樹木希林さん死去
樹木希林さんが死去した。樹木希林さんは数々の演技賞を受賞した有名女優だ。最近ではカンヌ国際映画祭に参加。樹木希林さんが出演した、是枝裕和監督の「万引き家族」が最高賞のパルムドールを受賞するなど、演技は国際的にも評価された。
2005年に乳がんの手術を受け、その後全身にがんがあると公表していた。がん発症から14年、全身がんを公表してから8年、長生きした方だといってもよい。ご冥福をお祈りしたい。
1943年東京生まれ。61年に文学座に入り、悠木千帆の芸名でデビュー。60~70年代は主にテレビで活動し、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「ムー一族」などの高視聴率ドラマで、風変わりな人物をコミカルに演じた。富士フイルムのCM出演も話題になった。
80年代に入ると、NHKドラマ「夢千代日記」で吉永小百合さんの芸者仲間を演じるなど怪女優から演技派としての評価が高まっていく。2000年代以降は活動の中心をテレビから映画に移した。
出演した映画は多岐にわたる。「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(2007年)、井上靖原作の「わが母の記」(2012年)で、それぞれ主人公の母親を情感豊かに演じ、いずれも日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。
また、「悪人」(2010年)でも主人公の祖母役で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得。主役も脇役も出来る俳優として、演技賞の常連となった。
ハンセン病の元患者役で主演した「あん」(2015年)、年金を当てにされる老人を演じた「万引き家族」(2018年)は、いずれもカンヌ国際映画祭に参加。出演作は他に「半落ち」「歩いても歩いても」「そして父になる」「駆込み女と駆出し男」「海街diary」などがある。
私生活ではロックミュージシャンの内田裕也さんと2度目の結婚。そのつかず離れずの独特の夫婦関係がワイドショーなどで取り上げられた。長女の内田也哉子(ややこ)さん、孫の内田伽羅(きゃら)さんとは映画で共演した。
がんは「早期がん」→「進行ガン」→「末期がん」に至るまで、なんと時間にして約3年と言われている。10年と言う長い潜伏期間をへて、がんが発見されると3年と言う短い期間中に治療を行う事になる。
希林さんは、がん発症から14年、2005年に乳がんの手術を受けその後全身にがんがあると公表していた。長生きした方だと思うがどのような治療を受けていたのだろうか。
がん発症から14年、生き抜いた秘密
どんな健康な方でも毎日3,000個以上ものがん細胞が発生していると言われている。しかし、全ての人ががんになる訳ではない。
免疫細胞ががん細胞を駆除しているので発症しない。健康時は免疫ががんよりも強く、発症時はがんが免疫よりも強い。免疫が弱くなるとがん細胞を完全に駆除できなくなり、駆除しきれなくなったがん細胞が増殖を始め、倍々で分裂し増えていく。
がん細胞が分裂を繰り返し、約30回に達した時、初めて最新の画像診断装置で“がん”として認識されるようになる。この時の大きさは約0.7㎝であり、早期がんとして通常発見される大きさは約1cm、重さにして約1g、がん細胞数は約10億個である。
樹木さんが亡くなったのは15日の深夜2時45分。前日に入院していた病院から自宅に移り、也哉子と本木に看取られた。樹木さんは8月13日に左大腿骨を骨折し、手術を受けていた。8月末、本木は「全治6週間」と説明した。
樹木さんは9月4日に行われた、高円宮久子妃殿下(65才)も臨席される映画『日日是好日』のプレミアム試写会への出席を“最後の外出”の覚悟で切望していたが、それも断念せざるを得なかった。
「出席できなかった樹木さんは直筆メッセージを寄せました。それに感銘した久子さまは樹木さんのパネルとの撮影をお願いし、その集合写真は樹木さんに届けられました。寝たきり状態で、体の至るところがチューブでつながれている状態だった樹木さんは喜んだそうです」(映画関係者)
樹木さんの闘病生活の始まりは、2004年の10月だった。右乳房にしこりを発見し、医師から乳がんを告知された。翌年1月、右乳房の全摘出手術を受けた。当時、樹木さんは、「(乳房を)残す方法はあったけど、水着を着たいとか恋人のためという気持ちはなかったから。それなら全摘がいちばん手術をやりやすいと言われたの」と、あっけらかんと語っていた。
「その後、医師や家族から女性ホルモン剤をのむように言われ、イヤイヤのんでいた。しかし、それをきっぱりやめ、以降は放射線治療を受けていました」(芸能関係者)
四次元ピンポイント照射療法
しかし、2年後の2007年に切除した右乳房の近くに再びがんが見つかる。その頃、樹木さんが出合ったのが、「四次元ピンポイント照射療法」という世界最先端の放射線治療だった。
