民間宇宙船でISSへ 新しい宇宙開発の時代到来へ

 世界で初めてアメリカの民間企業の宇宙船で国際宇宙ステーションに向かう宇宙飛行士が発表され、政府ではなく民間による本格的な宇宙開発の時代が近づいていると注目されている。

 アメリカ航空宇宙局(NASA)は、民間企業に資金を援助するなどして宇宙開発への参入を促しており、アメリカの宇宙開発ベンチャー、スペースXと大手航空機メーカーのボーイングが有人宇宙船を打ち上げ、国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り届ける計画。NASAは3日、南部テキサス州のジョンソン宇宙センターで、民間の宇宙船に初めて乗り込むアメリカ人9人を発表した。

 スペースXは有人宇宙船を打ち上げる試験飛行を、来年4月に、ボーイングは来年の半ばにそれぞれ行うとしており、その後、国際宇宙ステーションに向けた打ち上げが行われるという。



 国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の移動手段は、2011年にアメリカのスペースシャトルが膨大な費用がかかるとして引退して以降、ロシアの宇宙船、ソユーズに限られていた。

 スペースXなどはこれまで国際宇宙ステーションへの物資の輸送を担ってきたが、有人の宇宙船はより高度な安全性が求められることになり、民間による本格的な宇宙開発の時代が近づいていると注目されている。(2018.8.4 NHK news)


日本のベンチャー企業が有人宇宙船の開発を発表

 日本の民間企業もようやく、重い腰を持ち上げた。日本初の有人宇宙飛行を目指し、滑走路から飛行機のように飛び立つ宇宙船の開発を始めると日本のベンチャー企業が発表した。企業は宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも連携を図り、2027年までに実用化を目指すとしている。

 計画を発表したのは九州工業大学の教授や大手メーカーでロケットの開発に携わっていた技術者などでつくるベンチャー企業「SPACE WALKER」。

 この企業では、滑走路から飛行機のように飛び立ち、ロケットエンジンで高度100キロの宇宙空間に到達する宇宙船を開発するという。

 機体はアメリカのスペースシャトルに似ていて、翼があり、全長はおよそ16メートル、乗客と乗員合わせて8人を運ぶことができるという。機内では数分間、無重力の状態を体験できるということで、エンジンは国内の大手メーカーが開発し、JAXAとも連携を図り計画を進めるとしている。

 この企業では、2027年までに宇宙船の実用化を目指し、日本初の有人宇宙飛行を実現したいとしている。企業の設立者の1人、九州工業大学の米本浩一教授は「世界各国で民間による有人宇宙飛行の計画がだされている。遅れを取らないよう、国などの協力も得て開発を進めたい」と話していた。


 各国で開発競争が激化

 有人宇宙飛行をめぐっては、宇宙旅行など将来の商業化を狙う民間企業が次々に参入し、各国で開発競争が激しくなっている。

 このうちアメリカのベンチャー企業「ブルー・オリジン社」は、宇宙空間で数分間の無重力状態を体験できるカプセル型の宇宙船を打ち上げるためロケットの開発を急いでいる。

 またアメリカの「ヴァージン・ギャラクティック社」は、滑走路を離陸後途中までは航空機に運んでもらい、その後宇宙に向けて切り離すタイプの宇宙船の開発に取り組んでいる。

 また日本でも名古屋市のベンチャー企業、「PDエアロスペース」は、ジェットエンジンとロケットエンジンの機能を併せ持つエンジンを開発していて、航空機のように地球と宇宙空間を行き来できる宇宙船の実用化を進めている。


 官から民へ移り変わる、米国の有人宇宙開発

 アポロ計画で月に宇宙飛行士を送り込み、スペース・シャトルで多くの宇宙飛行士や科学者、技術者を宇宙に送ったNASAにとって、有人宇宙飛行はお家芸であり、NASAをNASAたらしめている要素のひとつだった。

 その有人宇宙飛行を、NASAから民間に移管する構想が持ち上がったのは2005年のことだった。このころNASAは、民間にできるできることは民間に任せるとともに、米国の宇宙産業を育てることを目的に、国際宇宙ステーション(ISS)への物資と宇宙飛行士の輸送を民間企業に任せる計画を立ち上げた。

