降水量に恵まれている日本
比較的降水量が多く、豊かな森が存在する日本では水資源が豊富で、飲料水や生活用水に困ることはない。しかし、多くの国では水を海水から淡水化して作る必要がある。いったいどのように、海水から淡水を造るのであろうか?
海水には約3.5%の塩分が含まれており、そのままでは飲用に適さない。飲用水とするためには塩分濃度を0.05%以下にまで下げる必要がある。海水淡水化プロセスの基本は海水からの脱塩処理である。
多段フラッシュ(MSF)法と逆浸透法 (RO)がある。多段フラッシュ法とは、海水を熱して蒸発(フラッシュ)させ、再び冷やして真水にする、つまり海水を蒸留して淡水を作り出す方式である。熱効率をよくするため減圧蒸留される。
実用プラントでは多数の減圧室を組み合わせているので、多段フラッシュ方式 (Multi Stage Flash Distillation) と呼ばれている。生成された淡水の塩分濃度は低く、5ppm未満程度である。大量の淡水を作り出すことができ、海水の品質を問わないが、熱効率が大変悪く多量のエネルギーが必要である。
逆浸透法 (ROs)は、海水に圧力をかけて逆浸透膜(RO膜、Reverse Osmosis Membrane)と呼ばれる濾過膜の一種に通し、海水の塩分を濃縮して捨て、淡水を漉し出す方式である。フラッシュ法よりエネルギー効率に優れている反面、RO膜が海水中の微生物や析出物で目詰まりしないよう入念に前処理する必要があること、整備にコストがかかること等の難点がある。
生成された淡水の塩分濃度は蒸留を行うフラッシュ方式と比較して若干高く、100ppm未満である。1990年代までは比較的小規模のものが多かった。しかし、近年は日量1万トンを超える大型プラントは、世界的に大部分がこの形式で建設されている。
RO膜は元の海水の塩分濃度が高いほど、また得ようとする淡水の塩分濃度が低いほど高い圧力をかけて濾過する必要があるが、例えば平均的な塩分3.5%の海水から日本の飲料水基準に適合する塩分0.01%の淡水を得る場合、2005年現在で最低55気圧程度が必要である。このためRO膜は圧力に耐えるよう工夫されている。
加圧にはタービンポンプやプランジャーポンプなどの高圧ポンプが使用される。2002年時点で、1㎥あたり 3 kwh程度で製造でき、単価は170円 毎㎥ 以下という報告がある。
高濃度塩水(ブライン)は安全か?
海水淡水化、廃水は淡水の1.5倍、化学物質も含む 従来は等倍量とされた高濃度塩水、増え続けるプラントを科学者が懸念 2019.01.17
ドバイのジェベル・アリにある電気水道局では、天然ガスを燃やして電気をつくり、飲料水を作るために海水を淡水化している。(PHOTOGRAPH BY LUCA LOCATELLI, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
中東や北アフリカなどの乾燥した地域を中心に、世界中で水不足が進行しつつある中、経済的に余裕のある国々は次々と海水(塩水)の淡水化に着手している。海水淡水化とは、大量のエネルギーを用いて、海水などから塩分を取り除く処理のことだ。世界には現在、稼働中および建設中のものをあわせて、1万6000カ所近い海水淡水化プラントが存在する。
「海水淡水化プラントで作られるのはしかし、塩分を取り除いた水だけではありません」と語るのは、カナダにある国連大学の研究者、マンズール・カディル氏だ。「そうしたプラントからは、ブラインが発生します」
ブラインとは、淡水化処理後に残される高濃度の塩水だ。しかし、ブラインがどれだけの量発生しているのかについて、「包括的な評価は存在しない」とカディル氏はいう。そこで氏らは、新たな評価方法を用いてその値を算出し、1月14日付けの学術誌「Science of the Total Environment」に発表した。
カディル氏のチームは、すでに稼働を停止したものも含む約2万カ所の淡水化プラントについて、入手可能な調査報告書やデータベースを分析した。ブラインの生成については、測定する基準すら存在しない。そのため、彼らは素材となる塩水のタイプと、使われている淡水化技術などから、プラントのおおよその「回収率」、つまり、淡水と比べてどれだけのブラインが発生しているかを推定した。
日本の半分を30センチの水で覆える量
調査報告書などでは長い間、淡水とブラインの比率は1対1と仮定されてきた。ところがカディル氏らの研究により、平均的な淡水化プラントにおいては、実際には淡水の1.5倍のブラインが発生していることがわかった。すなわち1年間で518億立方メートルになるが、これは日本の半分を深さ30センチの水で覆い尽くせる量だ。
