銀河中心ブラックホール
 ブラックホール (black hole) とは、極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体である。名称は、アメリカの物理学者ジョン・ホイーラーが1967年に命名した。

 ブラックホールはその特性上、直接的な観測を行うことは困難である。しかし他の天体との相互作用を介して間接的な観測が行われている。X線源の精密な観測と質量推定によって、いくつかのブラックホールが発見されている。また、ほとんどの銀河の中心には、巨大質量ブラックホールがひそんでいることもわかっている。

 ブラックホールは、その巨大な重力によって、近くの恒星のガスを吸いとっており、周囲には降着円盤が形成されている。そして、その中心付近から光の90%のスピードでジェットを噴出すると考えられている。

 今回、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)干渉計を用いてケンタウルス座の方向にある活動銀河「NGC 3783」を観測した。ところ、銀河中心にあるブラックホールのまわりには、約700~1000℃の高温の塵(ダスト)がトーラス状(ドーナツ状)に分布していたが、トーラスの上下(極)方向に膨大な量の低温の塵が存在していることがわかった。


 これらの低温の塵は、ブラックホール周辺から、ジェット噴射で外向きに押し流されていた。ブラックホールの降着円盤やジェットに、このような温度差が存在するとは思わなかった。今回の発見は、ブラックホールや銀河活動核を取り巻く複雑な環境の理解に欠かせない、新たな要素といえる。


 ジェットが吹き飛ばす低温の塵
 欧州の超大型望遠鏡による観測研究で、銀河中心ブラックホール周辺から低温の塵(ダスト)の風が押し流されているようすが明らかになった。

過去20年間にわたる研究から、私たちの天の川銀河を含むほとんどの銀河の中心には、巨大質量ブラックホールがひそんでいることがわかっている。周囲の物質を引き込みながら成長するブラックホールの周囲には、吸い寄せられた塵が集まるドーナツ状(トーラス)構造が存在する。

銀河中心ブラックホールの中には、その成長過程で、ひじょうに明るい放射をする「活動銀河核」(AGN)を形成するものもあり、そうした銀河活動核が放つ強い赤外線放射のほとんどは、トーラス構造からやってくるものと考えられてきた。

だがSebastian Hönigさん(米カリフォルニア大学サンタバーバラ校/独キール大学)らの観測研究から、意外なことがわかった。

研究チームでは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)干渉計を用いてケンタウルス座の方向にある活動銀河「NGC 3783」を観測した。活動銀河核の周囲で、高温の塵と低温の塵の詳細な分布をいっしょに観測したのはこれが初めてのことである。

その結果、約700~1000℃の高温の塵(ダスト)は予想通りトーラス状に分布していたが、トーラスの上下(極)方向に膨大な量の低温の塵が存在していることがわかった。これらの塵は、ブラックホール周辺から外向きに押し流されていたのだ。 (2013年6月21日 ヨーロッパ南天天文台l


 ブラックホールの歴史
 ブラックホール (black hole) とは、極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体である。名称は、アメリカの物理学者ジョン・ホイーラーが1967年に命名した。

 ブラックホールの理論的可能性については、18世紀後半に先駆的な着想があった。ピエール=シモン・ラプラスは、アイザック・ニュートンの提唱した光の粒子説とニュートン力学から、光も万有引力の影響を受けると考え、理論を極限まで推し進めて「十分に質量と密度の大きな天体があれば、その重力は光の速度でも抜け出せないほどになるに違いない」と推測した。

 現代的なブラックホール理論は、アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論が発表された直後の1915年に、理論の骨子であるアインシュタイン方程式をカール・シュヴァルツシルトが特殊解として導いたことから始まった。シュヴァルツシルト解は、時空が球対称で自転せず、さらに真空であるという最も単純な仮定で一般相対性理論の厳密解を導くことで得られた。

 アインシュタイン本人は一般相対論で数学的には特異点が有り得ることを渋々認めていたものの、それはあくまで数学的な話であって現実には有り得ないと考えていた。


 オッペンハイマーの思考実験
 1930年に、インド出身でイギリスに留学に来ていた当時19歳のスブラマニアン・チャンドラセカールが、ブラックホールが存在することを初めて理論的に指摘したが、当時の科学界の重鎮アーサー・エディントンがまともに検討することもなく頭ごなしに否定した。

 1939年、ロバート・オッペンハイマーとその大学院生のハートランド・スナイダーが、アインシュタインが成功を収めることになった流儀を真似て一つの思考実験を行った。二人は、大質量の星が燃え尽き、突然自重で潰れる時に何が起きるのか自らに問いかけてみたのである。当時、太陽のような軽い星の場合は地球サイズで鉄の密度にまで収縮することが分かっており、より重い星はさらに収縮が進み直径10マイル (16km) 程度のボールに収縮すると、フリッツ・ツビッキーとウォルター・バーデが仮説を立てていた。

 オッペンハイマーらは、当時の物理学界を賑わせていた中性子星存在の議論の中で、恒星の崩壊後にできる中性子星の質量には上限があり、超新星爆発の後に生成される中性子の核の質量がその上限よりも重い場合、中性子星の段階に留まることなくさらに崩壊する重力崩壊現象を予言した。しかし彼は、ここまで研究を進めたところで原子爆弾開発を目的とするマンハッタン計画の責任者としてロスアラモス研究所の所長に任命され、ブラックホール研究からは遠のくことになった。


 X線天文学による大発見
 ブラックホールの存在はあくまで理論的な存在に過ぎなかったが、1970年代に入りX線天文学が発展したことで転機を迎える。宇宙の激しい現象からはX線が放出されるが、X線は地球の大気に吸収されてしまうことから人工衛星で観測する必要があった。

 アメリカのマサチューセッツ工科大学を中心とするグループがケニアから打ち上げたX線観測衛星“ウフル”は4年に渡り数々の天体を継続的に観測し、X線の発生源が中性子星や超新星の残骸、パルサーであることを突き止めるが、数々の天体の中でもはくちょう座X-1のX線データは不規則で激しく変化し、どのデータにも当てはまらず科学者の注目を集める。

 その後の精密な観測と分析の結果、太陽の30倍の質量を持つX-1が自己重力によって潰れた星を周っている事が判明した。X線が極めて早く変化している事象により、見えない天体の大きさは大変小さいと推測されるものの、質量は太陽より遥かに大きいという事実を受け、“ウフル”打ち上げ担当者のリカルド・ジャコーニは一般相対性理論に基づき、その天体は“ブラックホールである”と述べている。このX線は晩年を迎えたX-1の膨張により星の表面が引力圏に達して吸い込まれることにより、ガスの温度が1000万℃以上にもなる降着円盤が発するX線波形だと結論づけられた。(Wikipedia: ブラックホール


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