宇宙旅行計画再開「ヴァージン・ギャラクティック」

 宇宙開発が目覚ましい。中学校では最近修学旅行が、広島まで足を伸ばすようになったが、やがて修学旅行に宇宙旅行という時代がやってくるのではないだろうか。まだまだ課題は山のようにあるが、夢は描かなければ実現しないので、そんな未来を夢見たい。

 そんな民間宇宙旅行の開発を目指す、宇宙企業「ヴァージン・ギャラクティック」は、2018年4月5日、開発中の宇宙船「スペースシップツー」のロケットエンジンを使った試験飛行を再開し、成功したと発表した。

 スペースシップツーのロケット飛行は、2014年に同型機が墜落事故を起こして以来、約3年半ぶり。事故を乗り越えた同社は、宇宙旅行の実現に向けて大きな一歩を踏み出した。



 スペースシップツーは、宇宙旅行の実現を目指し、ヴァージン・ギャラクティックとその姉妹会社が開発を進めている宇宙船。最大6人の乗客を乗せ、高度100kmの、一般的に宇宙と呼ばれる領域まで飛行することができる。乗客は短時間ながら、窓から青い地球や真っ暗な宇宙を眺めたり、微小重力(いわゆる無重力)状態の中で宙に浮いたりといった体験を味わうことができる。

 機体は矢じりのような特徴的な形状をしており、母機となる飛行機に吊るされ、上空約1万5000mまで運ばれる。そして飛行機から分離された後、ロケットエンジンを噴射し、宇宙空間まで一気に駆け上がる。宇宙に到達したあとは、グライダーのように降下し、出発地と同じ飛行場に着陸。整備を経て、次の飛行を行う。

 スペースシップツーは2010年に1号機が完成し、このときは2014年にも宇宙旅行が始まる予定だった。しかし、開発や試験を続ける中で、2014年11月には、1号機が飛行中に空中分解して墜落。搭乗していた2人の飛行士のうち、1人が死亡、もう1人も重傷を負う大惨事が起き、計画は大幅に遅れていた。


 3年半ぶりのロケット飛行再開

 その後、事故の原因調査とそれを受けた改良を経て、2016年に2号機を建造。この2号機には、先ごろ亡くなった宇宙物理学者のスティーヴン・ホーキング博士によって「VSSユニティ」(調和や団結といった意味)という名前が与えられた。同社はまず飛行機に搭載した状態で飛行させ、続いてVSSユニティ単独でグライダーのように飛行させるなど、慎重に試験を重ねた。またロケットエンジンの改良や試験も繰り返し実施し、ロケット飛行の再開に向けて準備を続けた。

 今回の試験では、エンジンを約30秒間噴射。最大高度2万5686m、速度マッハ1.87に達した後、飛行場に戻った。同社は飛行後、「この飛行は我々にとって大きな一歩。ユニティの飛行試験計画の、最終段階が始まった」と語っている。

 同社では今後も同様の飛行試験を重ね、早ければ今年中にも宇宙飛行を行い、安全性などを確認した後、乗客を乗せた商業飛行を始めたいとしている。


 気になるお値段、宇宙旅行はいつ実現する?

 ヴァージン・ギャラクティックは宇宙旅行がいつ実現するかについて、具体的には明らかにしていないが、今後も試験が順調に進むなら、2019年ごろにも始まることになろう。

 なみに、1人あたりの運賃は25万ドル(約2671万円)。家や高級車が買えるぐらいの価格だが、すでに俳優やスポーツ選手などがこぞって購入しており、世界一周旅行やクルーザーによるレジャーなどと並ぶ、大金持ちの新たなステータスとなりつつある。

 また、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が率いる宇宙企業ブルー・オリジンも、同じく高度100kmまで飛べる宇宙船を開発している。こちらはすでに無人ながら宇宙飛行も成功しており、早ければ今年中にも人を乗せての宇宙飛行に臨むとされる。さらに日本でも、愛知県の企業PDエアロスペースが宇宙船の開発を行っている。

 Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が率いる宇宙企業ブルー・オリジンも、宇宙旅行用の宇宙船を開発している (C) Blue Origin


宇宙ホテルを2022年に開業へ、12日間10億円

 そして今回、宇宙空間に行くだけでなく、宇宙ステーションの中で宿泊できるホテルをつくる計画が発表された。何かと騒がしい地球を離れて、ISSに長期滞在する宇宙飛行士体験が民間人でも可能になる。あと4年後にはそんな夢が叶うかもしれない。

