ティラノサウルスの進化

 ティラノサウルスといえば、約6850万- 約6550万年前(中生代白亜紀末期)の北アメリカ大陸に生息していた有名な肉食恐竜である。大型獣脚類の1属。

 骨格標本から推定される成体の体長は約11 - 13m、頭骨長は約1.5mで、その体重は概ね5 - 6tと推測されている(体重に関しては異説も多く最低3tから最大9tまで幅がある)。発見されているティラノサウルスの化石はそれほど多くはなく、2001年の時点では20体程度であり、そのうち完全なものは3体のみである。

 ティラノサウルスの祖先はいったいいつ頃出現し、どのように進化したのだろうか?

 2016年3月には、およそ9000万年前、ティラノサウルスの祖先に当たる新種の恐竜の化石が、ウズベキスタンで発見された。体は馬ほどの大きさで、長い脚で走って獲物を追いかけ、鋭い牙で草食動物を捕食していたとみられる。



 研究チームがティムルレンギアの頭部を再現したところ、脳と耳がティラノサウルスによく似ていることが分かった。ジュラ紀に登場した初期のティラノサウルスは人よりやや大きい程度だったが、およそ1億年を経て、重さ7トンの巨大恐竜に進化した。

 ティラノサウルスがどのような過程を経て大型化したのかはこれまでほとんど分かっていない。最も古いティラノサウルス類の化石は1億7000万年前のもので、それ以降、およそ1億年前まで、彼らはせいぜいイヌ程度の大きさしかなく、厳しい環境をなんとか生き延びていた。

 ところが白亜紀の終盤、8000万年前ごろには、ティラノサウルス類はTレックスのような、地球史上最も大きく、最も恐ろしい陸上の捕食者の仲間へと進化を遂げていた。しかも、体が大きいだけではなく、彼らは天賦の才能にも恵まれていた。

 今回、北海道芦別市でティラノサウルス類の尾椎骨の一部が発見された。北海道大学などの研究グループが6月20日発表した。同グループはティラノサウルス類の巨大化解明に重要な成果、としている。

 発見されたのは、芦別市に分布する蝦夷(えぞ)層群羽幌川(はぼろがわ)層からサメの仲間や二枚貝の化石が多く見つかっている砂岩層がある。これは8980万~8630万年前の白亜紀後期コニアシアンの地層だ。


北海道で見つかった恐竜化石は中型のティラノサウルス類

 北海道芦別市に分布する蝦夷層群羽幌川層からは,サメの仲間である板鰓類や二枚貝化石を多産する厚さ50cm程の砂岩層(コニアシアン後期)が報告されている。2016年,アマチュアの化石愛好者である小川英敏氏がこの層から脊椎骨の椎体(椎骨のうち円柱形をしている部分)1 個を発見した。北海道大学大学院生の鈴木氏を中心に、北海道大学と三笠市立博物館は、この化石の部位と分 類群の同定を外部形態比較とCTスキャンによる内部構造の分析により行った。

 部位と分類群の同定 椎体の腹側に血道弓(尾椎の下で動脈を保護する役割の骨)の関節面があり,椎体の両側面の背側 には横突起の基部が残っていることから、本標本は尾椎骨の椎体であり、尾の中間付近の椎体であると同定した。CTデータによると、海綿骨の密度と皮質骨の厚さ、骨梁の太さから、陸に棲む脊椎 動物の椎体であると考えられた。

 また、この椎体内部の大きな空洞や椎体が糸巻状であることから、本標本は恐竜類獣脚類と呼ばれる分類群のものであると同定した。本標本は全長89mm あり、中型以上の獣脚類と考えられる。北半球の白亜紀後期の地層からは、以下に比較する①~⑤の グループの中型以上の獣脚類が知られている。

 獣脚類恐竜のグループの同定まず、本標本の高さと長さの比率(H/L比)が0.63と前後に長いことから,①テリジノサウルス 類と②オヴィラプトロサウルス類が除外された。また,前後の関節面の縁が丸みを帯びている 形質は,③オルニトミモサウルス類とも異なる。本標本は両凹型椎骨であり,両関節面が平らな④ドロマエオサウルス科とも合致しない。