 またこの背景には、老朽化したスペース・シャトルに代わる新しい宇宙船が必要とされたこと、そしてISSへの物資や飛行士の輸送を民間に任せることで、NASAは有人月・火星探査に注力できるという狙いもあった。

 この計画には多くの米国企業が参加に名乗りを上げ、審査を経て、宇宙飛行士の輸送については大手航空・宇宙メーカーのボーイングと、当時まだ新興企業だったスペースXが選ばれた。またNASAは、両社に対し、資金提供をはじめ、技術面でも支援を続けてきた。また、実際に有人宇宙飛行を行うにあたって必要となる安全審査や認証もNASAが担当している。

 そして現在、ボーイングはCST-100「スターライナー」(Starliner)、スペースXは「クルー・ドラゴン」(Crew Dragon)と呼ばれる宇宙船の開発を続けている。

 この官から民へ移り変わる"代償"として、米国と、帯同する欧州や日本、カナダの宇宙飛行士は、シャトルが引退した2011年から、ISSとの往復にロシアの「ソユーズ」宇宙船を使わざるを得なくなった。当初、民間宇宙船の運用は2017年にも始まる予定だったが、開発の遅れにより、ロシア依存がいまなお継続。さらにロシアはソユーズの座席の価格を吊り上げるなど、代償と呼ぶには長く、手痛い状況が続いている。


 米国の有人宇宙飛行の再開を担う9人の宇宙飛行士

 そして8月3日、この民間宇宙船の有人での試験飛行と、最初の商業輸送ミッション、すなわちNASAから支払われる運賃と引き換えに飛行士を輸送するミッションに搭乗する、9人の宇宙飛行士が発表された。

 エリック・ボー(Eric Boe) クリストファー・ファーガソン(Christopher Ferguson) ニコール・オーナプー・マン(Nicole Aunapu Mann) ロバート・ベンケン(Robert Behnken) ダグラス・ハーレイ(Douglas Hurley) ジョシュ・カサダ(Josh Cassada) スニータ・ウィリアムズ(Sunita Williams) ヴィクター・グローヴァー(Victor Glover) マイケル・ホプキンズ(Michael Hopkins)(本記事の最後に9人の宇宙飛行士の簡単なプロフィールを掲載しているので参照されたい)

 このうちファーガソン宇宙飛行士はスペース・シャトルのコマンダー(船長)を、ボー、ハーレイ飛行士はパイロットを、またベンケン、ウィリアムズ、ホプキンズ宇宙飛行士は船外活動を行った実績を持つ、ベテラン中のベテランである。マン、カサダ、グローヴァー宇宙飛行士の3人はこれが初の宇宙飛行となる。

 ちなみに9人全員が米国人で、"米国の地から、米国の宇宙船で、米国の宇宙飛行士の打ち上げの再開"と、まさに米国ずくめとなる。

 現在のところ、その再開の火蓋を切るのはスペースXのクルー・ドラゴンになる予定である。クルー・ドラゴンはまず、今年11月に無人での試験飛行ミッション(SpX-DM1)を行い、そして2019年4月にベンケン、ハーレイ、カサダ宇宙飛行士の3人を乗せ、有人での試験飛行ミッション(SpX-DM2)を実施する予定となっている。

 一方のボーイングのスターライナーは、今年末から2019年初めごろに無人試験飛行ミッション(Boe-OFT)を行い、そして2019年半ばに、ボー、ファーガソン、マン宇宙飛行士の3人を乗せて有人での試験飛行ミッション(Boe-CFT)を実施する予定である。

 それぞれが有人での試験飛行を完了したのち、NASAはこれらの宇宙船が、ISSへの定期的な宇宙飛行士の輸送に使えるかどうかの最後の審査を実施。無事に通過して認証が得られれば、いよいよ商業輸送ミッションが始まることになる。

 最初の商業輸送ミッションでは、スターライナーにはカサダ、ウィリアムズ宇宙飛行士が、クルー・ドラゴンにはグローヴァー、ホプキンズ宇宙飛行士が搭乗する。また、それぞれの宇宙船には4人まで搭乗できるため、残りの2座席には、NASAの宇宙飛行士はもちろん、日本や欧州、カナダを含む、他国の宇宙飛行士も座ることになるだろう。その割り当ては後日発表するとされる。


参考 マイナビニュース: https://news.mynavi.jp/article/20180820-681290/


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