セシウム含む廃棄物の最終処分場はどこ?
福島第一原発事故で発生した指定廃棄物(放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超える廃棄物)の最終処分場の選定をめぐって、国と地方自治体の考え方が平行線をたどっている。
最終処分場問題については、民主党政権時代に候補地としてあがった栃木県矢板市と茨城県高萩市が猛反発、政府は今年2月に方針を撤回して、それぞれの地域の問題として、各県単位で処分するのが適当とし、特に早急な処理が必要な宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県の5県については、市町村長会議を設置して議論を進めている。
しかしながら、その中で「福島県の1カ所に集約すべき」との意見が噴出する一方で、福島県からは、「放射性物質汚染対処特措法及び基本方針に基づいて、各県内で国が処分すべき」と受け入れ拒否を環境省に回答している。
果たして放射性廃棄物の最終処分場はどこになるのであろうか?
現在、放射性セシウムは、ゼオライトに吸着させる方法がとられている。今回、紹介する技術は、ゼオライトよりも吸着力のあるセシウム吸着材(Cs-HOM)である。
開発したのは、物質・材料研究機構のシェリフ・エル・ザフティ研究員。除染濃度領域でこれまでの吸着剤の二けた上の性能を持つセシウム吸着剤を開発した。2013年1月11日に化学会館で行われる未踏科学技術協会の特別講演会・第一回環境技術シリーズで公表した。
吸着体は往々にしてセシウム以外の混在成分も吸着し、そのために余分の吸着体が必要となる場合があるが、このCs-HOMは吸着に対して優れた選択性を持ち、同程度のNa,Ca,Mg,Clイオンならばそれらの中からCsを選択的に吸着できる。この特性を利用すれば、CsよりはるかにNaやCaの多い海水や飛灰溶解物からも少ない容積でセシウムを取り出せるようになる可能性がある。
放射線廃棄物からセシウムを除去せよ!
それにしても開発者はエジプト人。あの原発事故で一度は国に避難した科学者だった。なぜ彼は日本に戻ったのであろうか?以下はTBS「夢の扉」で5月19日放送された「第2の母国を放射能汚染から救いたい」からの引用である。
福島第一原発事故から2年以上が経った今も、現地では放射能との闘いが続いている。除染作業が進められているが、作業後に出た廃棄物の仮置き場がもう限界なのだ。
そんな行き場のない廃棄物を減らす可能性を秘めた放射性物質の吸着剤が新たに開発された。生みの親は、エジプト人科学者 シェリフ・エル・サフティ、44歳。
シェリフが日本で長年研究してきた、ナノ原料工学の技術を駆使して、放射性セシウムだけをつかまえるという吸着剤「HOM」を作ったのだ。開発のヒントになったのは、母国エジプトの砂漠の“砂”―。
シェリフはもともと、ヒ素に汚染された水からヒ素を取り除く吸着剤を研究していたが、2011年3月の原発事故後、家族に説得され、やむなくエジプトに帰国した。しかし、日本のことを考えない日はなかった・・。
そこに届いた日本の恩師からのメール。「日本は放射能の問題に直面している。今こそ、君の技術が役立つと信じている」
『「命のための科学」・・ 私の研究は、命を守るためにある』
放射能で苦しむ日本を、科学の力で救いたい―。シェリフは、日本に戻ることを決意した。そして、ヒ素吸着剤の技術を応用してついにHOMを開発、今年、その実証実験が行なわれた…。
結果は良好。これまでのゼオライトは23%セシウムを除去したのに対し、シェリフの吸着剤は、60%もセシウムを除去した。
画期的なセシウム吸着剤を開発
次は、物質・材料研究機構の記事「画期的なセシウム吸着剤を開発」からの引用である。
元素戦略材料センター資源循環設計グループのシェリフ・エル・ザフティ主幹研究員は、除染濃度領域でこれまでの吸着剤の二けた上の性能を持つセシウム吸着剤を開発した。
早稲田大学の客員教授であり、物質・材料研究機構の元素戦略材料センター資源循環グループのシェリフ・エルザフティ主幹研究員は、画期的な応用の可能性のある新たなセシウム吸着材(Cs-HOM)を開発し、それを、2013年1月11日に化学会館で行われる未踏科学技術協会の特別講演会・第一回環境技術シリーズで公表した。
このセシウム吸着体(Cs-HOM)は、筑波大学との共同実験での放射性セシウムの吸着試験で、従来セシウムの吸着に多用されるゼオライトの二桁上の吸着特性を持つことが確認された。この性質を生かすことができれば、吸着後の放射性処理物の量を大幅に低減することができる。
また、吸着体は往々にしてセシウム以外の混在成分も吸着し、そのために余分の吸着体が必要となる場合があるが、このCs-HOMは吸着に対して優れた選択性を持ち、同程度のNa,Ca,Mg,Clイオンならばそれらの中からCsを選択的に吸着できる。この特性を利用すれば、CsよりはるかにNaやCaの多い海水や飛灰溶解物からも少ない容積でセシウムを取り出せるようになる可能性がある。
さらに、この技術は従来から開発してきたHOM(高秩序メゾボーラス材料)によるヒ素や重金属センサー/吸着体の技術を発展させたものであるため、濃度に応じて(1ppbから)色が変化するセンシング機能を持っており、このセンシング特性を生かした応用も期待できる。
このCs-HOMはシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)という土壌中どこにでもある物質をもとに合成されており、毒性となる可能性の物質を含まないために、飲料水などの除染にも使える可能性がある。
そのさい、Cs-HOMは通常の水環境で使用でき、酸やアルカリなどの調整も不要であり、廃酸、廃アルカリの処理も不要である。
また、合成時に磁性を持つ物質を配合することで吸着体に磁性を持たせることができることも確認されており、磁気分離などと組み合わせた効率的な除染システムが構築される可能性がある。
Cs-HOMは微細粉末ではなく、10nm程度の微細な孔をもったかたまり(パウダーに対してモノリスと呼ぶ)で生成するため、微細孔の状態を保ったままで任意の粒度に調整できる可能性が高く、砂や活性炭を用いた既存の浄化システムがそのまま生かせる可能性がある。
このように多くの可能性をもったCs-HOMであるが、研究室では予想できない現場での問題も多々存在していると思われ、さまざまな技術やアイデアと結び付けて、一日も早く放射性セシウムの除去に貢献する技術としていきたいと開発者のシェリフ・エルザフティ主幹研究員は考えており、技術の内容を公表しその利用方法を広く議論したいと考えている。
参考HP TBS「夢の扉」:第2の母国を放射能汚染から救いたい 物質・材料研究機構:画期的なセシウム吸着剤を開発
![]() | 人体内放射能の除去技術―挙動と除染のメカニズム (KS理工学専門書) |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
![]() | 【期間限定、今だけ大特価+送料無料!】放射性セシウムも吸着する強力消臭剤! 「消臭MASTER(マスター) 家庭用消臭剤【袋詰めタイプ】」お買い得3個セット! |
クリエーター情報なし | |
株式会社キタマル |
��潟�<�潟��