光の速さは一定ではない
光の速さはどのくらいだろう?真空中における光速の値は 299 792 458 m/s(約30万キロメートル毎秒)と定義されている。
この速さだと、太陽から地球まで約8分20秒、月から地球は、2秒もかからない。俗に「1秒間に地球を7回半回る速さ」とも表現される。
ただし、この光の速さはあくまでも真空中であることに注意が必要だ。たとえば水の屈折率は可視光領域波長で約1.33なので、真空中の光速度は約30万km/sであるから、水中での光速度は約22.5万km/sとなる。だから、光の速度は遅くなることもある。
今回、ドイツのダルムシュタット工科大学のゲオルグ・ハインツェ教授の研究チームが、「光を1カ所に1分間止める」ことに成功した。
この成果は「光メモリ」への応用が期待され、スーパーコンピュータを超える、量子コンピュータの実現が一歩近づいたといえる。20日付WIRED(ネットニュース)などが報じた。
以下はWIREDの記事「光を1分間停止させることに成功」からの引用する。
光を1分間停止させることに成功!?
ドイツの研究者たちが、光を結晶の内部に1分間閉じ込めるという記録を達成した。長距離量子ネットワークの希望となるだろうか。
秒速30万kmの並外れた速度で動くものを停止させるという考えは、かなり大胆に思えるだろう。しかし、ドイツのダルムシュタット大学のゲオルグ・ハインツェ率いる研究者チームは、光を1分間停止させるという記録を達成した。どうやってこのような長距離量子ネットワークの開発を加速しうる結果にたどり着いたかを、科学者たちは『Physical Review Letters』の紙上で説明している。
光の速度を落として完全に停止させるという試みは、少し前から行われていた。この企てを成功させるために、ドイツの科学者たちは、「電磁誘導透過(Electromagnetically Induced Transparency: EIT)」として知られる技術を用いた。
単純に言うと、科学者たちは不透明な結晶を用い、これに向けて結晶を透明にするような反応を引き起こすことが可能なレーザー光線を照射した。続いて、同じ結晶(いまは透明になっている)に、もう1本の光の筋を照射した。そして、最初のレーザー光線を消して、結晶を不透明に戻した。すると、「Extreme Tech」が報じているように、光は結晶の中で身動きができなくなった。不透明であるため、反射することもできなかったのだ。実際のところ、あたかも停止したかのようだった。
結晶の中に光エネルギーを保存する?
一度光の身動きが取れなくなると、これらの光子によって運ばれるエネルギー(そしてこれらによって伝えられるデータ)は、結晶の原子によって捕らえられ、スピン励起へと変換された。そして結晶が再び透明になると、光へと戻された。
「NewScientist」が報じているように、科学者たちは、この仕掛けを用いて3本の光の線でできたイメージを60秒間閉じ込め、元に戻して、開発したシステムが限られた時間ではあるが光メモリーとして機能しうることを証明した。
結晶の性質は、スピンが一貫性(物理特性)を維持できるようになっていて、このため情報を伝えることができた。ただし60秒間のみで、その後は光のパルスは消えてしまった。
この研究は、長距離で機能することのできる量子ネットワークの創造に希望を抱かせてくれる。科学者も結論として述べているように、さまざまな結晶を用いて、より長い時間情報を蓄積することができるかもしれないからだ。(WIRED 2013.8.20 TUE)
透明な結晶が不透明になることで、光が閉じ込められるというのはイメージしにくい。閉じ込めても再度取り出せるというのもわかりにくい。それをどんな装置で確認するのだろうか?
ともかく、光を制御することは、将来の光量子コンピューターの完成のために必要な技術となることは間違いない。素晴らしい研究成果である。
光速はいくらでも遅くできる?
ところで、光速=速いというイメージがあり、今回の「光を閉じ込める」という実験がイメージしにくい。そこで、もう一回理屈で考えてみよう。
光速は、物質中では真空中よりも遅くなる。屈折という現象がおきるのは、光速が媒質によって異なるためである。また、物質中の光速よりも速い速度で荷電粒子が運動することが可能であり、このときチェレンコフ放射が発生する。
物質の絶対屈折率は、真空中の光速をその物質中の光速で割った値で定義されている。たとえば水の屈折率は可視光領域波長で約1.33、真空中の光速度は約30万km/sであるから、水中での光速度は約22.5万km/sとなる。
光速はいくらでも速くできる?
では逆に物体を、光速以上に速くすることは可能なのだろうか?
たとえば宇宙船などのが物体を光速以上に加速させるのは不可能。例えば、この3次元空間を、宇宙船が光速に近い速度で飛んだとしたら、たとえ宇宙空間といえども、分子・原子が存在するので、我々の体の中を粒子が光速で突き抜けていく。
これはまさに放射線である“宇宙線”と変わらない。生物は生存不可能だ。空気中を飛ぶ飛行機でさえ、音速(340m/s)を超えるだけで、ソニックブームと呼ばれる衝撃波を受ける。機体は空気との摩擦で高熱にさらされる。
ましてや光速(30万km/s)となると音速の約100万倍、仮に光速で飛べても、非現実的でメリットがない。系外宇宙旅行は、ワームホールを利用するなど、まったく別の方法によるしかないのだ。
しかし、だからと言って、 光速以上の物体がこの世に絶対に存在しないとまでは言えない。
誰かが徐々に加速したわけではなくて、 最初から光速を越えているような物体があったらどうだろう?それは物体ではなくて光のようなものかも知れないが、 実は相対論はそのような存在を否定できないのである。
また、最近では宇宙自体が膨張していることが分かってきた。宇宙の最外縁部は、光が届かないぐらいのスピードで膨張しているので、その場合には相対速度が光の速さを超えていることも考えられる。ただし、光が届かない以上その存在は証明のしようがない。
これは特殊相対論が間違っていたわけではなくて議論の適用範囲外の現象が加わっているだけである。
参考 Wikipedia:光速 WIRED:光を1分間停止させることに成功 EMANの物理学:なぜ光速を越えられないのか
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コメント一覧 (2)
これからも科学の素晴らしさを、たくさんの方に伝えて下さいネ!!( ´ ▽ ` )
ぎょうざ(*^◯^*)