フィリピン海プレート
フィリピン海プレート(Philippne Sea Plate)とは、東は小笠原海溝やマリアナ海溝、北から西にかけては南海トラフ・琉球海溝・ルソン海溝・フィリピン海溝などに囲まれた海洋プレートである。
太平洋の北西部をしめるフィリピン海が主な領域。伊豆諸島・小笠原諸島・マリアナ諸島・ヤップ島・パラオと連なる島孤のほか、大東諸島、ルソン島の一部がこのプレート上にある。日本では、本州の中で唯一伊豆半島だけがフィリピン海プレート上にある。
伊豆半島は約2000万年前、数百kmも南の海底火山群だった。およそ200万年前フィリピン海プレートの上にできた火山島は、プレートとともに北に移動。やがて本州に衝突し、現在のような半島の形になった。約60万年前のできごとである。

現在でも伊豆半島は北上している。すなわち、プレートは移動し続けている。2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本海溝下のプレート境界面に沿って南北に、岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200km、深さ約5km - 40kmの範囲で起きた、プレート境界(海溝)型地震であった。この時、原因となった太平洋プレートの移動速度は東から西へ10cm/年である。これに対してフィリピン海プレートの移動速度は3~4cm/年である。
このため長い年月で見ると、日本列島に東西方向で断層による「ズレ」が生じるはずだが、実際にズレは生じていない。こうした日本列島を東西に短縮する地殻変動は、これまで、日本の東に位置する太平洋プレートが大陸側のプレートに沈み込むことが原因で生じるものと言われてきたが、太平洋プレートの運動方向や速度は4000万年前から概ね変化がなく、東西短縮地殻変動が始まった300万年前とは歴史の桁が1桁異なるなど、地質学的に整合性が取れないという課題があった。
今回、産業技術総合研究所(産総研)は6月29日、日本列島の第四紀以降のおよそ300万年の間に生じてきた東西短縮地殻変動が、従来考えられていた太平洋プレートの運動によるものではなく、フィリピン海プレートの運動に起因するものであるとの研究成果を公開した。
同成果は、産総研 地質情報研究部門の高橋雅紀 研究主幹によるもの。詳細は、産総研 地質調査総合センターが発行している「地質調査研究報告」(オンライン版)に掲載された。
内陸地震が起こる原因はフィリピン海プレートにあった
今回の研究成果を産業技術総合研究所の高橋雅紀 研究主幹は、コンピュータなどを使わず、模型を使ってアナログで説明した。日本列島の断面の模型で、地面をスライドさせると、隆起して山のようになる場所が2カ所あり、そこが現実の世界で山地となっていた。
日本列島の本州は、約300万年前に始まった東西短縮地殻変動により、海底が隆起した結果、陸化して生まれたが、現在も東西方向に強く押される動きは変わっていない。こうした東西短縮地殻変動は、日本列島の各所に歪みをともない、地殻にそのエネルギー(歪みエネルギー)を蓄積。地殻の強度を超えると、地殻が破壊され、逆断層や横ずれ断層が動き、エネルギーが解放され、地震を引き起こしてきた。
こうした日本列島を東西に短縮する地殻変動は、これまで、日本の東に位置する太平洋プレートが大陸側のプレートに沈み込むことが原因で生じるものと言われてきたが、太平洋プレートの運動方向や速度は4000万年前から概ね変化がなく、東西短縮地殻変動が始まった300万年前とは歴史の桁が1桁異なるなど、地質学的に整合性が取れないという課題があった。
そこで高橋研究主幹は、13年間にわたり、この謎に関して研究を継続。今回、アナログの模型を活用することで、その仕組みを解明し、太平洋プレートではなく、フィリピン海プレートの動きが根本的な原因であることを突き止めたとする。具体的な説明としては、以下のようなものとなる。
