火星にご招待!ただし、片道切符のみ
オランダの非営利団体「マーズ・ワン」が、片道のみの有人火星飛行計画を立て、参加者を募っている。予定では2022年に地球を出発し、7カ月の旅を経て23年に火星に到着する。参加者はそのまま地球に戻ることなく、火星で生涯を終えることになる。「死者をどうするかは火星にいる人たちで決める」(マーズ・ワンのランスドープ代表)という。
つまり、「地球に戻ることができない火星探検」これを読んだ時には、「さすがにこれほど無謀なものに応募する人はそれほどいないだろうなあ」と思っていた。ところが、わずか2週間で 7万8000人の応募があったという。1回の飛行につき男性2人、女性2人を搭乗させる予定で、18歳以上なら誰でも応募できる。手数料は米国から応募する場合で38ドル(約3800円)。 実際に計画は実行されるのだろうか?
そんな火星には不思議な現象がたくさん見られる。写真には火星表面に広がる巨大な砂丘が見える。NASAの火星探査機マーズ・リコナイサンス・オービタ(MRO)搭載の高解像度カメラHiRISEが、斜面に平行に走る何本もの溝をとらえた。10年ほど前からその存在が知られていたが、最新の研究により、溝の形成過程が解明された。長さおよそ2.5キロに達する深い溝は、初春に形成される。冬の間、この辺りには二酸化炭素の雪が降り、何層にも積み重なったドライアイスが砂丘を覆う。
季節が変わり温度が上昇すると、ドライアイスは砕け、溶け始める。砂丘の尾根付近にある塊が斜面を転がり落ちる際に、ドライアイスが昇華(固体が直接気化)して生まれたガスがクッションの役割を果たし、まるでホバークラフトのように滑り降りていく。後には直線的な溝が残るというわけである。(National Geographic news 火星に走る溝の謎解明 June 17, 2013)
火星にドライアイスの降雪を初観測
火星にドライアイス?と聞くと不思議な感じだが、火星の大気の主成分は二酸化炭素であり、二酸化炭素の雲ができ、二酸化炭素の雪が降ることも確認されている。
火星の南極には二酸化炭素の氷(ドライアイス)が存在していることが数十年前から知られてきた。また、水の氷も2008年に見つかっている。2012年9月、研究を行ったNASAジェット推進研究所のPaul Hayneさんは、「ドライアイスの雪を降らす雲の存在を決定的に確認した初めての例です。雲が二酸化炭素でできていることはまちがいなく、厚みもじゅうぶんで、火星の表面に積もるほどの雪を降らせたはずです」と話す。
研究では火星探査機「マーズ・リコナサンス・オービターMRO」に搭載された火星気候観測機(MCS)を使って、大気の温度や含まれる粒子の大きさ、濃度などを調べた。最新の分析に利用されたのは、火星の南極が冬を迎えた2006年から2007年に南緯70度から80度付近の領域を観測したデータだ。
分析の結果、高高度には極の上空にいすわる幅約500kmの二酸化炭素の雲を、そして低高度には、すぐに消えてしまうような小さいドライアイスの雲を、それぞれ確認した。
「降雪の根拠の1つは、雲の中に含まれる二酸化炭素の氷の粒子が地上に落ちるほどの大きさだったことです。また、雲を水平方向から観測すると、明らかにドライアイスの粒子が検出されました。しかもそれが地上までつながっているのです。地表だけではなく大気中の粒子であるということが、このようにしてわかりました」(研究チームのDavid Kassさん)。
南極の極冠は火星で唯一、凍った二酸化炭素が一年中残る場所だ。雪が降り積もった結果なのか、それとも表面が凍って霜のようになったのかははっきりわかっていない。だが今回の研究成果で、特に南極付近で活発な降雪があることがわかった。
「今回の発見を見ると、極冠にドライアイスが堆積するプロセスと、それがずっと解けずに残っていることは関連性があるのかも知れません」(Hayneさん)。(NASA 2012年9月14日)
火星の大気
火星の大気は希薄で、地表での大気圧は約750Paと地球での平均値の約0.75%に過ぎない。逆に大気の厚さを示すスケールハイトは約11kmに達し、およそ6kmである地球よりも高い。これらはいずれも、火星の重力が地球よりも弱いことに起因している。大気が希薄なために熱を保持する作用が弱く、表面温度は最高でも約20℃である。
大気の組成は二酸化炭素が95%、窒素が3%、アルゴンが1.6%で、他に酸素や水蒸気などの微量成分を含む。ただし、火星の大気の上層部は太陽風の影響を受けて宇宙空間へと流出していることが、ソビエト連邦の無人火星探査機のフォボス2号によって観測されている。したがって上記の火星の大気圧や大気組成は、長い目で見ると変化している可能性、そして今後も変化してゆく可能性が指摘されている。
2003年に地球からの望遠鏡による観測で大気にメタンが含まれている可能性が浮上し、2004年3月のマーズ・エクスプレス探査機の調査による大気の解析でメタンの存在が確認された。現在観測されているメタンの量の平均値は体積比で約11±4 ppb である。
