「空を飛ぶ」人類のあこがれ
人類は古くから空を飛ぶことにあこがれを持っており、1490年ころレオナルド・ダ・ヴィンチがヘリコプターのような航空機のスケッチを残す。ダ・ヴィンチは他にもパラシュートやオーニソプターの研究もしている。さまざまな飛行機械の構想が立てられたものの、実際にはじめて空を飛ぶ機械が発明されたのは1783年のことだった。
フランスのモンゴルフィエ兄弟がこの年熱気球を発明した。しかしこれは空中を自在に動くというわけにはいかず、その後も動力によって空中を飛行する機械の開発は進められた。1903年にはアメリカ合衆国のライト兄弟が動力によって飛行する、いわゆる飛行機を発明し、以後航空機は急速に発達した。
ライト兄弟のライトフライヤー号は、一般に「世界で初めて飛行に成功した航空機」とされることが多いが、これより以前にも気球やグライダーなどの意図的な有人飛行、1852年のアンリ・ジファールによる飛行船などの動力飛行の前例は存在する。
スミソニアン協会は、展示しているライトフライヤー号を「最初の動力付きで、パイロットが搭乗して継続的に飛行し、機体を操縦することに成功した、空気より重い空飛ぶ機械」と説明している。
また国際航空連盟は、初飛行から100周年となった2003年に「最初の継続的に操縦を行った、空気より重い機体での動力飛行」と述べている。
気球、飛行船、航空機など空を飛ぶ乗り物は、人間の夢を実現してきた。次なる空の乗り物は何だろう。それは電気飛行機かもしれない。
空飛ぶタクシーが高層ビルから高層ビルへと飛び回るような未来。電気飛行機が空を飛ぶために重要なのは、重さとエネルギー密度である。それが克服され、電気飛行機の時代はシンギュラリティとうたわれる「2045年」に現実のものとなると予測される。その実現に向けたシナリオとは...。
「電気飛行機」の時代は2045年にやってくる
飛行機の未来について考えたとき、やはり思い浮かべるのは電気飛行機だろう。空飛ぶタクシーが高層ビルから高層ビルへと飛び回り、飛行機が静かに大海原をクルーズするように。どこにでも自由に行ける未来の旅行者が、はたして化石燃料に頼ることになるなんてあるのだろうか。
2017年9月、英国の格安航空会社であるEasyjet(イージージェット)が、10年以内に電気旅客機を運航する計画を明らかにした。
電気飛行機の開発を行う米国のベンチャー企業Wright Electric(ライト・エレクトリック)と組み、短距離路線向け電気旅客機を開発する。米Boeing(ボーイング)や米航空宇宙局(NASA)出身者が設立した企業で、既に小型機を試作しているという(飛行機の分類方法としては「電動飛行機」の方が適切に思えるが「電気飛行機」との記述が大半なので、本稿もそれにならった)。
航空機メーカーも動き出している。ボーイングは、ライト・エレクトリックと同様の航空機ベンチャーであるZunum Aero(ズーナムエアロ)に出資しており、短距離用の電気旅客機の開発を支援しているほか、仏Airbus(エアバス)も開発を進めている。
9月にスイスで行われた航空ショーでは、独Siemens(シーメンス)が電動小型プロペラ機のデモ飛行を行い観客を沸かせた。ちなみにシーメンスはエアバスと共同で、モーターと従来のエンジンを組み合わせたハイブリット推進システムを開発する方針を明らかにしている。
バッテリー技術の向上
電気飛行機のアイデアは昔から存在したが、電気自動車(EV)と同様、バッテリー容量の問題があり、なかなか実用されなかった。だが、ここ数年でバッテリーの技術が格段に進歩したことから、現実的な運用が視野に入り始めた。
模型飛行機の分野ではかなり前からモーター駆動が普及しており、いずれ実機の世界も電動化されるとの予想は多かったが、ここに来て、実機のプロジェクトが盛り上がっているのは、やはり全世界的なEVシフトと無関係ではないだろう。
電気飛行機の最大のウリは、二酸化炭素などを排出しないことだが、航空機によるエネルギー消費は、全体の割合からするとそれほど多くない。例えば日本の石油消費量のうちジェット燃料が占める割合はわずか3%である。地球環境全体の話からすると自動車のガソリン消費の方が圧倒的に多く、飛行機の電動化がそれほど大きな効果をもたらすわけではない。
だが飛行機の電動化には別な意味での潜在力がある。それは低騒音とメンテナンスの容易さである。現実にはこの2つの要素が航空業界に決定的な変化をもたらすことになる。
“空のウーバー化”が着々と進む
航空機はジェットエンジンはもちろんのこと、レシプロエンジン(ピストンエンジン)でも大きな騒音が発生する。このため、航空機の運用には多くの制約が伴うことになり、これがタクシーのような柔軟な運行の妨げになってきた。だが電気飛行機であれば、騒音の問題をほぼゼロにすることも不可能ではない。
