人間によって絶滅する動物たち
2018年3月19日、世界にあと3頭しか残っていなかったキタシロサイのオス・スーダンが病にかかり死亡した。これによりオスが絶滅、現存するキタシロサイは2頭となった。もはや野生のオスが発見されない限り、自然繁殖は事実上不可能になった。
キタシロサイの滅亡する理由は、人間による乱獲であった。絶滅動物の中で、地球環境の変化で絶滅したものはごくわずか。そのほとんどが人間によって滅ぼされてきた。人間が絶滅させた、悲しい動物たちにはどんななかまがいたのだろうか?
ステラーカイギュウは、現在のカムチャッカ半島の東にあるベーリング島付近に2000頭ほど生息していたと考えられるが、発見されその肉や毛皮が有用なことがわかると乱獲が始まり一瞬にして絶滅した。人間が発見してわずか27年のことだった。当時は野生保存をする考えを持っていなかった。
タスマニアタイガーは、「フクロオオカミ」ともいう。もともとタスマニアタイガーは、オーストラリア大陸やニューギニア島を含めたオーストラリア区一帯に生息していたが、3万年前人類が進出してくると、人類やその家畜だったディンゴとの獲物をめぐる競争に敗れ、人類の到達が遅くディンゴの生息しなかったタスマニア島のみに生き残ることになった。
その他、リョコウバト、モア、ヨウスコウカワイルカなど...絶滅した動物は枚挙にいとまがないほどだ。一方、人間の手による保護活動で復活した動物もいる。
15年前、研究者グループの年次調査で、野生のバンクーバーマーモットが22匹しか確認できなかった。この報告を知った保護活動家たちは、野生のバンクーバーマーモットは1年以内に絶滅してしまうだろうと考えた。
そこで、絶滅を防ぐために、人間が育てたマーモットを野生に戻して増やそうとしたり、24時間体制で保護する活動を行った結果、野生のバンクーバーマーモットの数は150〜200匹まで増え、多いときで年間50匹ほどの子どもが生まれている。個体数が持続的に増えるためには、順調な滑り出しと言える。
カナダの絶滅危惧種 22匹からの再生劇
バンクーバーマーモット(Marmota vancouverensis)は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州にあるバンクーバー島だけに生息する、大きなイエネコほどになるリスの仲間だ。近縁種のシラガマーモットが白っぽい毛皮を持つ一方、バンクーバーマーモットの毛皮は茶色く、鼻先や胸に白い部分が見られる。
15年前、研究者グループの年次調査で、野生のバンクーバーマーモットが22匹しか確認できなかった。この報告を知った保護活動家たちは、野生のバンクーバーマーモットは1年以内に絶滅してしまうだろうと考えた。
そこで、絶滅を防ぐために、人間が育てたマーモットを野生に戻して増やそうとしたが、当初は飼育環境下では交配がうまくいかず、また野生に返した飼育下のマーモットは冬眠もせず、ピューマに殺されることもあった。
バンクーバーマーモットの保護活動を行っている「マーモット再生財団」で飼育下繁殖コーディネーターを務める獣医師のマルコム・マカディー氏は、「打撃に次ぐ打撃でした」と当時を振り返る。
財団の理事、アダム・テイラー氏も「絶滅は避けられない」と考えていた。だが、あきらめることはせず、さらに保護活動に力を入れた。
理由は明らかだ。マーモットは、この地域の生態系にとって重要な役割を果たしている。それに、とてもかわいらしい。「本当に、野生の動物でこんなにかわいいものはいないだろうと思うのです」とテイラー氏は言う。同氏に言わせれば、マーモットは「まるで生きているテディベア」だ。
バンクーバーマーモットは巣を、山岳地帯の石が散らばり、冬になると雪崩が起きるような場所に作る。人間が近づくには、木材運搬用の林道を車で何時間も走り、さらに徒歩で急斜面を登らなければならないような場所だ。
ちなみに、冬眠期間は5~7カ月で、春になると亜高山帯で繁殖する。主食は、山麓の厳しい環境に咲く色鮮やかな花。親子や夫婦は鼻と鼻を突き合わせてあいさつし、子どもたちはきょうだい同士で遊び回る。
