もはや宇宙に惑星は無数に存在する
最近は第二の地球が発見されたというニュースが流れても珍しくはなくなった。ハビタブルゾーン、つまり恒星から適度な距離がある、岩石型の惑星ならばそう呼ばれているようだ。今回は赤色矮星の近くに3つの惑星が発見された。
こうした系外惑星の探索に活躍してるのがNASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」で、これまでに発見してきた惑星候補のうち、新たに1284個が系外惑星であると確認された。ハビタブルゾーンに位置するものも9個含まれているという。
ケプラーは、惑星が主星の前を通り過ぎる際に主星の明るさがわずかに減少する「トランジット」現象をとらえるという手法で惑星探しを行ってきた。今月9日に水星の太陽面通過が起こったが、このときにほんの少しだけ暗くなった太陽を観測して水星を見つけるような方法だ。
ケプラー以外の人工衛星や地上の天体望遠鏡による観測で見つかったものも含めると、今日までに発見された系外惑星の総数は3200個以上あり、そのうち2300個以上がケプラーによる発見。ケプラーが打ち上げられるまでは、系外惑星がありふれた存在なのか稀有な存在なのかもわかっていなかった。しかし今や、ケプラーと研究コミュニティのおかげで、恒星よりも惑星の数の方が上回っている可能性すらあることがわかってきた。
赤色矮星に「第二の地球」発見
しかし、ハビタブルゾーンにある惑星でもさまざまなタイプがある。今回、新たに発見された3つの「第二の地球」は、南米のチリにある光学望遠鏡を使って、観測可能な数十個の赤色矮星を追跡調査したことで実現した。
これらの惑星は、地球から39光年離れた、太陽より小さく暗い赤色矮星と呼ばれる恒星のそばを回っている。その軌道が矮星と適度な距離にあるため、表面に液体の水が存在すると言われている。生命体が発見される可能性がこれまでで最も高いという。
発見の意義について、ベルギー・リエージュ大学の天体物理学者であるマイケル・ギロン氏は、「太陽系外で生命の化学的痕跡を初めて発見した」と語っており、研究チームは今後、惑星の大気成分などを詳しく調査し、生命存在の可能性を探っていくという。
今回の惑星は、低温で暗い赤色矮星という恒星の周囲で発見された。ギロン氏は生命体が存在する惑星の数について、「銀河系全体で見れば、こうした惑星は数十億個存在するだろう」と語っている。
もはや、第二の地球もあたり前、次はいよいよ宇宙文明を探索する時代に入っていくのだろう。米国立電波天文台のフランク・ドレイク博士が考案した「ドレイクの方程式」という、銀河系に存在する文明の数を計算する式を使ったある試算によると、人類が住む銀河系だけでも2億以上の文明があるという結果が出ている。
宇宙時代の訪れに備えるためにも、今後、宇宙科学の研究をよりいっそう進めていくことが必要だろう。
ケプラー発見の天体1284個を新たに系外惑星と確認
系外惑星探査衛星「ケプラー」がこれまでに発見してきた惑星候補のうち、新たに1284個が系外惑星であると確認された。ハビタブルゾーンに位置するものも9個含まれている。
NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」は、惑星が主星の前を通り過ぎる際に主星の明るさがわずかに減少する「トランジット」現象をとらえるという手法で惑星探しを行ってきた。今月9日に水星の太陽面通過が起こったが(参照:ニュース「太陽観測衛星「ひので」「SDO」がとらえた水星の太陽面通過」)、このときにほんの少しだけ暗くなった太陽を観測して水星を見つけるような方法だ。
