想像もつかない地殻変動
 今から約560万年前、地中海はほぼ完全に干上がった状態で、非常に塩濃度の高い塩湖が点在していただけだった。しかし、その30万年後の氷河期の終わりとともにやってきた海水面の上昇によって、大西洋からの大量の海水がジブラルタル海峡を通って地中海に流入したと考えられている。

 その規模は凄まじく、ピーク時には一日で海水面が10m上昇し、2-3ヶ月から2年で、地中海の約9割の海水を満たしたという。これぞまさしく大自然のカタストロフィーである。局地的な大地震や、火山活動しか知らない人類は、未だ本物の天変地異を経験していないのかもしれない。

 地中海だけでない。およそ40億年の地球の歴史の中では、大規模な超大陸の分離と再形成など、想像もつかない地殻変動が少なくとも3回起こっているという。

 今回、イベリア半島沖の海底に、地球の地殻の裂け目が新たに発見された。この裂け目から、北アメリカ大陸とヨーロッパ大陸が接近していって、2億2000万年ほど後には大西洋が消滅してしまう、と専門家は予測している。


 発見された新たな沈み込み帯は、地殻を形成しているプレートが互いに衝突してできる。衝突した2つのプレートのうち、重いほうの端が軽いほうの下に沈み込む。沈み込んだプレートは、地殻のすぐ下にあるマントルの中に溶けていく。

 今回の発見は、プレートの動きが新たなサイクルに入ったことを示している可能性がある。今ある大陸は再び引き寄せ合って1つの超大陸の形成に向かい、一方で今ある海は消滅するのであろうか?


 2億年後に大西洋消滅の可能性
 以下は National Geographic News、2013年6月20日の記事からの引用である。

◆今回新たに分かったことは?

 新たに見つかった沈み込み帯は、大西洋のポルトガル南西沖約200キロの地点にある。この沈み込み帯は大きく6つに分かれ、全部合わせると約300キロの長さになる。

 この位置に沈み込み帯ができたということは、ユーラシアプレートを2つに分ける裂け目ができたということだ。

◆この発見の重要性は?

 ユーラシアプレートの西側の端に近いポルトガル沖で新しく沈み込み帯が形成されつつある可能性は、早くから専門家の間で指摘されていた。

 理由の1つは、この地域で大規模な地震が何度も発生していることだ。一例として、1755年にリスボンに壊滅的被害をもたらしたマグニチュード8.7の地震を挙げられる。

 過去20年にわたって、さまざまな国の複数の研究チームが調査航海を行い、この地域の海底の地図を作成して、新たな沈み込み帯の形成の証拠を見出そうとしてきた。

 ドゥアルテ氏はリスボン大学在籍中に、こうしたさまざまなマッピング研究の成果を1つに統合して、ポルトガル沖海底の最新のプレート地図を完成させた。

 この最新の地図は、イベリア半島沖の海底に裂け目が生じつつあり、新たな沈み込み帯が形成されつつあることを決定的に裏づけるものとなった。「この沈み込み帯はまだ発達してはいないが、萌芽段階にはある」とドゥアルテ氏は言う。

◆つまりどういうことか?

 ドゥアルテ氏らのチームの収集した証拠から、ユーラシアプレートが将来的に海洋部と大陸部に二分される可能性が示された。

 そうなった場合は、海洋部のほうが密度の高い岩石でできているので、大陸部の下に沈み込むだろう。これによって大西洋は縮小し、北アメリカ大陸とイベリア半島が引き寄せられ、やがては結合するとみられる。

 この地域の地殻変動に関する別の研究では、アフリカ大陸とイベリア半島も近づきつつあり、地中海が消滅する可能性があると指摘されている。

「将来的に、北アメリカ大陸とイベリア半島は再び結合し、その際の衝突をもとに新たな山脈ができるだろう」とドゥアルテ氏は言う。

◆今後の研究の展望は?

 新たに見つかった沈み込み帯の研究は今後も続けられる。大西洋にはパッシブ・マージン(非活動的縁辺域)といって、沈み込み帯のないエリアが存在する。このようにプレートの境界から遠い海が消滅に向かうとき、どのようなメカニズムが働くのかという長年の疑問を解明する上で、この沈み込み帯がヒントになる可能性があるのだという。

 「(非活動的な)大西洋の縁辺域が太平洋(のよう)になるのを、私たちは初めて目撃している」とドゥアルテ氏は言う。太平洋の沿岸部には沈み込み帯が多数存在し、アクティブ・マージン(活動的縁辺域)と呼ばれる。

 ドゥアルテ氏らの研究チームは引き続き、この地域の地殻と海底に関するデータを集め、この沈み込み帯の調査を続ける計画だという。また、沈み込みの過程とプレートの動きについて、コンピューターモデルや模型も作成中だ。

 「これらのプロセスを解明することで、過去の沈み込み帯の形成や海の消滅がどのように始まったのかについて、新たな知見を得られるのは間違いない」とドゥアルテ氏は文書で述べている。