実は、バンクーバーマーモットの個体数が初めて調査されたのは1980年代で、当時は300〜350匹と推定された。90年代に入ると数が激減。オオカミ、イヌワシ、ピューマなどの捕食行動の変化が原因だが、森林伐採でたまたまできた空き地にすみついたことが、その後のマーモットたちの運命を大きく変えた。
伐採跡地はマーモットたちが暮らす山麓の草原地帯に似ているが、数年経つと、再び森となり、捕食者たちの格好の隠れ場所となったのだ。
マーモット再生にかけた人々の努力
2003年、バンクーバーマーモットの個体数が一番落ちこんだ年に、マーモット再生財団は思い切った対策をする。いわゆる「人間の盾」だ。マーモットたちが捕食者につかまらないように、24時間体制で監視するのである。
さらに、飼育環境下で繁殖させて野生に返すやり方を見直した。そもそも、マーモットのオスとメスがいっしょに冬眠すれば、春には子どもが生まれる。そこでまず、「まだ相手のいないマーモットを探すのです。マーモットの婚活にかなりの時間をつぎ込みました。これは成功することが多かったですよ」とテイラー氏は振り返る。
野生に返す方法も工夫した。いきなり野生に返すことをやめ、飼育下で生まれた個体を1年間、バンクーバー島・ワシントン山にある生息地に放し、その後、本当の自然に放すという段階的な方法に変えたのだ。ワシントン山なら、研究者が細かく状況を確認し、捕食者を近づけないように監視できる。
ワシントン山のマーモットは飼育されたマーモットの「先生」にもなっている。仲間たちとの交流の仕方、冬眠用の穴をふさぐ方法など、自然環境で生きていく上で大切なスキルを身に付けられる。
バンクーバーマーモットの場合、飼育環境で生まれたものを野生に返すことで、再生に必要な個体数と遺伝子がもたらされた。マーモット再生財団は、2003年以降、スポンサー、個人支援者、提携動物園などの協力を得つつ、ゆっくりとだが着実にマーモットの数を増加させてきたのだ。
マカディー氏は、現在の野生のバンクーバーマーモットのうち、約10%が飼育環境で生まれたものだと考えている。割合としては大きくないが、マーモットがいなくなった場所で再生したものは、この野生に返したマーモットたちが多い。
現在、マーモットの生息地の多くが森林化している。マカディー氏は、近年の気温の上昇で森林が拡大していると考えている。開けた草地に生息するマーモットにとって、生息地に木々が増えるのは天敵を見つけにくくなるため都合が悪い。そこで財団は、マーモットに必要な草地を守るため、木を伐採する作業も行っている。また、マーモットを気候変動の影響に巻き込まれないよう、バンクーバー島北部に移住させる活動も行っている。
バンクーバーマーモットの未来
こうした努力が報われ、現在、野生のバンクーバーマーモットの数は150〜200匹まで増え、多いときで年間50匹ほどの子どもが生まれている。個体数が持続的に増えるためには、順調な滑り出しと言える。財団は野生環境で毎年150匹の子どもが生まれることを目指しているが、目標までの道のりはまだ遠い。
「私たちが、バンクーバーマーモットで得た大きな教訓は、絶滅の瀬戸際にある種でも再生できるということです。もちろん、簡単なことではありませんが」とテイラー氏は話す。
ナショナル ジオグラフィックのフェローおよび写真家で「PHOTO ARK」プロジェクトを立ち上げたジョエル・サートレイ氏は、マーモットが再生しつつあることを喜んでいる。なお、この記事のバンクーバーマーモットの写真は、同氏がカナダのトロント動物園で撮影したものだ。
サートレイ氏は、動物が消えてしまう前に写真に残そうと、2005年以降、世界各地を駆け回っている。そのサートレイ氏は、「野生のバンクーバーマーモットを再び見られるとは思っていませんでした」と語る。
写真で動物を救う
同氏が写真に収めた動物は、これまで約8500種。「プロジェクトを進めて、改めて、あらゆる動物は美しいと実感しています。そして、この世界に存在し続ける基本的な権利が動物にはあるのです。次の世紀が終わるまでに、半数の種が絶滅してしまうと予想されています。そんなことになれば、地球は寂しい星になってしまうでしょう」
