環境DNAとは何か?
環境DNAというと、海・川・湖沼などの水に含まれるDNAである。生物は日々、皮膚のかけら、糞、卵、精子などを環境に落としながら生きている。これらのゴミには生物のDNAが含まれていて、周囲の水や土に混ざってゆく。つまり、1本のガラス瓶に採取した土や水が遺伝子ライブラリになっているのだ。
生物の個体から直接採取されたのではなく、環境の中にあるこうしたDNAが、環境DNAと呼ばれる。科学者は土や水からDNAを単離し、塩基配列を解読し、既知のDNAの塩基配列のデータベースと比較して、それを残した生物を特定できる。
近年、配列決定のコストが急激に下がり、多くのDNAデータが収集されるにしたがって、参照用データベースの規模が爆発的に拡大している。米国立衛生研究所(NIH)が運営する巨大なDNAデータベースGenBankに登録されているDNAの塩基配列データは、1982年以降、18カ月ごとに倍増している。現在では、塩基配列では2億以上、塩基対の数としては260兆を超えるデータが蓄積されている。もしデータベースにない生物のDNAがある場合、その種を特定できずとも、未知の生物がいるかどうかははっきりする。
これは、日本発の技術で、開発したのは、神戸大学や京都大学などの共同研究グループ。海水のDNAを解析する新技術を活用してわずか1日の調査で魚種の8割を検出できた...と発表している。
そして、今回スコットランドのネス湖に棲むかもしれない、ネッシーの調査に環境DNAが使われることになった。
科学者チームが、ネス湖の水に含まれているDNA断片の配列を片っ端から決定することで、この湖にネッシーがすんでいる(あるいはすんでいた)かをめぐる論争に決着をつけようとしている。
ニュージーランド、オタゴ大学の遺伝学者ニール・ジェメル氏が率いる国際研究チームは、2018年4月からネス湖の水のサンプルを採取していて、6月からはサンプル中に含まれるDNAの抽出に着手する。彼らの目的の1つは、ネッシーの遺伝子探しだ。
ネッシーにチェックメイト! 環境DNA分析を開始
調査結果は2019年1月までに発表される予定だが、このプロジェクトは「環境DNA(eDNA)」にスポットライトを当てることになるだろう。環境DNA分析は比較的新しい研究分野で、これまでにない洞察をもたらすことが期待されている。
ネス湖プロジェクトとはどのようなものなのか見ていこう。生態系全体のスナップショットをいちどに得られる環境DNA分析は、非常に強力な技術だ。
「想像してみてください。生態系から土か水を採取するだけで、そこに生息するすべての生物種のカタログを作れるのです」。オタゴ大学のジェメル氏の研究室に所属するヘレン・テイラー氏は、2017年にブログで環境DNAについてこう述べた。「そこにいるすべての生物を研究室に持ち帰って顕微鏡下で同定するようなサンプリングは、もはや必要ありません」
すでに数々の大発見が生まれている 環境DNA分析からは、すでに数々の大発見が生まれている。2011年には、アジア産のコイのDNAがシカゴ周辺の運河で確認され、侵略的外来魚が五大湖まで広がろうとしていることが明らかになった。2016年には生物学者がカタール沖の海水を採取し、ジンベエザメの巨大な群れの集団遺伝学的研究を行った。2017年には、スペイン、ロシア、ベルギーの洞窟の土からネアンデルタール人のDNAが単離されたという発表もあった。
そして現在、ナショナル ジオグラフィック協会のチームは、1930年代に行方不明になった米国の女性飛行士アメリア・イアハートが不時着して死亡したと考えられている南太平洋のニクマロロ島で、採集した土から環境DNAを抽出し、彼女のDNAが含まれていないか確認しようとしている。
環境DNAとネッシー
ネッシーがすんでいるとされるネス湖は、スコットランド北部の深い淡水湖で、1万年以上前に氷河の作用によって形成されたと考えられている。この湖で未確認動物を目撃したという証言が何十年も前から相次いているが、科学者たちは、首の長い大型爬虫類という典型的なネッシーの姿から考えて、本物とは考えられず、でっち上げだとしている。
一部の未確認動物学者は、ネッシーは首長竜だと主張してきた。首長竜は恐竜時代に生息していた海生爬虫類だが、化石記録から、今日の鳥類につながる種以外の恐竜と同様、6600万年前には絶滅していたことが強く示唆されている。
たとえ首長竜が今日まで生き残っていたとしても、ネス湖にすむのは難しいだろう。生態学的研究から、ネス湖には体重約900キロの首長竜の繁殖集団が生きられるほど餌になる魚がいないことがわかっているからだ。
ネッシーの目撃例のいくつかは、たまたま迷い込んできたチョウザメか、だれかが放流したヨーロッパオオナマズだったのではないかと言う人もいるが、どちらの魚もネス湖で捕獲されたことはない。
ネス湖プロジェクトを率いるエイドリアン・シャイン氏は、「The Skeptic」誌へのメールで、「ネス湖では、私のお気に入りのチョウザメがいる証拠も、ヨーロッパオオナマズがいる証拠も見つかっていません」と説明している。「チョウザメ説もヨーロッパナマズ説も、ネス湖に不思議な生物がいる可能性が小さくなり、魚に注目が集まる中で出てきたものです」と言う。
ネッシーが見つからなかったら環境DNAプロジェクトは無駄になるのか?
