太陽光発電の設置場所
太陽光発電は、建物の屋根や空き地などに設置するのが一般的である。ソーラーパネルをたくさん設置するには広い土地が必要だから、価格が安い郊外エリアにソーラーパネルが集中してしまう。結果、景観が損なわれてしまう。また、電気を遠くから運ぶと、徐々に電気が失われてロスが生じる。
ソーラーパネルによる景観破壊と送電ロス。この2つを解決する方法として、「道路で太陽光発電する」という方法が注目されている。
道路で太陽光発電は奇抜なアイデアに思える。しかし、この発電方法は新しい太陽光発電のスタイルとして、欧米を中心に開発や実験がすでに行われている。
オランダのアムステルダムには、2014年に世界初の太陽光発電を備えた自転車専用道路が完成した。この道路はソーラーロードとも呼ばれ、太陽光電池パネルを強化ガラスで補強したコンクリート製のモジュールが使われている。
この道路で作られた電力はすでに電力網に組み込まれているが、将来的にはこの電力を街路灯に利用することも考えられている。今後は電気自動車や電動自転車に対して電気を供給し、路面から直接充電できることも目指している。
フランスは、再生可能エネルギーの分野でも世界をリードする国の一つ。特に道路に太陽光発電を利用することにおいては世界で最も進んだ国とも言われている。
それをよく表すのが、2015年にパリで開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)に出展した太陽光発電道路(Wattway)。Wattwayはフランスを代表する道路建設会社のColas社と、太陽光発電の国立研究機関が共同で開発した太陽光発電道路。この道路は多層構造の基盤に内蔵された太陽電池セルで構成されており、多結晶シリコンの薄いフィルムによって発電を行う。
このパネルは世界中どこの道路でも使用でき、大型トラックも含めたあらゆる自動車が走行できる。パネルモジュール自体は厚さがわずか数ミリメートルと極薄でありながら、非常に頑丈にできている。舗装道路の上にそのまま装着できるため、大掛かりな道路工事は必要ない。
この太陽光発電道路は20平方メートル分のパネルで家庭ひとつ分の電力(暖房用は除く)を供給することができる。1キロメートルの道路にWattwayのパネルを敷き詰めると、住人5000人の街の街路灯に必要な全ての電力がまかなえることになる。
太陽光や風車で電力の半分賄う コンビニの新型店舗
土地の狭い日本も道路を有効活用するのに太陽電池を敷き詰めるのはいいアイデアだ。ただでさえ、真夏の直射日光でアスファルト道路は暑くなる。このエネルギーを無駄にせず、電気に変えることはヒートアイランドを防ぐ意味でも理にかなっているのではないか。
今回、24時間営業するコンビニからの二酸化炭素の排出を減らそうと、セブン-イレブンは、電力のおよそ半分を再生可能エネルギーで賄える新しい店舗の展開を目指すことになった。
セブンーイレブン・ジャパンが神奈川県相模原市に5月22日にオープンする店舗は、太陽光発電のパネルが屋根や駐車場の地面などおよそ600平方メートルに設置されているほか、店の看板の上には風力発電の風車も備えられている。
こうした施設で発電し、余った電力を大型のバッテリーに蓄電して夜間に使うことなどにより、店舗に必要な電力の46%を賄うことができるという。
さらに、商品の陳列しやすくした冷蔵庫や必要な加熱時間を自動的に設定する電子レンジなど、従業員の作業量を減らす設備も導入されている。
会社では、実際の省エネ効果などを検証したうえで、駐車場がある郊外型への店舗を中心に全国に広げていきたいとしている。セブンーイレブン・ジャパンの大橋尚司取締役は「チェーンとして店舗が増えていけば、全体では二酸化炭素の排出量が増えてしまうことになる。二酸化炭素を出さない店舗に向けて技術開発を進めていきたい」と話している。
太陽光発電の上を車が走る! 先進国で開発が進むソーラーロード
ここでご紹介するのは、アメリカのミズーリ州で進められているソーラーロードの実証実験。
アメリカのミズーリ州にある旧国道66号線といえば、広大な国土の東西を結ぶアメリカの代表とも言える道路です。アメリカの発展を支え続けた高速道路は、建設から60年が経過。 老朽化への対応と新時代の道路システムを模索するため、「ROAD TO TOMORROW」プロジェクトが進められている。ソーラーロードは同プロジェクトの一環として、道路にソーラーパネルを埋め込む試験的な取り組み。
道路で発電した電気は、街灯や信号機、電気自動車を充電するために使える。さらに、新時代の道路機能として、ヒーターとLED電球を搭載。ハイテク化した道路には多くの電気が必要だが、必要な電気をその場で発電することで、送電時の電力ロスを抑えることができる。
アメリカの高速道路を全てソーラーロードにした場合、国内で必要な電気エネルギーのすべてをカバーできるとのこと。ソーラーカーの普及を後押しすることにもつながり、CO2の大幅な削減も目指せます。石油資源の枯渇や、原子力発電所などの事故リスクを解決することにもつながる。
大型車が走っても太陽光発電は無傷ってどんな構造?