マーモット再生財団のような取り組みを行えば、個々の種を救うことはできるだろう。だが、そのためには努力を続けなければならない。「確かに、バンクーバーマーモットの数は増えました。でも、手助けなしでも安定した数を維持できるよう、私たちは今の取り組みを、まだ続けなければなりません」とテイラー氏は話す。
目的実現のため、財団は現在もマーモットを飼育して野生環境に返す取り組みを継続している。2018年は、8月現在で30匹が野生に返された。さらに、草地を守るための樹木の伐採や、生息地に不向きな場所に迷い込んだバンクーバーマーモットを追跡して移動させる活動も行っている。
マーモット再生財団は、彼らが活動しなくても大丈夫な日が来ることを目指し、今も取り組みを続ける。特別な保護をしなくてもマーモットが種を維持できれば、財団としても大歓迎だ。テイラー氏もこう述べる。「そのときは、スポンサーや献金者に感謝し、静かに財団を閉じることが最後の仕事になるでしょう」
ナショナル ジオグラフィックの写真家であるジョエル・サートレイ氏は、世界中で飼育されている1万2000種の動物をすべて写真で記録するプロジェクト「PHOTO ARK(動物の箱舟)」を進めている。
マーモットとは何か?
マーモットは、齧歯目リス科マーモット属 (Marmota) に分類される動物の総称。主にアルプス山脈、カルパチア山脈、タトラ山脈、ピレネー山脈、ロッキー山脈、シェラネバダ山脈、ヒマラヤ山脈などの山岳地帯に生息している。
ただし、中国東北部からモンゴルにかけての草原に生息するシベリアマーモット、北米大陸に広く生息するウッドチャックなど、平野部に生息する種もいくつか存在する。
一般に巣穴の中で生活しており、冬季は冬眠する。大部分のマーモットは社会性の高度に発達した動物で、危険が迫るとホイッスルのような警戒音でお互いに知らせ合う。 食性は主に草食性である。草、果実、コケ、木の根、花などを食する。
オックスフォード英語辞典によれば、marmot の直接の語源は近代フランス語の marmotte であり、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語などのマーモットを指す言葉 (marmota, marmotta) もフランス語由来である。さらに語源をたどるとロマンシュ語の murmont を経て、ラテン語の murem montis (「山のネズミ」を意味するmus montisの対格)にたどりつく。
murmont が marmotte に語形変化したのはおそらくマーモセットを表す古フランス語 marmotte ないし marmot に引きずられたものと思われる。ラテン語の murem montis は他方でドイツ語の murmeltier をはじめ、ゲルマン系言語におけるマーモットにあたる言葉の起源ともなっている。英語における古い用例として、オックスフォード英語辞典では1607年の用例(ある男がアルプスネズミのことをフランス風に Marmot と呼んでいた、という文脈)を紹介している。18世紀ごろに次第に英語での用例がふえ、定着した様子が伺える。
ただし、他の辞書類ではフランス語の「ぶつぶつ言う、もぐもぐ言う」の意味の動詞 marmotter からの派生語といった、別の語源を提示している場合もある。
マーモットと人間との関わり
日本ではなじみの薄い動物であるが、マーモット類は古くよりその存在を人間に知られてきた。古い記録としては、紀元前5世紀のヘロドトスの『歴史』の第三巻においてインドに住む「黄金を掘るアリ」として記述された生物がヒマラヤマーモットではないかと言われている。そこでは黄金を掘るアリは犬よりは小さいが狐よりは大きく、ギリシャのアリとそっくりの巣穴を作る、といった特徴が記されている。
