氷にあるXV(15)のタイプ
今年はよく雪が降る。湘南ではこれほどの雪を見ることはほとんどない。雪といえば氷の一つであるが、世の中に熱い氷が存在するのはご存じだろうか?圧力が10 GPa(ギガパスカル)では数百度という高温の氷(VII)が存在する。「VII」というのは7番目を表す。
ふつうの氷は無色透明で六方晶系の結晶を持つ。これを氷Ih という。融点は通常の気圧で摂氏0度。だが、圧力を変えることで相変化を起こし、結晶構造や物理的性質に差のある、さまざまな高圧相氷になることが知られている。
この場合、我々が普段目にする「普通の」氷は「氷I」と呼ばれる。現在のところ、圧力が高い状態において氷(II)から氷(XV)まで発見されている。特に、きわめて高い圧力下では、水素結合が縮んで水分子の配列が変わる。このように様々な相が存在することを多形という。
今回、岡山大学の研究チームは、コンピューターシミュレーションによって、高温高圧での氷が融ける新しいメカニズムを世界で初めて発見した。
3 万気圧以上の高圧で生じる氷(氷VII)は、融点がいまだに確定しておらず、その融解のしかたについても不明だった。
同研究グループでは2008 年に、コンピューターシミュレーションによって、氷VII が融ける際にプラスチック氷と呼ばれる中間状態を経ることを明らかにしていたが、本研究では、氷VII からプラスチック氷への相転移をさらに詳しく調べることで、この相転移において臨界現象と呼ばれる異常性が現れることが見いだされた。
臨界現象とは、臨界点で起こる特異な現象のこと。臨界現象は超流動や超伝導などのさまざまな物理現象にも関与する。臨界点とは、水で言えば、氷から水に相転移する摂氏0度や、水から蒸気に相転移する(大気圧の下での)摂氏100度が臨界点。
核分裂反応では、核分裂物質の濃度を徐々に大きくしていった場合に連鎖反応が永続的に持続するようになる(これも相転移)ドンピシャの濃度が、臨界点。臨界点では、2つの相の性質が融合したような、とても特異な振る舞いをする。氷VIIではどんな臨界現象がみられるのだろうか?
岡山大、高温高圧で氷が融ける新しいメカニズムを発見
岡山大学は2月13日、高温高圧で氷が融ける新しいメカニズムを発見したと発表した。
水は身近な物質だが、4℃で密度が最大になる、固体のほうが液体よりも密度が低いために氷が水に浮く、といった変わった性質をたくさん持つ物質として知られている。
一方、臨界現象では一般に、熱容量が非常に大きくなったり、音速がゼロになるなど、物性にさまざまな異常が現れることが知られているが、そうした臨界現象は気液臨界点以外では観察されないと、これまでは考えられてきた。中でも3万気圧以上の高圧で生じる氷「氷VII」は、融点がいまだに確定しておらず、その融解のしかたについても不明となっていた。
研究グループはこれまでの研究として、コンピューターシミュレーションによって、氷VIIが融ける際に「プラスチック氷」と呼ばれる中間状態を経ることを明らかにしていたが、今回、さらに詳細なシミュレーションを行った結果、氷VIIからプラスチック氷への相転移において臨界現象と呼ばれる異常性が現れることが見いだされたという。
なお今回の発見について研究グループでは、水の持つ、また別の変わった一面を示すもので、氷VIIの融点を確定するヒントを与えるとともに、氷VIIの融点付近で新たに異常な性質がいくつも見つかる可能性を示しており、惑星や衛星の地質や気象を、より正確に理解し予測するのに役立つことが期待されるとコメントしている。
同成果は、同大大学院自然科学研究科大学院生(博士後期課程)の樋本和大氏、同研究科理論化学研究室の松本正和准教授、田中秀樹教授らによるもの。詳細は、英国王立化学協会の国際科学雑誌「Physical Chemistry Chemical Physics」オンライン版に掲載された。(マイナビニュース:高温高圧で「熱い氷」が溶けるメカニズム)
「熱い氷」がある世界:超高圧で「第15相の氷」を生成
氷には多数の結晶体があり、超高圧であれば「数百度の氷」も存在する。これまで存在を予測されながら唯一確認されていなかった「XV相」の氷が、実験室環境で初めて生成された。
安定した氷の「相」として、予測されながら唯一確認されていなかった「XV相」の氷と呼ばれるものが、このほど初めて実験室で生成された。
氷の相とは、水分子がどれだけ緊密に、どのような構造で配列されているかに基づいて氷を分類したものだ。これらは発見順に命名されている。今回のXV相の氷の発見により、これまでに確認された氷の形は全部で16になった(「I相」の氷には2種類ある)。研究者らはかねてからXV相の氷の存在を予言していたが、これまで確認されていなかった。
ただし、地球上で見られる氷のほとんどは、I相の氷のうち「Ih相」と呼ばれるものだ。hは六角形の「六方晶」を表すhexagonalの頭文字で、雪の結晶が六角形なのはこのためだ。
「われわれは、水の相図から疑問符を取り除いた」と、英オックスフォード大学のChristoph Salzmann博士は語る。相図(状態図、phase diagram)とは、任意の気圧と温度のときに分子がどのような振る舞いをするか図示したものだ。