そんなことはない。ジェメル氏の研究からはネス湖全体の生態系の遺伝子プロフィールが得られる。そこからなにが見つかるにせよ、環境DNA分析は便利なものだ。たとえば近年、侵略的外来種のサケがネス湖に入り、在来種を脅かしているが、環境DNAは、その監視に役立つだろう。
急速に発展する科学の分野で、世間に広く知られることは非常に重要だ。テイラー氏は2017年に、「自分が所属する研究室の主宰者がネッシー探しに参加することに、私は疑問を感じていました」と記している。「けれどもその後、環境DNAのすばらしい可能性を宣伝するのにうってつけのやり方であることに気づきました」(National Geographic)
ネッシー目撃の歴史
ネッシー(英: Nessie)は、イギリス、スコットランドのネス湖で目撃されたとされる、未確認動物「ネス湖の怪獣 (the Loch Ness Monster、ロッホ・ネス・モンスター)」の通称。未確認動物の代表例として世界的に知られ、20世紀最大級のミステリーとして語られてきた。記録として残されている最古の記録は西暦565年、アイルランド出身の聖職者コルンバの生涯に関する伝記中で言及された、ネッシーの発見報告である。
当時コルンバは、スコットランド北部の異教徒へのキリスト教布教活動を精力的に行っており、その半ばイギリス最大の淡水湖であるネス湖でネッシーと遭遇したという。以来、多くの発見報告がなされてきた。
目撃例が飛躍的に増えたのは1933年以降で、これはネス湖周辺の道路がこの頃整備されたためとされる。同年5月、湖畔でホテルを経営するマッケイ夫妻による目撃談が新聞報道され、話題を呼んだ。11月にはヒュー・グレイによる最初の写真が撮影、公表された。1934年4月にはいわゆる「外科医の写真」(後述)がデイリー・メール紙に掲載され、大きな反響があった。
その後も現在に至るまで多くの目撃例があり、写真や映像も撮影されてきた。1951年のラクラン・スチュアートによる写真は、ネッシーの背中の三つのコブと思しき物体が捉えられており有名である。1955年、P・A・マクナブ撮影の写真は、湖岸のアーカート城址が写り込んでおり、それとの比較でネッシーの大きさが、湖面に出ているだけでも10 - 15メートル以上と推測できる貴重な写真とされる。
映像では1960年、著書『ネス湖の怪獣』(大陸書房)で知られるネッシー研究家ティム・ディンスデールにより撮影された、対岸に向かって泳ぐネッシーを捉えたとされるフィルムが有名。また、1975年にボストンの応用科学アカデミー研究チームにより撮影された、ネッシーのほぼ全身と、頭部のアップを写したとされる水中写真は世界的なニュースとなった。
目撃例や写真は、水面に頭部や背中のように見える突起物が移動するところや、湖畔を巨大な姿で移動するもの、まれには陸上に上がったなど、さまざまである。このため、普段は水中に住むが、時々水面に頭などを出すのではないかとの説もある。サッチャー政権下のイギリスでは、ネッシーの保護が検討されていたともいわれる。
2005年3月頃、ネス湖の湖畔で、シカの死体とともに長さ10センチメートルほどの牙状のものが見つかっており、一部ではこれをネッシーの牙として、なおも存在を信じる人々がいる。
参考 National Geographic news: http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/052500229/
海洋と生物 234 Vol.40-No.1 2018 環境DNAが拓く魚類生態研究の未来 | |
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