緑の世界地図、地球の緑地画像
後退が進む地球の植物分布を示すには、衛星観測が最適だ。
NASAと米国海洋大気庁(NOAA)が共同運用する地球観測衛星「スオミNPP」は、極軌道を1日約14回周回している。スオミによる各種データを利用すれば、陸地の植物分布に見られるわずかな変化をも検知できる。今回、地球全体の植生を表すため、2012年4月から2013年にかけて撮影したデータを合成した。
NOAAによると、濃い緑色は植物が非常に豊かな領域を示し、寒冷地や乾燥地、岩石地帯、都市部など、不毛な領域ほど緑色が薄くなる。こうした分布図は、天気予報や農業用地の最適な利用法に関する研究など、さまざまな用途に活用されているという。(Christine Dell'Amore for National Geographic News June 21, 2013)
世界の森林の現状というと、やはり減少を続けている。その主な原因は森林伐採である。世界的な食料やバイオ燃料等の需用増加により、森林を伐採して畑にしたり、建築資材、紙の原料として伐採する。
また、森林火災も問題だ。焼畑農業、農地開発のための火入れなどの火の不始末、落雷、干ばつや猛暑などが原因となり、森林火災が発生し、森林が焼失している。泥炭や永久凍土がむき出しになることにより土壌から発生する二酸化炭素も問題となっている。
世界の森林面積は約40.3億ヘクタールで、全陸地面積の約31%を占めている。しかし、世界の森林は減少を続けており、毎年520万ヘクタールが減少している(2000年から2010年までの平均)。
特に、南アメリカ、アフリカなどの熱帯の森林を中心に、減少面積が大きくなっている。一方、中国やインド、ベトナムを中心とした温帯林では、森林面積が増加している国も見られ、森林面積の増加と減少には、地域的な偏りが見られる。
国別にみると、2000年から2010年までの間に森林の減少が大きかったのは、ブラジル、オーストラリア、インドネシア、ナイジェリアなど。このうち、オーストラリアの減少は、2000年以降の深刻な干ばつや森林火災などが原因だが、その他の国では農地への転用や薪の過剰採取などが原因だ。
生物多様性の保全
次に、世界の森林の現状と、その役割について考えてみたい。以下は、環境省の記事:「世界の森林を守るために」から引用した。
森林には、樹木や草花などの多くの植物が生育しています。さらに、その植物の花や実を餌としたり、樹の幹や土の中などを棲み処にしている多くの動物が生息しています。その数は、陸地にすむ動植物種の2/3以上にもなります。これら生物は森林という空間で非常に密接で複雑な関係を築き上げています。このため、たとえ森林が破壊されずに維持されたとしても、伐採などによる疎林化や断片化などの森林の劣化は、そこに暮らす生物に大きな影響を与えます。
例えば、断片化した森に生息する霊長類のテナガザルは、行動圏が限定され、近隣の森林に生息する他集団との交流がほとんどないことが分かっています。このことは、繁殖や遺伝子の交雑の機会を失うため、個体数の減少につながります。また、ミツバチのように植物の花粉を運ぶ役割を果たしている昆虫は、伐採によって生息数・種数が大きく影響を受けますが、一度減少すると長期にわたって回復しません。
このような中、世界の森林は年々減少・劣化しています。例えば生物多様性の宝庫である原生的な熱帯林は毎年600 万ヘクタールの速さで減少・劣化し、熱帯林に棲む動植物種は毎日100種が消失していると言われています。一方で、世界の森林の12%が国立公園などの保護地域に指定されており、その面積は年々増加しています。生物多様性豊かな森林の減少・劣化をくい止め、次世代へ継承するための取り組みを加速させていくことが必要です。
熱帯林における生態系サービスの価値について
生物多様性の損失が私たちの暮らしに与える影響を客観的に把握するため、生態系サービスの経済的な価値を把握する取組がなされています。生態系と生物多様性の経済学(TEEB)によると、熱帯雨林における生態系サービスの価値について、下表の通り算出しています。これによると熱帯雨林は、大気の質や流量の調節、浸食防止など、年間6,120ドル/ha(1ドル=85円として52万円)の生態系サービスを提供しています。