 今回の研究は6月6日付けで「Geology」誌オンライン版に発表された。(National Geographic News: 2億年後に大西洋消滅の可能性


 アジアと米大陸が衝突?
 1億年後には、北と南の米大陸と、ユーラシア大陸が北極に集合し、「Amasia」という超大陸が形成されるという説が発表された。8億年にのぼるデータを分析した結果だ。

 北と南の米大陸とユーラシア大陸が北極で衝突し、「Amasia」という超大陸が形成されるという説が発表された。残念ながら5,000万年以上経たないと起こらないことなので、われわれが見ることはできそうもないが、想像するのは楽しい。

 「現在の状況は、超大陸サイクルと呼ばれる周期の真ん中でスナップショットを撮影したようなものだ」と、エール大学の地質学者ロス・ミッチェルは述べる。同氏は、2012年2月8日付けの『Nature』誌に発表された「超大陸の軌道予測」の主執筆者だ。

 Amasiaが形成されるという説は、ミッチェル氏の前にも提起されてきた。しかしその形成場所については意見が分かれている。

 2億5千万年前に分裂した超大陸「パンゲア」が、また同じ場所に集まると考える地質学者もいる。彼らは、Amasiaが大西洋を飲み込み、現代のアフリカの位置に収まると考えている(現代のアフリカは、パンゲアの中心に当たる)。

 分裂した超大陸は、地球の反対側で再度集結すると考える学者もいる。この場合、Amasiaの場所はハワイとフィジーの間のどこかで、太平洋を飲み込むことになる。

 しかしミッチェル氏のグループは、Amasiaは北極に集結すると考えている。この結論は、8億年前のロディニア大陸に遡る岩石に含まれる「地球の磁場の記録」に基づいている。ロディニア大陸は、パンゲア大陸の前にあった超大陸だ。[約10億から7億年前に誕生し、約6億年前に分裂したと考えられている]

 ミッチェル氏らの解釈によると、磁場の記録は超大陸が自身の軸を中心に90度回転したと考えない限りつじつまが合わず、そうなるとAmasiaが予想外の極地に移動することになるという。

 同グループが分析した8億年というデータ期間の中では、超大陸の回転の例が2つしか含まれていないことを考えると、この仮説を検証するのは難しいだろう。さらに、なぜ超大陸が移動するかという根本的な謎は解明されていない。(WIRED:アジアと米大陸が衝突


 大陸移動説
 大陸移動説(Continental drift theory)は、大陸は地球表面上を移動してその位置や形状を変えるという学説。大陸漂移ともいう。

 発想自体は古くからあり様々な人物が述べているが、一般にはドイツの気象学者アルフレート・ヴェーゲナーが1912年に提唱した説を指す。ウェーゲナーの大陸移動説は発表後長く受容されなかったが、現在はプレートテクトニクス理論の帰結のひとつとして実証され受け入れられている。

 ウェーゲナーは大陸移動を思いついたきっかけとして、大西洋両岸の大陸の形状(特にアフリカと南アメリカ)が一致することをあげているが、これについて言及している人物は、もっとも古くはフランドルの地図製作者アブラハム・オルテリウス (1596年)がいる。

 フランシス・ベーコンも1620年に西アフリカと南アメリカの形状の一致について述べており、セオドア・クリストフ・リリエンタール(Theodor Christoph Lilienthal、1756年)は大西洋にあったとされる大陸アトランティスの沈降と海水準の変動に絡めて考察している。また、アレクサンダー・フォン・フンボルト(1801年, 1845年)は、「大西洋は一種の巨大な河底として誕生した。そしてその河川水がまわりの大陸の海岸線を削り取っていった」と述べており、その理由として南緯10度以北の海岸の並行性をあげている。アントニオ・スナイダー=ペレグリニ(英語版)は1858年に『天地創造とそのあばかれた神秘』という本の中で南北アメリカをヨーロッパとアフリカに結合した図を載せている。

 具体的に証拠をあげて、かつて大陸同士がつながり超大陸を形成していたと述べたのはエドアルト・ジュース(1901年)で、ペルム紀に栄えた裸子植物グロッソプテリスの化石の分布から、南アメリカ、アフリカ、インドが一つの大陸だったと考え、ゴンドワナ大陸と名付けた。また、アルプスの山から海底堆積物や海生生物の化石が見つかることから、かつてそこは海の底であったと考え、地中海よりも広かったそれをテチス海と名付けている。しかし、彼は大陸自体が動いたとは考えておらず、当時の地球収縮説を使って説明している。

 また、ウィリアム・ヘンリー・ピッカリングは1907年に、かつて超大陸として1つだった南北アメリカとヨーロッパ、アフリカが、月が太平洋から分離したため分裂を始めたという考えを述べている。1909年にはロベルト・マントヴァーニ(英語版)が地球膨張説を提唱し、膨張により大陸間の相対距離が増大したとしている。さらに1910年にフランク・バーズリー・テイラー(英語版)が山脈の形成システムを述べた本の中で、大西洋中央海嶺があるため大西洋が広がって大陸が移動したという、後の海洋底拡大説に似た説を述べている。(Wikipedia:大陸移動説


裂ける大地 アフリカ大地溝帯の謎 (講談社選書メチエ)
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講談社
プレートテクトニクスの拒絶と受容―戦後日本の地球科学史
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