TPPようやく合意に
日米など12カ国が環太平洋連携協定(TPP)で大筋合意したのを受け、政府はTPP対策として、新市場の開拓、イノベーション(技術革新)の促進、国民の不安払拭という3点の基本方針を決定した。今後、方針に沿って国内対策を検討することになるが、まずは影響や効果を精査し、丁寧に説明してほしい。
TPPが発効すると、参加国間でモノやサービス、情報が自由に往来しやすくなる。世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める最大の自由貿易圏が誕生する。参加国数が増えて経済的な連帯が広がれば、アジア太平洋地域の安定と発展につながることも期待される。
関税が段階的に引き下げられたり撤廃されれば、消費者は食料品などの商品を安く購入でき、輸出業者は参加国向けの輸出がしやすくなるといった利点がある。その一方で、農林水産業者は安い輸入品との激しい競争を余儀なくされる。
コメや麦、牛肉・豚肉など重要5項目について、政府は影響を最小限にとどめるための方針も掲げた。今回の合意は、「例外なき関税撤廃」の対象から除外すべきとの衆参の委員会決議に沿ったものではあるが、影響を被る生産者が安心して経営できるよう具体策を早急にまとめるべきだ。
日本の農業は、生産者の高齢化や後継者不足に直面している。TPPをきっかけに、生産性や競争力の高い経営体質に転換できるような後押しが必要だ。担い手の育成や農地集約の促進、販路拡大などを前進させる機会にしていくべきである。
スマホで農作物の生育・環境関連データ監視
今回、そんな農業経営を手助けするソフトが完成した。
農作物の生育と環境に関するデータを収集し、スマートフォンやパソコンで簡単に農地の様子を知ることができるIoT(モノのインターネット)機器を売り出す、と日立製作所とソフトバンクグループのPSソリューションズ株式会社が7日発表した。
「e-kakashi」(いいかかし)と名付けられた新製品は、農地に設置して大気温度・湿度、日射量、土壌内の温度、水分量などを計測する子機と、それらのデータを受信する通信モジュールを内蔵した親機から成る。収集されたデータはクラウド上で管理され、利用者は栽培時に必要となるさまざまなデータを簡単に得られるほか、収集データを栽培指導や農作業の品質管理・効率化に役立てることができる、と両社は言っている。
2008年から各地の自治体や農協、研究機関など全国15カ所で行った野外実証で寄せられた現場の要望を取り入れ、栽培現場という過酷な環境下での安定稼働という課題も克服した、としている。
農業経営に新技術
交渉が難航したものの大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)で、日本の食を支える農業にも大きな変革が迫られるとみられている。総合科学技術・イノベーション会議が主導して昨年から始まった戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)10課題の一つ「次世代農林水産業創造技術(アグリイノベーション創出)研究開発計画」にも、「ITなどの先端技術により『農作業の姿』の変革を目指す」という目的が掲げられている。
目指しているのは、ロボット技術やICT(情報通信技術)を活用した超省力生産、高品質生産を実現する「スマート農業」、「知識・情報総合産業」と呼べる農業だ。「人工衛星やセンシングの利用によって得た詳細な土壌状況、気象情報、生体情報などを基に自動化された精密な作業管理により行い、さまざまな情報を活用して自然環境などの変化に的確に対応する」姿を描いている。
今年3月閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」でも、日本の強みであるロボット技術やICTなどの先端技術を応用した技術開発を進めることや、「スマート農業」の実現に向けた取り組みの推進が盛り込まれている。
農林水産省は8日、TPPの大筋合意を受け、TPP発効後に関税が撤廃される農林水産品と撤廃時期を公表した。発効後即時撤廃されるブドウなど関税撤廃の対象は、現在輸入関税がかけられている農林水産品834品のうち、約半数に及ぶ。
農業IoT「e-kakashi®」で日本の農業資産を次のステージへ
ソフトバンクグループであるPSソリューションズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:鬼頭 周/以下、PSソリューションズ)は、このたび、可視化した農業データを活用して栽培手法や知見を共有する農業IoTソリューション「e-kakashi」(いいかかし)を、国内の営農支援を行う自治体・農業協同組合・企業様等へ10月14日より販売開始する。
国内の農業現場では、高齢化による人材不足、地球規模の気候変動、農業分野における市場変化などにより、確実な技術継承、安定した生産・品質管理、産地ブランドを確立していくニーズが高まっている。e-kakashiは勘と経験による栽培からデータに基づく科学的農業へのシフトを目指し、2008年より各地の自治体や農業協同組合、研究機関など、全国15箇所においてフィールド実証を行い、商用化を目指してきた。販売開始においては、フィールド実証における現場のご要望を取り入れ、より進化した本格的なソリューションとしてe-kakashiを提供する。
なお、PSソリューションズは、e-kakashiの開発に際して、IoT分野を成長事業の一つとして注力する株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原敏昭/以下、日立)を開発パートナーとして選定し、共同で事業開発を推進した。日立は、農業フィールドに適したセンサーネットワークの機器開発からクラウド環境の提供までトータルにe-kakashiを支援している。
「異常気象が頻発する現在の地球環境下において、環境負荷を低減し、生産効率を高め、食の安全性を高め更に美味しくする。」現代の農業は非常に高度な要求に応えていくことを求められている。このような農業シーンの様々な課題に貢献できるよう、私たちe-kakashiはIoT、エレクトロニクスの分野から今後も更なるイノベーションに取り組んでいく。
e-kakashiは、「カンタン」「手軽」「面白い」をコンセプトに開発された農業IoTソリューションです。田畑などの圃場(ほじょう)にセンサーネットワークを張り巡らせ環境情報や生育情報を収集し、営農支援向けに効果的に活用できえる。
また、圃場の温湿度や日射量、土壌内の温度や水分量、CO2などを計測できる各種センサーを搭載する子機からデータを収集し、通信モジュールを内蔵した親機を経由して、クラウド上で収集データを管理する。
ユーザーは、PCやタブレット、スマートフォンなどから、栽培時に必要となる様々なデータを参照できるほか、収集データは栽培指導や農作業の品質管理・効率化に役立てることができる。
e-kakashiの特長
1.優れた操作性
「e-kakashiはスイッチ一つで動作するカンタン設計。」煩わしい設定やインストールは不要だ。Webアプリケーションはウィジェット表示を中心とした直感的で見やすい。
2.高い耐久性
「栽培現場という過酷な環境下で、安定したセンサーネットワークを稼働させ続ける。」一見簡単に思えるこの難題を克服した商品設計、更に日立の厳しい試験をクリアした機器だ。
3.柔軟な拡張機能
e-kakashiは現在5種類のセンサーが既に接続可能。拡張ポートを搭載済みのため、今後も随時センサーのラインアップを追加可能だ。また、クラウドに蓄積されたデータはAPI機能により、ユーザー独自のソフトウェアやシステム連携を可能とする拡張機能を実装している。
参考 サイエンスポータル:スマホで農作物の生育・環境関連データ監視IoT機器
日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書) | |
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講談社 |
JAが変われば日本の農業は強くなる (携書148) | |
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ディスカヴァー・トゥエンティワン |
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