地震(火山性を除く)には、大きく各プレート同士の間で生じる「海溝型地震」と、山間部や日本海側などで生じる「内陸地震」に分けられ、例えば2004年10月の新潟県中越地震(M6.8)などが内陸地震としては知られている。
海溝型地震と内陸地震の関連性
海溝型地震が生じた影響で、内陸地震が生じるという説もあるが、バネを思い浮かべてもらうとわかりやすいが、バネを縮めて溜めた力を解放した後は、バネは伸びた状態であり、そのエネルギーは解放されたままであるのと同様、海溝型地震が発生したら、エネルギーが分散してしまい、内陸地震につながらないことはシミュレーションなどで判明していた。
では、太平洋プレート起因の場合は、というと、前述のように、4000万年前から移動速度も方向も(年に西に10cm程度)変わっていないため、300万年との差が生じてしまい、説明がつかない。
一方、太平洋プレートが沈み込んでいるフィリピン海プレートは、北西に年間3-4cm程度の速度で移動しており、太平洋プレートと速度に差がある。ここで、プレートの沈み込み境界である「日本海溝」、「伊豆-小笠原海溝」、「南海トラフ」と、それらの3つの海溝が1点に会合する房総半島の東方沖にある、世界で唯一の海溝-海溝-海溝型三重会合点(三重会合点)を踏まえ、フィリピン海プレートだけをプレートの回転運動の回転軸(オイラー極)で回転(移動)させてみると、三重会合点で会合していた日本海溝と伊豆-小笠原海溝がずれることとなる。
この現象そのものは、1969年より知られていた話だが、高橋研究主幹は今回、これを3次元的な断面図として検討を実施。日本海溝と伊豆-小笠原海溝がずれるということは、西に移動している太平洋プレートも、三重会合点で切断され、プレートとプレートの境界で生じる横ずれ断層(トランスフォーム断層)が形成されなければいけないが、太平洋プレートの厚さは世界でもっとも厚いとされる90kmで、固いプレートとされていることから、断層が生じるような切断が起こることは考えにくく、かつこれまでのプレート上面で発生してきた深発地震も三重会合点周辺に連続的に分布しており、段差が見られないことも合わせると、三重会合点周辺では太平洋プレートは切断されていないという判断を下す必要がある。
そのため、今度は日本海溝と伊豆-小笠原海溝がずれないように考えると、フィリピン海プレートも移動できないこととなる。そこで、フォッサマグナ(大地溝帯)を境目に地質学でいうところの東北日本と西南日本に分け、東北日本をユーラシア大陸本体とは別に動けるように考えてみると、太平洋プレートが剪断されずにフィリピン海プレートも動くことができることが確認できたという。
これは、東北日本の日本海東縁で東西短縮地殻変動が進行していることが、東北日本とユーラシア大陸との距離が縮んでいることを示すもので、両者が別個に運動しているためというところから得た着想となっている。
テクトニック・エロージョン(造構性侵食作用)の影響
「太平洋プレートが切断されないためには、日本海溝と伊豆-小笠原海溝が連続している必要があるため、日本海溝を伊豆-小笠原海溝に追随させ西に移動させるが、そうなると今度は日本海溝と東北日本が近づいてしまう。しかし、沈み込んだプレートの上面の深さが100kmほどになると、その真上に形成される火山フロントの変遷を見ると、300万年以降、その移動は10km以下であり、プレートの収束境界における海溝の陸側の大陸や島弧が削られる『テクトニック・エロージョン(造構性侵食作用)』の影響は低く、結果として、日本海溝が移動すると、東北日本も移動するという結論に至った」と高橋研究主幹は説明する。
また、日本海は2000~1500万年ほどまえに拡大した海洋底で、厚さが30km以上の固いマントルで形成されており、東北日本が移動したとしても、日本海までもが移動することは考えづらく、東北日本の西への移動は、その日本海のマントルで止められる結果、東西に短縮され、特に日本海東縁は、マグマや火山活動により地殻が温められて変形しやすくなっているため、選択的に当該地域に変形が集まり、歪みの集中帯、地質学では秋田-新潟油田褶曲帯が形成されたものと推測されるという。