これに加えて、電気飛行機はエンジンの構造がシンプルなのでメンテナンスの負荷が軽い。場合によっては運航コストを大幅に削減できる可能性があり、自動車のEV化と同じインパクトを航空業界にもたらすことになる。もし、安価な小型電気旅客機の開発に成功すれば、短距離路線において柔軟に航空機を運航することが可能となり、航空輸送の世界は一変することになるだろう。
既に米国では、空のウーバー化(シェアリングエコノミーの活用)がかなりのレベルまで進んでいる。米国では富裕層や企業のマネジメント層などを中心に、定期便の旅客機ではなくプライベートジェットを利用するケースが多い。既に2万機を超えるプライベートジェットが米国内で運行しており、実際、米国の大都市近郊にあるプライベートジェットの飛行場に行くと、ひっきりなしに航空機が離着陸する光景を目にすることができる。
日本ではプライベートジェットというと、超富裕層が利用するものというイメージが強いが、米国では必ずしもそうとは限らない。プライベートジェットを自ら所有し、自分専用に運行している人はごくわずかであり、多くのプライベートジェットのオーナーは、利用しないときには飛行機を時間単位で貸し出し、そこからのレンタル収入で高額な維持費の一部を賄っている。ファンドやリース会社が運用するケースや、ホテルのタイムシェアのような形で複数人が所有する形態も多い。
つまり、プライベートジェットも実質的にレンタカーやカーシェアのような状況となっている。利用者の多くは時間単位での支払いであり、この形態とウーバー型のビジネスは親和性が高い。
既に多くのプライベートジェットの予約サイトがあり、日程、出発地、目的地、人数などを入力すると、該当するスケジュールで飛べるプライベートジェットの一覧が表示される。機材や価格などから、好みのものを選択して予約するだけでよい。日程や移動する場所にもよるが、条件がうまく合致すれば、1時間750~1000ドルといった超低価格でプライベートジェットを利用することも可能だ。
もしこの分野に、圧倒的に安価な電気飛行機が登場してきた場合、近距離航空輸送の市場は爆発的に拡大する可能性がある。タクシーやハイヤーの予約サービスと、航空機の予約サービスは、おそらくシームレスにつながることになるだろう。AI(人工知能)を活用し、目的地を告げれば、もっとも効率がよく低価格なルートが提示されるはずである。その時、利用者はタクシーに乗るのと同じような感覚で、プライベート機を利用するようになるかもしれない。
グーグル共同創業者の「空飛ぶタクシー」
グーグルの共同創業者、ラリー・ペイジ氏が出資する「空飛ぶタクシー」のプロジェクトが、ニュージーランドで本格始動する見通しとなった。
ペイジ氏が支援する米シリコンバレーの新興企業、キティ・ホークはこのほど、新型の飛行機「コラ」のビデオを公開。ニュージーランドで製作と飛行実験を進める許可を得たと発表した。
同社によると、コラは米SF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズの自動車型タイムマシン「デロリアン」と、米テレビアニメ「宇宙家族ジェットソン」に登場する空飛ぶ車を合わせたような乗り物になるという。
「ヘリコプターのように離陸してから飛行機に早変わりする」といううたい文句の通り、垂直離着陸ができる。自動操縦システムを搭載し、時速150キロ以上のスピードで飛ぶ。100パーセント電動で、一度に100キロの距離まで航行できる。
キティ・ホークのニュージーランド拠点を率いるフレッド・リード氏は、同社のウェブサイトに掲載されたビデオの中で「大気汚染なし、排ガスなしで自動的に飛ぶ乗り物をお届けします」と話している。同社はコラのほかに「フライヤー」という飛行機も開発中。昨年4月に試作機の飛行実験を行った。こちらは車というより、水上オートバイに翼を付けたような形だ。
空飛ぶタクシーはほかにも、米配車サービス大手ウーバーや欧州航空機大手エアバスが開発を進めている。ほとんどがコラと同じように小型飛行機のようなデザインで、自動操縦技術や滑走路のいらない垂直離着陸方式が採用されている。エアバスの空飛ぶタクシー「バハナ」は先月、米オレゴン州で試作機の初飛行にこぎ着けた。2020年には商品化して発売する計画だという。
参考 ITmedia: http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1711/06/news094.html
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