 米テキサス州ヒューストンに拠点を置くスタートアップ企業のオライオン・スパン社は、2021年までに、史上初となる高級宇宙ホテルを打ち上げる計画を発表した。「オーロラ・ステーション」と名付けられたその施設は、打ち上げ翌年の2022年から宿泊客を受け入れる予定だ。

 12日間滞在できるチケットの価格は1人950万ドル(約10億円)で、これは一晩につき79万1666ドル(約8500万円)の計算になる。


 地上320キロを周回

 オライオン・スパン社は、今はまだ未来の宿泊客(およびオーロラ・ステーション)を宇宙へ送り届ける打ち上げ業者との契約を交わしていない。過去には、民間人が2000~4000万ドルの往復代金を支払って国際宇宙ステーション(ISS)に行った例があるが、オライオン・スパン社創業CEOであるフランク・バンガー氏によると、打ち上げ価格が下落傾向にあるため、同社の旅はそこまで高額にはならないという。

 ぜひとも宇宙に行ってみたいという人は、今なら払い戻し可能な8万ドルの手付金を支払って、宇宙ホテルを予約できる。

  「オーロラ・ステーションは打ち上げ後、すみやかにサービスを開始し、かつてないほど素早く、低価格で皆さんを宇宙にお連れします」。バンガー氏は声明の中でそう述べている。「我々の目標は、より低いコストでより高い価値を生み出し続けることによって、宇宙を誰もが行ける場所にすることです」

 地表から320キロ上空の地球低軌道(LEO)に打ち上げられる同ホテルは、プライベートジェットのキャビン程度の大きさで、全長13.3メートル、全幅4.3メートル、与圧容積は160立方メートル。国際宇宙ステーション(ISS)はこれに比べるとはるかに大きく、全長約109メートル、与圧容積約916立方メートルで、地球上空約400キロを飛行している。

 オーロラ・ステーションは完全モジュール方式の設計になる予定で、一度に6人が滞在でき、2人用のスイートルームが設けられる。6人の滞在者のうち宿泊客は4人で、2人のスタッフは元宇宙飛行士が務める見込みだ。ホテル設備は現在、ISSに携わったことのあるエンジニアの協力を得ながら、ヒューストンで建造中。ホテルで使用されるソフトウエアはサンフランシスコで開発中という。


 宇宙ステーションで「宇宙飛行士」になる 

 オーロラ・ステーションに到着した旅行者は、地球を90分間で1周しつつ、微小重力の中を自由に漂いながら過ごすことになる。ステーションに多数設けられた窓から日の出が24時間で16回訪れる外の景色を楽しんだり、バーチャルリアリティを体験できる。その他、植物栽培実験に参加したり(収穫物はおみやげにできる)、地上の人々とライブ通信を行うことも可能だ。

 「我々は『ちょっとビーチにでも行こうか』といった類の、気楽な宇宙旅行を提供するのではありません」と、バンガー氏はブルームバーグの取材に答えている。

 「我々が売るのは、宇宙飛行士になる体験です」

 これまでは、宇宙に行く人間は出発の24カ月前から準備を開始するのが通例だったが、オライオン・スパン社はこの期間を3カ月まで短縮するという。同社の宇宙飛行士認証(OSAC)プログラムには、オンラインおよび同社施設でのトレーニングが含まれ、最終訓練はオーロラ・ステーション滞在中に行われる。

 地球に戻ったときには、宿泊客は「ヒーローの帰還のように盛大に迎えられる予定」だそうだ。


 宇宙マンションも分譲へ?

 宇宙旅行にビジネスチャンスを見出した企業は、オライオン・スパン社が初めてではない。ISSに4部屋のホテル・モジュールを設置して1人4000万ドルで宿泊するプランが発表されているほか、米アクシオム・スペース社は2024年までに商業用宇宙ステーションの打ち上げを計画している。米ヴァージン・ギャラクティック社は、大気圏外旅行を25万ドルで提供する予定だ。

 「地球低軌道を利用したビジネスは活況が見込まれますが、実現までには試行錯誤が続くでしょう」と、米コロラド大学ボルダー校のフィル・ラーソン氏は語る。氏はかつてイーロン・マスク氏率いるスペースX社チームや、オバマ大統領時代の米国科学技術政策局で働いた経験を持つ。

 オーロラ・ステーションが成功した暁には、オライオン・スパン社はまったく同じモジュールを打ち上げて宇宙ステーションを建設したいとしている。

 「将来は世界初の宇宙の分譲マンションとして、専用のモジュールを売り出す予定です」とバンガー氏は言う。「オーナーは自分の宇宙マンションで暮らしたり、そこを訪問したり、転貸ししたりすることができるようになるでしょう」


参考 National Geographic news: http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/041000159/


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