火山フロントと日本海溝の間は前弧と呼ばれ、その地殻は冷たい海洋プレートに冷やされて固くなったマントルの上にあるため、地殻変動の影響をほとんど受けないが、背弧と呼ばれる火山フロントの奥(後ろ)の地殻は固いマントルはなく、マグマなどにより温められており、変形しやすくなっている。しかし、その奥の日本海は固いマントルで形成されているため、必然的に、東西から押された歪みは柔らかい日本海の東端付近に溜められることとなる。
実際に、高橋研究主幹は、同理論を説明するために、木工ボードの上に日本近海の地図を作成。オイラー極を軸に移動する各プレートと、日本海側と収束している東北日本)と西南日本に分けた本州の地図(列島全域は1つの変形しないプレートと仮定)を組み合わせた模型地図を作成。
フィリピン海プレートの役割
東北日本ブロックとユーラシア大陸側の相対運動のオイラー極(回転軸)は、サハリン北部に存在していることが判明しているので、そこを中心に回転させるようにしたところ、日本海溝と伊豆-小笠原海溝を連動させつつ、フィリピン海プレートが北西に移動すると、東北日本ブロックが西に移動することを太平洋プレートが切断されない条件のもと、確認できることを示した。
これらの結果、高橋研究主幹は、西に移動しようとする東北日本の地殻は、日本海の固いマントルに阻まれるため、東西に短縮し、隆起する部分が発生するほか、押し戻す過程で地震が発生するという結論に至ったとする。「日本列島の東西短縮地殻変動は、太平洋プレートの運動そのものによるのではなく、太平洋プレートの沈み込み位置、つまり日本海溝の移動により、引き起こされている。さらに、日本海溝の移動を引き起こすのはフィリピン海プレートの運動であることも今回の研究から示され、これにより日本の内陸地震がどうして起こるのかが説明できるようになった」とのことで、内陸地震がどうして生じるのか、という原因に説明ができるようになったとする。
なお、高橋研究主幹は、「いろいろと現象に名前をつけることで、多くの研究が進められてきたが、そうした命名すること自体がサイエンスの仕事ではない。"なぜ"、という疑問に答えることがサイエンス。今回の成果は、そうした意味では内陸地震が生じる機構の詳細を示せたという点で、答えを提供できた」と、今回の成果を強調しているが、さらなる研究にも意欲を示しており、今後、新たな研究成果を再び論文としてまとめ、公開をすることを目指したいとしている。
フィリピン海プレートの境界で起きた地震
フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む事で、海溝型地震である東海地震(南関東~東海)、東南海地震(東海~南紀)、南海地震(南紀~四国)が起きる。1923年の関東大震災をもたらした大正関東地震も、フィリピン海プレートが北アメリカプレートに沈み込む運動に伴う地震である。
東海地震は静岡県の沖合、関東地震は神奈川県・千葉県の沖合が震源域となりうる巨大地震であり、防災上の重要性が高い。また、関東地方の地下には北アメリカ、フィリピン海、太平洋の3つのプレートが存在しており、このように2重にプレート間地震のリスクのある地域は世界的にも少ない(他はカムチャツカ半島など)が、近傍の関東南西部~東海地方東部ではユーラシアプレート・フィリピン海プレート・北米プレートが重なっているため、実質的には4プレートの間に地震のリスクが存在することになる。日本の関東地方は世界有数の政治的・経済的な先進地域でもあるため、大規模地震が直下で起こった時の影響は計り知れない。
