ハワイの火山、爆発的噴火の恐れ

 5月3日に噴火したハワイ島キラウエア火山の溶岩が住民の生活圏を脅かしている。住宅が建ち並ぶレイラニ・エステートのすぐ近くで地面に亀裂が生じ、有毒ガスと溶岩が噴出したため、多くの住人が避難した。

 地球上で最も活発な火山であるキラウエア火山は、これまでもイーストリフトゾーンと呼ばれる割れ目帯に沿って頻繁に噴火してきた。そこから噴出した溶岩は、通常なら海へ向かって流れるのだが、今回は内陸へ向かって流れ出た。数百人の住人が教会や近所の民家へ避難した。

 米地質調査所(USGS)とハワイ火山観測所は5月9日、ハワイ島のキラウエア火山について、今後数週間のうちに爆発的な噴火が起きる可能性があると発表した。有害なスモッグや酸性雨が発生する恐れもあるとして、警戒を呼びかけている。



 USGSなどによると、火口内の溶岩湖が沈下を続けており、地下水と接触すれば、蒸気爆発が起きる可能性がある。蒸気爆発が起きれば、重さ数トンもある岩石や小石が大量に吹き飛び、酸性の雲が上空に広がって、広い範囲に酸性雨をもたらす恐れがある。

 「現時点で、そうした爆発的な活動が起きるかどうかの確証はない。爆発が起きた場合の規模や、爆発的な活動がどれくらい続くのかも分からない」という。

 キラウエア火山の噴火では、東部の住宅地でも地面に亀裂ができて溶岩が流れ出し、有毒ガスを放出している。当局は、二酸化硫黄の濃度が危険な水準にあると警告していた。

 USGSによると、風が弱まれば、こうした有毒ガスなどが湿気や埃と混じって「ヴォッグ」と呼ばれる火山スモッグを発生させ、硫酸の水滴によって呼吸器系の問題を生じさせる恐れがある。

 5月10日から11日にかけては貿易風が弱まると予想され、ハワイ島南部の海上に集積していたヴォッグが拡大して健康被害を発生させる可能性もあるという。同日にかけては雨が降る確率も高いことから、酸性雨と呼ばれる硫酸の雨が降る恐れもある。

 ハワイ大学の研究者によると、高い濃度のヴォッグは頭痛の原因になったり、肺や目の不快感を生じさせたりすることがある。ぜんそくなどの呼吸器疾患を持つ人は、肺の気道が締め付けられて呼吸困難に陥る恐れもある。

 ただ、「ヴォッグが健康な人に長期的なダメージを生じさせるという明らかな証拠はない」という。

 予報通り、週の後半にかけて貿易風が弱まれば、ヴォッグが北へ向かって集積し、5月11日までにハワイ島の一部を覆うことも予想される。ただ、風は再び吹き始める見通しで、そうなれば11日夜までに陸地からは吹き払われるかもしれない。

 ヴォッグが発生する地域では、酸性雨も予想される。酸性雨は農作物に被害をもたらし、車や工作機械や建築資材といった金属製品のさびを加速させる。

 人体への被害については、「酸性雨の中を歩いたり、酸性雨の影響を受けた湖で泳いだりしても、普通の雨の中を歩いたり非酸性の湖で泳いだりするより大きな危険が生じることはない」(米環境保護庁=EPA)という。

 溶岩だけでなく、火山活動でできた亀裂や地震による危険も続く。5月8日には、約1700人の住民が避難したレイラニ・エステーツ地区で、13番目と14番目の亀裂ができた。これまでに破壊された構造物は、住宅26軒を含め、少なくとも36棟に上る。(2018.05.10 CNN)


 なぜ噴火する火山のそばに住むのか?