ケプラーは2009年に打ち上げられ2012年にメインミッションを完了したが、これまでに約4300個の系外惑星候補を発見している。この候補のうち、984個は系外惑星であることがすでに確認されていた。
そしてこのたび、新たに1284個もの候補が確かに系外惑星であると発表された。残る約2000個のうちの1300個ほどの候補天体もかなり高い確率で系外惑星だろうとみられており、さらなる確認作業が行われている。
1284個の新たな系外惑星のうち、約550個はその大きさから地球のような岩石惑星とみられている。さらにそのうち9つは、ハビタブルゾーン(液体の水が惑星の表面に存在できるような表面温度となる主星からの距離の範囲)に位置している。ケプラーが発見したハビタブルゾーンに存在する系外惑星の数はこれで21個である。
ケプラー以外の人工衛星や地上の天体望遠鏡による観測で見つかったものも含めると、今日までに発見された系外惑星の総数は3200個以上あり、そのうち2300個以上がケプラーによる発見だ。「ケプラーが打ち上げられるまでは、系外惑星がありふれた存在なのか稀有な存在なのかもわかっていませんでした。しかし今や、ケプラーと研究コミュニティのおかげで、恒星よりも惑星の数の方が上回っている可能性すらあることがわかってきたのです」(NASA Paul Hertzさん)。
NASAは2018年に、新しい系外惑星探査衛星「TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)」を打ち上げ予定だ。TESSは地球サイズの惑星を見つけることを目標として、太陽系の近傍に存在する20万個の恒星を観測することになっている。
「生命体が存在する可能性」のある3惑星を発見
国際科学研究チームは2日、生命体が発見される可能性がこれまでで最も高い、地球に似た太陽系外惑星3つを発見したと発表した。
英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、この3惑星は地球からわずか39光年離れた超低温の矮星を周回しており、その大きさと温度は地球や金星に匹敵するとみられるという。
主執筆者のベルギー・リエージュ大学(University of Liege)天体物理学者マイケル・ギロン(Michael Gillon)氏は、「太陽系外で生命の化学的痕跡を発見した初めての機会」と指摘。これら3惑星はすべて、地球とほぼ同じ大きさで「生命体が存在する可能性」があり、現在の科学技術で大気圏を分析できる距離にあるなど「3拍子揃っている」と語った。
ギロン氏らの研究チームは、チリにある口径60センチのトラピスト(TRAPPIST)望遠鏡を使って、光学望遠鏡で観測可能な大きすぎず高温すぎない数十個の矮星を追跡調査。その中でも特に可能性が高い、太陽の8分の1程度の大きさではるかに低温の矮星「TRAPPIST-1」に狙いをつけた。
3惑星のうち、内側の2つの惑星の公転周期はそれぞれ1.5日と2.4日だが、地球が太陽から受ける放射熱のそれぞれ4倍と2倍程度の放射熱しか受けていないという。また、最も外側にある3つ目の惑星の公転周期は4~73日だとしている。
大きさや低輝度の恒星から近い距離にあることを考慮すると、この3惑星に液体の水や生命に適した一定の気温を保つ地域が存在する可能性があると論文は結論付けている。
地球に似た惑星の探索はこれまで、太陽のように巨大で高温な恒星の周囲を中心に行われてきたが、今回の発見により、超低温の矮星の周囲にも生命体が存在する可能性がある惑星があることが示された。ギロン氏は、「銀河系全体でみれば、こうした惑星が数十億個存在するだろう」と語った。(AFPBB News)
赤色矮星とは何か?
