ハイブリッドカーの利点
 燃費の良いハイブリッドカー(Hybrid car)が人気だ。街を走っている車を見ても、フィットやプリウスの数が多くなっているのがわかる。

 最近では値段もお手頃で、一般庶民でも乗りやすくなってきた。ガソリン車では月に1・2回は満タンにするところ、ハイブリッド車では、2~3ヶ月に1回で済むのが魅力だ。

 ハイブリッドカーは、エンジンと電気モーターの2つの動力源を持つ自動車。略称はHV (Hybrid Vehicle)。ハイブリッドカーはエンジンと電気モーターの2つの動力源を持ち、車種によって違いはあるものの、走行条件によって、モーターのみで走行、エンジンのみで走行、モーターとエンジンを同時に使用して走行する。


 ガソリンでも電気でも、バランスよく走行できる技術は、よくできている。ところがこの技術、クルマだけが持つシステムではなかった。

 法政大学の曽和義幸(そわ・よしゆき)専任講師らが、大腸菌のべん毛を水素イオンとナトリウムイオンの両方で動かすことに、初めて成功し、2月17日の米国科学アカデミー紀要オンライン版で発表した。

 大腸菌のべん毛モーターが実際のモーターに似た構造を持つことはこれまでの研究で解析されている。回転のエネルギーは、細胞外から流れ込む水素やナトリウムのイオンの流れを使っている。曽和講師らは、大腸菌にナトリウムイオンチャンネルの遺伝子を組み込み、水素イオンチャンネルと両方を持つように遺伝子を改変した。

 本来の水素イオンに加えて、ナトリウムのイオンも利用できる「ハイブリッドモーター」を作り出した。このハイブリッドが動くときには、それぞれのチャンネルが細胞外の水素とナトリウムのイオンを細胞内に流し込んで回転していることを確かめた。両方のチャンネルで回転力の特性は異なるが、同時に作用する際は、互いに干渉することなく、力を合わせて加算的に作用していた。


 高性能ナノマシン
 成果は、法政大 生命科学部の曽和義幸 専任講師、名大理学研究科の本間道夫教授、東北大 多元物質科学研究所の石島秋彦教授、オックスフォード大のリチャード・ベリー博士らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間2月17日付けで米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。

 大腸菌を含む多くのバクテリアは、細胞表層から突き出る細長くらせん状の「べん毛繊維」をスクリューのように回転させて水中を泳ぎ、よりよい環境へと移動する。べん毛の回転は、その根元の細胞膜を貫く形で埋まっている、直径が451nmのべん毛モータによって駆動される。

 大腸菌べん毛モータは、毎分約2万回転という、F1エンジンにも匹敵する高速駆動をしながら、瞬時に回転方向を切り替え、100%に近い効率でエネルギー変換することができる、人類の技術ではまだ実現できない高性能なナノマシンだ。


 H+,Na+イオン両方が燃料
 ところが、べん毛モータの構造を見ると、意外にも人工モータと共通性が見られるという。つまり、べん毛繊維へとつながる「回転子」と、その周囲を取り囲むように配置された約10個の「固定子」から構成されている点だ。ただ、回転のためのエネルギー源は電流(電子の流れ)ではなく、水素イオンまたはナトリウムイオンの流れだ。固定子と回転子の間でイオン流から得られるエネルギーを回転力へと変換する仕組みとなっているのである。

 大腸菌のべん毛モータは水素イオンのみを通過させる固定子「MotAMotB」を持つ。エネルギー変換機構の鍵となる固定子に関する研究は精力的に行われている。中でも特に興味深い成果とされるのが、大腸菌べん毛モータの回転子と相互作用してナトリウムイオンで駆動できるように遺伝子改変された固定子「PomAPotB」だ。

 今回の研究では、大腸菌が本来持つ水素イオン固定子のMotAMotBと遺伝子改変ナトリウムイオン固定子のPomAPotBを、大腸菌べん毛モータ回転子と同時に相互作用させられるかが試された。モータ1個の回転が観察された結果、水素イオン、ナトリウムイオンの両方のエネルギー源を利用して回転するハイブリッドエネルギー型モータとして機能することが示されたのである。また、このモータは周囲の環境に応じて、柔軟にパフォーマンスを制御していることが明らかとなった。