 ここで疑問がわいてくる。なぜ人々は噴火する火山の近くに住むのだろうか。いったん噴火すれば、火山灰や有毒ガスで呼吸すら困難ななか、一刻も早く避難しなければならないことはわかっているはずだ。

 だが、まず第一に、実は火山に頼って生活している人々も多い。火山から得られる地熱エネルギーは、近隣の地域に電力を供給してくれる。また、活火山に近い土壌は有用な鉱物を多く含み、農業に適している。毎年火山には多くの観光客が訪れ、ホテルやレストラン、土産物店が立ち並び、雇用が生まれる。ツアーガイドの仕事も多い。その一方で、引越したくてもお金がないという人もいる。

 キラウエア火山の噴火で地震が起こり、赤茶色の分厚い噴煙の柱が立ち上る。

 また、文化的・宗教的理由で土地を離れない人もいる。レイラニ・エステートのすぐ外に家を持つ不動産仲介業者のジョーダン・ソナーさんは、溶岩が迫っていると聞いてすぐに重要な書類とペットを取りに自宅に戻った。家を失うことはそれほど怖くない、とソナーさんはワシントン・ポスト紙に語る。

 「私のとらえ方ですが、土地は本来私たちのものではなく、ペレのものであると考えています」。ペレとは、ハワイの人々が信仰する火山の女神である。「私たちは、許される限りはそこに住むことができますが、ペレが土地を取り戻したいと思ったら、いつでもそうすることができるのです。私は、とてもよい保険に入っていますし」

 ほかにも、多くの住人が、ハワイ島の景観の美しさ、地域社会、そして静かな環境はリスクを負うだけの価値があると考えているのだろう。

 「溶岩地帯であることは承知の上で家を購入しましたから、備えはできていました」。レイラニ・エステートに家を持つステイシー・ウェルチさんは、雑誌「タイム」のインタビューにそう答えた。現在、ウェルチさんの家が無事かどうかはわからない。「私たちは大丈夫。家は建て直せます」

 2018年1月25日、フィリピン東部にあるマヨン山が小規模な噴火を起こしたが、いつも通りの生活を続ける地元の人々。マヨン山は、フィリピンで最も活発な火山である。

 火山噴火は、ほかの場所で起こる自然災害と違って何らかの予兆を見せてくれる。キラウエアの場合、小規模な地震、頂上での溶岩量の増加、山の傾斜の変化など、直近の数週間で噴火の兆候がいくつか見られていた。この点は、突然襲ってくる地震、竜巻、火災、洪水などとは異なる。

 最近、火山噴火の影響で住人が避難した例はキラウエア火山のほかにもある。1月にはフィリピンのマヨン山が噴火して火山灰が降り注ぎ、数万人が避難を余儀なくされた。昨年11月には、インドネシアのアグン山が噴火し、バリ島北部で10万人以上の住人と数千人の観光客が避難した。(National Geographic news)


 世界遺産「ハワイ火山国立公園」

 ハワイ火山国立公園(Hawaii Volcanoes National Park、略称:HAVO)は、アメリカ合衆国ハワイ州ハワイ島の南に広がる火山地帯を中心とした国立公園である。

 ハワイ火山国立公園は、133,200haの保護区内にマウナロアとキラウエアの二つの巨大な活火山を有する。キラウエア火山から流れ出た熔岩は18.8億m3に達しており、周辺施設にもその影響が及んでいる。

 1987年にプナへ続く海岸沿いの道路(137号線)が、1988年に南海岸にあったワハウラ・ビジターセンターが、1990年にはカラパナの町が、1994年にはカモアモア・ビーチとワハウラ・ヘイアウがそれぞれ熔岩によって飲み込まれた。

 火山活動の中心部は公園北東部に位置するプウ・オオ火口で、流れ出る熔岩を見ることができる。

 1916年に、マウイ島のハレアカラ山域と共に、国立公園に指定1961年、マウイ島側をハレアカラ国立公園に分離指定している。1987年にユネスコの世界遺産(自然遺産)にも登録されている。

 公園の面積は324.4km2。ハワイ島の約3%にあたる。公園内には、1983年の噴火から、2004年現在も噴火活動を続けているキラウエア火山がある。また、ハワイ島の第二峰のマウナ・ロア山(標高は4,005m)の主要山地を含んでいる。


 キラウエア火山

 ハワイ島の火山の噴火の特徴として、比較的に穏やかな点があり、爆発的な噴火が少なく、溶岩流も火口から離れた場所では遅くなるため近づくことも可能である。

 そのため、キラウエア火山は世界一安全な火山とも言われている。キラウエアの火口のイキ火口から噴火の様子が観察できる。観察ツアーも存在するようである。キラウエア火山の噴火活動は、プナルウ黒砂海岸の形成に、大きな影響を与えていると考えられている。キラウエアは、20世紀中に、45回の噴火が記録されている。

