電子顕微鏡の分解能
最近、テレビなどでもよく耳にする「n (ナノ)」 ナノメートルってどれくらいの長さだろうか?
理解していただくために、まずは単位の前につく接頭辞の説明。上の接頭辞にメートル〔m〕を付けると長さを表す単位になり、グラム〔g〕を付けると重さを表す単位になる。
メガやギガなどの膨大な数字もパソコンの普及により日常生活でもよく使われるようになった。ナノはその逆で10億分の1(0.000000001)のこと。つまり、1メートル〔m〕を10億分の1にすると1ナノメートル〔nm〕になる。
また、オングストローム(ångström, 記号:Å)も、長さの単位で、原子や分子の大きさ、可視光の波長など、非常に小さな長さを表すのに用いられる。1〔Å〕 = 0.1ナノメートル〔nm〕 = 100ピコメートル〔pm〕 と定義されている。
さて、それでは電子顕微鏡はどれくらい小さなものを見ることができるのだろうか?
透過型電子顕微鏡の分解能は非常に高く、約0.2 nm(2Å) の構造を識別することができる。光学顕微鏡の分解能は0.2マイクロメートル(200 nm)なので、その桁違いの分解能*がお解かりいただけるとおもう。
ではなぜ、電子顕微鏡の分解能はこんなに高いのだろうか?
その要因は光源に用いている電子線にある。 顕微鏡の分解能は光源の波長に影響されていて波長が短いほど小さいものを観察することができる。電子顕微鏡に利用されている電子線の波長は0.0037 nm(加速電圧100 kVのとき)と非常に短いため 数百nmの可視光線を利用している光学顕微鏡よりも遥かに高い分解能が得られるしくみだ。
電子顕微鏡の分解能0.39Åを実現、世界記録更新
今回、コーネル大学の研究チームは、電子顕微鏡の分解能の世界記録更新となる0.39Å(オングストローム)を実現したと発表した。同技術で硫化モリブデン(MoS2)の二次元薄膜を撮像し、原子配列の鮮明な画像を得られることを示した。研究成果は科学誌「Nature」に掲載された。
電子顕微鏡の画像は、レンズの収差の影響でぼやけたり歪んだりするという問題をもっている。収差の影響を取り除くために特殊な収差補正レンズが使われるが、収差の種類は複数あるためすべての収差の影響を取り除くには多数の補正レンズを組み合わせなければならなくなり現実的でない。
研究チームは、先行研究として、収差補正レンズを使わずに超高分解能の電子顕微鏡像が得られる「電子顕微鏡ピクセルアレイ検出器(EMPAD:electron microscope pixel array detector)」という技術を開発していた。今回このEMPADと電子タイコグラフィの手法を利用して、電子顕微鏡の分解能の記録更新を達成したとする。
EMPADは2017年に同チームが発表した技術で、150μm角のピクセルセンサを128個×128個といったサイズで配列した検出器を用いる。電子顕微鏡から出た電子が試料に当たって戻ってくるときの個々の電子の着地点と散乱角をセンサで測定し、このデータから試料の原子構造に関する情報を得る。電子タイコグラフィは試料に当たって散乱した電子の散乱波強度分布から逆変換によって画像を再構築する計算手法であり、検出器によって測定した散乱電子の位置と運動量分布データから高分解能の電子顕微鏡画像を生成することができるという。
電子顕微鏡ピクセルアレイ検出器(EMPAD)
通常、電子顕微鏡の分解能は対物レンズの開口数(NA:numerical aperture)に依存して決まる。NAは、レンズのF値の逆数をとった値であり、F値が小さいレンズほどレンズを通る光量が多く分解能を高くすることができる。高性能カメラで使われているレンズのF値は2未満といった値であるが、電子顕微鏡の対物レンズのF値は100程度と高い。収差補正レンズを使うことでF値を40程度まで下げることができるが、十分なF値とはいえない。電子タイコグラフィは対物レンズを必要としない撮像手法なので、F値による制約を受けずに高分解能を実現できるとされる。
これまで報告されていた電子顕微鏡の最高分解能は、収差補正レンズを使って、300keV(キロ電子ボルト)という高い電子ビームを当てることでオングストーム未満の分解能を得るというものであった。今回の研究では、80keVという低エネルギーの電子線で0.39Åの高分解能を実現したとしている。電子ビームのエネルギーを低くすることは、試料に与えるダメージを小さくできるという利点がある。
研究チームは、この電子顕微鏡を使って撮像したMoS2二次元薄膜の画像を公開した。2枚のMoS2膜が積層された状態で撮像されている。結合した原子同士の距離は1~2Å程度(1Å=0.1nm)あるので、個々の原子の配置まで明確にわかる画像となっている。2枚の膜が重なっているため、上層の原子と下層の原子の位置関係はぴったり重なった状態から原子間距離と同じ長さまでの幅があり、独特の模様になって表れている。
電子顕微鏡とは何か?