伊豆半島と本州との衝突(プレート同士の衝突)は現在も続いている。丹沢山地は、フィリピン海プレート(伊豆半島)の北アメリカプレートへの衝突付加に伴う隆起によって形成された地形であり、現在の衝突の現場が神縄断層である。その露頭が、静岡県小山町付近などで見られる。伊豆付近では地殻の浮揚性が高く、北西-南東走向の横ずれ断層が発達している他、この割れ目に沿って形成されたと考えられる火山群(伊豆東部火山群)がある。箱根火山、富士山などはこの伊豆孤の衝突の影響を受けている。また、このプレートの変形の影響を受けて、伊豆東方沖から小田原付近に西相模湾断裂と呼ばれるプレートの断裂帯があるとする学説もあるが、異論もある。
東京大学と防災科学技術研究所の研究グループは、2010年7月、フィリピン海プレートが、紀伊半島の西端から淡路島中部を通って鳥取市近辺へと至る地域の地下で、プレートが裂けている可能性が高いことを発表した。断裂の結果、近畿地方の下はプレートが深く沈み込み、支えのない状態になっている。
関東南部沖にトリプルジャンクションを形成
東縁や南縁は伊豆・小笠原海溝やマリアナ海溝・ヤップ海溝であり、南東方向から年間3 - 4cmの速度で太平洋プレートが沈み込んでいる。この沈み込み運動により火山帯であるマリアナ諸島や小笠原諸島、伊豆諸島が生じたと考えられており、現在も活発に活動している。この火山帯は伊豆半島まで続いていて、活発な火山活動により伊豆地塊は密度が低い(軽い)ため、伊豆半島はフィリピン海プレート上に乗ったまま沈み込めずに、丹沢山地や富士山(フォッサマグナ、北アメリカプレート)あるいは赤石山脈(ユーラシアプレート)に激しく衝突して地形を隆起させている。
伊豆半島付近だけは陸で衝突が起こっているが、その東側の相模湾・房総南方沖では相模トラフを介して北アメリカプレートの下に沈み込んでいる。相模トラフの東端は太平洋プレートと重なり、世界的にも数少ないT-T-T型トリプルジャンクションとなっている。
一方西側の駿河湾以西でも、駿河トラフや南海トラフを介してユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。更に西側には琉球海溝があり、この付近ではフィリピン海プレートの沈み込みによって沖縄トラフと呼ばれる背弧海盆が拡大しており、南西諸島を東シナ海の大陸棚から少しずつ引き離している。背弧海盆はマリアナ諸島の東側でも活動している。
琉球海溝の西端である台湾付近からルソン島北西沖では、逆にユーラシアプレートがフィリピン海プレートの下に沈み込むという複雑な構造となっている。台湾付近では沈み込むというよりも、ユーラシアプレートの上に乗り上げる形で激しく衝突し台湾山脈を形成している一方、ルソン島北西沖ではルソン海溝を介してユーラシアプレートが西から沈み込んでいる。
しかし、ルソン海溝は比較的短く、その境界線はやがてルソン島を横断するトランスフォーム断層へとつながり、今度はルソン島南東沖のフィリピン海溝を介して今度はフィリピン海プレートが東から沈み込んでいる。フィリピン海溝はニューギニア島北西端のバーズヘッド半島沖まで続き、ここで太平洋プレートとのトリプルジャンクションとなり、パラオ付近の発散型境界とみられる部分、そしてヤップ海溝へと連なる。
漸新世 - 中新世中期ごろには東縁で活発な火山活動があり、一千万年以上かけて背弧海盆である四国・パレスベラ海盆が形成された。九州・パラオ海嶺は伊豆・小笠原・マリアナ弧が海盆形成によって分断された名残であると考えられている。
参考 マイナビニュース: 内陸地震が起きる原因はフィリピン海プレートにあった
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活断層地震はどこまで予測できるか 日本列島で今起きていること (ブルーバックス) |
| クリエーター情報なし | |
| 講談社 |
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いま活断層が危ない―中部の内陸直下型地震 |
| クリエーター情報なし | |
| 中日新聞社 |


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