こんなチーズは食べたくない?
チーズ(cheese)とは、牛・水牛・羊・山羊・ヤクなどからとれる乳を原料とし、凝固や発酵などの加工をしてつくられる食品(乳製品)の一種。
家畜の乳は古くから栄養価の高い食品として世界中のさまざまな民族に利用されてきたが、そのままでは保存性に欠ける上、液体のため運搬にも不便である。これらの欠点を補うために水分を抜いて保存性と運搬性を高めたのがチーズの始まりである。日本には、かつて蘇(そ)と呼ばれるチーズと同様の食品が存在した。
チーズにはさまざまな種類がある。フレッシュタイプ、白カビタイプ、青カビタイプ、ウォッシュタイプ、シェーブル(山羊) & ブルビ(羊)タイプ、セミハードタイプ、ハードタイプなど…。フレッシュタイプとは、乳酸菌を発酵させて固めるタイプで一般的。だが、青カビをはやしたものなどはとても食べられそうにない。ところがさらに上をいくチーズがある…。
先ごろ、アイルランド、ダブリンのサイエンス・ギャラリーで開催された「Selfmade」という展示会に、一風変わった11種類のチーズが出品された。人間のヘソ、足の裏、口内、涙などから採取した細菌で発酵させたチーズだ。
作成者は、生物学者のクリスティナ・アガパキス(Christina Agapakis)氏と、臭いの専門家であるシセル・トラース(Sissel Tolaas)氏。生物学とアートやデザインとのコラボレーションを模索する「Synthetic Aesthetics(合成美学)」プロジェクトの一環として行われた展示会で、予想通り、来訪者の多くは問題のチーズを目の前に拒否反応を示していた。
「文字通り“考える糧”にしてもらおうと作った」とアガパキス氏は意図を語る。「最初は嫌悪感をおぼえるだろうが、人間の文化と微生物との関わり合いをより深く考えるきっかけになればと思う」。
『The Life of Cheese』の著者で、自らの細菌を提供した人類学者のへザー・パクソン(Heather Paxson)氏はこう語る。「自然と文化には、切っても切れない密接な結びつきが存在する。雄弁に物語る食材の1つがチーズだ」。
珍味通が喜びそうな細菌チーズはさておいて、世界には変わり種のチーズがいくつも存在する。ここでは主なものを紹介しよう。
ヒト母乳のチーズ
乳製品も避ける完全菜食主義者にとっては朗報かもしれないが、中には敬遠する向きもあるだろう。
2010年、ニューヨークでレストランを営むオーナーシェフ、ダニエル・アンジェレ(Daniel Angerer)氏は、妻の母乳で作ったチーズを“人間チーズ(human cheese)”として客に提供。周囲から激しい非難が浴びせられ、中には「人食い」を連想すると批判する人もいた。いずれにせよ、食品の名前に「人間」を冠するのは不快感を与える原因になるだろう。
ちなみに、店を取材に訪れた女性レポーターは、抵抗感を必死で抑えながら一口大に切った母乳チーズを口に運び、「妙に柔らかくて、パンナコッタのような食感」と感想を述べていた。
その後、ニューヨーク市保健衛生当局はアンジェレ氏に対し、母乳の提供を禁止する命令を下したという。
“うじ虫のチーズ”、カース・マルツ
カース・マルツは、イタリアのサルデーニャ島名物の羊乳チーズ。作り方は至って素朴だが、チーズバエの幼虫(うじ虫)を加える点が他と一線を画している。
サルデーニャ語で「腐ったチーズ」を意味するカース・マルツは、幼虫が分泌する消化液によって、羊乳に含まれる脂肪分が分解され、柔らかい食感が生み出される。
食べる際には、幼虫を取り除く人もいれば、丸ごと食べる人もいるという。ちなみに地元では、中の幼虫が死んでいる場合、食べない方がよいとされている。
世界一高価なロバのチーズ
ロバの乳を原料とするセルビアのチーズは、世界で最も高価ともっぱらの評判だ。値段は100グラムおよそ1万3000円。口にするには大枚をはたく必要がある。
ロバの乳は脂肪分が少な目で、チーズ1キログラムにつき約25リットルも必要となる。ところが、メスのロバ1頭からは年間わずか20リットルしか搾乳できない。1リットルあたりの値段が5000円を上回るのも無理はない。
さらに、チーズ用に搾乳を行っているロバの飼育場は世界中にたった1軒だけ。運良く注文できて世界一高価なチーズに舌鼓を打てるのは、ごく一握りの食通だけということになる。
世界一“臭い”チーズ、ヴィユー・ブローニュ
その臭さで名を挙げたのは、ヴィユー・ブローニュ。なにせ、イギリスのクランフィールド大学で行われた2004年のコンテストでお墨付きをもらっている。人工的な嗅覚装置「電子鼻(electronic nose)」と19人の審査員が評価。同じく強烈さで知られるフランス産のチーズ、エポワス・ド・ブルゴーニュを抑えて世界一に輝いた。
ヴィユー・ブローニュの特徴は、製造の過程で表面にかけるビールにある。チーズに含まれる酵素とビールとの相互作用によって、強烈な香りが生み出されるのだという。
さて、“考える糧”に話を戻そう。臭いの判断基準は一律ではないという仮説を検証しているアガパキス氏とトラース氏は、人体の細菌で作ったチーズにも関心を寄せている。
「汗や足の臭いの元になる細菌種と、チーズの香りを生み出す細菌種には深いつながりがある。両者の重なり具合について、思いのほか多くの情報が得られた。“良い”“悪い”を分ける基準がどこにあるのかという文化的な視点から見ても、驚くべきものがあり非常に興味深い」。アガパキス氏はそう語っている。(National Geographic news 2013年12月4日:人体の細菌で発酵させたチーズ)
チーズとは何か?
