地球と同サイズの惑星探せ 宇宙望遠鏡TESS打ち上げ
宇宙望遠鏡「TESS」といえば、米航空宇宙局(NASA)が4月18日打ち上げた宇宙望遠鏡。およそ2年間にわたって地球を周回し、地球と同じぐらいの大きさで、生命が存在できそうな惑星の発見を目指す。
太陽のように光を放つ恒星を観測すると、周回する惑星が前を横切った場合にわずかに暗くなる。TESSはそのわずかな変化から惑星を見つけ出し、その大きさや公転の軌道、周期などをはじき出す。NASAがマサチューセッツ工科大と共同で3億3700万ドル(約360億円)かけて開発した。
NASAが2009年に打ち上げた宇宙望遠鏡「ケプラー」は、9年間の観測で2600個以上の系外惑星を見つけた。TESSはケプラーよりも400倍広い視野を持ち、ほぼ全天をカバーする。2年間で太陽系に近い恒星を中心に20万個を調べる計画だ。
太陽系の近くで惑星が見つかれば、地上の望遠鏡でも観測しやすい。研究チームは、地球と同じぐらいの大きさの惑星が50個以上見つかると期待している。
NASAの新宇宙望遠鏡が20万個の星とらえる 「TESS」が初画像
そして今回、新しい宇宙望遠鏡「TESS」が約20万個の星をとらえた画像を地上に送ってきた。NASAが5月19日発表した。
公開された画像はTESSがとらえた初画像。ケンタウルス座を中心に20万個以上の星をとらえている。画像の下部中央やや左側にはケンタウルス座のベータ星がひときわ明るく輝いているのが分かる。
TESSがとらえた初画像。下部中央のやや左側にケンタウルス座のベータ星が輝いている
TESSは生命存在の可能性がある「第2の地球」を探すために4月18日に米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた。5月17日には月の重力を使って軌道を変える「フライバイ」を成功させた。
4台の高性能カメラを搭載し、ケプラー宇宙望遠鏡などによるこれまでの観測領域の400倍以上となる天空のほぼ全域を観測できる。観測領域が最大になる軌道に入るための最終軌道修正を5月30日に行い、6月中旬には本格的な観測を始める。
トランジット系外惑星探索衛星(TESS)とは何か?
トランジット系外惑星探索衛星(Transiting Exoplanet Survey Satellite、TESS)は、トランジット法を用いて太陽系外惑星を探索するために設計された、アメリカ航空宇宙局のエクスプローラー計画で計画される宇宙望遠鏡である。
マサチューセッツ工科大学がGoogleの基金を受けて設計し、2011年2月に42者から提出された提案から、同年9月に絞られた11提案の中に残った。2013年4月5日、TESSとNeutron star Interior Composition ExploreR (NICER)が2017年の打上げに選ばれたことが発表された。打ち上げは2018年4月の予定で、遅くとも同年6月までに行う予定となっている。
打上げ後、TESSは、近くて明るい恒星の周りにある太陽系外惑星を探索して2年間の掃天観測を行う。TESSは、合計67メガピクセル4つの広角望遠鏡とCCDイメージセンサ検出器を備える。フィールド毎に最大1万個に上るターゲットの恒星のデータは、分析のために2週間毎に地球に送信される。2時間の露出時間を取ったフルフレームの画像も同様に地上に送信され、ガンマ線バーストのような予期せぬ過渡現象の探索に用いられる。
月共鳴軌道を利用
北天と南天の両方の画像を得るために、TESSは、これまで使われたことがなかったP/2と呼ばれる月共鳴軌道を利用する。この非常に軌道離心率の大きい軌道は、月によって安定化され、非常に安定度が高い。TESSの損傷を低減するために、軌道の大部分はヴァン・アレン帯の外側である。13.7日毎に軌道の近地点に来る度に、TESSは約3時間に渡り、それまで蓄えたデータを地球に向けてダウンリンクする。
サーベイは、視等級が12より明るいG型主系列星及びK型主系列星を対象とする。1000個の近い赤色矮星を含む約50万個の恒星が探索の対象となる。TESSは、地球程度よりも大きく、軌道周期が2ヵ月までの、1000個から1万個の太陽系外惑星候補を発見することが期待されている。
これらの候補は、後に自動惑星検出望遠鏡、高精度視線速度系外惑星探査装置、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡等によってさらに調査が行われる。マサチューセッツ工科大学 の開発チームは、最初の有人恒星間航行は、TESSによって発見された惑星になるだろうという楽観的な見解を示している。
トランジット法とは何か?
太陽系外惑星(Extrasolar planet, Exoplanet)とは、太陽系にとっての系外惑星、つまり、太陽系の外にある惑星である。
多くは(太陽以外の)恒星の周りを公転するが、白色矮星や中性子星(パルサー)、褐色矮星などを回るものも見つかっており、他にもさまざまな星を回るものが想定される。自由浮遊惑星(いかなる天体も回らない惑星大の天体)を惑星に含めるかどうかは議論があるが、発見法が異なることなどから、系外惑星についての話題の中では自由浮遊惑星は別扱いすることが多い。
観測能力の限界から実際に発見されずにきたが、1990年代以降、多くの系外惑星が実際に発見されている。その方法として注目されているのが「トランジット法」である。
トランジット法は食検出法とも呼ばれ、惑星が恒星の前を横切る時の明るさの変化によって惑星を探す方法である。星食や食変光星の観測と同じ原理である。地球から見て惑星が恒星面を通過する割合はあまり大きくないため、実在する惑星に対しこの方法によって発見できる惑星の割合は小さいものの、比較的安価な機材でも観測可能であり、アマチュアにも手が届くという利点がある。
ドップラー偏移法など、他の手段で発見された惑星をトランジット法で確認するということも行われている。恒星のふらつきを捉える方法では、惑星の公転面と視線方向のなす角度が分からないため、質量は考えうる最小の値しか求めることができない。しかし恒星面通過が観測された惑星は視線方向とのなす角が分かるため、惑星の質量を厳密に求めることができる。また異なる手段で惑星を検出することにより、その惑星の存在がより確かなことになるという意味でも、意義深い。
惑星が恒星面を通過する際に恒星の光の一部が惑星の大気を通過するため、惑星大気の成分を探る方法としても期待されている。実際この方法によりオシリス (HD 209458 b) という惑星の大気に酸素と炭素が存在していることが確認された。
人工衛星による観測も行なわれている。2006年12月27日、欧州宇宙機関は太陽系外惑星探査衛星COROTを打ち上げた。食検出法を用いた地球の数倍までの地球型惑星の発見が目的である。
また、アメリカ航空宇宙局も同様の衛星であるケプラーを2009年3月6日に打ち上げた。10万個の恒星を観測できる能力があった。2013年に故障のため、一時運用終了したが、2014年5月末から「K2ミッション」にて再開した。2018年4月にはTESSが打ち上げられた。
参考 アストロアーツ: http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/9923_tess
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