 高性能ハイブリッド
 さらに詳しい解析により、水素イオン固定子とナトリウムイオン固定子の発生する回転力特性は異なるものの、それらが同時に相互作用する際はお互いを干渉することなく加算的に機能する、柔軟な機構を備えていることも判明。さらに、ナトリウムイオンの濃度が高い時はナトリウムイオン固定子の方が大きな回転力を発生させ、逆にナトリウムイオンの濃度が低い時は水素イオン固定子の方が大きな回転力を発生することもわかっている。

 そして、外環境のナトリウムイオン濃度に依存して、モータ内の固定子がダイナミックに入れ替わって再配置し、モータの回転出力が自動的に最適化されることもわかった。このように入力エネルギーに応じて、柔軟にシステムのパフォーマンスを最適化させる仕組みは、将来的に人工的なナノマシンを設計する上で、重要な知見を与えてくれるものと期待される。

 また、今回の研究では大腸菌内で機能するハイブリッドモータを人工的に作成したが、自然界には複数種類の固定子を持つバクテリアが存在する。これらのバクテリアのべん毛モータも環境に依存してモータ出力を調節しているのではないかと予想され、バクテリアの生き残り戦略を考察する上でも重要な結果と考えられる。


 ナノマシンとは何か?
 ナノマシン(Nanomachine)は、0.1~100nmサイズの機械装置を意味する概念。ナノとは10-9を意味する接頭辞であるため、原義では細菌や細胞よりもひとまわり小さいウイルス(10nm~100nm)サイズの機械といえる。広義ではもう少し大きなサイズの、目に見えない程度の微生物サイズの機械装置も含む。ナノ・マシンは機械的動作を重視しているが、微小な回路形成など機械的動作を含まないより一般的な技術をナノテクノロジーと呼ぶ。

 ナノマシンの概念を最初に取り上げたのは米国の物理学者リチャード・ファインマンである。彼は、1959年にカリフォルニア工科大学において「原子レベルには発展の余地がある(There's Plenty of Room at the Bottom)」と題する講演を行った。

 ファインマンの考え方は、一般的な工具一式を用いて、1/4サイズの工具一式を作り、加工した工具を使って1/16サイズの工具を作り、という作業を分子レベルに至るまで続けるというものであり、トップダウン的といえる。ファインマンは、ブリタニカ百科事典全巻を針の先に収めることや、原子の並べ替えなどを目標に挙げていた。

 だが、現在ではファインマンの手法はそのままの形で用いることができないことが分かっている。なぜなら、ナノサイズとなると、通常の機械装置で重要な働きを示す重力や摩擦力の影響が薄れる一方、表面張力・ファン・デル・ワールス力、さらに量子力学的効果などが発生するため、同じ縮尺の機械では動作しなくなるからである。そのため、ナノマシンの開発にはナノサイズを対象とする新しい機械工学自体をまず開発しなければならない。

 1974年にナノテクノロジーという造語を作ったのは、東京理科大学の谷口紀男である。谷口はナノメートル・サイズの機械部品について論じた。

 1980年代に入り、キム・エリック・ドレクスラーがナノマシンの概念を拡張した。

 1986年の著書「Engines of Creation: The Coming Era of Nanotechnology」(邦訳、創造する機械-ナノテクノロジー)では、「石炭とダイヤモンド、砂(シリコン)とコンピュータ・チップ、ガンと正常組織の違いは原子の配列だけであり、配列の違いが価値を生む」として、ナノマシンによるバラ色の未来を描いた。ドレクスラーのナノマシンでは部品の形状を取った単一の分子の組み合わせを想定している。

 2000年1月には、ビル・クリントン米大統領が国家的なナノ・テクノロジープロジェクトの立ち上げを提唱。ファインマンの講演を発展し、米国議会図書館の蔵書を角砂糖1個分の容積に収めること、分子機械によるガン細胞の検出などを目標とした。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:ナノマシン マイナビニュース:大腸菌のハイブリッドモーター


生体ナノマシンの分子設計 (シリーズ・ニューバイオフィジックスII 9)
クリエーター情報なし
共立出版
HYBRID+(5) (双葉社スーパームック)
クリエーター情報なし
双葉社

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please