 1983年1月にプウオオ火口から始まった噴火は、幾度かの活動の不活発化はあるものの、2017年3月の時点で、34年間も継続している。玄武岩質のマグマは粘度が低いため、溶岩流はまずは地表を伝い、表面が冷え固まった後は地下の溶岩洞を伝って流れ続けている。

 1790年に有史での最大の爆発が起こっている。火砕サージが発生し約80名が死亡した。1924年にはハレマウマウ火口に近づいて写真を撮っていた1名が爆発によって飛んだ岩に打たれ死亡している。


 1983年からの噴火の歴史

 キラウエアのイーストリフトゾーンにあるナパウ火口(Napau crater)の近くから、1983年1月3日夜に断続的な割れ目噴火の活動が始まり、1983年6月から1986年7月までの3年間には、断続的な溶岩噴泉の活動を通じて、プウオオ火砕丘が形成された。

 溶岩流は、1986年に最初の住居を飲み込み、1990年8月20日までにはカラパナの集落を埋め尽くして海まで到達し、さらに海を埋め立ててカイム集落まで達している。州道11号線を出て南海岸へ向かう州道130号線は以前火山国立公園のチェーン・オブ・クレーターズ・ロードへつながっていたが、2017年現在でも溶岩流に切断されたままである。

 2012年までにプウオオ火口は、4 km3の溶岩を噴出させ、125.5 km2を覆い、2.02 km2の新たな陸地を生み出した[8]。そして州道の14.3 kmを埋め、214件の建物を壊した。

 2014年12月からの火山活動では、プウオオ火口のマグマが発生源と思われる溶岩流は州道130号線付近まで押し寄せ、付近の人々を避難に追いやり、いくつかの住宅を破壊している。

 2018年4月30日の頻発地震に始まる火山活動では、5月4日に溶岩流がやはり州道130号線近くのレイラニ・エステーツ (Leilani Estates) とラニプナ・ガーデンズ(Lanipuna Gardens)の両住宅地に押し寄せ、プナ地区の中心地パホアのコミュニティー・センターへの避難勧告が出された。


 ハワイ島について

 ハワイ島は、ホットスポット上にあることから活発な火山活動が起きてきた。島は5つの楯状火山で構成されていて、互いに噴火期間が重なり合いながら、順番に噴火した。5つの火山は活動順に、コハラ(死火山)、マウナ・ケア(休火山)、フアラーライ(休火山)、マウナ・ロア(活火山)、キラウエア(活火山)である。

 これらのうちマウナ・ロアの一部とキラウエアがハワイ火山国立公園に含まれる。マウナ・ロアの南麓と西麓に露出する古い熔岩からの地質学的証拠の解釈により、ニノレ(英語版)とクラニ (Kulani) と名づけられた2つの古代の楯状火山がより新しいマウナ・ロアによって埋められているという説が提唱されたことがある。地質学者たちは現在これらの「露頭」がマウナ・ロアが初期に成長した部分であると考えている。

 最大寸法で、ハワイ島は差し渡しが150 km、10,432.5 km2の陸地面積を持ち、全ハワイ諸島を合わせた面積の62%を占める。島中央部にはマウナ・ケア(海抜4,205 m)とマウナ・ロア(海抜4,169 m)の2つの4000 m級火山がある。

 ギネス・ワールド・レコーズの認定によると、海洋底の基部から測った高さでは、マウナ・ケアが10,203 mで世界で最も高い山である。マウナケア山頂付近は、天候が安定し、空気が澄んでいることもあり、世界各国の研究機関が天文台を設置、日本の国立天文台が設置したすばる望遠鏡もここにある。また、山頂では常夏の島でありながら冬場には積雪も見られる。

 マウナ・ロアとキラウエアは活火山であるため、ハワイ島は今でも成長し続けている。1983年1月から2002年9月までの間に、キラウエア火山からの熔岩流が海岸を海側に延ばしたことによって220 haの陸地が加えられた。

 現代にもいくつかの町がキラウエアの溶岩流によって破壊された。1960年にカポホ(英語版)、1990年にカラパナ(英語版)とカイムー(英語版)が破壊された。カラパナ地域には深いL字型の巨大な淡水プールがあって島では「女王の浴槽(英語版)」と呼ばれていたが、1987年に熔岩によって流されてしまった。