電子顕微鏡(でんしけんびきょう)とは、通常の顕微鏡(光学顕微鏡)では、観察したい対象に光(可視光線)をあてて拡大するのに対し、光の代わりに電子(電子線)をあてて拡大する顕微鏡のこと。電子顕微鏡は、物理学、化学、工学、生物学、医学(診断を含む)などの各分野で広く利用されている。
高分解能の観察が可能
光学顕微鏡の分解能(2つの点が「2つの点」として分離して観察される最短の距離)の限界は、可視光線の波長によって理論的に100ナノメートル程度に制限されており、それより小さな対象(例:ウイルス)を観察することはできない。一方、電子顕微鏡では、電子線の持つ波長が可視光線のものよりずっと短いので、理論的には分解能は0.1ナノメートル程度にもなる(透過型電子顕微鏡の場合)。光学顕微鏡では見ることのできない微細な対象を観察(観測)できるのが利点である。現在では、高分解能の電子顕微鏡を用いれば、原子レベルの大きさのものを観察(観測)可能である。
一般に誤解されがちであるが、電子顕微鏡の光学顕微鏡に対する利点は倍率ではなく分解能である。光学顕微鏡でも写真を拡大したり、高倍率の接眼レンズや中間レンズを用いれば、理論的には無限に高倍率の画像は得られる。ただし分解能以下の対象はどれだけ倍率を上げても細部は見えてこないので無意味である。
大がかりな装置
電子線を発生させる電子銃の性質から、数キロボルトから数百キロボルト、時にはそれ以上の高電圧が必要である。また安定した電子線照射のために、顕微鏡内は同じく安定した真空に保たれていなければならない。したがって高電圧の発生装置や真空ポンプ、顕微鏡自体は耐圧構造でなければならないなど、装置が大がかりになりがちで専用の部屋が必要なこともあるが、走査型電子顕微鏡に限っては卓上に置けるタイプなど小型製品も増えてきている。市販されている電子顕微鏡の価格は種類によって数百万円から数億円程度である。
電子顕微鏡の種類
電子顕微鏡には、大きく分けて下記の2種類がある。 透過型電子顕微鏡と走査型顕微鏡である。
透過型電子顕微鏡 (Transmission Electron Microscope; TEM)は観察対象に電子線をあて、それを透過してきた電子を拡大して観察する顕微鏡。対象の構造や構成成分の違いにより、どのくらい電子線を透過させるかが異なるので、場所により透過してきた電子の密度が変わり、これが顕微鏡像となる。
電磁コイルを用いて透過電子線を拡大し、電子線により光る蛍光板にあてて観察したり、フィルムやCCDカメラで写真を撮影する。観察対象を透かして観察することになるため、試料をできるだけ薄く切ったり、電子を透過するフィルムの上に塗りつけたりして観察する。
走査型電子顕微鏡 (Scanning Electron Microscope; SEM)は観察対象に電子線をあて、そこから反射してきた電子(または二次電子)から得られる像を観察する顕微鏡。走査型の名は、対象に電子線を当てる位置を少しずつずらしてスキャン(走査)しながら顕微鏡像が形づくられることから。電子は検出器に集められ、コンピュータを用いて2次元の像が表示される。
対象の表面の形状や凹凸の様子、比較的表面に近い部分の内部構造を観察するのに優れている。以前は観察対象が導電性のないものの場合、電子線をあて続けると表面が帯電してしまい、反射する電子のパターンが乱れるため、観察対象の表面をあらかじめ導電性を持つ物質で薄くコーティングしておくことが行われていたが、近年は前処理不要で低真空にて観察できる製品も増えてきている。
また、両者の特徴を合わせ持つ走査型透過電子顕微鏡 (Scanning Transmission Electron Microscope; STEM) も近年注目されつつある。
参考 マイナビニュース: https://news.mynavi.jp/article/20180730-670664/
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