アイソン彗星、近日点を前に消滅か?
 太陽に近づいたアイソン彗星(C/2012 S1)が、12月初旬の再出現を前に消滅したかもしれない。

 NASAは11月28日、彗星の運命はまだ確認されていないが、太陽最接近の旅を生き延びることはできなかったようだと発表した。SDO担当の科学者は、「SDOではISONが見えなくなった。したがって、近日点に達する前に崩壊し、蒸発したと考えざるをえない」と述べている。

 アイソン彗星は日本時間29日午前4時すぎに、半径約70万キロメートルの太陽の表面から120万キロメートルの地点(近日点)を通過すると予想された。しかし、あまりに太陽に近いため、太陽からの熱や重力で、彗星本体が分裂・崩壊する可能性が指摘されていた。(National Geographic News November 29, 2013)

 ところが、翌日米航空宇宙局(NASA)は、「一部が残っているかもしれない」と発表した。彗星消滅の報を受けて、特集番組のタイトルを急きょ変更したNHKは、いまだ定まらぬ彗星の動向にやきもき。番組担当者は「継続して取材中です…」と、宇宙の神秘に当惑気味の様子だ。


 NASAが公開した太陽観測衛星「SOHO」の最新画像では、太陽の上部から彗星らしき光が現れ、明るさをあまり失わないまま、かすかに尾を引きながら遠ざかっている。NASAは「小さな核が残っている可能性がある」とした。

 一方で「破片や、周囲に残ったちりかもしれない」とも話し、実態は正確に解明できていない。

 河北秀世京都産業大教授(天文学)は「画像からは、彗星がどのくらい細かく壊れたかは分からない。もし核が残っていれば、引き続きガスやちりが出るので観測できるだろう」と指摘。その上で、当初の予測のような巨大彗星のイメージからは、程遠いものになったとし「肉眼で見るのは難しいだろう。写真は撮り慣れている人なら撮影できるかもしれない」と彗星の規模を予測する。(Sponichi 2013.12.1)

 宇宙飛行士の野口聡一さん(48)は「太陽に近づき過ぎて消滅とは、イカロスの翼のようだ」とツイッターでコメント。イカロスはギリシャ神話で、鳥の羽をロウで固めた翼で飛び、太陽の熱でロウが溶けて墜落死した若者のエピソードだ。


 彗星の崩壊と消失
 
アイソン彗星の一部が残ったにしても、我々が期待した明るさにはならないようだ。これまでにも彗星が消滅するようなことがあったのだろうか?

 彗星の軌道速度が速い場合、太陽系の内部に入ってきてそのまま太陽系の外部へ出て行く場合がある。大部分の非周期彗星がこの例に当たる。また、木星など太陽系内の他の天体による重力的摂動によって加速され、太陽系の外へ放出される場合もある。

 太陽への接近を繰り返すうちに徐々に揮発性の成分が脱落していくが、崩壊・消失に至ることなく小惑星のようになる場合があり、これを彗星・小惑星遷移天体や枯渇彗星核と呼ぶ。そのような過程を経たと思われる天体や、その過渡期にある天体もいくつか見つかっている。

 小惑星は彗星とは起源が異なり、太陽系の外側ではなく内側で形成されたと考えられているが、ヴィルト第2彗星からのサンプルリターンにより得られたサンプルが小惑星のものと似ていたことから、21世紀初頭では彗星と小惑星の境界はやや曖昧になっている。


 分裂、崩壊したビエラ彗星
 最も早期に発見された周期彗星の一つであるビエラ彗星 (3D) は1846年の回帰時に2つに分裂し、次の回帰である1852年には双子の彗星となって現れたが、その後は2度と出現しなかった。その代わり、本来彗星が回帰するはずであった1872年と1885年に、1時間当たりの出現数が数万個にも達する壮大な流星雨が観測された。

 この流星群はアンドロメダ座流星群と呼ばれ、毎年11月5日前後に地球がビエラ彗星の軌道に突入するために起こる。21世紀初頭ではほとんど出現はないが、稀に突発的な1時間当たり数十個の出現が観測されることがある。ビエラ彗星以降も、太陽からの輻射熱や物理的作用により、分裂あるいは崩壊、消失した彗星は、多数観測されている。

 彗星のさまざまな様相変化の予想は難しく、彗星核の崩壊や消失に関する理論的な研究はあまりなされていない。しかし、国立天文台の福島英雄らの観測・研究グループによれば、近日点通過前の彗星頭部の崩壊前に極めて特異なコマ形状を共通して示していることや、光度観測により色指数 (V-I) の変化が特異であることが報告された(2003年春季天文学会)。

 実際には彗星の頭部がY字やT字型からおむすびのような形に変化していき、集光も薄れ消失するのだという。また、この発表では、近年の彗星の中でこのモデルに合致した物としてはSWAN彗星 (C/2002 O6) が挙げられ、普通の彗星のコマと違い三角形の形状をしているという報告がなされた。また、ヘーニッヒ彗星 (C/2002 O4) も同様な消滅過程だと報告された。


 衝突したシューメーカー・レヴィ第9彗星
 彗星の中には、太陽に飛び込む、あるいは惑星やその他の天体に衝突するなど、より劇的な最後を迎えるものもある。彗星と惑星や衛星との衝突は太陽系の形成と進化の初期にはありふれた出来事だった。たとえば地球の衛星である月の膨大なクレーターの一部は、彗星が衝突したことで形成された。

 1993年に発見されたシューメーカー・レヴィ第9彗星は、1992年に木星に非常に接近した際にその重力に捕らえられ、木星の周りを回る軌道をとっていた。この接近で既に彗星の核は分裂し、少なくとも21個の破片に分かれていた。

 そして分裂した核は1994年7月16日から7月22日までに、相次いで木星の大気に突入、巨大な噴煙や衝突痕は地球からも観測された。2009年・2010年にも木星表面に彗星が衝突した痕跡らしきものが観測された。パリ天文台に残されているジョヴァンニ・カッシーニの観測記録によると、1690年にも木星に彗星が衝突した可能性が高い。

 さらに、2010年に土星と海王星の大気組成の分析が行われ、それぞれ約300年前と約200年前に彗星が衝突したことを示す結果が得られている。

 地球にも約40億年前の後期重爆撃期には数多くの彗星や小惑星が衝突した。多くの科学者は、後期重爆撃期に地球に衝突した彗星によって、現在地球の海を満たしている膨大な量の水のほとんど、少なくともかなりの割合がもたらされたと考えている。

 しかし、その理論を疑う研究者もいる。彗星に含まれる有機分子を探すことで、彗星や隕石が生命の前駆物質、あるいは生命自体さえも運んできたのではないかと推測されてきた。地球に接近する彗星は今でも数多くあり、1908年のツングースカ大爆発は彗星の衝突だった可能性が高い。(Wikipedia)


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