状況だ(ちなみに、詳細な血液検査、エコー、CTと徹底的な検査をしてもどこにもなんの異常もなく、数値が高い理由は原因不明なので、放置することにした)。
なお、筆者のようにビリルビンの値が高くなる理由としては、溶血が盛んか、肝臓の働きが弱まっていることが考えられるという。筆者の場合、肝臓は普通に元気なので、医者からは「たぶん」溶血が盛んなのだろうといわれた(しかし、赤血球数は正常の範囲内)。
ちなみにビリルビンの量が異常に増加すると一般的にどんな症状が出るかというと、ビリルビンが血管外の組織に沈着することから起きる「黄疸」がある(ただし筆者はなぜかこれが全然出ていない)。この黄疸が出やすいのは新生児だ(画像5)。新生児は、胎生期に使った余分な赤血球を壊すことから、もともと「新生児黄疸」になりやすい傾向にはあるのだが、あまり黄疸がひどくなると、やはりよくない。ビリルビンが「大脳基底核」などに沈着して、「黄疸症」や「ビリルビン脳症」といった後遺症が生じることもあるので、ビリルビン濃度を正確に測定できることがやはり望ましいのである。(マイナビニュース:ニホンウナギから蛍光性のビリルビンセンサを発見)
ビリルビンとは何か?
ビリルビン(Bilirubin)は、黄色のヘムの通常の分解代謝物である。ヘムはヘモグロビンの構成物であり、赤血球の主要構成物の一つである。ビリルビンは、胆汁又は尿から排出され、異常な濃度上昇は何らかの疾病を指し示している。ビリルビンは、痣の黄色の原因物質であり、黄疸により黄色く変色が起こる原因物質である。ビリルビンは、ゴクラクチョウカ科の数種の植物からも発見されている。
ビリルビンは、4つのピロール環(テトラピロール)を有する開環したチェーン状の構造を有している。ヘムにおいては、4つのピロール環はポルフィリン環と呼ばれる大きな環に繋がれている。ビリルビンは、光を吸収するために海藻類で利用されているフィコビリンと大変良く似た構造をしている。
このフィトクロム色素は植物で光を吸収するのに利用されている。これらの物質は、4つのピロール環を有する開環したチェーン状の構造を有している。 他の色素と同じように、光に晒すとビリルビンの二重結合が異性化する。この性質を利用して新生児の黄疸に光線療法が施されている。光を照射したビリルビン異性体は、光を照射していないものより水溶性が高くなる。 ビリルビンの異性体の化学構造について誤った構造を掲載している教科書や論文がいくつか認められる。
ビリルビンは、緑色の胆汁色素でヘム代謝物の一つであるビリベルジンがビリベルジンレダクターゼの働きにより還元されて生成される。ビリルビンが酸化されると再びビリベルジンになる。このサイクルは、ビリルビンの潜在的な抗酸化作用を示唆しており、ビリルビンは細胞内において抗酸化の生理作用を担っているのではないかという仮説が立てられる。
肝臓においてグルクロン酸転移酵素によりビリルビンはグルクロン酸の抱合を受け、水に溶けるようになる。抱合型ビリルビンはほとんどが胆汁の一部となって小腸に分泌される。抱合型ビリルビンの一部は大腸に達し、腸内細菌の働きにより還元されてウロビリノーゲンに代謝される。ウロビリノーゲンはさらに還元されてステルコビリノーゲンになり、別の部位が酸化されて最終的にはステルコビリンになる。このステルコビリンは大便の茶色の元である。ウロビリノーゲンの一部は再吸収されて、分子中央のメチレン基が酸化されて黄色のウロビリンとなり尿から排泄される。(Wikipedia:ビリルビン)
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