日本、過去最多のメダル41個
南米初開催のリオデジャネイロ五輪は、17日間の熱戦に終止符を打ち、21日(日本時間22日朝)に閉会式を迎えた。日本は史上最多の41個のメダルを獲得した。4年後の東京五輪に向けた選手強化にどう生かし、メダルの効果を社会にどう還元していけるだろうか。
柔道では日本男子が全階級でメダルを取り、「お家芸」復活を印象づけた。男女計12個も過去最多で、日本の総メダル数を押し上げた。また、レスリングもロシアの9つに次いで7つの素晴らしい成果をあげた。競泳でも7つ。陸上の男子400mリレーの銀メダルには感動した。歴史的な快挙だった。体操も念願の団体金、内村航平選手の逆転の金メダルも凄かった。
バドミントンも凄かった。女子ダブルスの高橋礼華(あやか、26)、松友美佐紀(24)組が日本に初の金メダルをもたらしたバドミントンは、国内の指導者に固執せず、長期的視野で海外の指導者を招いた。監督の朴柱奉(パクジュボン)氏(51)は元韓国代表で1992年バルセロナ五輪の金メダリストである。
卓球の男子団体戦の銀メダル、個人戦男子の水谷隼選手の銅メダルは歴史的快挙だった。特に水谷選手の「神ラリー」は観衆を興奮させた。女子もロンドンでは銀だったが、銅メダルを獲得何とかメダルは死守した。バドミントンや卓球は誰でも手軽にできるスポーツなので子供たちに人気が出そうだ。
今回選手たちのために、リオに日本と同じような生活環境を作ったことも、体調管理に役立った。選手村からシャトルバスで30分の施設を借り、約8億1千万円をかけて「ハイパフォーマンスサポート・センター(HPSC)」を開設。コロンビア産のコシヒカリに納豆、うどんといった和食を用意したほか、選手村の部屋にはシャワーしかないことを事前に調べ、疲労回復効果が期待できる炭酸泉の風呂も完備した。
柔道、レスリング、卓球など6競技の練習施設も備えた。卓球女子団体で2大会連続のメダルを獲得した石川佳純(23)は「日本と同じように過ごせた」と、リオでの日本風の「おもてなし」に感謝した。
女子マラソン、ママランナーの活躍は愛情ホルモンの効果?
海外の選手たちも活躍した。陸上のジャマイカのウサイン・ボルト選手は、目標としていた、オリンピックの陸上競技100m、200m、4×100mリレーの3冠を3大会連続で達成し、通算9個の金メダルを獲得した。
暑さの中での高速レースとなったリオデジャネイロ五輪の女子マラソンは、ケニアのジェミマ・スムゴング選手(31)が同国初の女子マラソン金メダルを獲得した。スムゴング選手は一児の母。結婚、出産後に飛躍的に記録を伸ばしてきた。比較的、選手寿命の長いマラソンのような競技では、スムゴング選手のように子供を産んでから一層活躍するアスリートがこれまでもいた。ママになると何かが変わるのか?
リオ五輪女子マラソンで上位に入ったランナーは、いずれも独走で国際大会を優勝できる実力者ばかり。酷暑のレースで日本の選手はよく健闘したと思う。優勝したスムゴング選手は、初マラソンが2006年のラスベガスマラソン。その時の記録は2時間35分台。その後2時間30分前後のランナーになったが、まだまだ五輪金メダルのレベルではなかった。2009年に結婚して女の子を授かる。2年間、子育てをしたのちに競技生活に復帰したところ、2時間22分前後のスーパーランナーに大変身を遂げ、ついに五輪を制した。
もちろん厳しいトレーニングを続けた成果だが、彼女にとってこの間の最大の変化はマラソン選手であり信頼する夫からアドバイスを受け、練習前後に子供を抱きしめるようになったこと。ここで注目したいのは、子供を抱きしめたときに分泌されるオキシトシンというホルモン。
やさしい愛情ホルモン「オキシトシン」
オキシトシンは、脳の奥深くにある視床下部の室傍核(しつぼうかく)と視索上核(しさくじょうかく)という部位の神経分泌細胞で合成され、両目の奥のあたりにある下垂体というところから分泌される。わずか9個のアミノ酸からできているとても単純な構造のホルモンである。やさしさを感じた時に分泌され、私たちに「愛」を感じさせる。愛にもさまざまな種類があるが、オキシトシンは赤ちゃんのようなかわいらしいものを抱きしめると分泌が増す。小さな犬や人形でもいいし、本を読んでやさしい気持ちになっても出てくる。母親的な、女性的な愛情という人もいる。
オキシトシンには筋肉に対する作用がある。30年前には、子宮の平滑筋に作用することが分かっており、陣痛促進剤として治療に使われていた。性交渉の時、男性から送られた精子を女性が子宮に取り込もうとして子宮の筋肉を締め付ける時に作用するホルモンである。性交渉後、男女とも落ち着いた気持ちで抱き合っている時は、まさにオキシトシンが作用している状態。
この筋肉の作用は、高齢者の筋肉の衰えを改善することが報告されている。マウスの実験では、オスの筋肉は加齢とともにオキシトシンの分泌量低下に並行して衰えることが発見された。そこで、オキシトシンを投与すると筋肉の衰えが改善したとされている。
筋肉の回復力を高める作用がある
出産後に強くなる女性アスリートをホルモンの面から考えてみると、出産で性ホルモンが安定するという重要なポイントがある。加えてオキシトシンの効果を考えてみると...スムゴング選手は結婚、出産で夫、娘と一緒に暮らすようになった。これがオキシトシンを分泌するのにちょうどよい環境にあることは確かである。
