海の水は簡単には混ざらない

 海水浴に行って泳いでいると、温かかった水が急に冷たくなることがある。温かい水と冷たい水の境目が体を通り過ぎたのだ。熱い湯が流れ込む温泉の湯船でも、上と下とで水温はかなり違っている。かき混ぜないと、全体が同じ温度にならない。水というのは、けっこう混じりにくいものだ。

 亜熱帯の海中には、周りとあまり混じらずに潜行している巨大な水の塊がある。数千キロメートルもの広がりを持つ水の塊が、まるで巨大な潜水艦のように、海面から数百メートルの深さをゆっくりと動いていくイメージだ。この水の塊を「亜熱帯モード水」という。たとえば、日本列島の南岸を北に流れている黒潮の南側の海域にできる。

 海の水温は、海面が温かくて、深くなるほど冷たくなっていくのが基本形だ。ところが、亜熱帯モード水は、深さによらず水温がほぼ一定だ。その点で、周りとは性質が違う特殊な水の塊なのだ。



海の教科書 波の不思議から海洋大循環まで (ブルーバックス)
クリエーター情報なし
講談社
新しい地球学 ―太陽‐地球‐生命圏相互作用系の変動学
クリエーター情報なし
名古屋大学出版会

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。