江戸っ子1号とは何か?
 「江戸っ子1号」とは、東京下町の町工場が力を合わせて深海にチャレンジする、深海探査ロボットの名称。

 宇宙の方では、大阪の中小企業などでつくる東大阪宇宙開発協同組合(SOHLA)が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の技術支援を受けながら開発した、「まいど一号」が2009年1月に打ち上げ成功。ものづくり日本の底力を発揮した。

 不景気の中、中小企業は後継者や技術伝承者が無く、どんどん廃業してしまっている。そんな状況を打ち破り、東京下町の小さな町工場でも、力を結集すればイノベーションが実現できる。 そんな夢を深海に託した「江戸っ子1号」深海シャトルビークルプロジェクトがこのたび8000m級の深海で、世界で初めて3Dハイビジョンカメラによる魚類の撮影を果たした。


 潜水実験は11月21日から3日間行った。探査機3機を房総半島の東海上にある日本海溝に投下し、水圧に耐えられるかを調べた。

 水深7800メートル地点で、ヨミノアシロとみられる深海魚などが泳ぐ姿をとらえた。今後、研究機関に映像を持ち込み、種類などを調べる。

 今回のプロジェクトの呼びかけ人である杉野ゴム化学工業所(東京都葛飾区)の杉野行雄社長は、任務を終えた江戸っ子1号を港で出迎え、「4年がかりでの開発の成果が出て感無量だ。今度は(水深1万1000メートルの)マリアナ海溝にチャレンジしたい」と興奮気味に語った。


 下町が作った深海探査ロボット「江戸っ子1号」 - 深海で魚類の撮影に成功
 東京の町工場を中心に深海探査ロボットの開発を行う「江戸っ子1号プロジェクト」は、房総沖の日本海溝、水深約7800m地点で、3Dハイビジョンビデオを用いて魚類の撮影に成功したと発表した。

 撮影されたのは、ヨコエビ類とヨミノアシロと思われる魚類。同プロジェクトに協力している海洋研究開発機構(JAMSTEC)によると、深海の魚類を3Dハイビジョンビデオで撮影することに成功したのは世界初としている。

 同プロジェクトは、東大阪の「まいど1号」に刺激を受けた東京の町工場を中心とした中小企業4社(杉野ゴム化学工業所、浜野製作所、パール技研、ツクモ電子工業)と、開発支援などを行う東京東信用金庫、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、芝浦工業大学、東京海洋大学の8者が協力する形で商業探査機を開発し、8000mを超える深海探査にチャレンジしようというもの。

 今回の挑戦では、3機の探査機が投入されており、そのいずれも回収に成功しており、全体として実験成功という結果になったという。

 なお、今回の航海には芝浦工業大学の教員と学生も同行しており、機体の投入から回収までの一連の作業などを行っており、同大としても、産学連携で地域の企業とともに新しい取り組みにチャレンジし、今後も社会に貢献していくことを目指すとしている。(マイナビニュース 2013/11/26)


 江戸っ子1号のテクノロジー
 日本の国土は小さい(61番)のですが、四方を海に囲まれ、経済的に自由に使える海面(排他的経済水域)は、世界で6番目に大きな国です。この海については、深海の生物や海底の微生物、資源などについて知られていないことも多く、その探査はとても重要です。しかし探査装置は高価なものがほとんどで、探査に乗り出すことができない研究者も多くいます。

 江戸っ子1号プロジェクトは、都内と千葉県の中小企業5社と2つの大学、海洋研究開発機構が信用金庫の橋渡しによって連携して、日本海溝の8000mの超深海の探査を目指す、安価で操作しやすい探査ロボットの開発を行っています。

 ロボットは、ガラス球を組み合わせたもので、8000mの超深海まで錘の力で自由落下し、海底でビデオ撮影や泥の採取を行った後、海上の支援船からの音波による指令に従って錘を切り離して海面に浮上します。海上ではGPSで自分の位置を把握して、衛星通信によって支援船に位置を通報して回収します。

 8000mの超深海は光の届かない暗黒の世界であり、温度は2℃とほとんど一定で、水圧は800気圧に達します(宇宙では地球上との圧力差は1気圧)。また、海水は約3%の塩水なので、金属などの腐食も激しく、宇宙開発で普通に使われる電波通信はまったく使えません。この厳しい条件を克服するために、次のような技術を使っています。

 800気圧に耐えるために、真円のガラス球に装置を組み込むガラスは結晶のない構造なので、圧縮には鋼鉄よりも強く、直径30cmで肉厚が12mmのものでも800気圧に耐える(指先に軽自動車一台乗る圧力)

 装置を組み込んだガラス球同士の通信に、海水中でも電波を通すことのできるゴム製の冶具をつかう超高圧に弱くなるガラス球の穴を開けなくても地上の無線LANをもちこめる。

 塩水で金属が腐食する現象を使い、海水中で金属に電気を通して電食作用によって錘を支えている金属を切り離す支援船から音波で信号を送り、電気信号に変えて錘を切り離す(トランスポンダー)。

 塩水による機体の腐食を防止するため、異種金属の接触面には必ずパッキンをいれる。

 ガラス球を支えるカバーを、真空成形法によって、任意の形状の物を安く簡単に作る。2℃になるとガラス球の内部の水蒸気が結露して機器を傷めるので、船上でガラス球を開けて充電などをする必要がないように非接触充電装置を組み込む。

 ガラスと海水の屈折率が違うため、ガラス球の中から3次元のビデオ撮影をすると画像が二重になってしまうので、冶具を使って補正し、市販の3Dハイビジョンカメラでも綺麗な3次元ビデオ撮影ができるシステムを使う。

 漁船などでも取り扱えるように、全体の重さを50Kg以下に抑える(錘は除く)。海中でどのような動きをするかを知るため、水族館で沈めてみる新江ノ島水族館の相模湾大水槽において、実際に潜らせてその挙動を観察する。(江戸っ子1号プロジェクトサイト:http://edokko1.jp/) 


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