ファースト・スターの誕生
宇宙の年齢は現在137億歳であると考えられている。誕生してから数億年の頃までの時期は宇宙の「暗黒時代」と呼ばれ、その様子を知ることができないでいる。最初の数億年の間、星や銀河などが生まれる前の宇宙には、ガスと暗黒物質が薄く漂い、それにビッグバンの名残である弱い電磁波が飛び交うだけで、文字通り暗黒の宇宙だったと考えられる。
暗黒宇宙に光を灯したのは、宇宙に生まれた最初の星「ファースト・スター」である。ファースト・スターの誕生により暗黒宇宙は終焉し、やがて光輝く銀河宇宙へと変貌をとげていく。
ファースト・スターが誕生したのは宇宙創成から1億~3億年ほど経った頃である。原始星(生まれたばかりの星)の質量は太陽の100倍であった。明るさでは太陽の百万倍以上にもなる。宇宙がまだ数億歳という若さの時に、このようなとても明るいファースト・スターが闇を照らし出し、暗黒時代に終わりを告げた。
その後ファースト・スターはどうなっただろうか?
今回、観測史上最古の恒星を発見したとするオーストラリアの研究報告が2月9日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。この星は鉄含有量がこれまで知られている恒星の60分の1未満で、宇宙の始まりであるビッグバン(Big Bang)から間もない136億年前に誕生したとみられるという。
今まで最古とされていたのは約132億年前に誕生した星で、欧州と米国の研究チームによって2個がそれぞれ2007年と2013年に報告されていた。
「最古の星」発見、決め手は鉄含有量 豪研究
オーストラリア国立大学(Australian National University)のステファン・ケラー(Stefan Keller)氏によると、この星「SMSS J031300.36-670839.3」は地球のある「天の川銀河(Milky Way)」の中に位置し、地球からの距離は約6000光年。宇宙の規模から見れば、地球に比較的近いところにあるという。
「この星のスペクトルには検出可能なレベルの鉄がまったく存在しない。太古の星だという明らかな証拠だ」と、ケラー氏はAFPの電子メール取材に説明した。
ケラー氏によれば、ビッグバンで誕生した宇宙は、水素とヘリウムと微量のリチウムで満たされていた。現存するその他の元素は全て、恒星の中で作られたものだ。恒星は、寿命が尽きた巨大な星が超新星爆発を起こした後に残るガスと塵(ちり)の雲の中で誕生する。
恒星の年齢を判定する方法の1つが、星に含まれる鉄の量を調べることだ。鉄含有量は新しく誕生した恒星ほど多くなるため、スペクトル中の鉄の量が少ないほど、その星は古いということになる。
ケラー氏は「われわれが報告した星の場合、鉄含有量は太陽の100万分の1に満たず、現在分かっているどの恒星と比べても60分の1未満しかない。この事実は、この星がこれまで見つかった中で最古の星だということを示している」と述べている。論文によるとこの星は、質量が太陽の約60倍の星が爆発した低エネルギーの超新星の中で誕生したのだという。
「SMSS J031300.36-670839.3」は、南天の空を5年にわたって調査中のオーストラリア国立大のスカイマッパー(SkyMapper)望遠鏡によって発見された。同様に鉄含有量の非常に少ない星がこれまで他に4個見つかっており、こうした超新星が初期宇宙での星や銀河の形成に極めて重要な役割を担っていたことを示唆していると論文は述べている。 (AFPBB News 2013年2月10日)
「宇宙最古の恒星」の年齢が判明 ただし推定誤差8億歳!
宇宙最古の恒星はこれだけだではない。2013年3月には最古とされる恒星「メトシェラ」の年齢を、ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを使って正確に推測した。
「HD 140283」は非常に古い恒星で、聖書に登場する最も長寿な人物「メトシェラ」の名前をとって、「メトシェラ恒星」とも呼ばれる。従来の推定では誕生から160億年とされていたが、米航空宇宙局(NASA)が指摘するように、宇宙そのものの誕生が約138億年前と考えられているため、この推定値では矛盾が生じる。
そこで誕生時期の評価をやり直した結果、およそ145億年(誤差プラスマイナス8億年)という数字が出た。メトシェラ恒星の推定年齢は、誤差を含めれば宇宙の誕生時期や恒星物理学と矛盾しない範囲に収まったことになる。
評価のやり直しに役立ったのが、ハッブル宇宙望遠鏡だ。(地上約600km上空の軌道上を周回する)ハッブルを利用することで、研究チームは恒星と地球との距離を、三角視差(年周視差)を使ってより正確に測定することができた。
三角視差とは、観測者の位置によって恒星の見かけ上の位置が変化することを意味する。地球の公転軌道上の正反対の位置からハッブルが観測したデータを比較することで、恒星の地球からの距離をより正確に推測することができた。この距離を、恒星の本来の明るさに関するデータと組み合わせた結果、恒星の推定年齢が従来の5倍の精度で割りだされた。
Space Telescope Science Instituteのハワード・ボンドによると、この恒星は地球に近く、また明るいため、年齢を正確に推測しやすいという。
NASAによると、この恒星は時速約130万kmで移動しており、いずれは、天の川銀河を取り巻く銀河系のハローと呼ばれる領域に戻っていくという。しかし現在のところは、てんびん座に双眼鏡を向ければこの恒星を観察することができる。(WIRED 2013.3.11)
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