ノーベル化学賞に超高解像顕微鏡の米独の3氏

 スウェーデン王立科学アカデミーは10月8日、2014年のノーベル化学賞を、超高解像蛍光顕微鏡を開発した米国のエリック・べツィグ博士(54)、ドイツのシュテファン・ヘル博士(51)、米国のウィリアム・モーナー博士(61)の3人に授与すると発表した。授賞理由は「超高解像蛍光顕微鏡の開発」。従来の光学顕微鏡の解像度の限界を超えて、タンパク質などの生体分子までも観察できるようにした画期的な顕微鏡の開発が評価された。

 光学顕微鏡はミクロの世界を観察する際、光の回折限界によって制限され、光の波長の半分程度の0.2μm(1μmは千分の1ミリ)より小さいものは見えなかった。3人は技術革新でこの限界を突破して、より小さいナノスケールの世界を観察できるようにした。

 新技術は2つある。一つはヘル博士が2000年に開発したSTED(誘導放出制御)顕微鏡だ。蛍光分子が励起された直後に、蛍光より長い波長のSTED光が当たると、蛍光分子が脱励起する現象を利用して、光の回折限界より細かい範囲で蛍光を放出させて観察する。


 もう一つの新技術は、べツィグ、モーナーの両博士が別々に開発し、2006年に実用化された1分子顕微鏡だ。分子1個を見る単一分子計測技術で、補償光学法も応用して光の乱反射を防ぎ、ナノレベルの観察ができるようにした。

 これらの新技術で、生きた細胞の中で個々の分子の動きが見えるようになり、パーキンソン病やアルツハイマー病の脳神経細胞の分子を捉えるほか、受精卵の中のタンパク質ひとつひとつまで追跡できるようになり、医学生物学に革命的な影響を与えつつある。

 エリック・べツィグ氏は1960年米国生まれ。コーネル大学で学位を取得したあと、ハワードヒューズ医学研究所のグループリーダー。シュテファン・ヘル氏は1962年ルーマニア生まれで、ドイツ国籍、ハイデルベルグ大学で学位を取得し、マックスプランク生物物理化学研究所長。ウィリアム・モーナー氏は1953年米国生まれ。コーネル大学で学位を取ってから、スタンフォード大学教授。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、3氏に賞金計800万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)が贈られる。(サイエンスポータル)

 ノーベル化学賞、米独3氏に 高性能顕微鏡を開発

 学校教育などでも使われている光学顕微鏡は、光の性質上、髪の毛の太さの500分の1ほどにあたる1万分の2ミリより小さいものを見ることができない。

 このため、細胞内で重要な働きをするたんぱく質などの分子を観察するのは難しい。電子顕微鏡を使えばもっと小さなものが見えるが、細胞を凍らせるなどの準備が必要で、生きたまま観察するのは難しかった。

 ヘル氏は2000年、特定の波長のレーザー光をうまく組み合わせて当てることで、ナノメートル(100万分の1ミリ)単位の小さな分子を光らせて観察する顕微鏡を開発した。

 ベッチグ、モーナー両氏はそれぞれ、レーザー光を個々の分子に当てて光らせる技術を用いて、動きや働きを調べる「1分子顕微鏡」を開発。ベッチグ氏は2006年、この技術で細胞内の分子を観察することに成功した。

 産業技術総合研究所の加藤薫・主任研究員(生物物理学)は「ヘル氏の顕微鏡を用いると、例えばがん細胞が転移する際、たんぱく質が作る構造が変化するのを、分子レベルで生きたまま見ることができるようになった。本格的に使われ出したのはこの2、3年だが、今後、さまざまな病気の解明の貢献に期待できる」と話した。

 この分野では、柳田敏雄・大阪大特任教授(67)が、筋肉細胞などにあるたんぱく質の1分子を顕微鏡で観察し、1995年、英科学誌ネイチャーで発表している。今回の化学賞の解説資料でも、柳田さんの業績が紹介された。

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