植物工場
植物工場は、内部環境をコントロールした閉鎖的または半閉鎖的な空間で植物を計画的に生産するシステムである。植物工場による栽培方法を工場栽培と呼ぶ。
植物工場は、安全な食料の供給、食材の周年供給を目的とした、環境保全型の生産システムである。一般に、養液栽培を利用し、自然光または人工光を光源として植物を生育させる。また、温度・湿度の制御や二酸化炭素施用による二酸化炭素飢餓の防止なども行われる。これらの技術により、植物の周年・計画生産が可能になる。
実際、冷夏や暖冬、台風などの気象変動の影響を受けることがなく、病原菌や害虫の被害にあうこともないため、凶作がなく、一定の量、形や味、栄養素などの品質、そして安定した価格での供給が可能である。
病原菌や害虫の侵入がないため、それらを予防・駆除するための農薬の散布も不要であり、無農薬による安全な生産が可能となる。加えて、細菌数が少なく、土等の付着もないため、洗浄せずに、あるいは簡易な洗浄のみで食べることができ、手間や水道費を削減することもできる。これらにより、外食産業においても利用されている。
植物工場産のレタスは、コンビニエンス・ストアなどで販売されているサンドウィッチに、サンチュは高級焼肉店の手巻き用野菜として定着している。最近では、定食専門店「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋が植物工場「大戸屋 GREEN」を建設している。
照射する光によってレタスの味が変わることを発見
今回、筑波大学は、さまざまな人工光照射条件下でサニーレタスを栽培した際に起こる代謝の違いを、統合オミックス解析により明らかにしたと発表した。
同成果は、筑波大学生命環境系の草野都 教授、電力中央研究所の庄子和博 上席研究員、北崎一義(現 北海道大学助教)、理化学研究所の福島敦史 研究員およびUC Davis Genome Center(米国)のRichard Michelmore教授らの研究グループによるもの。2018年5月の科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
同研究では、光による植物生長制御研究が盛んである青色光や赤色光に加え、植物が行う光合成との関係がはっきりとは明らかにされていない緑色光に着目した。サニーレタスの苗に青色光(ピーク波長=470nm)・赤色光(同680nm)および2種類の緑色光(同510nm、524nm)を、短期間(1日)および長期間(7日)、2種類の異なる光強度下(PPFD100、PPFD300)で生育し、メタボロ―ム解析を行った。
それぞれの実験条件における代謝物プロファイルを比較した結果、緑色光照射による代謝物プロファイルは赤色光に類似すること、短期間照射では、光強度の違いが代謝物プロファイルの変化に最も大きく寄与し、各光質の違いはその次に影響すること、長期間照射では、光強度ではなく、各光質の違いが代謝物プロファイルの変化を引き起こす原因となっていることを確認した。
これを受け、蛍光灯照射条件下で生育したサニーレタスの代謝物蓄積パターンと比較したところ、赤色光では糖類や植物脂質類が蓄積するのに対し、青色光では抗酸化成分として知られているフラボノール配糖体やクロロゲン酸類が高蓄積することが確認されたという。
植物が利用可能な吸収波長と狭波長LEDよる代謝物の種類および蓄積量の違い (出所:筑波大Webサイト)
植物工場の現実
まるで宇宙基地のような光景。温度や湿度を管理した人工的な環境で野菜を育てる「植物工場」。
天候に左右されず、安定した生産ができる「未来の農業」として注目されてきた。きっかけは2009年。農業の再生と技術の輸出を期待して、農林水産省と経済産業省が150億円の補助金をつけるなど後押した。
特にLEDなどを使う『人工光型植物工場』は当初の6倍に急増。しかしその一方で、黒字を達成した企業は19%にとどまり、事業から撤退するケースも増えている。
製紙業が盛んな静岡県富士市。3年前、製紙会社が老朽化した工場を閉鎖し、新たに植物工場を建設した。およそ8億円をかけて、最新のLED設備を導入。1日でリーフレタス1万2000株を収穫できる、国内最大級のLED植物工場。
参入を決めた、製紙会社社長の朝倉さんは、紙の需要が減る中で、将来有望な新規事業として植物工場に注目。立ち上げ時に交付される8000万円ほどの補助金も後押しになった。