 一方,⑤ティラノサウルス上科の尾椎との比較では、形態(H/L比、関節面の丸い縁、両凹型椎骨、深い前関節面)がほぼ一致した。椎体だけからの同定には限界があるものの、本研究では、この標本はティラノサウルス上科に類似すると結論付けた。

 本標本の発見の意義 これまで日本国内の白亜紀後期の地層から産出したティラノサウルス上科とされる化石は,九州か ら東北まで計4ヶ所から報告されているが、北海道からの報告は初となる。コニアシアンの海成層(堆積物が海洋底に堆積してできた地層)からの産出は,福島県に続き本邦2例目となり、この時代の海岸線にはティラノサウルス上科が南北に広がり生息していた可能性が考えられる。

 ティラノサウルス類はティラノサウルス・レックスに代表されるように大型の肉食恐竜として有名だが、実は、その起源は小型の獣脚類である。巨大化したのは白亜紀の中頃と考えられているが、その化石記録は世界的にも限られている。今回発見された芦別市の標本は、コニアシアンという正に白亜紀中頃の時期のものであり、重要な標本であると言える。今後の調査によって追加標本が発見された場合、ティラノサウルス類の巨大化の謎に迫る鍵になることが期待される。


 ティラノサウルスとは何か?

 ティラノサウルス(genus Tyrannosaurus)は、約6850万- 約6550万年前(中生代白亜紀末期マストリヒシアン)の北アメリカ大陸(画像資料)に生息していた肉食恐竜。大型獣脚類の1属である。他に「ティランノサウルス」「チラノサウルス」「タイラノサウルス」など数多くある呼称については第一項にて詳しく述べる。

 現在知られている限りで史上最大級の肉食恐竜の一つに数えられ[2]、地上に存在した最大級の肉食獣でもある。恐竜時代の最末期を生物種として約300万年間生態系の頂点に君臨するが、白亜紀末の大量絶滅によって最期を迎えている。

 非常に名高い恐竜で、『ジュラシック・パーク』等の恐竜をテーマにした各種の創作作品においては、脅威の象徴、また最強の恐竜として描かれることが多く高い人気を誇っている。また恐竜時代終焉の象徴として滅びの代名詞にも度々引用される(詳しくは「関連項目」を参照)。

 骨格標本から推定される成体の体長は約11 - 13m、頭骨長は約1.5mで、その体重は概ね5 - 6tと推測されている(体重に関しては異説も多く最低3tから最大9tまで幅がある)。発見されているティラノサウルスの化石はそれほど多くはなく、2001年の時点では20体程度であり、そのうち完全なものは3体のみである。

 ティラノサウルスの上下の顎には鋭い歯が多数並んでいるが、他の肉食恐竜と比べると大きい上に分厚く、最大で18cm以上にも達する。また、餌食となったとみられる恐竜の骨の多くが噛み砕かれていたことから驚異的な咬合力[4]を持っていたと考えられ、その力は少なくとも3 t、最大8 tに達したと推定される。これらの事からティラノサウルスは獲物に対し、他の肉食恐竜のように噛み付いて切り裂いたり、出血死を狙う方法は用いず、短時間で仕留めていたと考えられている。

 ティラノサウルスは各部位によって僅かながら歯の分化が進んでいたとされる。特に門歯は断面が特徴的なD字型をしており、ティラノサウルス類を見分ける上での指標になっている。前上顎歯数は4、上顎歯はティラノサウルス類ではティラノサウルス・レックスが最も少なく11本。下顎歯もT-rexが最少の11本である。頭蓋は同じ大きさの他の獣脚類に比べて明らかに幅広であり、特に後眼窩部の張り出しが著しい。吻部も丸みを帯びた広い形になっている。 


参考 サイエンスポータル: https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2018/06/20180621_01.html