「Road to Tomorrow」のソーラーロードに使われるのは、強化ガラスを使用した多層型のモジュール(組立ユニット)。六角形に加工されたパネルをパズルのように組み合わせて、道路を形成する。この特殊なソーラーパネルを開発したSolar Roadways(ソーラーロードウェイズ)は、エネルギー関連のベンチャー企業。
このソーラーパネルは、試作品の段階でもトレーラーの牽引車が走れるほど丈夫とのこと。もし破損したパネルがあっても、その箇所を入れ替えるだけで対処できるので管理に手間がかからない。アスファルトと同じくらいの強度で維持管理費用を安くし、コスト削減効果をもたらす。
雪を溶かし、道路標識も変えられる高機能道路に進化
Solar Roadwaysの発電パネルは発電以外の機能を持ち、道路の使い方を大きく進歩させる可能性を秘めている。
ソーラーパネルにLED電球をとりつけ、光らせたり線を表示させることができます。道路に交通情報やデジタル式の標識を表示したり、表示内容を操作することも可能。耐圧センサーや対物センサーを組み合わせれば、シカやクマなど野生動物の侵入地点を特定してパネルを光らせて、運転者に注意を促すこともできる。
もっと身近な場面でも、たとえば駐車場で障がい者などの優先スペースが埋まったとき、通常スペースをすぐに優先スペースに切り替えて優先スペースの空きを確保することができる。 道や駐車場を、柔軟に運用できるようになる。
さらに、内部に組み込まれたヒートパネルで、道路の雪を溶かすことができる。除雪にかかる人的コストを減らし、利用者の利便性も維持できる。
この最先端の技術が成功すれば、生活スタイルに変化をもたらすだけでなく、州への収入源になると見込まれている。
ドイツはどんな道路にも敷設できる高効率ソーラーパネルを開発
ドイツのベンチャー企業であるソルムーブ(Solmove)は2012年の創業以来、アーヘン工科大学やドイツ連邦道路交通研究所の協力を得て、道路での発電用にソーラーパネルの開発に力を入れてきた。
Solmoveのソーラーパネルの特徴は、四方八方から差し込む光をまんべんなく屈折させて、太陽電池に取り込む仕組みであること。そして、変換効率(太陽光エネルギーを電気エネルギーに変えられる割合)の高さ。
Solmoveの道路用ソーラーパネルの変換効率は10~15%で、これは屋根や空き地に取り付ける一般的な太陽光発電と同じくらい高い効率で発電できることを示す。
道路用の太陽光発電は地面に対して水平に設置されるため、一般的に変換効率が低いとされている。ドイツのような技術力の進歩によって、発電コストを下げることができるのである。
これは驚き!スウェーデンは走行中のハイブリッド車に電気を供給
ここまで、太陽光発電を道路で行おうとする国の事例を紹介してきた。意外と多くの国で、実証実験の段階にまで進んでいるのが驚きだ。その中でも、スウェーデンの進歩ぶりは諸外国の一歩先を行くもの。
スウェーデンの電気道路(Electric Road)システムでは、走行中のハイブリッド車に電力を供給することができる。
この画期的なシステムは、世界で最も再生可能エネルギーの利用が盛んなスウェーデンが官民共同で作り上げた世界初のシステム。スウェーデン中部にあるイエヴレ市で公開された。
片側2車線のうち、外側の1車線上に電力供給用の架線が張り巡らされている。充電に対応できるトラックは屋根の上にパンタグラフを設置しており、走行しながら電力供給を受けることができる。電車の電力供給の仕組みと似ていますね。
この架線から電力を供給できるのは、スカニア(Scania)社が開発した大型ハイブリットトラックです。トラックの運転席の上部にパンタグラフを格納しており、それを伸ばして架線から電気を受ける。
リチウム充電容量が5kWhなら、充電が終われば最長3キロまで走行できる。なおトラックの総重量は9トンで排気量は9リットル。このトラックはスウェーデン製ですが、電力の技術はドイツのシーメンス社が開発したものである。(タイナビ:2018年5月16日https://www.tainavi.com/library/4048/)
参考 NHK news:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20180521/k10011447161000.html
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