しかし、待っていたのは大きな壁。植物工場の技術はまだ発展途上のため、大量生産のノウハウが確立されていない。大学が研究室で実験したデータなどを参考に生産をはじめたが、大規模な工場で再現しようとするとうまくいかなかった。
理由の1つは、水。土を使わない「水耕栽培」だが、地元の水はカルシウムを多く含むため、実験通りに肥料を入れても水質が安定しない。また、温度調節にも悩む。当初はエアコンを使ったが、広い工場内では栽培棚の温度が均一にならない。生育不十分なレタスは7割にもおよび、操業開始から1年たっても安定した出荷ができなかった。
その後、地道にデータを集めて栽培方法を確立、今では生産量の8割を出荷できるようになった。しかし、販売の面でも壁にぶつかる。
地元のスーパーで売られる一般のレタスは、安いときにはおよそ100円。それに対して工場産のリーフレタスは初期投資や照明などのコストがかかるため、158円と割高。無農薬などの特徴をPRしても、安さを重視する消費者が多く、売り上げがなかなか伸びない。
“需要を掘り起こせ” 植物工場 新たな試み
パチンコ店などを経営する会社が3年前に始めた植物工場。立ち上げ時から事業部長を務めている、甲斐剛さん。当初は他の企業と同じように、一般の消費者向けに地元のスーパーなどに出荷していた。
しかしあるとき、思わぬ需要があることに気づく。消費者向けに出荷した工場野菜を、スーパーの総菜担当者が好んで使っていると知った。虫の混入や菌の付着が少なく、お弁当などの加工食品に使いやすいというのが理由。
異物が入っていない、虫が隠れてたりというリスクが非常に低いというのが、ものすごく喜んでもらっているメリット。食の安全に敏感な食品加工業者に需要がある。
担当者を工場に招き、工場野菜なら安定した供給もできるとアピールする。食品加工業者は基本的に同じ品質のものが出るよう、監視、微調整している。特に強調しているのが、洗浄や消毒がほとんど必要ないため、手間やコストを大幅に減らせるというメリット。
異物混入リスクを排除するためのいろんな工程っていうのを、全部リスク排除した状態でお渡しできる。また、いま人手不足なので、できるだけ効率よく、安全安心の商品を作る。この工場では、こうした需要を掘り起こすことで売り上げを伸ばしてきた。
価格で勝負するのは難しくても、工場野菜ならではの特性がいきる販売先を見いだすことで打開しようとしている。
レタスとサニーレタスの栄養価
ところで、レタスとサニーレタスの栄養価はどうなっているだろう?レタスがない時に、なんとなくサニーレタスを選んでいる人も多いのではないだろうか?
ところが、サニーレタスの栄養価の方が高いのはあまり知られていない。レタスとは レタスとは、葉っぱが巻いているものを言うが 日本では長野県が産地として有名だ。全国の約3分の1を生産している。葉一枚一枚がしっかりしていて、瑞々しくて 甘みもあり、歯ごたえが良い。
一方、サニーレタスとは レタスとの最大の違いは、球体になっていないことです。 ほとんどの葉が巻かないで、立っているような感じ。 さらに、葉っぱの先が赤っぽくてなっているものもある。サニーレタスは植物工場でも栽培しやすい。
サニーレタスはレタスを品種改良したものだが レタスと比べると、柔らかい口当たりで 味もちょっと苦みを感じる。小さいお子さんだと、苦みがあって 結構嫌がって食べないことがある。
味や風貌も違うが さて、栄養素はどうだろうか。レタスとサニーレタスの違いを栄養素 100グラムを基準に比べてみた。見た目は似ているレタスとサニーレタスですが 栄養素においては、全然異なることがわかる。
レタス、サニーレタスの順に数値を述べると、カロチン 130μg、2000μg ビタミンC 5.0mg、17mg ビタミンE 0.3mg、1.22mg カルシウム 19mg、66mg カリウム 200mg、410mg 鉄 0.3mg、18mg 食物繊維 0.5g、0.6g カロリー 12kcal、16kcal
β-カロチンは約15倍、さらに、ビタミンCは3倍、ビタミンE4倍、カリウム2倍、カルシウム3倍...サニーレタスの方が、β-カロチン、ビタミンC、ビタミンEさらに、カリウムもカルシウムも多いことがわかる。β-カロチンには、活性酸素の働きを抑制する作用があるから、老化予防やがんを防ぐ効果が期待できる。
そして植物工場の衛生的な環境で栽培でき、安定供給できるならば、栄養価の面でも植物工場のメリットが生きるのではないだろうか。
植物工場のメリット・デメリット
植物工場は、内部環境をコントロールした閉鎖的または半閉鎖的な空間で植物を計画的に生産するシステムである。植物工場による栽培方法を工場栽培と呼ぶ。