同様の環境でのオキシトシンの効果を調査してみた。女性市民ランナー120人にアンケートを取った。「あなたはフルマラソン後、お子さんと過ごすのと過ごさないのと、どちらがリカバリー(身体の回復)がいいと感じますか?」という問いに、「子供と過ごすととても良い、どちらでもない、まったく関係ない」の三択で答えてもらいました。結果、118人が「とても良い」と答えました。子供と過ごすとより疲れが取れるという答えが圧倒的だった。
マウスの実験、そして女性ランナーの実感と同じように、スムゴング選手の筋肉も激しいトレーニングの後で子供を抱きしめ、夫と過ごす間にオキシトシンが分泌されて、上手にリカバリー(回復)ができたのではないか、と考察できる。
夏が終わるとスポーツの秋。さまざまなスポーツに参加する人も、ウオーキングをがんばりたい高齢の人も、休憩する時に赤ちゃんのようなかわいらしいものを抱きしめてみるのはいい方法かもしれない。
愛情ホルモン!心を癒やすオキシトシンの効果と増やし方
オキシトシンは、母らしさや授乳を促すホルモンだとみなされていた。しかし、どうもそれだけではないようだ。いまやオキシトシンには、広範囲な協調作用があると推測されている。いったいその正体は何なのか?
ヒツジの親子が出てくる番組で、ヒツジには出生後の約1時間が母ヒツジと子ヒツジの「絆の形成」に大きくて、この1時間のあいだに母子が引き離されると、しばしば母ヒツジが授乳を拒否する。
ところが1時間をかなりすぎても、母ヒツジに「あるもの」を注射すると自分の子を受け入れるようになるだけではなく、あら不思議、ほかのメスの子も受け入れるようになる。
メスのラットでも同じように「あるもの」をほどこす場面があって、ラットは自分の子だけでなく、他の赤ちゃんラットの面倒をみるようになる。その「あるもの」によってラットが群れあう傾向も強くなっている。
人の場合でも、男と女が半ばシルエットの裸で出てきて濃密なキスをしたり、触れ合う。そんなとき、セクシャルにしている男女の血液中には「あるもの」が濃く放出されているという、そのデータが示される。オルガスムスによってその「あるもの」が大量に放出されているとの説明があった。
それが、オキシトシン(Oxytocin)である。オキシトシンは、脳下垂体後葉から分泌されるホルモンの一種で、愛情ホルモンとも呼ばれている。血液へと放出されたオキシトシンは、体中の臓器に存在するオキシトシン受容体を介して心理的にも、肉体的にも多大な影響を与えている。
特に、ストレスを感じている時や人間関係を深めたい時、その分泌値が高くなる事がアメリカ心理学会の報告により確認されている。過去数十年の科学の進歩によりオキシトシンがもたらす効果は次々に解明されている。ここで述べるのはその驚くべき効果の片鱗だ。
最近の研究では、自閉スペクトラム症と診断された20名の成人男性を対象に、オキシトシン経鼻剤を毎日2回ずつ連続して6週間使用したところ、オキシトシン投与前後ではプラセボ投与前後に比べて、対人場面での相互作用の障害という中核症状の改善が有意に認められた。
オキシトシンとは何か?
オキシトシン (Oxytocin, OXT, OT) は視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンであり、9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンである (Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly)。
2つのシステイン (Cys) を含み、それぞれの硫黄原子が結合して(ジスルフィド構造)、大きな環を作っている。同じく下垂体後葉ホルモンであるバソプレシンと構造が似ており、アミノ酸2つだけが違う。オキシトシンには末梢組織で働くホルモンとしての作用、中枢神経での神経伝達物質としての作用がある。
末梢組織では主に平滑筋の収縮に関与し、分娩時に子宮収縮させる。また乳腺の筋線維を収縮させて乳汁分泌を促すなどの働きを持つ。このため臨床では子宮収縮薬や陣痛促進剤をはじめとして、さまざまな医学的場面で使用されてきており、その歴史は長い。
最初は女性に特有な機能に必須なホルモンとして発見されたが、その後、男性にも普遍的に存在することが判明している。また、視床下部の室傍核 (PVN) や視索上核 (SON) にあるニューロンから分泌され、下垂体後葉をはじめ様々な脳の部位に作用し機能を調節している。
参考 毎日新聞:マラソン金 愛情ホルモンで?
愛は化学物質だった!? 脳の回路にオキシトシンを放出すればすべてはハッピー | |
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ヒカルランド |
脳ストレスが消える! セロトニン&オキシトシン生活 (TJMOOK) | |
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