プラスチックゴミ問題

 プラスチックは便利なものだが、プラゴミの問題は深刻だ。プラスチックごみは、ペットボトルやレジ袋などさまざまなプラスチック製品から発生するごみ。世界的な生産、使用量の増加に伴って海に流出する量も増えている。問題が深刻化しながら国際的な対策が遅れており、近年大きな国際問題になっている。

 経済協力開発機構(OECD)は、世界でプラスチックごみの生産量が増加して年間3億トンを超え、海に流出する量も最大推定量が年間1200万トンに及ぶ-。そんな調査結果を報告書にまとめた。

 報告書はプラスチックごみをのみ込んだ魚介類を通じて人間の健康を脅かすリスクがある、と警告している。また国連環境計画(UNEP)も、プラスチック製品の生産禁止を含めた何らかの規制を導入済みの国が67カ国・地域を数えるなどと指摘し、各国に対策を促す報告書をまとめている。



 また、プラスチックの原料は石油。プラスチックの劣化が進むと、メタンやエチレンなどの強力な温室効果ガスが放出されることが分かったとする論文が8月1日、米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に掲載された。プラスチックの劣化はこれまで、温室効果ガスの発生源としては考慮の対象になっていなかった。

 研究では、プラスチック製の飲料水ボトルや買い物袋、食品容器や工業用プラスチックなどのあらゆるプラスチック製品を対象とする実験を実施した。環境汚染や地球温暖化にまで関係するプラスチックに対する対策が、今世界中で叫ばれている。


海のプラスチックごみ問題が深刻化 OECDとUNEPが報告書 地球環境・エネルギー 科学と社会 掲載日:2018年8月15日

 OECDの報告書は「Improving Markets for Recycled Plastics: Trends, prospects and policy responses」と題し、約160ページに及ぶ。この報告書によると、世界のプラスチックの生産量は、1950年時点では200万トンだったが、2015年には4億700万トンに達した。このうちリサイクルされるのは推定でわずか14~18%。一方プラスチックごみの発生量は増加の一途をたどり、2015年に3億200万トンに上り、あらゆるごみの総量の3~4%に当たるという。

 プラスチックごみの問題が深刻なのは、発生するごみのかなりの量が海に流出して海洋汚染を進めるため。報告書は、投棄されたり、埋め立て地から流出して2010年時点で年間推定400万~1200万トンが海に到達している、とした。そして海岸の汚染による観光客の減少、漁業への悪影響などによる損害が総額年間130億ドルに達している、と指摘した。

 報告書はさらに、こうしたプラスチックを魚介類がえさと間違って飲み込み、その魚介類を人間が食べることにより、健康を脅かすリスクがあると警告している。


 プラスチックゴミ、各国の対策

 一方、国連環境計画(UNEP)はOECDの報告書に先立って「Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability」と題した約90ページの報告書をまとめて公表している。この報告書は深刻化しているプラスチックごみ問題に対する各国の対策に焦点を当てている。それによると、レジ袋やペットボトルなど、海洋汚染を引き起こすプラスチック製品の生産を禁止したり、使用時に課金するなどして何らかの規制策を導入している国・地域は67を数える。

 例えば、アフリカでは、ルワンダが2008年にプラスチック製レジ袋の生産、消費、輸入を禁止し、ケニアも17年にほぼ同様の規制をしているなど25カ国が規制策を導入している。欧州でも、イタリアが環境中で分解しやすい生物素材以外のレジ袋の使用を11年に禁止するなど、20カ国が何らかの規制をしている。アジアでは中国も08年に生物素材以外のレジ袋を、インドも16年に環境中で微生物により分解されないタイプのレジ袋を禁止している。米国でもニューヨーク市やハワイ州、カリフォルニア州など州や市単位で規制策を導入しているという。

 また「THE STATE OF PLASTICS」と題したUNEPの別の報告書は、世界のプラスチックの生産量は2030年には年間6億1900万トンになると予想。何らかの対策を各国が進める必要性を強調している。

 6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、欧州連合(EU)などが主導してプラスチックごみ削減に向けた数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」を採択した。人口一人当たりのプラスチックごみ廃棄量が多い米国と日本は署名しなかった。

 環境省関係者によると、来年6月に大阪市で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合では、プラスチックごみの問題が重要議題の一つとして取り上げられるという。


プラスチック、劣化で温室効果ガス放出

 プラスチックの劣化が進むと、メタンやエチレンなどの強力な温室効果ガスが放出されることが分かったとする論文が1日、米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に掲載された。プラスチックの劣化はこれまで、温室効果ガスの発生源としては考慮の対象になっていない。

 研究では、プラスチック製の飲料水ボトルや買い物袋、食品容器や工業用プラスチックなどのあらゆるプラスチック製品を対象とする実験を実施した。
 その結果、「温室効果ガスを最も多く放出する」プラスチックはポリエチレンだったと、論文は指摘している。レジ袋に使われているポリエチレンは、生産量と廃棄量が世界で最も多い合成高分子化合物だという。
 プラスチックによって環境中に放出される有害な温室効果ガスの濃度に関しては、研究者らはまだ推算結果を示していない。
 論文の主執筆者で、米ハワイ大学マノア校(University of Hawaii at Manoa)海洋地球科学技術学部のデービッド・カール(David Karl)教授は、これを明らかにすることが不可欠だと主張する。80億トン以上に及ぶプラスチックが地球を汚染しており、その大半がリサイクル可能なものではなく、さらにはプラスチックの生産量が今後20年で倍増することが予想されるからだ。
 「プラスチックは気候に関連する微量ガスの発生源となる。プラスチックの生産量および環境中の蓄積量の増加に伴い、このガスが増えることが予想される」と、カール教授は説明する。
 「この発生源は、地球規模のメタンとエチレンの循環を評価する際にはまだ考慮に入れられていないが、重大な影響をもたらす可能性がある」
 プラスチックは有害な化学物質を水中や土壌中に放出することがすでに知られている。温室効果ガスは史上最高水準まで増加しており、地球の気温と海水面の上昇を引き起こし、世界各地の沿岸地域を脅かしている。(AFPBB News 2018.8.2)


参考 サイエンスポータル: https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2018/08/20180815_01.html

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