 ハワイはハワイ弧状列島の最南端に位置し、アメリカ合衆国で最南端地点カ・ラエ(英語版)を含む。さらに南に行くと、最も近い着陸可能な島はライン諸島である。北にはマウイ島があり、アレヌイハラ海峡を挟んでハレアカラ(東マウイ火山)を見ることができる。

 ハワイ島の南東岸から29 kmのところにはロイヒ海山と呼ばれる海底火山がある。ロイヒは太平洋の海面下975 mで活発な噴火を続けている。ロイヒは継続して火山活動を続け、ついに山頂が海水準を突き破り、その後に海面上でもキラウエアとつながり、ハワイ島にさらなる陸地領域を付加すると考えられている。このイベントは現在のところ数万年後の未来に起こると予言されている。


 グレート・クラック

 ヒリナ地滑り(英語版)(グレート・クラックとも呼ばれる)は長さ13 km、幅18 m、深さ18 mの深い裂け目であり、ハワイ島のカウ地区にある。グレート・クラックはたくさんある一連の裂け目の一つであり、噴火によって形成された割れ目であって、実際には南西割れ目帯の延長である。しばしばこれらの割れ目は火山噴火の地点となり、ときには割れ目が深く大きく破砕されて島の塊を海に落下させることもある。

 グレート・クラックがハワイ島の南麓が島の残りの部分から離れるように動いた結果と考える人もいる。推測に富む話では、ある日、もしかしたらすぐに、島の大きな塊が崩れ海洋へと落下し、巨大な津波と地震を引き起こす。これは実際にはおよそ1万年ごとに起こり、可能性の範疇の話ではない。

 他の人たちはグレート・クラックは島を分離させる断層ではなく、マグマが割れ目帯へ向かって押し進んでいるために地殻がわずかに離れるように動いた結果として、おそらく数万年前に造られたと考えている。

 グレート・クラックは継続して測定されていて道も通っているが、いかなる拡張の兆候も見せてないし、この地点で島がシフトしている様子もない。さらに、グレート・クラックの壁は相対する部分で完全に形が合っており、これがかつてつながっていた地面が広がったものであることを証明する。

 グレート・クラックの近くからは12世紀にさかのぼる道、岩壁、および、考古学遺跡が見つかっている。これらの発見物の多くがフェンスの公園側にある。フェンスの向こう側の約7.90 km2の私有地が、特にこの領域にあるさまざまな遺跡とウミガメの棲息地を保護するために、ビル・クリントン大統領の時代に購入された。ところが、グレート・クラックの端近くはフェンスの外側の領域であり、公園の一部ではないにもかかわらず多くの考古学遺跡がある。

 1823年、非常に流動的な熔岩流がグレート・クラックの10 kmにわたる部分から流れてきてそれを海まで運んだ。 ハワイ火山国立公園で太平洋に流れ込む熔岩は島の面積を広げた。

 1868年4月2日、この地域をマグニチュード7.25から7.75と推定される地震が襲い、ハワイ島の南東岸を揺らした。それはパハラから8 km北でマウナ・ロア斜面の地滑りを引き起こし31人の死者を出した。津波でさらに46人が命を落とした。

 プナルウ、ニノレ、カワア、ホヌアポ、および、ケアウホウ・ランディングなどの村が深刻な損害を被った。ある人の話によると、津波は「たぶん60フィート (18 m) の高さはあった、ココナッツの木のてっぺんを越えて襲ってきた。…(中略)… 津波が引くときに場所によっては4分の1マイル (400 m) の距離も内陸までが、家、男、女、ほとんど全ての動くものが海に持ってかれた」。

 1975年11月29日、ヒリナ地滑りの幅60 kmの区画が海に向かって3 m崩落し、この崩れを8 m広げた。この移動はマグニチュード7.2の地震と高さ10 mの津波を引き起こした。プナルウに土台のある海に面した土地は洗い流された。ハナペで2人の死者と19人の怪我人が報告された。

 ハワイ島の北東岸はチリおよびアラスカの地震が引き起こした津波の損害も被ってきた。ヒロの市街地は1946年(アリューシャン地震)と1960年(チリ地震)に深刻な損害を受け多くの死者を出した。ラウパホエホエだけでも16人の学校児童と5人の教師が1946年の津波で失われた。


参考 CNN news: https://www.cnn.co.jp/usa/35118918.html


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