「がんに放射線を立体的に当てる『三次元照射』に、“時間軸”を加えたのが『四次元ピンポイント照射療法』です。体は呼吸などで常に動いており、完全に静止できない。この『四次元~』なら、がん細胞だけを狙い撃ちにするため正常な細胞を傷つけることが少なく、体への負担が軽いといわれています」(医療法人社団進興会理事長の森山紀之医師)
全国で唯一その治療を行っている鹿児島空港から車で40分ほどのところにある『UMSオンコロジークリニック』(以下、UMS)に、樹木さんは通い始めた。
放射線照射は1日10分程度だが、1か月間継続しなければならないため、滞在費用の負担も大きい。治療費も『UMS』のホームページによれば通常1回150万~250万円ほどの自由診療となる。年間300万円を超すと低額で受けられるようになり、500万円を超えるとそれ以降は無料になると説明されている。
周りを笑わせるユーモアもあった
『UMS』と出合った樹木さんは一時、「乳がんが消えた」と公表できる状態にまで回復。しかし、2012年頃に副腎や脊髄への転移が発覚した。2013年3月に行われた日本アカデミー賞授賞式での「私は全身がんですから。来年の仕事は約束できないんですよ」という発言は世間を驚かせた。
「当初、照れ隠しのジョークのように受け取られましたが、“がんと生きる”ことの宣言だったのでしょう。樹木さんはがんが大きくなったら、そのつど『UMS』に通って治療を繰り返していました。抗がん剤治療は苦しく、通常の日常生活を営むのは困難ですが、樹木さんは“私の治療法だと、生活の質は全く落ちなかった”と話していました」(樹木さんの知人)
その言葉通り、樹木さんはがん闘病をしながら、数々の映画に出演し続けた。時に「死ぬ死ぬ詐欺」と自嘲する姿は“闘病”のイメージとは程遠かった。もちろん治療法が彼女に合っていたことも要因の1つだろうが、そうした樹木さんの姿勢もまた、彼女が長く生きられた理由の1つだという。
『医者に宣告されたら知っておきたい がん克服の7カ条』(徳間書店刊)の著者で、精神科医の西脇俊二さんが説明する。
「ストレスはがんの原因になるといわれていますが、がんを治療する際にも悪い影響を与えます。がんに対して過剰に不安になってしまったり、“絶対に治すんだ”と気合を入れすぎると、緊張が高まって交感神経が優位になって免疫力が落ちてしまう。
免疫力はリラックスして副交感神経が優位になっている時によく働いてくれるのです。樹木さんは、ご自身が重篤な状態であっても仕事を続け、私たちが見る限りは平常心を保ち、周りを笑わせるようなユーモアを示しておられました。このようなリラックスした状態が、がんの進行を遅らせていたのではないかと思います」
西脇さんによれば、笑うこと自体も、がんに効果があるという。
「『笑療法』という治療法もあるように、笑って過ごすことはとても大切です。それでがんが消えたという話もあるほどですから。そんなに笑えないというかたは嘘笑いでもいいし、ニコッとするだけでもかまいません。笑うと免疫のコントロール機能を司っている間脳が作動し、がん細胞を攻撃するNK細胞が活性化するといわれているからです」
樹木さんは2016年12月、本誌のインタビューで、《これからはがんや病気と一緒に生きていく時代ですよ》と答え、自身のがん闘病についてもこう語っていた。
《大丈夫じゃないけど、だいたい、これ(がん)をやっつけようとかって思わないのよ。「がんと真剣に向き合って」とかも思わない》
乳がん発症から14年、樹木さんはがんに克ったといっていいだろう。手術でがんを切除すると、術後の痛みや機能低下に悩まされる。がんを切らずに治したいというのは、誰しもの願いだろう。
UASオンコロジーセンター長の植松稔氏は、1994年から防衛医科大学校病院で強いX線を絞って多方向から当てる放射線治療を行い、「切らずにがんを治したい」という患者の願いを実現してきた。これまでに肺がんを中心としたさまざまながんの治療に手術と同等かより優れた実績をあげ、現在、その治療法は我が国だけでなく、欧米にも普及している。
2006年10月から植松氏は、鹿児島市のUASオンコロジーセンターに移り、痛みのない放射線治療を実践している。鹿児島市在住の患者は4割程度で、半数以上は全国から植松氏を頼って訪れる。 「放射線治療は患者さんにとって、手術よりずっと楽な治療法です。がんが、楽な治療法で治るということが分かれば、患者さんやご家族の気持ちも少しは楽になるでしょう」と語る。
4次元ピンポイント照射は呼吸の動きに合わせ
通常の放射線治療は「2次元照射」といって、主に体の前後あるいは左右から放射線を当てる方法で行われている。この方法は、がんの周りの正常組織にも放射線が当たるので、「広く弱く」という照射しかできない。そのため、がんを消滅させるのに必要かつ十分な量の放射線を当てられず、治せないがんも多かった。
