マグマの成分は上下でかなり違う
 火山と地震の国日本は、火山や地震の研究は欠かせない。火山につきもののマグマとは何だろうか?

 マグマ(magma)とは、火山にある流動性を有する高温のケイ酸塩混合物で、岩石成分と、揮発性成分(主に水)で構成される。

 火山の地下にあるものは、マグマ溜り(magma chamber)に溜まっており、地殻内でマグマが蓄積されている。ここにマグマがあるとき、マグマは高圧下にあり、このマグマが地上に現れるとき、それを噴火と呼ぶ。

 マグマ溜まりの中のマグマは、周辺の岩石に熱を奪われて、徐々に冷えてゆくが、その過程で揮発成分の分離や、結晶しやすい成分の結晶化・沈積等、結晶分化作用が起こっている。その結果、マグマ溜まりの上部と下部では、成分がかなり違っている場合がある。


 今回、海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、地表まで上昇、到達するまでに含有成分が結晶化する通常のマグマとは違って、地下深部から短時間で直接海底に噴出したとみられる未結晶の「初生マグマ」を世界で初めて、マリアナ諸島の海底で採取したことを発表した。

 これまで室内実験でしか確認できなかった初生マグマを直接分析することで、火山の形成や大陸の地殻の成因など、地球内部のダイナミクス(挙動)の研究がさらに進むものと期待される。


 マリアナ海底で“初生マグマ”溶岩を採取
 
JAMSTEC・地球内部ダイナミクス領域の田村芳彦・上席研究員らは2010年6月に、マリアナ諸島最大の活火山「パガン島」(標高570メートル)周辺で海底火山の調査を行い、無人探査機「ハイパードルフィン」を用いて水深2,000メートル付近の海底斜面から新鮮な23個の「枕状溶岩」を採取した。これらを分析した結果、初生マグマによる溶岩であることが分かった。

 調査付近の海底下では、フィリピン海プレートの下に太平洋プレートが沈み込み、それに伴って水(海水)と堆積物(メルト)が地球の深部に運ばれている。それらの物質の影響で、海底の岩盤のさらに深く(約100キロメートル)にあるマントルの岩石(かんらん岩)の一部が溶解して、初生マグマは作られると考えられている。

 初生マグマは深さ30-60キロメートルまで上昇して「マグマ溜(だま)り」を形成し、そこで冷却されて、マグマに含まれるケイ素や鉄、ナトリウムなどの成分の結晶化が起こる。そうしたマグマが火山の噴火に伴って地表に噴き出し、固まったのが溶岩だ。

 今回採取した溶岩には結晶がほとんど含まれていないことから、初生マグマがマグマ溜りを経ずに、上昇の途中から直接海底に噴出して固まったものと考えられた。また初生マグマには、これまで、水とメルトの両方の成分が含まれるとみられていたが、今回の採取の溶岩(初生マグマ)には、水分が多いもの、メルト成分が多いものの2種類のマグマがあり、ほぼ同時期に隣接した場所から噴出したことが分かったという。

 研究論文“Mission Immiscible: Distinct subduction components generate two primary magmas of Pagan Volcano, Mariana arc”は、『Journal of Petrology』(電子版)に掲載された。(海洋研究開発機構)


 マグマとは何か?
 マグマ(magma)とは、地下にある流動性を有する高温のケイ酸塩混合物で、岩石成分と、揮発性成分(主に水)で構成される。

 マグマの流動性は温度や成分、特に主成分の二酸化ケイ素(SiO2)の量で著しく変化する。SiO2量が50%程度のハワイ火山の溶岩はサラサラと流れるが、70%近い昭和新山では溶岩が流出せず、そのまま塔となって円頂丘を形成した。

 SiO2量が少ないマグマが固化すると黒い玄武岩になり、多い場合は白っぽい安山岩や流紋岩になる。 高熱で液体のマグマは周囲の岩より比重が小さく、その影響で自然と地殻上部に上がり、マグマだまりといわれる塊になる。

 そこで冷えて固化すると花崗岩のような深成岩となるが、活動が活発な場合は地表まで上がり、火山、海底火山を通じた噴火の一因となる。噴火時のマグマは、火山ガス、溶岩、軽石、火山弾、火山灰に姿を変える。また溶岩や噴火直前のマグマが冷えたものが火山岩である。


 マグマ溜まりとは何か?
 マグマ溜り(magma chamber)とは、地殻内でマグマが蓄積されている部分である。ここにマグマがあるとき、マグマは高圧下にあり、その中でマグマは次第に分化していく。そして、このマグマが地上に現れるとき、それを噴火と呼び、主として火山にて見られる。

 地下数十kmの深部で生成されたマグマは、高温の液体であるため、周囲の固体岩石より比重が小さく、浮力によって徐々に上昇する。地下5kmから10km程度の場所まで来ると、周囲の固体岩石も深部ほど高圧を受けていないため、マグマと同程度の比重となり、マグマは浮力を失って滞留すると考えられている。

 マグマ溜りは発見が難しいが、地表から1km~10km程度の深さに存在するものが現在は発見されている。地球科学的に考察すると、地表から10kmというのは非常に浅いものであり、これ以上の深さにも存在するが、いまだにマグマ溜まりが大きな穴なのか、それとも細かい割れ目にマグマが入り込んだようなものなのか、という点はまだわかっていない。マグマ溜まりの大きさは数km程度と考えられている。


 マグマの分化
 マグマは結晶分化作用により、マグマ溜り内で分化し、体積に対する質量である比重が、次第にマグマ溜り周囲のそれよりも軽くなり、上昇する。このとき、周囲の岩石をマグマの熱で変成する等して、岩脈を形成し上昇してくる。これを逆手に取ることによっても、マグマ溜りの位置は推測できる。また、地殻内部での密度は、岩体の違いにより、場所によって違うことから、マグマ溜りは上下方向に連なることも多い。

 マグマは液体であるため、地震波の伝わる速度が地殻とは異なり、このことを応用して、地震学でマグマ溜りの分布図が作られている。この方法が、地震波トモグラフィーである。

 マグマ溜まりの中のマグマは、周辺の岩石に熱を奪われて、徐々に冷えてゆくが、その過程で揮発成分の分離や、結晶しやすい成分の結晶化・沈積等、結晶分化作用が起こっている。その結果、マグマ溜まりの上部と下部では、成分がかなり違っている場合がある。


 1707年富士山宝永大噴火
 1回の噴火の中で、最初に噴出した物質(マグマ溜まりの上部にあった)と最後に出てきた物質(下部にあった)では、成分が大きく異なる場合があるのは、そのことを示していると考えられている。

 例えば、1707年の富士山宝永大噴火では、激しい噴火が4日間続き、大量の火山灰が江戸にも降り積もったが、その火山灰の成分が途中で大きく変化した。最初はシリカを多く含んだ白っぽいデイサイト質の火山灰が降ったが、数時間後には、黒っぽい玄武岩質の火山灰に変わった。

 噴火前の富士山マグマ溜まりの上部は、比重の大きい成分が結晶化・沈積した残りの液体であったため、デイサイト質になっていたと推定される。

 噴火が起こらない場合、沈澱したマグマは次第に冷やされ、深成岩となる。このマグマが深成岩になる過程で冷却されることによって、水蒸気が高圧のために冷却されていないマグマ内部に放出される。この圧力変化によってもマグマは上昇する。更にマグマの融点を下げ、粘性を上げることもある。この現象は噴火の規模を大きくすることがある。


参考 JAMSTEC:海底火山から初生マグマを世界で初めて発見


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