火星の環境下では不安定な気体であるメタンの存在は、火星にメタンのガス源が存在する(または、少なくとも最近100年以内には存在していた)という興味深い事実を示唆している。ガスの生成源としては火山活動や彗星の衝突、あるいはメタン菌のような微生物の形で生命が存在するなどの可能性が考えられているが、いずれも未確認である。
火星大気には大きく変化する面もある。冬の数ヶ月間に極地方で夜が続くと、地表は非常に低温になり、大気全体の25%もが凝固して厚さ数メートルに達する二酸化炭素の氷(ドライアイス)の層をつくる。やがて、極に再び日光が当たる季節になると二酸化炭素の氷は昇華して、極地方に吹き付ける400km/hに達する強い風が発生する。
これらの季節的活動によって大量の塵や水蒸気が運ばれ、地球と似た霜や大規模な巻雲が生じる。このような水の氷からなる雲の写真が2004年にオポチュニティによって撮影されている(撮影画像)。また、南極で二酸化炭素が爆発的に噴出した跡がマーズ・オデッセイによって撮影されている。火星は短い時間尺度では温暖化していることを示唆する証拠も発見されている。しかし21世紀初頭の火星は1970年代よりは寒冷である。(Wikipedia:火星)
火星の水蒸気
火星の大気中には、ごくわずかの水蒸気も含まれています。水蒸気圧は地球の南極上空の500分の1程度しかありませんが、このごくわずかの水蒸気によって、火星でも雲や、霜が観測されます。火星の雲は明け方や夕方に現れ、昼間は消えてしまいます。
火星の大気の主成分である二酸化炭素と、わずかに存在する水蒸気は、両方とも温室効果気体です。現在でも火星大気中の二酸化炭素の量は、地球大気中の二酸化炭素の量よりも多くなっています。もしも、火星大気中にさらに水蒸気が存在すれば、温室効果の強化には有利になります。
火星の気候は、二酸化炭素と水蒸気が大気中に存在して、温室効果が有効に働く温暖な気候系と、二酸化炭素と水蒸気が永久凍土のかたちで地中に存在して、温室効果が有効に働かない寒冷な気候系の両方が可能だったのかもしれません。
火星の表面には、液体の水が流れた川の跡のようなものがたくさん見られます。もしそれが本当に川の跡なら、昔の火星は川があるほど温暖な気候だったことになります。火星は、過去の温暖な気候系から、現在の寒冷な気候系へと移行したのかもしれません。
火星が本当に過去において温暖で、表面に液体の水が存在したのかどうかを明らかにするためには、地中の二酸化炭素と水の量の観測が必要です。液体の水の存在は、そこに生命が発生していた可能性を示しているため、今、大きな注目を浴びています。 (平塚博物館HP)
火星の砂嵐
火星の砂嵐は、これを無視しては火星の気象を語れない程重要な現象です。局地的な砂嵐は年に100回程度起こっていますが、時として惑星規模の大砂嵐が発生することがあります。
大砂嵐は起こっても年2回、全く起こらない年もあります。大砂嵐は発生の時期と場所が決まっています。南半球の春から夏にかけて、以下の場所で発生した砂嵐が惑星規模の大砂嵐にまで発達します。
・ヘラスの北西端とノアキスの間の傾斜面
・クラルス水路の西、南、あるいは南東に面した傾斜面
・大シルチスの東の低地イシディス平原
大砂嵐が発生する場所はいずれも東や南東向きの傾斜地で、大砂嵐の発生に関して地形の影響が大きいことを示唆しています。 大砂嵐が発生している時は大気が不透明になります。比較すると、大砂嵐が発生する時期が、火星の気圧が高くなる時期と一致していることが判ります。風神が風袋の口をゆるめるころ、つまり南極冠から二酸化炭素が吹き出すころ、大砂嵐が発生するのです。
この大砂嵐発生のメカニズムはまだはっきりとは解っていませんが、現在一番有力な考えでは、以下のように説明しています。
まず南半球の春から夏にかけて大気中のダストの量が増大することが観測されています。南半球ではこの時期、南北の温度差が増大するため、その温度差を解消するために大気の流れが激しくなり、そこで極地嵐が頻発するようになります。この極地嵐によって、大気中のダストの量が増加するのです。大気中に大量に浮遊するダストは太陽光を吸収して大気を暖めます。ダストによる大気の加熱は、惑星の大気の循環を強化する方向へ効いてきます。
ここに地形による効果が重なって、両者が強めあうような場所で砂嵐が発生します。砂嵐が発生した場所ではさらに大量のダストが大気中に巻き上げられることになり、さらに大気を加熱し、惑星大気の循環を強化します。このようにして、ダストは赤道地方や北半球にまで運ばれて、惑星規模の大砂嵐にまで発達する、というものです。
いずれ、さらにたくさんの探査機による観測データが得られるようになれば、大砂嵐発生のメカニズムも解明されるでしょう。(平塚博物館HP)
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