ノーベル物理学賞に梶田隆章さん
今年のノーベル物理学賞の受賞者に、物質のもとになる最も基本的な粒子のひとつ「ニュートリノ」に質量があることを世界で初めて観測によって証明し、「ニュートリノ」には質量がないと考えられてきたそれまでの素粒子物理学の定説を覆した東京大学宇宙線研究所所長の梶田隆章さんが選ばれた。合わせて、カナダのクイーンズ大学の名誉教授、アーサー・マクドナルド氏も選ばれた。
梶田氏は、3種類あるニュートリノが、飛行中に別の種類に変身する性質「ニュートリノ振動」を発見。このニュートリノ振動はニュートリノに質量がある場合だけに起きる。
梶田さんは「この研究は何かすぐ役に立つものではないが、人類の知の地平線を拡大するようなもの。純粋科学にスポットを当ててもらいうれしい」と話した。大村さんの医学生理学賞は人類を失明から救うものだが、梶田さんの研究は宇宙の成り立ちや物質の起源を解明する一歩となる。

しかし、その性質には分からない部分が多く、質量、つまり重さはないと考えられていた。ニュートリノは、直径が1ミリの1000兆分の1以下と極めて小さく、どんな物質でもすり抜けてしまうため観測が非常に困難だった。
その観測を可能にしたのが、カミオカンデやスーパーカミオカンデである。
カミオカンデ・スーパーカミオカンデの活躍
ニュートリノの性質を詳しく調べるため、梶田さんらの研究グループは岐阜県飛騨市の地下1000メートルに設けられた「カミオカンデ」という施設で観測を始めた。この施設は壁一面に取り付けられた高感度のセンサーでニュートリノが水と反応したときに出るわずかな光を捉えることで、ニュートリノの飛んできた方向や時刻などを正確に把握することができる。
「カミオカンデ」での観測の結果、平成元年(1989年)、梶田さんらは太陽から放出されたニュートリノの数が、予想される数の半分程度しか地球に届いていないことを明らかにした。
この成果は、太陽から放出されたニュートリノが、地球まで飛んでくる間に、別の種類のニュートリノに変化している可能性を示唆するもの。
ここで示唆されたニュートリノの種類が変化する現象は「ニュートリノ振動」と呼ばれ、ニュートリノに質量があるときにだけ起きる現象だった。つまり、この現象が実際に起きていることを証明できれば、ニュートリノに質量はないとされてきたそれまでの素粒子物理学の定説を覆すことになるため、世界の注目が集まった。
梶田氏は2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏に師事。東大助教授だった梶田氏は、岐阜県飛騨市神岡町の地下鉱山跡にあるニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」で、大気中で発生する「大気ニュートリノ」を観測。平成10年(1998年)、ニュートリノが質量を持つことの証拠になる「振ニュートリノ振動」を発見した。
その後、つくば市にある高エネルギー加速器研究機構 (KEK) からスーパーカミオカンデに向かってニ ュートリノを発射するK2Kの実験において、ニュートリノの存在確率が変動している状態を直接的に確認し、2004年、質量があることを確実なものとした。
2人の恩師「小柴昌俊氏・戸塚洋二氏」
梶田さんには2人の恩師がいる。鉄腕アトムが好きだった梶田少年は埼玉大理学部を卒業後、物理をさらに研究したいと門をたたいたのが、02年にニュートリノ研究でノーベル賞を受賞した小柴昌俊・東京大特別栄誉教授(89)だった。そこにはもう1人の恩師の戸塚洋二氏がいた。ノーベル賞の有力候補とみられていたが、08年にがんのため66歳でこの世を去った。この遺志を受け継いだのが梶田さんだった。
日本人がノーベル賞を受賞するのは、アメリカ国籍を取得した人を含め、5日に医学・生理学賞の受賞が決まった大村智さんに続いて24人目で、物理学賞の受賞は、去年の赤崎勇さんと天野浩さん、中村修二さんに続いて11人目となる。
梶田さんは、埼玉県東松山市の出身で56歳。昭和56年に埼玉大学理学部を卒業したあと、東京大学大学院で、後にノーベル賞を受賞した小柴昌俊さんの教えを受けた。
平成11年に東京大学宇宙線研究所の教授になり、平成20年からは所長を務めている。
この間、梶田さんは小柴さんらと共に、物質のもとになる最も基本的な粒子である「素粒子」のひとつ「ニュートリノ」の研究を続けた。そして、岐阜県飛騨市神岡町の地下深くに設けられた観測施設「スーパーカミオカンデ」で、大気中から飛来した「ニュートリノ」の様子を詳しく観測することに成功した。
その結果、「ニュートリノ」に質量、つまり「重さ」があることを世界で初めて突き止め、平成10年に開かれた国際学会で発表し、世界的に称賛された。
この研究成果は、「ニュートリノ」には質量がないと考えられてきたそれまでの素粒子物理学の定説を覆すもので、世界の研究者を驚かせた。
梶田さんはこの研究成果で、平成11年に物理学の大きな業績に与えられる「仁科記念賞」を受賞したほか、平成24年には、すべての学術分野の中から特に大きな業績をあげた研究者に贈られる日本学士院賞も受賞している。
日本人がノーベル賞を受賞するのは、アメリカ国籍を取得した人を含め、5日に医学・生理学賞の受賞が決まった大村智さんに続いて24人目で、物理学賞の受賞は、去年の赤崎勇さんと天野浩さん、中村修二さんに続いて11人目となる。
ニュートリノ振動とは?