Salzmann博士は、9月2日(米国時間)付で『Physical Review Letters』誌のオンライン版に掲載された論文の共著者の1人だ。
未確認だったXV相の氷を生成するため、Salzmann博士のチームは、別の「VI相」の氷の温度を下げていった。温度を130ケルビン(摂氏約マイナス143度)まで下げ、気圧を1ギガパスカル(約1万気圧)に保ったところで、VI相の氷の中の無秩序な水素原子の結びつきが、突如として、規則正しい緊密な構造になり、XV相の氷が生成された。今回発見されたXV相の氷に比べれば、地球上の通常の氷など、てんでグスグスということになる。
従来の予測では、XV相の氷は強誘電体、すなわち電荷を伝えうるものと考えられていた。氷にこのような特性があれば、惑星の地形に関わる出来事の際に、興味深い影響を及ぼしたかもしれないとSalzmann博士は言う。だが実際にできたXV相の氷では、電荷がすべて無効になるような形で水分子が配列されていた。
XV相の氷は高圧・低温の環境で安定するため、それが存在できるのは宇宙のどこか――氷に覆われた惑星なり衛星なりの地中深くとか――だろうとSalzmann博士は語る。地球上では、XV相の氷が安定した状態を保てるほど高圧の環境は、同時に超高温にもなってしまうので、XV相の氷は存在しえない、と同博士は言う。
なお、氷の相と言えば、カート・ボネガットのSF小説『猫のゆりかご』[邦訳早川書房刊]に登場する、[文明の破壊につながる新開発の氷]「アイス・ナイン」が有名だ。この小説は、実際の「IX相の氷」の発見以前に書かれたもので、アイス・ナインの性質はIX相の氷とは一致していない。[この小説が出版された1963年には、氷の相が8種類までしか知られていなかった。
アイス・ナインは常温で固体だったが、IX相の氷は、今回のXV相の氷と同様、高圧・低温の環境でしか存在しえない。(2009.9.15 TUE WIRED 「熱い氷」がある世界!超高圧で第XV相の氷発見)
身近で不思議な「氷」
氷はふつう無色透明で六方晶系の結晶を持つ。融点は通常の気圧で摂氏0度。ただし、圧力を変えることで相変化を起こし、結晶構造や物理的性質に差がある、さまざまな高圧相氷になることが知られている。この場合、我々が普段目にする「普通の」氷は「氷I」と呼ばれる。
現在のところ、圧力が高い状態において氷IIから氷XVまで発見されている。特に、きわめて高い圧力下では、水素結合が縮んで水分子の配列が変わる。このように様々な相が存在することを多形という。
氷は特異的に凝固熱、融解熱が大きい。例えば融解するときに、潜熱として1キログラムあたり約 80 kcal (333.5 kJ) の熱を周囲から奪う。これは同量の水を0℃から80℃まで温めることができるほどの熱量である。
雪を食べると体力を消耗するとして、寒地では(特に遭難時)禁忌とされている。また、氷は圧力により界面が融解する性質がある。
これは後述する通り、氷が水に比べて密度が低い事に由来する。スケート・スキー・カーリング・そりなどはこれらの性質を活かしている。
体積通常気圧において凍る際は体積が約11分の1増加する。すなわち、比重が0.9168 と小さくなり、水に浮く。物質は温度が低くなるほど分子の振動が小さくなるため、通常であれば温度が低くなるほど密度は大きくなり、従って気相よりも液相、液相よりも固相のほうが密度が大きい。このように固相の方が液相よりも密度が低い物質は非常に珍しい。
これは液相の水分子が水素結合で強固に結びついており、固相の場合よりも分子間の距離が小さい事が原因である。また、密閉された状態で凍ると周囲の物質を押し出し、時に破壊する。
例えば岩の隙間に水が入り込んで氷になると、岩を破壊する。冬季の寒冷地では水道管の破裂を防ぐため、夜間は水抜栓を用いて水を冷気の及ばない地中に落とし、凍結を防ぐ。
清涼飲料水類の缶にも「凍らせないでください」という注意書きが書かれている。不純物液体が固体になるとき、溶解している物質は結晶構造に加わらずに濃縮される。冷蔵庫などで氷を作ると、内部に白く気泡が残されるのはこのためで、気泡中には、溶けていた空気(二酸化炭素やその他不純物)が閉じ込められている。
一方、透明な部分は不純物が少ない、純度が高い水になっている。透明な氷を作るためには、なるべく純粋な水をゆっくり凍らせる必要がある。一般に、一度煮沸して気体を追い出したり、大部分が凍結した段階で不純物が集まった水の部分を捨てるなどの方法が取られる(濃縮された方に用がある場合は、凍結濃縮法と呼ばれる)。
水の氷は、圧力を変えることで相変化を起こし、さまざまな高圧相氷になる。図は縦軸に温度(摂氏と絶対温度)、横軸に圧力(GPa:1 GPaは大気圧の1万倍)。例えば、10GPaでは数百度という高温の氷VIIが存在する。(Wikipedia: 氷)
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