地球の「100兆倍」の水、120億光年のかなたに発見
地球からはるか120億光年離れたクエーサー(准恒星状天体)に、地球上の海水の100兆倍の水が存在することが、科学者らの研究で明らかになった。
クエーサーとは非常に離れた距離において、極めて明るく輝いている天体。宇宙誕生後10億年も経たないうちにでき始め、宇宙が20億~30億歳の頃に最も形成された天体である。最も近いクエーサーでも24.4億光年離れている。遠いクエーサーは観測限界に近い129億光年のものがある。
地球の340億倍の質量を持つ120億光年離れた、クエーサーを分析していたコロラド大学ボルダー校のジェーソン・グレン准教授らが、数百光年の範囲に広がる大量の水蒸気を発見した。カリフォルニア工科大学がハワイ島マウナケア山に設置している天体望遠鏡で、分光器を使って観測された。
120億光年離れた天体を観測すると、見えるのは120億年前の姿だ。宇宙は136億年前のビッグバンで誕生したと考えられているが、その16億年後にはすでに水が存在していたことになる。
これほどの量の水が見つかったのは観測史上初めて。銀河系内で数光年の範囲に分布する水を全部合わせても、同クエーサーに比べれば4000分の1にすぎないという。
研究には両大学のほか、航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所、カーネギー天文台、ペンシルベニア大学や日本の宇宙科学研究所(ISAS)が参加している。(CNNnews 2011.07.26)
星間物質分析法
それにしても、120億光年のかなたにある、地球の「100兆倍」の水をどうして発見したのだろうか?
実は、宇宙空間にある物質が存在すると、天体から発せられる光の一部が、近くの物質に吸収されてしまう。その周波数は物質に特有のものであるため、水分子の存在がわかるわけだ。現在130種類以上もの星間物質が特定できる。
光学望遠鏡や電波望遠鏡を用いることで、天体から発せられる電磁波のスペクトルが得られる。ある分子の異なった電子状態、振動準位または回転準位間の遷移は、スペクトルの中でその分子に特徴的な波長や周波数に吸収や発光として観測される。これらのスペクトルは電波、マイクロ波および赤外線、可視光、紫外線の周波数領域で観測される。
これらの中で一番初めに同定された星間分子は1937年に観測され、1940年にCNなどとともに同定されたメチリジンラジカル (CH) である。
星間分子は非常に希薄な星間空間や、星周辺領域の分子雲の中で化学反応を通して形成される。この化学反応のうちの多くは分子が(特に陽イオンへ)イオン化されたときに起こる。イオン化はしばしば宇宙線との相互作用によって行われ、そのため、陽イオンは星間空間において数多く存在する。
この陽イオンは周辺の電荷を持たない分子を静電気的な引力により引き込み反応を起こす。(詳細はイオン-分子反応へ)イオンと分子の反応よりは遅いが、電荷を持たない分子同士の反応によっても、星間分子は生成されている。
特に多量にそして他種類の分子が観測される天体として、サジタリウスB2分子雲 (Sagittarius B2; Sgr B2)が挙げられる。この巨大な分子雲は天の川銀河の中心方向にほど近く、新しい分子の検出を目的とする研究ではよく探索が行われる。以下のリストのおよそ半分の分子はこのSgr B2分子雲において初めに検出が行われており、そのほかの分子についても近い将来検出されるであろう。(Wikipedia)
クエーサーとは何か?
クエーサー (Quasar、QSO) とは、非常に離れた距離において極めて明るく輝いているために、光学望遠鏡では内部構造が見えず、恒星のような点光源に見える天体(準恒星状電波源、quasi-stellar radio source)のこと。日本語では準星などと呼ばれていた。スペクトルの電波部分が弱いクエーサーのみを区別してQSOと呼ぶ場合もある。また、以前はクエーサーがホワイトホールであるとする説もあった。
現在では活動銀河核の一種とされ、性質の類似から、クエーサーと比べて比較的近傍に存在する活動銀河核を持つ銀河の一種である「セイファート銀河」と同じ種族を構成すると考えられている。
クエーサーのスペクトルは大きな赤方偏移を持っている。この大きな赤方偏移は、クエーサーが地球から極めて高速で遠ざかっていることを意味するので、ハッブルの法則によりクエーサーは極めて遠い場所に存在することがわかる。クエーサーは非常に遠方にあるわりには明るく見え、実際の明るさを考えると典型的な銀河の100倍程度のエネルギーを放出していると考えることができる。
クエーサーの中には明るさが急激に変化しているものがある。これはクエーサーの本体が非常に小さいことを示唆している。 一番明るく見えるクエーサーでも、13等級の明るさしかない。2004年時点で10万個以上のクエーサーが発見されている[2]。発見されている大部分のクエーサーは、電波の弱いクエーサー(radio-quiet quasar)であり、電波の強いクエーサー(radio-loud quasar)は少数である。 クエーサーは宇宙誕生後10億年も経たないうちにでき始め、宇宙が20億~30億歳の頃に最も形成された天体である。
クエーサーの正体
クエーサーは活動銀河とほぼ同様の特徴を示すので、多くの研究者がクエーサーの放射を小さな活動銀河と比較してきた。クエーサーの正体として最も有力な説は、クエーサーは大質量ブラックホールをエネルギー源に持っている、というものである。
クエーサーの強力な光度は、大質量ブラックホールを取り巻く降着円盤のガスや塵がブラックホールに落ち込む時の摩擦によって生み出されていると考えられている。この物理過程では落ち込む質量の約50%をエネルギーに変換することが可能で、核融合によるエネルギー変換が質量の数%にとどまるのに比べて非常に変換効率が良い。
1040 W というクエーサーの平均的な光度を生み出すには、大質量ブラックホールは1年あたり恒星を10個飲み込む計算になる。現在知られている最も明るいクエーサーの場合には、毎年1000太陽質量程度の物質を消費しているだろうと考えられている。
またクエーサーは、その周辺の環境によって「スイッチ」が入ったり切れたりすると考えられている。例えば、上に挙げたような割合で100億年も「餌」となる物質が供給され続けることはないと思われる。このメカニズムは、なぜクエーサーが初期の宇宙にのみ見られるのかという問題にもうまく説明を与える。
つまり、降着円盤によるエネルギー生成は、大質量ブラックホールの周囲の物質が全て消費し尽くされると停止するのである。このことから、我々の銀河系を含むほとんどの銀河は過去にクエーサーの段階を経験し、現在は中心のブラックホールに質量が供給されていないためにエネルギー放射活動をしない平穏な状態にある、とも考えられる。
参考 Wikipedia 宇宙化学 星間分子の一覧 クエーサー
![]() | クェーサーの謎―宇宙でもっともミステリアスな天体 (ブルーバックス) |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
![]() | 星間物質と星形成 (シリーズ現代の天文学) |
クリエーター情報なし | |
日本評論社 |
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