高齢社会と認知症予防
総人口に対して65歳以上の高齢者人口が占める割合を高齢化率といい、世界保健機構(WHO)や国連の定義によると、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会を「超高齢社会」という。
平均寿命が長くなり、少子化が進むにつれ、社会の中で高齢者の占める割合が増え、将来に向けて大きな課題となっている。65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、37(2025)年には約5人に1人になるとの推計もある。
現在のところ認知症の治療に決定的な方法はないが、生活習慣病の予防は認知症予防にもつながる。バランスのとれた食事や適度な運動を心がけよう。アルツハイマー型認知症は、ある日突然発症するわけではない。脳の小さな変化が少しずつ進行し、かなり進んだところで、疑いようもない認知症の症状が出るようになる。
最近注目されているのは、このはっきりした症状が出る一歩手前の段階。これを「軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)」と呼び、程度の差こそあれ、誰にでもあるとされている。この「認知症の予備軍」の時期に運動などの対策をとることで、発症を予防したり、遅らせたりすることが可能と言われている。
糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、運動不足といった「生活習慣病の危険因子」は、アルツハイマー病も生じやすくさせることが疫学調査によって明らかになっている。
今はまだ認知症予防に決定的な治療法はないとしても 、バランスのとれた食事や適度な運動は、認知症が生じる可能性を低くするばかりでなく、心筋梗塞や脳梗塞、がんなど多くの病気のリスクも減らす。広い意味での健康維持と捉えて、取り組んでみよう。
食べものの代表格は魚。青背魚にはDHAとEPAが豊富に含まれており、脳の機能を保つ働きがある。ほかにも脳トレや社会参加など、ストレスを感じないものなら積極的に試してみたい。
「どまんなか」で認知症予防?コメに多くの予防成分
今回、山形県のお米「どまんなか」に認知症予防効果のある成分が多く含まれることが明かになった。かつて「はえぬき」と並ぶ山型県産米の主力品種「どまんなか」。
山形大学の発表によりますと、農学部の渡辺昌規准教授と県水田農業試験場の研究グループは、「コシヒカリ」など全国の主な品種と県の品種、合わせて17について、認知症の予防効果があるとされる「フィチン酸」と呼ばれる成分がどの程度含まれているか調べた。
その結果、「どまんなか」が最も多い 4%余りで「コシヒカリ」の1.3倍であった。
フィチン酸は米ぬかに多く含まれ、アルツハイマー型認知症に予防効果があるという研究データが発表されている。
山形大学は県内企業と共同で、米ぬかから効率的に抽出する方法をすでに開発し、今後、サプリメントとして商品化することも検討している。渡辺准教授は「ブランド米の競争がある中で、機能性の部分で付加価値をつけることができる。栄養補助食品の開発など6次産業化につなげたい」と話した。
「どまんなか」は山間部の栽培に適したコメとして県が開発した品種で、平成3年に「はえぬき」とともにデビューしたが、その2年後の冷害で大きな被害を受けたことなどから、現在の作付面積は県産米全体の0.5%にとどまっている。共同研究を行った県は「どまんなか」の再評価につながると期待している。
県農業総合研究センターの土地利用型作物部の中場勝部長は「『どまんなか』はもともと味のよい品種なので、また脚光を浴びるようにPRしていきたい」と話していた。
フィチン酸とは何か?
フィチン酸(phytic acid)は生体物質の1種で、myo-イノシトールの六リン酸エステル。略称は IP6。組成式は C6H18O24P6 、分子量は 660.08、CAS登録番号は [83-86-3]。
種子など多くの植物組織に存在する主要なリンの貯蔵形態であり、特にフィチン(Phytin: フィチン酸のカルシウム・マグネシウム混合塩で、水不溶性)の形が多く存在する。キレート作用が強く、多くの金属イオンを強く結合する。ミオイノシトールと共通の作用を持つとされている。
フィチン酸の形のリンは、非反芻動物ではフィチン酸消化酵素であるフィターゼ(英語版)(フィチン酸を加水分解しリン酸を遊離する酵素)がないため、一般に吸収されにくい。
一方反芻動物はルーメン(反芻胃)内の微生物によって作られるフィターゼがこれを分解するためフィチンを利用できる。現在非反芻動物(ブタ、ニワトリなど)は主にダイズ、トウモロコシなどの穀物で肥育されているが、これらに含まれるフィチンは動物に吸収されずに腸管を通過するため、自然界のリン濃度を上昇させ、富栄養化などの環境問題につながる恐れがあるとされる。
飼料にフィターゼを添加することでフィチン由来のリンの吸収を増すことができる。またいくつかの穀物で、種子のフィチン酸含量を大幅に低下させ無機リン含量を上昇させた品種が作出されている。しかし生育に問題があることからこれらの品種は広く利用されるに至っていない。
フィチン酸が尿路結石・がん予防に効果
フィチン酸は未精製の穀物や豆類に多く含まれる。精製後の穀物にも少量含まれているが、白米では炊飯により多くが分解される。フィチン酸は鉄、亜鉛など重要なミネラルに対して強いキレート作用を示すため、一方、この性質が腸管での酸化ダメージを減らすことで大腸がんの予防に役立つ可能性がある。
抽出したフィチン酸を添加した1925年の研究を根拠に、食品中のミネラルやタンパク質との強い結合となっている場合に、消化吸収を妨げる方向に働くと考えられてきた。しかし、現在では糠などに閉じ込められた状態ではミネラルの吸収に問題が見られないことがわかってきた。ただし、ミネラルが著しく少ない食事において、フィチン酸が大量の場合にミネラルの吸収を阻害する可能性があり、この作用は必須ミネラルの摂取量が著しく低い発展途上国の子供のような人々には好ましくない。
1960年代から食物繊維が大腸がんを予防するのではないかと考えられてきたが、1985年、がんを予防しているのは食物繊維ではなくて繊維に含まれるフィチン酸の摂取量が多い場合に大腸がんの発生率が少ないことが報告された。その後、フィチン酸の単独投与によってがんの抑制作用が観察された。
1998年には京都で、フィチン酸などの米ぬか成分に関する国際シンポジウムが開かれ、フィチン酸の生理作用の研究報告がなされた。尿路結石や腎結石の予防、歯垢形成の抑制、大腸がん、乳がん、肺がん、皮膚がんの予防に役立つ可能性がある。抗がん作用や抗腫瘍作用、抗酸化作用による治療への応用が期待されて研究が進められている。イノシトールとの同時に摂取したほうが効果が吸収されやすい。現在では、単独に遊離されたサプリメントが流通している。
参考 山形新聞: http://yamagata-np.jp/news/201806/08/kj_2018060800157.php
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