赤色矮星(red dwarf)とは、主系列星の中で特に小さい恒星のグループ。主にスペクトル型M型の主系列星を指すが、低温のK型主系列星の一部を含めることもある。
主系列星は質量が小さいものほど以下の特徴を強く示すようになる。
1.直径が小さい
2.表面温度が低く、放つ光が赤みを帯びる(黒体を参照)
3.明るさが暗い
4.恒星としての寿命が長い
赤色矮星は主系列星の中でも特に質量が小さく、これらの特徴が顕著である。また、赤色矮星は活発なフレア活動を示す傾向があり、閃光星と呼ばれる変光星に分類されるものが多い。
赤色矮星のサイズや明るさは様々である。太陽系に最も近い恒星のプロキシマ・ケンタウリは、質量・半径がともに太陽の7分の1程度、可視光での明るさは1万8000分の1に過ぎないが、比較的大型の赤色矮星であるラランド21185は、質量・半径ともに太陽の半分弱、明るさは180分の1に達する。
最小の赤色矮星の質量は太陽質量の8%程度である。これより質量の小さい天体は、中心部の温度が上がらずに軽水素の核融合反応を起こせない。このような天体は恒星ではなく褐色矮星に分類される。赤色矮星の質量の上限は明確ではなく、最も大きい赤色矮星と、最も小さい赤色矮星以外の主系列星との間には本質的な違いはない。
赤色矮星は宇宙で最もありふれた恒星でもある。個数ベースで見ると、太陽近傍にある恒星と白色矮星のうちM型の赤色矮星が6割を占め、白色矮星を除くとその割合は8割弱に達する。
赤色矮星の一生
赤色矮星の中心部は他の主系列星と比べて低温で、核融合反応は穏やかに進む。赤色矮星は質量が小さいので核融合の燃料となる水素が少ないが、それ以上に水素の消費が穏やかなため、結局のところ寿命は長くなる。具体的な数値は赤色矮星の質量に左右されるが、短くても数百億年、長ければ数兆年に及ぶものもある(なお、太陽の寿命は100億年程度である)。赤色矮星の寿命は宇宙が誕生してから現在までの時間(137億年)より有意に長いため、一生を終えた赤色矮星は現在の宇宙には存在しないことになる。
また、赤色矮星は中心部がヘリウムの核融合が始まるほど高温にならないため、水素が燃え尽きても赤色巨星にはならずに、そのままヘリウム型の白色矮星になると予想されている。前述のように赤色矮星の寿命は現在の宇宙の年齢より長いため、ヘリウム型の白色矮星は宇宙にまだ存在していないと考えられている。
赤色矮星は恒星の大部分を占めているが、初期に太陽系外惑星が見つかった恒星の多くは太陽に似た主系列星だった。これは、赤色矮星の光度が暗く、彩層が活発なため精確な観測が難しいことや、系外惑星の探査が太陽に似た星を主なターゲットとして行われていたことが影響している。しかし2004年ごろから赤色矮星の周りを回る惑星も発見され始めた。
赤色矮星と地球型惑星
2007年に赤色矮星グリーゼ581の周りに発見されたグリーゼ581cは、地球質量の5倍と、それまでに発見された系外惑星の中では特に小さい上に、発見当初は、ハビタブルゾーン内の軌道を持っているのではないかと言われたため注目を集めた。この惑星がハビタブルゾーンの範囲にあるという考えに対しては後に否定的な研究が発表されたが、2010年には完全にハビタブルゾーンに収まる惑星グリーゼ581gが発見され、再び注目を浴びた。
2006年に銀河系バルジを対象に行われた太陽系外惑星の探査 (SWEEPS) では、太陽の4割の質量を持つ赤色矮星とみられる恒星の周りに、公転周期10時間の惑星の候補天体が見つかっている。この観測で発見された合計5つの周期1日以下の惑星候補はいずれも太陽より小さく暗い星を公転していた。このことから赤色矮星のように質量が小さい恒星では超短周期の惑星が形成されやすいことが示唆されている。
赤色矮星は活発なフレア活動を起こす閃光星である場合が多い。また、赤色矮星のハビタブルゾーンは太陽系よりも主星に近い。そのため、仮に赤色矮星の周りを回る惑星上に生命がいるとすれば、フレアに伴って放出されるX線などの電磁波は生命にとって脅威となるかもしれない。
一方で、強いフレアは大気に厚いオゾン層をもたらし、生命に対するフレアの影響を減少させるという考え方もある。また、フレアによって星の明るさが不規則に変化することも生命にとって不利な条件となりうる。しかし、こういった要素が生命にとってどれだけの制約となるかはよく分かっていない。
赤色矮星を回っている惑星で進化した植物は、フレアから身を護る機能を発達させるとともに、光を効率的に吸収するために地球の植物とは違う色合いになり、場合によっては黒く見えるだろうという研究が発表されている 。
たとえこのような惑星に生命が存在しても、人類にとって、現在の地球の方がはるかに住みやすいだろう。
参考 AFPBB News: 生命体が存在する可能性のある3惑星を発見
ケプラー疑惑―ティコ・ブラーエの死の謎と盗まれた観測記録 | |
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nature [Japan] September 27, 2012 Vol. 489 No. 7417 (単号) | |
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