植物工場は、安全な食料の供給、食材の周年供給を目的とした、環境保全型の生産システムである。
一般に、養液栽培を利用し、自然光または人工光を光源として植物を生育させる。また、温度・湿度の制御や二酸化炭素施用による二酸化炭素飢餓の防止なども行われる。これらの技術により、植物の周年・計画生産が可能になる。
一般に露地栽培と比較して、以下のような利点・欠点があるとされる。
利点
1.安定供給
冷夏や暖冬、台風などの気象変動の影響を受けることがなく、病原菌や害虫の被害にあうこともないため、凶作がなく、一定の量、形や味、栄養素などの品質、そして安定した価格での供給が可能である。
2.高い安全性
病原菌や害虫の侵入がないため、それらを予防・駆除するための農薬の散布も不要であり、無農薬による安全な生産が可能となる。加えて、細菌数が少なく、土等の付着もないため、洗浄せずに、あるいは簡易な洗浄のみで食べることができ、手間や水道費を削減することもできる。これらにより、外食産業においても利用されている。
実際、植物工場産のレタスは、コンビニエンス・ストアなどで販売されているサンドウィッチに、サンチュは高級焼肉店の手巻き用野菜として定着している。最近では、定食専門店「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋が植物工場「大戸屋 GREEN」を建設すると発表した(平成21年5月14日)。
3.高速生産
土壌によらず、養液栽培することにより、連作障害を起こさずに連作が可能である。また、光の強さや日長、温度や湿度、培養液成分や二酸化炭素濃度をコントロールすることで、その植物の生育にとって最適な環境を作り出すことができ、成長を促進させることができる。そのため、短期間で出荷可能な状態まで育てられ、年十数作することも行われている。
4.土地の高度利用
その時々の植物の大きさにあわせて苗を移動させることにより、最大限の密度での栽培が可能であり、更には、棚状に複数段配置する・斜めに配置する、などによって、土地の利用効率を一層高めることが可能である。 労務上のメリット 栽培技術を標準化することができ、農業知識が乏しいパート・アルバイトでも作業が出来る。また、労働環境が苛酷ではないので、高齢者や障害者による作業が可能である(実際に障害者の授産施設として植物工場が運営されているケースがある)。
欠点
1.高額の生産費用
工場を設置するためには、各種設備をそろえる必要があり、高額の初期投資が必要である。また、生産に要する光熱費などの費用も相当額に上る。植物の育成のための光源(高圧ナトリウムランプ、蛍光灯、発光ダイオードなど)の電力費、光源から発生する熱の冷却、その他適温の維持のための空調費、など。
近年は植物の育成に特化した高演色LEDが導入され、熱と光熱費の問題は大幅に改善されている。しかし、LEDには硫化ガスとマイグレーションによる劣化という特有の問題があり、維持管理や技術開発の新たなノウハウが必要とされる。
2.少ない栽培品目
上述の高額な生産費用により、採算の合うものは限られており、養液栽培が可能となっている品種の中でも、現在商品として生産されているものは、リーフレタスなどの葉菜類や、一部のハーブ類のみである。
3.大量生産ノウハウ
植物工場の技術はまだ発展途上のため、大量生産のノウハウが確立されていない。大学が研究室で実験したデータなどを参考に生産をはじめたが、大規模な工場で再現しようとするとうまくいかない。
土を使わない「水耕栽培」だが、水中にカルシウム成分を多く含むと、実験通りに肥料を入れても水質が安定しない。また、温度調節にも悩む。当初はエアコンを使ったが、広い工場内では栽培棚の温度が均一にならない。
参考 マイナビニュース: https://news.mynavi.jp/article/20180524-635615/
図解でよくわかる植物工場のきほん: 設備投資・生産コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営まで (すぐわかるすごくわかる!) | |
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植物工場経営-明暗をわける戦略とビジネスモデル- (B&Tブックス) | |
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