これに対し、放射線のビームを絞って、3次元空間のあらゆる方向から「狭く強く」当てるのが3次元ピンポイント照射だ。これにより周囲の正常組織に当たる放射線量を抑え、がんに対して大量の放射線を当てて治療することが可能になった。3次元ピンポイント照射は定位放射線照射とも呼ばれ、最初に実用化されたのはガンマナイフという脳腫瘍専用の放射線治療装置だ。
脳腫瘍に3次元ピンポイント照射が有効なことが分かっても、これまでは肺がんや乳がんなどに応用することは難しかった。脳腫瘍の場合は頭部をしっかりと固定すれば、脳やそこにある腫瘍は動かない。だが、肺がんや乳がんでは呼吸によって胸が膨らんだり、しぼんだりするためX線の照射部位がずれてしまう。そこで、縦・横・高さに時間を考慮して、呼吸で動く腫瘍に合わせて照射位置を変えながら当てる、4次元ピンポイント照射が必要になる。これが可能になれば、治療成果がさらに向上することが見込まれたが、2015年3月三菱重工がこの4次元放射線治療装置の開発に成功した。
がんの4大治療法
がんの告知を受けた方に示される治療方法は、基本的に「手術療法」「化学(薬物)療法」「放射線療法」の3種類があり、これを三大療法と呼んでいる。
日本では、これまで手術ががん治療の中心にあったが、近年は化学療法や放射線療法が進歩し、がんの種類やステージ(病期)によっては手術と変わらない効果が認められている。 さまざまな検査を行いながら、"どの治療方法がその人のがんにもっとも効果を期待できるか"を、医師は探っていく。検査結果に加え、その人の年齢や性別、環境や希望なども考慮して総合的に判断し、治療方法が提案される。場合によっては、2つ以上の治療を組み合わせる(集学的治療)こともある。
最近は4番目の治療法として免疫細胞治療が注目されている。
免疫細胞治療とは、体に元々存在する自己免疫細胞を培養・活性化して、再び点滴等によって体内に戻す治療法。副作用が少なく、体に優しい治療法として、近年最も注目されているがん治療法である。
先進医療として、大学病院等でも実施されているところも出てきた。全国に十数種類の免疫細胞治療があり、主に培養する免疫細胞が異なる。
免疫と免疫細胞には大きく分けて、3つある。まず初期(生得)免疫チーム。異物を発見したら、まず攻撃を仕掛ける免疫チーム。人が生まれつき持っている免疫細胞群。このチームに所属する細胞は、異物を発見すると無差別に食べたり、殺菌剤のような物質をばらまいたりして、第1波の攻撃を仕掛ける。
攻撃をする一方で、『こんな敵がいるよ』と、他の免疫細胞に知らせることも。攻撃力はそれほど強くない。
好中球は、異物に合うと、真っ先に飛び出して食べたり、殺菌剤のような物質をばらまく細胞。攻撃力はあまり強くない。マクロファージは、異物をどんどん食べてしまう大食漢の細胞。樹状細胞は、異物を察知して『こんな敵もいるよ』と、獲得免疫チームに知らせて回る細胞。
中間免疫チームは、生得免疫の攻撃をかいくぐった異物に、第2波の攻撃をしかけるチーム。海老名博士が、生得免疫と獲得免疫の中間の働きをする免疫細胞群として新しく名付けた。
がん治療の免疫細胞BAK療法では、このチームの細胞を増やす。
NIE細胞は、海老名博士が名付けたスーパー免疫細胞。神経、免疫、内分泌の機能を併せ持った多機能統合細胞。以下のNK細胞、γδT細胞が含まれる。
NK細胞は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞などの異物を発見すると、すぐに攻撃を仕掛ける、がん細胞の天敵。 γδT細胞 血液中にも存在してがんを殺していることを、海老名博士が世界で初めて発見した細胞。
後期(獲得)免疫チームは、生得免疫や中間免疫の攻撃をかいくぐった異物を攻撃する精鋭チーム。一度闘った異物を覚えておいて、次にその異物が入ってきた時に、すばやく強力な攻撃をしかける。
「はしか」や「インフルエンザ」など、一度かかると抵抗力がついていわゆる『二度罹りなし』といわれる状態になるが、それはまさに獲得免疫の働きを示している。
ただ、自分たちが記憶していない異物に対しては、攻撃できないのが弱点。 B細胞は、「抗体」と呼ばれる武器のようなものを作り、異物を攻撃する細胞。
T細胞は、異物を攻撃する「キラーT細胞」のほか、他の免疫細胞に指令を出す「ヘルパーT細胞」など、複数の種類がある。キラーT細胞は、攻撃力は強いが、相手ががん細胞の場合、一部のがん細胞しか攻撃できず、正常細胞を攻撃してしまうことがあるという弱点がある。
参考 @niftyニュース: https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12180-091442/
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