マグロは恒温動物?

 変温動物(Poikilotherm)とは、外部の温度により体温が変化する動物のことをさす。冷血動物とも呼ばれる。恒温動物とは反対の動物だ。

 変温動物は必要がないときは外気温と同程度の体温でいるため、エネルギー消費はかなり少ない。また、体温が多少変動しても正常な活動ができる能力があるということでもある。これに対して、多くの恒温動物の体温は下げられず、常に安定した体温を維持し続ける。それによって行動能力を高く維持できるが多量の餌を消費するリスクを負う。

 変温動物には爬虫類、魚類や昆虫などが代表として挙げられるが、変温動物と恒温動物の体温調節能力は連続的・段階的であり、厳密に2分類できるものではない。たとえばミツバチでは密集して飛翔筋を運動させることで熱を発生させ、巣の温度を調節することでほぼ一定の体温を保つことが知られている。


 魚類でも体温の高い動物がいる。マグロやカジキ等が奇網と呼ばれる特殊な血管構造によって高い体温と運動能力を確保している。これらは恒温動物とされることも変温動物とされることもある。また、ハチドリ、カッコウ、ナマケモノのようにほ乳類や鳥類に属する生物でも必ずしも恒温動物とはいえない体温調節をする物がある。

 今回、水温よりも5~15℃ほど高い体温を維持しているマグロ類や一部のサメはやはり運動能力が高く、同サイズの普通の魚に比べ、2.7倍速いスピードで泳ぐことが判明した。国立極地研究所が動物の体にセンサーなどを取り付けるバイオロギング技術を用いて、魚類46種のスピードを比較して判明した。

 マグロやサメなど体温の高い魚は普通の魚の2.7倍速く泳ぐ

 国立極地研究所(極地研)は4月21日、マグロ類やホオジロザメなど体温の高い魚は、遊泳スピードおよび回遊距離の長さがペンギンやクジラなどの海生哺乳類に匹敵すると発表した。

 同成果は極地研の渡辺佑基 助教を中心とする研究グループによるもので、「米国科学アカデミー紀要」のオンライン版に掲載された。

 ほとんどの魚は変温動物で、体温は周囲の水温と同じだが、マグロ類や一部のサメは、水温よりも5~15℃ほど高い体温を維持していることが知られている。しかし、どのような生存上のメリットによってそうした特長を有するようになったかはわかっていなかった。高い体温は筋力の出力を上げる効果があることから、より速いスピードを維持するためだと考えられているが、この仮説はこれまで検証されていなかった。

 同研究グループが、動物の体にセンサーなどを取り付けるバイオロギング技術を用いて、魚類46種のスピードを比較したところ、体温の高い魚は同サイズの普通の魚に比べ、2.7倍速いスピードで泳ぐことが判明した。また、年間の回遊距離では、体温の高い魚は普通の魚の2.5倍回遊距離が長かった。

 大規模な回遊ができることで、エサの減少など季節的な環境の変化に柔軟に対応でき、生存に有利に働くと考えられる。これは、大規模回遊のメリットが、高いエネルギー要求というデメリットを上回ったため、高い体温を持つ魚類へと進化たことを示唆しているとされる。

 また、高い体温の魚は遊泳スピード・回遊距離においてペンギン、アザラシ、クジラなどの恒温動物に近かったため、高い体温をもつ動物ほど速く泳ぎ、長距離を回遊するという今回の発見は、魚類、鳥類、哺乳類などを超えて幅広く当てはまる自然の法則であると考えられるという。

 体温が高い動物といえば?

 変温動物と思われた魚類にも恒温動物がいるのは興味深い。では、体温が高い動物とは何だろうか?

 体温の高い動物は鳥類。中でも最も高いのがアヒルで42℃前後ある。次いでカッコウ、鳩と言われている。鳥は空を飛ぶとき多くのエネルギーが必要で瞬時に飛び立たないといけないときもあり、その為常に体温を高くしてアイドリングの状態にしておく訳だ。よく鳩が公園の噴水などで水浴びをしている光景を見るのはその為でやはり暑いから。

 日常的に鳩をつかんでいるレースマンは、鳥の体温が高いことを経験的によく知っている。鳥の体温は一般に40~42度の範囲にあり、多くの哺乳類より数度高い。鳥の体温が高いのは、これによって新陳代謝を促進させて、空を飛ぶという激しい運動に伴う大きなエネルギーを得るためだ。

 また、自動車で言えば、いつでもただちに高速回転できるように常時アイドリング状態を保つ役割もある。したがって、鳥にとって高い体温は欠くことのできない機能だ。

 鳥類は、哺乳類と同じように体内で自ら熱を生産し、体温調節をする恒温動物である。恒温動物は外に熱が逃げないような機構を備えているが、鳥類の場合、羽毛がその働きにおいて重要な役割を担っている。

 恒温性の長所は活動を一定に持続できることにあるが、エネルギー消費量も多く、それに見合ったエネルギー、つまり食糧をたくさん必要とする。鳥類の場合、体が小さいために大きな動物に比べて熱放散の割合が大きく、しかも哺乳類より高い体温を維持しなければならないので、体重の割りにたくさん食べなければならない。