ニュートリノ振動(neutrino oscillation)は、生成時に決定されたニュートリノのフレーバー(電子、ミューオン、タウ粒子のいずれか)が、後に別のフレーバーとして観測される素粒子物理学での現象。その存在確率はニュートリノが伝搬していく過程で周期的に変化(すなわち振動)する。これはニュートリノが質量を持つことにより起きるとされ、素粒子物理学の標準模型では説明できない。
ニュートリノ振動は、1957年にブルーノ・ポンテコルボによって最初に予測された。これは、K中間子振動(英語版)理論 (Murray Gell-Mann and Abraham Pais, 1955) から類推された。ポンテコルボの理論はニュートリノと反ニュートリノの間で振動するというもので、現在受け入れられているニュートリノがフレーバー間で振動する理論とは異なるものであった。
しかし、その後10年で彼が取り組んだ真空の振動理論の数学的定式化はニュートリノ振動の理論の基礎となった。1962年に坂田昌一・牧二郎・中川昌美によって、フレーバー間で振動する理論が提唱および定式化された。あるフレーバーのニュートリノがニュートリノ振動により他のフレーバーに変換される混合の強さは、ポンテコルボ・牧・中川・坂田行列(英語版)(PMNS行列)によって特定することができる。
1998年にスーパーカミオカンデが大気から降り注ぐニュートリノを観測することによって、この現象が実証された。 2010年5月31日に国際研究実験OPERAを実施する研究チームがCERNの加速器において振動現象をはじめて直接的に確認したと発表。このほかにも次章で示す諸実験が行われている。
ニュートリノ振動が観測されたことにより、ニュートリノの質量をゼロとする標準模型に何らかの修正が必要であることが示された。期待されている新しい理論では、ニュートリノと同じように他のレプトンも振動していることを予測する(荷電レプトン混合現象)。ただし、レプトンの場合はその測定にはさらなる精密さを要求されるため、観測精度を一層高めた今後の研究結果が待たれている。なお、ハドロンについてはクォーク混合により振動は既知の現象である。
アーサー・マクドナルド
アーサー・B・マクドナルド(Arthur "Art" Bruce McDonald、1943年8月29日~)は、カナダの物理学者であり、サドバリー・ニュートリノ観測研究所 (Sudbury Neutrino Observatory Institute) の所長である。彼はオンタリオ州キングストンのクイーンズ大学で素粒子天体物理学の教授 (Gordon and Patricia Gray Chair) も務めている。彼は2015年にノーベル物理学賞を梶田隆章と共同受賞した。
彼はカナダ・ノバスコシア州シドニーに生まれた。1964年に物理学の学士号を、1965年に物理学の修士号を、それぞれ同州のダルハウジー大学で取得し、カリフォルニア工科大学で物理学の博士号を取得した。
マクドナルドは1970年から1982年の間、オタワの北西にあるチョーク・リバー研究所に研究官として勤めた。1982年から1989年の間、プリンストン大学で物理学の教授となった。その後クイーンズ大学に移り、2015年現在は同大学の University Research Chair を務めている。
ニュートリノ振動を発見
ニュートリノが質量を持つか否かは素粒子物理学で長年研究されてきた問題だったが、質量を持つ可能性が1960年代後半から観測実験で示唆されるようになった。というのも、太陽はその理論モデル上、途方もない数のニュートリノを放出すると考えられたが、地球上にいくつかあるニュートリノ観測器は、その理論値より少ない数のニュートリノしか検出しないのが常だからである。
ニュートリノは3種のタイプ(電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノ)で到達するが、太陽からのニュートリノの検出器は主に電子ニュートリノしか検出できないため、「検出できないニュートリノがあるのは、それが変化したか振動して、検出器が殆どあるいは全く検知できないからであろう」というのが長年の推測だった。そうしたニュートリノ振動が実際にあるならば、量子力学の理論上、ニュートリノには質量がなければならない。
2001年8月、サドバリー郊外地下2千メートルの深さにある鉱山に作られたサドバリー・ニュートリノ観測所 (SNO) で、マクドナルド率いる研究チームは、太陽からの電子ニュートリノが実際にミューニュートリノとタウニュートリノへと振動していることを示唆する直接的な観測データを記録した。
SNO の報告は、2001年8月13日に『フィジカル・レビュー・レターズ』誌で掲載され、その重要性は広く認められるところとなった。マクドナルドと戸塚洋二は2007年にベンジャミン・フランクリン・メダルの物理学部門を「ニュートリノという既知の3タイプの素粒子が、充分な長距離を移動するなかで相互に変化し、それらが質量を持つことを示した」という理由で受賞した。
参考 NHK news:ノーベル物理学賞に梶田隆章さん
![]() | ニュートリノで輝く宇宙 ―カミオカンデから始まった物理学の革新 |
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| 日経サイエンス |
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