現在、16億人以上の人々が食糧、薬、燃料などを森林に依存して生活しています。また、アクセス可能な飲用水のうち、75%が森林のある流域を源にしています。発展途上国の主な都市の2/3の飲用水は森林が浄化しています。このように、私たちは森林から様々な恩恵を受けているのです。
現在、生物多様性がもたらす恩恵や価値を適切に評価して、政策決定などに反映させる取り組みが進められています。
気候変動の緩和
樹木は光合成によって二酸化炭素を吸収し、炭素を樹木内に蓄積します。さらに、森林は落ち葉などを通して、土壌中にも大量の炭素を貯留します。
2007年に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書によると、世界の温室効果ガス排出量の約20%は、森林が農地など他の用途に転用されたことによるものとされています。
地球の温暖化が進むと、海水面が上昇することにより、世界の沿岸地域が水没します。また、自然災害の頻発、伝染病の蔓延など、著しい被害が発生すると言われています。
1.質の高い森林面積を増やし、炭素の吸収を増加させること
2.森林減少・劣化を抑制し、炭素の排出を抑制すること
両者は気候変動の影響を緩和する重要な役割を果たすのです。
森林の多面的機能
森林は、生物多様性の保全や気候変動の緩和の他にもさまざまな機能をもっています。
例えば、木材や紙の原料、きのこなどの食料を提供してくれるでなく、樹や草が地表を覆い、根が土壌をしっかりと掴むことで、雨による表面土壌の流出や土砂崩れ等を防止しています(土砂災害防止)。また、そうした土壌には、落葉など有機物が体積しており、昆虫や微生物などにより分解されることで土壌に養分を供給したり、雨水をろ過して水質を浄化したり、豪雨時に降水を一時的に貯留して河川へ流れ込む水の量を平準化することで洪水を緩和しています(水源涵養機能)。
その他にも、自然とのふれあいの場を提供したり、伝統的な地域の文化や宗教を育んできました。
森林減少・劣化の原因
世界的な食料やバイオ燃料等の需用増加により、森林を伐採してオイルパームのプランテーションやサトウキビ農園、牧場へ転換する土地利用の転換が増加しています。
焼畑農業は、焼き払った森林を数年程度農地として利用した後に自然の回復力で森林に戻すというサイクルを繰り返す伝統的な農法ですが、近年、人口増加などにより、森林が回復しないうちに再び焼いて土地が劣化し、森林が再生しなくなってしまうことが問題となっています。
世界の木材需要の約半分は燃料としての利用です。特にアフリカでは木材需要の約9 割が燃料として使用されており、人口増加に伴い、森林減少が進んでいます。
また、森林火災も深刻です。焼畑農業、農地開発のための火入れなどの火の不始末、落雷、干ばつや猛暑などが原因となり、森林火災が発生し、森林が焼失しています。泥炭や永久凍土がむき出しになることにより土壌から発生する二酸化炭素も問題となっています。
違法伐採問題
森林を保全するためには、持続可能な森林経営が不可欠ですが、その阻害要因として違法伐採問題が指摘されています。また、違法伐採された木材の多くは、丸太または木材製品となって外国へ輸出されています。
違法伐採とは何でしょう?それは、それぞれの国の法律に反して行われる伐採です。
例: 森林計画等に定められた伐採量、指定樹種・径級、伐採方法等を守らない伐採。所有権、伐採権がない森林を伐採するいわゆる盗伐。保護地域等を定めた法令を守らない伐採。
このほか、先住民等の伝統的権利、伐採労働者の安全、税務上の観点からの問題点が指摘される場合もあります。
違法伐採の割合はどのくらいでしょう?英国とインドネシアとの共同研究(1999年)によると、インドネシアでの伐採の50%が違法。環境NGOの調査(2000年)によると、ロシアでの伐採の20%が違法です。
違法伐採の影響はどんなものでしょう?木材生産国における持続可能な森林経営を阻害し、森林減少・劣化をもたらす。正当なコストを支払っていない違法伐採木材・木材製品が国際市場で不当に安価で流通することにより、輸入国の持続可能な森林経営を阻害する。
例えば、全米林産物製紙協会(AF&PA, 2004年)は、違法伐採された木材・木材製品は世界の木材流通価格を7-16%も押し下げていると報告しています。(環境省:世界の森林を守るために)
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