チーズ(cheese)とは、牛・水牛・羊・山羊・ヤクなどからとれる乳を原料とし、凝固や発酵などの加工をしてつくられる食品(乳製品)の一種。日本語での漢字表記は乾酪。
家畜の乳は古くから栄養価の高い食品として世界中のさまざまな民族に利用されてきたが、そのままでは保存性に欠ける上、液体のため運搬にも不便である。これらの欠点を補うために水分を抜いて保存性と運搬性を高めたのがチーズの始まりである。その起源は定かではないが、紀元前4000年頃には作られていたと考えられている。日本には、かつて蘇(そ)と呼ばれるチーズと同様の食品が存在した。
乳にレンネット(凝乳酵素)または酸(食酢、レモン汁など)を加え、静置するとふわふわの白い塊と上澄みの水分(乳清、ホエー)に分離する。この白い塊はカード(凝乳)と呼ばれ、これを絞るなどしてさらに水分を除いたものがフレッシュチーズと呼ばれるチーズの原型である。多くの場合はこれに熟成・加工の過程を加えてさまざまな味わいのチーズを作り出す。加工の過程では乳酸菌やカビなどを用いて発酵させたり、加温・加圧などの工程を加えて保存性を高めるなどの工夫が凝らされている。
チーズがどのようにして発見されたのかは正確には定かではないが、「アラブの商人が羊の胃袋を干して作った水筒に山羊のミルクを入れて砂漠を旅していた途中に、砂漠の疲れとのどの渇きを癒そうと水筒をあけたところ、中からミルクではなく澄んだ水(乳清)と柔らかい白い塊(カード)がでてきた」というのが最初のチーズの発見であるという説が有力だとされていた。
ところが、近年になって世界最古のチーズ製造の痕跡はヨーロッパのポーランドで発見されている。これはチーズ製造が中東ではなく、ポーランドあたりの中央ヨーロッパで始まった可能性を示唆している。この人類最古のチーズの原料はヤギの乳であり、また現在のポーランドでも多くの種類の山羊乳チーズ(いわゆるシェーブルチーズ)が存在する。(Wikipedia:チーズ)
チーズの種類
チーズは、その製造方法により「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2つに大きく分類されている。
ナチュラルチーズは乳酸菌やカビで発酵させたチーズのこと。チーズ特有の熟成がある。プロセスチーズは、ナチュラルチーズを1種類または数種類混ぜて加熱し加工したチーズのこと。熟成はストップするが味が一定で保存性に優れている。
ナチュラルチーズは、「乳種」「製造法」「熟成期間」「外観」などにより7種類に分類される。 ここでは「ナチュラルチーズ」を中心にチーズの種類について解説する。
フレッシュチーズ: フレッシュチーズ フレッシュチーズとは、生乳に乳酸菌や「レンネット(酵素)」を加えて固めて脱水したナチュラルチーズの1つです。 全く熟成させないか軽く熟成させたもの、つまりチーズを作る工程の初期段階で出来たものがこのフレッシュチーズです。代表するチーズ:フロマージュブラン、カッテージチーズ、リコッタ、モツァレラなど。
白カビチーズ: 白カビチーズ 白カビチーズとは、 表面に植え付けた白カビが内側に向かって熟成したナチュラルチーズの1つ。別名「ホワイトチーズ」とも呼ばれています。熟成するタイプなので、刻々と変わる風味が楽しめます。代表するチーズ:カマンベール、ブリ・ド・モー、クロミエなど。
青カビチーズ: 青カビチーズ 青カビチーズとは、牛乳や羊乳を原料にして作ったチーズに青カビを繁殖させるナチュラルチーズの1つ。別名「ブルーチーズとも呼びます。代表するチーズ:ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、ブルースティルトンなど。
ウォッシュチーズ: ウォッシュチーズ ウォッシュチーズとは、「リネンス菌」と呼ばれる特殊な細菌を、チーズの外側に植えつけて内側に向かって熟成させていくチーズ。 熟成の過程で、塩水やその土地のワイン/ブランデーを定期的に吹き付けて洗う事から「ウォッシュ」チーズと呼ばれるようになりました。代表するチーズ:エポワス、マンステール、ポン・レベック、タレジョなど。
シェーブルチーズ: シェーブルチーズ シェーブルチーズとは、「山羊(フランス語でシェーブル)」の生乳で作られるナチュラルチーズの1つです。 牛の生乳で作るチーズよりその歴史は古く、元祖ともいえるチーズです。代表するチーズ:サントモール、クロタン・ド・シャヴィニョルなど。
ハードチーズ: ハードチーズ ハードチーズとは、「カード(凝乳)」をセミハードチーズよりもさらに強くプレスして作るナチュラルチーズの1つ。 そのため含まれる水分量がセミハードチーズよりさらに少ない(約38%以下)ため非常に硬めなのが特徴。代表するチーズ:コンテ、グラナ、パルミジャーノ・レジャーノなど。
セミハードチーズ: セミハードチーズ セミハードチーズとは、「カード(凝乳)」をプレスしての水分の量を減らしたり除去したりして作るナチュラルチーズの1つ。強めに圧力をかけるため、比較的硬めのチーズです。代表するチーズ:ゴーダ、サムソ-、ラクレット、サン・ネクテール、ルブローションなど。(チーズnavi:チーズの種類)
チーズ図鑑 (文春新書) | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
世界チーズ大図鑑 | |
クリエーター情報なし | |
柴田書店 |
��潟�<�潟��