突然変異とは何か?
突然変異とは、ある集団の大多数の形質と異なる形質を持つようになること。DNAあるいはRNA上の塩基配列に物理的変化が生じる「遺伝子突然変異」と、染色体の数や構造に変化が生じる「染色体突然変異」がある。
突然変異はなぜ起きるのだろう?有名なのが放射線だ。
福島第一原発事故で漏れた放射線が、生物細胞にあるDNA分子の塩基配列に傷をつける。これが修復できないと細胞は死ぬ。細胞の死ぬ数が多いと、生物全体が死ぬ。だから放射線は怖い。
今日、DNA分子の損傷は1日1細胞あたり最大50万回程度発生することが知られており、その原因は、正常な代謝活動に伴うものや、X線・γ線・紫外線などの環境要因によるものがある。
通常DNA分子の損傷は、DNA修復酵素のはたらきで絶えず補修されている。補修が間に合わない場合、細胞は自動的に死を迎える(アポトーシス)か、癌化する。だが、まれにDNA分子が損傷したまま生き残る場合がある。これが突然変異だ。
突然変異を発見し、命名したのはオランダの生物学者ユーゴー・ド・フリースで、1901年のことだった。ここから進化が突然変異によって起こるという突然変異説を提唱した。
突然変異を人為的に誘発できることを実験的に証明したのはハーマン・J・マラーである。マラーは、ショウジョウバエにX線を照射し、次世代の致死率を測ることにより、理論値から推測した。以後、生物学(遺伝学)では人為的に突然変異を誘導する変異導入により突然変異体を得て、その表現型を観察することで、遺伝子の機能を解析している。
1946年、ハーマン・J・マラーはノーベル生理学・医学賞を受賞する。受賞理由は「X線照射による突然変異体発生の発見」である。
ハーマン・J・マラー
ハーマン・ジョーゼフ・マラー(Hermann Joseph Muller、1890年12月21日 - 1967年4月5日)はアメリカの遺伝学者。ショウジョウバエに対するX線照射の実験で人為的に突然変異を誘発できることを発見した。この業績により1946年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。精子バンクの提唱者でもある。
ハーマン・J・マラーは、ニューヨークに生まれコロンビア大学で学位をとる。トーマス・ハント・モーガンの研究室に入り、ショウジョウバエを用いた遺伝学研究に携わった。1920年からテキサス大学オースティン校の教職員となった。
世界恐慌を機に社会主義に目覚める。マラーの実験室にはソ連から複数の人間が訪問しており、違法な左翼学生新聞The Sparkを編集し、配布を手伝ったため、FBIに共産主義者として調査されていた。
1932年にベルリンに旅行し、ニールス・ボーアやマックス・デルブリュックなど当時の重要な物理学者と会う。ナチス政権を嫌い、また共産主義に惹かれていたことからアメリカに戻らず、1933年に妻や息子と共にレニングラードに移住する。ソ連でニコライ・ヴァヴィロフに迎えられたマラーは幅広い権限が与えられ、ソビエト連邦科学アカデミーなどで遺伝学の研究を指導する。
しかし、勢力をつけてきたトロフィム・ルイセンコとスターリンに批判され、1940年にアメリカに帰国し、アマースト大学で教職に就き、マンハッタン計画の顧問となったが、1945年に任命を解かれる。政治活動の過去は就職を困難にさせたにも関わらず、インディアナ大学で動物学の教職を得た。
1946年にX線によって突然変異が誘導できること(人為突然変異)を発見し、遺伝子が物質からできていることの証拠となり、その後の分子生物学の誕生にも影響を与えた。また彼はX線照射による染色体への影響を観察し、逆位や欠失など様々な染色体異常を記載している。この過程で染色体末端の構造テロメアの定義も行った。
1955年、ラッセル=アインシュタイン宣言に署名した。
ショウジョウバエに対する実験
ショウジョウバエのオスに放射線を当てて異常が出ないかを実験していたところ、その二代目、三代目に異常が出たため、マラーは実験に基づき『放射線の害はその量に直線的に比例する』という仮説を発表し、これを受けてICRP(国際放射線防護委員会)は、放射線は有害であると訴えた。
マラーが実験を行った時代には染色体の存在は知られていたもののその細部のDNAについては研究が進んでいなかった。現在ではDNAの修復活動は人間の細胞1個では一日に百万件行われていることに対し、ショウジョウバエの精子は修復活動をしない特別なものであることが判明しているが、ICRPは現在もショウジョウバエの実験データを放射能の危険数値の基準にしている。
「今から1世紀か2世紀の間に・・・レーニン、ニュートン、ダ・ヴィンチ、パスツール、ベートーヴェン、オマル・ハイアーム、プースキン、孫文、マルクス・・・さらにはそういった人物の才能のすべてをあわせもつ者が、社会の大多数を占めるようになるかもしれない」(「夜の外へー生物学者の見た未来」)
レニングラードに移住した際、秘書のレジーナと研究者のハンスの間にはチェス選手のボビー・フィッシャーが生まれている。(Wikipedia:ハーマン・J・ミラー)
ドイツの政治家ヘルマン・ミュラー、スイスの化学者(DDT開発者)パウル(・ヘルマン)・ミュラー(Paul Hermann Müller)とは別人である。
遺伝子突然変異
遺伝子突然変異は、DNA複製の際のミスや化学物質によるDNAの損傷および複製ミス・放射線照射によるDNAあるいは染色体の損傷、トランスポゾンの転移による遺伝子の破壊などによって引き起こされる。突然変異には、一つのヌクレオチドが別の塩基に変わる点変異や、一つから複数のヌクレオチドが挿入または欠失するものもある。
変異はコドンの1番目のコードに変異が起きる場合と2・3番目のコードに起きる場合がある。前者と後者の変異がコードの場所に関係なく一律に起きるならば、2・3番目のコードに変異が起きて翻訳しても対応するアミノ酸が変化しないサイレント変異が、1番目のコードの変異より多く子孫に引き継がれていく。第1コードに変異があり、アミノ酸が変化したタンパク質は変異前の機能を保持できないことが多く、このような変異体は生存に不利になることが多いと考えられる一方で、このような変異が生存に有利となる場合もあり、そのような変異は進化の要因となりうる。
遺伝子をコードする領域以外(イントロン)の変異や、遺伝子内でもアミノ酸配列や転写量を変化させない場合はサイレント変異となる( →「中立進化説」「分子時計」項を参照)。機能に影響がある点変異は、別のアミノ酸にコドンが変化する非同義変異、アミノ酸のコドンが終止コドンに変わるナンセンス変異、終止コドンがアミノ酸のコドンに変わる読み過ごし変異がある。三つのヌクレオチドで一つのアミノ酸をコードするため、挿入・欠失したヌクレオチドが3の倍数だとアミノ酸の挿入・欠失が起こり、そうでないときはコドンの読み枠がずれアミノ酸配列が大きく変わるフレームシフトなどが起こる。(Wikipedia:突然変異)
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