紀元77年のプリニウスの博物誌では、「アルプスネズミ」Mus alpinus という名前でアルプスマーモットを紹介している。「アルプスネズミはテンくらいの大きさだが、やはり冬眠する。ただ彼らは前もって秣を穴ぐらに運んで蓄えておく。ある人の言うところでは、雄と雌とが交互に仰向けに寝て、根元から噛みちぎった草の束を抱いていると、いま一匹がその尾をくわえて引っ張るというふうに、つながって自分たちの穴におりていく。その結果この季節には彼らの背中に擦れた跡があるという」。この Mus alpinus は近代に至るまでアルプスマーモットの正式な名称として使われており、英語でも marmot が定着する以前は alpine mouse という表現が用いられていたようである。
マルコ・ポーロも『東方見聞録』の中でタルタール人について「この辺り至る所の原野に数多いファラオ・ネズミも捕まえて食料に給する」とのべており、この「ファラオ・ネズミ」はおそらくシベリアマーモットだと考えられている。
上記のマルコポーロの記述にもあるように、マーモット類は古くからアジアで食用として利用されてきた。しかし、近年はそうした習慣がペストなど人獣共通感染症の発生の原因となっており、問題化している。
フランスサヴォワ地方ではアルプスマーモットに芸をしこんで旅をする風習がある。ゲーテがそうした旅芸人を題材とした詩をつくり、さらにルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンがゲーテの詩に曲をつけた歌曲「マーモット(旅芸人)」がある。
北米ではマーモット類は親しみある生物となっている。グラウンドホッグデー(2月2日に行われる、ウッドチャックを用いた、春の訪れを予想する天気占い)やマーモット・デー(同じく2月2日にマーモット類の保全を祝うアラスカの祝日)が祝われる。マーモットをマスコットとするアイスホッケーチームも存在する(ビクトリアロイヤルズ(英語版)のマーティー)。 バンクーバーオリンピック では「サイドキック」(マスコットの応援団)としてバンクーバーマーモットの「マクマク」がキャラクター化された。
日本にはマーモットは生息しておらず、それも一因となって長らくテンジクネズミ(モルモット)と混同されてきた。オランダ語ではmarmotという語がかつてはマーモットとテンジクネズミの両方を指す言葉として用いられており、天保14年(1843年)にオランダ人がテンジクネズミを連れてきた際にも「モルモット」と呼んでいたようである。
明治から大正期にかけては本来のマーモットを指す言葉としても「モルモット」が使われた例があり、両者が別個の生き物であることが当時まだ認識されていなかった可能性がある。戦後になって、『アルプスの少女ハイジ』や『山ねずみロッキーチャック』といったアニメで紹介されることでマーモット類の日本における認知度は若干高まったとは思われるが、なじみの薄い動物であることには変わりがない。
マーモットを含むネズミ目は、ペストをはじめとした伝染病の媒介者となることがあり、モンゴルと中国では、マーモットを捕獲する夏と秋にかけてペストのアウトブレイクが発生することがある。中国では、2008年にチベット自治区で肺ペストの死亡者2人が、2009年には青海省で肺ペストの死亡者3人が出ている。
参考 National Geographic news: https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/082200368/
Marmot Biology: Sociality, Individual Fitness, and Population Dynamics | |
クリエーター情報なし | |
Cambridge University Press |
3drose USAコロラドSan Juan山のクローズアップyellow-bellied Marmotマウスパッド( MP _ 190857 _ 1 ) | |
クリエーター情報なし | |
3D Rose (Home Improvement) |
��潟�<�潟��