NASA探査機、史上最も遠い天体「ウルティマトゥーレ」を観測

 米航空宇宙局(NASA)とジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所は2日までに、無人探査機「ニューホライズンズ」が地球から約64億キロ離れた、冥王星以遠のカイパーベルト天体内に位置する天体「ウルティマトゥーレ」へのフライバイ(接近通過)に成功したと発表した。

 ニューホライズンズがフライバイを行ったのは米東部時間の1日午前0時33分だが、地球からの距離があまりに遠いため、ニューホライズンズからの信号を受信したのは約10時間後の午前10時30分ごろだった。

 ニューホライズンズは、ウルティマトゥーレを時速約5万キロで通過したため、フライバイのチャンスは1度しかなく、このミッションを行っている科学者のチームは、フライバイの成功に胸をなで下ろした。

 ミッション運用マネジャーのアリス・ボウマン氏は「われわれは、地球から最も遠い(天体への)フライバイに成功した」と述べ、さらに「この成功はわれわれの住む太陽系の起源の理解に役立つ」と付け加えた。

 またニューホライズンズは、約80万キロ離れた位置から撮影したウルティマトゥーレの最初の画像も送ってきた。画像は荒いが、科学者らがこれまでに入手したウルティマトゥーレの画像の中では最高の画像だ。

 最新の画像を見ると、ウルティマトゥーレはボウリングのピンのような形で、縦長でプロペラのように回転している。近距離で互いの周囲を回っている2つの天体の可能性もあるが、さらなる画像を見ないと何とも言えない。今後、ウルティマトゥーレの高解像度の画像やデータが届く予定だ。

ウルティマ・トゥーレ (Ultima Thule)はカイパーベルト天体

 ウルティマ・トゥーレ (Ultima Thule)は、2014年に発見されたカイパーベルト天体。カイパーベルト天体は、太陽系の外縁部にある小惑星の集まり。主に氷で形成されている。太陽から30〜50au離れた領域に分布している。

 2014年6月26日、ニューホライズンズのチームがハッブル宇宙望遠鏡を使ってこの天体を発見しました。仮符号「2014 MU69」と名付けられたこの天体には、後に一般公募により、「私たちが知る世界を越えたところ」という意味の愛称「ウルティマ・トゥーレ」がつけられた。

 ニューホライズンズのチームは、2015年後の冥王星への最接近(フライバイ)後に、カイパーベルト天体を探査することを計画していた。いくつかの候補天体の中から、ニューホライズンズの残りの燃料などで到達可能であることなどから、このウルティマ・トゥーレが目標として選ばれた。ウルティマ・トゥーレは、カイパーベルトの中でも最も遠方に位置する天体とされ、地球からは65億キロも離れている。

 ウルティマ・トゥーレの大きさはさしわたしがおよそ30キロほどと推定されており、これまでみつかってきたカイパーベルト天体の中では比較的小さな部類に属す。

 2017年7月に行われた観測により、ウルティマ・トゥーレは極めて奇妙な形をしていることがわかった。現在のところ、この天体は鉄アレイのような、2つの天体がくっついたような形、あるいは場合によっては2つの天体からなる「連星系」を成している可能性が考えられている。また、ウルティマ・トゥーレの表面はかなり赤いこともわかっている。

 しかし、地上からの観測ではここまでが限界。なにしろ、ウルティマ・トゥーレがいる位置では、太陽光の強さは地球のわずか0.05パーセントしかない。つまり、これだけの光しか反射しないから、地球からみても極めて暗い天体であり、その表面がどのようになっているのか、何でできているのか、詳しいことを知るすべはない。

 ニューホライズンズが史上はじめてカイパーベルト天体であるウルティマ・トゥーレを観測することにより、このように地球からでは暗くてよくわからない、そしてこれまで明らかではなかったカイパーベルト天体の真の姿を明らかにすることが期待されている。

 カイパーベルト天体も、地球などの惑星と同じく、太陽系ができた46億年前にできたと考えられている。そのため、このような太陽系「最果て」の天体を調べることは、太陽系のでき方や私たちの地球をはじめとする惑星のでき方を知る上でも非常に重要だ。

 ニュー・ホライズンズについて

 ニュー・ホライズンズ (New Horizons) はアメリカ航空宇宙局 (NASA) が2006年に打ち上げた、人類初の冥王星を含む太陽系外縁天体の探査を行う無人探査機である。 打ち上げ費用は、ロケット製造費、施設利用費、装置開発経費及びミッション全体の人件費を含み、約7億ドル(日本円で約800億円)である。ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所 (APL)(英語版)のミッションチームが管制を行っている。

 本体の質量は465kg(推進剤77kg含む)。本体を軽量にして、生じた余裕は速度の向上に充てられた。発射後9時間で月軌道(地球から約38万km)を通過し、13ヵ月後に木星をスイングバイした。月軌道および木星までの所要期間は史上最短である。

 太陽から遠く太陽電池を使えないため、原子力電池を搭載している。また、冥王星軌道からの通信速度は僅か800bps弱となるため、64Gbit(8GB)相当のフラッシュメモリを搭載し、冥王星探査で取得したデータはメモリに蓄積して、数ヶ月かけて地球へ送り届ける。

 ミッション用機器の他に、星条旗、公募した43万人の名前が記録されたCD-ROM、史上初の民間宇宙船スペースシップワンの機体の一部だったカーボンファイバーの破片、冥王星を発見したクライド・トンボーの遺灰が搭載された。遺灰の搭載については打上げ後に公表された。また、2014年には、「New Horizons Message Initiative」が結成された。人類からエイリアンへ向けたデジタル・メッセージを公募して、すべての任務完了後のニュー・ホライズンズに送信する計画である。

参考 CNN news:https://www.cnn.co.jp/fringe/35130833.html

ニュー・ホライズンズ探査機がとらえた冥王星【第2版】
クリエーター情報なし
株式会社ブックブライト
太陽系探検ガイド エクストリームな50の場所
クリエーター情報なし
朝倉書店

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please