 恒温性が抱卵と育雛を生む

 鳥は恒温性を獲得したことによって、ほかの動物とは異なる繁殖形態を持つにいたった。鳥類は、哺乳類のように子を体内で育て、ある程度大きくなってから産むという方向には進化しなかった。大きな子を体に抱えたままでは、体が重すぎてうまく飛ぶことができないからである。

 そのため、鳥類はほかの多くの動物と同様、卵を産むという形態を選んだ。しかし、ほかの動物と違って、卵をそのまま放置することはせず、体温が一定である自らの体で卵を温める抱卵と、孵化したヒナを育てる育雛という形態を考えついたのである。その結果、産卵と育雛の段階で外敵からの安全性を高めることが可能となった。一般に鳥類の産む卵の数が爬虫類に比べて少ないのは、この安全性と密接な関係があると思われる。

 鳥の足はラジエーター

 恒温動物は、体温を下げる方法として一般に水分の蒸発方式をとっている。この場合、汗腺による体表からの蒸発方式と、パンティング(あえぎ呼吸)による蒸発方式がある。汗腺のない鳥や、犬のように全身をびっしりと毛でおおわれた哺乳類は、パンティングによって熱を放散する。レースマンには、鳥のパンティングはおなじみの行動だ。

 パンティングでは口をあけて浅く早い呼吸を行ない、気道からの蒸発をさかんにして体を冷やす。パンティングのすぐれている点は、発汗と違って皮膚温をそのまま維持しながら、体の内部からの熱の発散ができることにある。

 鳥はパンティング以外にも体温を下げるさまざまな機構を備えている。例えば羽毛におおわれていない足の表面温度はぐっと低く、コウノトリの場合、体温40度に対して足は15度くらい。このことは、足は放熱に最適の場所を提供していることを示している。筆者の経験でも、鳩の撮影のため、鳩を撮影ボックスに入れてしばらくすると、ボックス内に熱がこもって鳩がパンティングを始めることがある。その場合、足を水で冷やしてやると少しの間はパンティングが収まる。

 高い気温や飛行によって体温が上昇したとき、鳥は足の血流を多くし、それを外気で冷やして体温を下げる。飛行中の代謝率は静止時の約10倍に達し、体温は約4度上昇する。したがって、飛行中の体温発散は不可欠で、セグロカモメの場合、飛行中の足に流れる血液量は静止時の3・5倍にもなる。

 鳥はほかにも体温を下げるための生理的・行動的適応を行なっているが、それらのシステムは十分には解明されていない。

 マグロの突進遊泳速度は90~100キロ?

 泳ぐ速度の測定は難しい。海の魚には広く回遊するマグロのような魚とカレイなどのようにあまり移動しない魚がいる。高速で泳ぎ回る魚の筋肉は赤身で、あまり運動しない魚が白身なのはよく知られている。

 マグロは「泳ぐのを止めると死んでしまう」と言われているが、これはなぜか?家庭で観賞用として飼われることが多い金魚は泳いでいない状態で口をパクパク動かし、水を口からエラに流して呼吸していますが、マグロにはエラぶたに筋肉がないため、自分で動かすことができない。

 そこでマグロは口を半分開けて泳ぐことで、口からエラに自然に海水が流れて水に含まれている酸素をエラの表面から取り込んでいる。つまり常に泳いでいないと海水がえらに流れないため、窒息して死んでしまうというわけだ。

 窒息しない程度の速度で泳ぎ続けることが必要なマグロですが、マグロはどのくらいのスピードで泳ぐことができるのか? 魚の泳ぐ速度には1秒間にその魚の体長の何倍の距離を泳いだかという「体長倍速度」という速度が用いられる。

 身体が大きくなるほど効率よくエネルギーを利用できるため速度は速くなります。普段、マグロはいくら泳いでも疲れることのない1~2体長/秒で泳いでいるが、エサを追いかけたり、サメなどから追われるときには12~15体長/秒で泳ぐことができるとされている。

 2メートル程度の大型のマグロなら最大で時速90~100で泳ぐことができるという計算になるが、あくまでも1回せいぜい数秒間で、これを30秒間隔で10分間ほど繰り返すことができるくらい。

 謎の多いマグロの生態

 マグロは海の表層から光が届かないと考えられるような深層まで生息している。生息水深が最も深いメバチマグロは網膜にタペータムという組織があって吊り上げた直後に眼が光る。ネコや夜行性の動物の眼にある反射鏡のように光を集める仕組みになっている。

 他の魚類に比べてマグロの視力は0.3から0.5と高い視力を持っていますが、形態視覚よりも運動視覚つまり動態視力が優れているとされている。聴覚についてマグロ類は、他の魚よりも低周波の音に感度がよいとされている。また水中の振動などを感じる「側線」と呼ばれる感覚器官が発達している。群れで遊泳行動している際にぶつからずに泳ぐことができるのはこの器官が発達しているため。

 またサケと同様に優れた回帰本能を持つことでも知られています。クロマグロは沖縄から台湾沖の海域で生まれ、太平洋を渡り、成長して日本近海に戻り、最終的には産卵場である沖縄近海に帰っていく。

 誕生時に僅か3ミリ程度に過ぎない仔魚が生まれた海の記録を持ち続けているのか、あるいは何かほかのシステムがあるのかどうかは現在の研究では明らかになっていない。

参考 マイナビニュース: マグロやサメなど体温の高い魚は2.7倍速く泳ぐ


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