「タイムリーかつ重要な情報です」。米ニューヨーク大学アブダビ校の生物学者ジョン・バート氏はそう語る。バート氏によると、淡水化は環境にいくつかの有害な影響を与えるおそれがあるという。
そうした影響の中でも特によく知られているのが、大量の化石燃料を燃やす際の排出物だ。大半の淡水化プラントは、「逆浸透法」を採用している。この方法では、水と塩を分ける膜を通過させる際に、高い圧力をかける。そのために、大きなエネルギーが必要になる。
典型的なプラントでは、1000ガロン(3785リットル)の海水を処理するのに平均で10〜13キロワット時のエネルギーが使われる。このエネルギー消費が、淡水化のコストを引き上げている。カリフォルニアにある最新の淡水化プラントは10億ドルのコストをかけて建設され、今ではサンディエゴで消費される飲料水の10パーセントを供給している。こうしたコストと環境への影響の大きさから、科学者らは、より効率的な分離膜や、太陽エネルギーで動く淡水化装置の開発といった代替案を探ってきた。
海水を取り込むときにも、魚の幼生などの微生物やサンゴを吸い込んでしまうという問題がある。しかしより大きなリスクは、淡水化プロセスの最終段階にある。それはブラインが海に戻されることだ(淡水化の大半は海のそばで行われている)。
「ブラインは通常の海水よりも塩分濃度が高く、また排出時の水温も高くなります」とバート氏は言う。こうした条件下では、ブラインの排出場所付近の海洋生物は生き延びることが難しくなる。
銅や塩素などの化学物質も
しかしバート氏がそれ以上に懸念しているのは、ブラインに含まれる化学物質だ。カディル氏の論文は、特に厄介な化合物として銅と塩素を挙げている。こうした化学物質は淡水化プロセスのさまざまな段階において、細菌の繁殖を防ぐために海水に加えられ、その多くが廃水に残されたままとなる。
「これらの化学物質に長い間さらされ続ければ、排水口周辺の広い範囲に環境影響が及び、金属などの汚染物質が食物チェーンに蓄積されるかもしれません」とバート氏は言う。
こうしたリスクを軽減するうえで、規制が効力を発揮する場合もあるものの、その強制力は場所によって大きく異なる、とバート氏。また、世界で行われる淡水化のほぼ半分の量を占めるペルシャ湾では、管理が比較的ゆるくなりがちだという。
一方で、ブラインについてはさほど心配する必要はないとする意見もある。「環境に与える影響への懸念は誇張されています」と語るのは、米ジョージア工科大学の水資源エンジニア、フィリップ・ロバーツ氏だ。ロバーツ氏はまた、カディル氏の調査は、ブラインが発生している量については合理的な数字を提示しているものの、やや「紛らわしい」情報だと述べている。
ブラインの量はさほど有益な数字ではなく、トータルの量も全体に比すれば非常に少ないとロバーツ氏は言う。「重要なのはブラインの廃棄の仕方です。安全に処理することは可能です」
いずれにせよ、昔ながらの水源が減り続け、淡水化の技術が進歩するにつれ、淡水化への依存はより強くなっていくだろう。そしてブラインは増え続け、やがて問題が生じるとカディル氏は見ている。
「プラントで発生する大量のブラインへの対処法を考える必要があります。今こそこの問題への関心を高める必要があると、われわれは考えたのです」
海水淡水化とは何か?
海水淡水化(かいすいたんすいか)とは、海水を処理して淡水(真水)を作り出すこと、及びその設備を指す。 飲料用等で真水が必要とされる場所の近くに淡水源(河川、湖沼)等がなく、気候等の関係で天水(雨)の利用も難しい場合、もしその場所が海辺であれば、海水を処理して淡水を作りだし、利用することが行われている。このプロセスを海水淡水化と呼ぶ。
海水には約3.5%の塩分が含まれており、そのままでは飲用に適さない。飲用水とするためには塩分濃度を0.05%以下にまで下げる必要がある。海水淡水化プロセスの基本は海水からの脱塩処理である。
多段フラッシュ方式 (MSF:Multi Stage Flash Distillation)
海水を熱して蒸発(フラッシュ)させ、再び冷やして真水にする、つまり海水を蒸留して淡水を作り出す方式である。熱効率をよくするため減圧蒸留されている。実用プラントでは多数の減圧室を組み合わせているので、多段フラッシュ方式 (Multi Stage Flash Distillation) と呼ばれている。生成された淡水の塩分濃度は低く、5ppm未満程度である。大量の淡水を作り出すことができ、海水の品質を問わないが、熱効率が大変悪く多量のエネルギーを投入する必要がある。
この方式はエネルギー資源に余裕のある中東の産油国に多く採用されており、多くの国々では飲用水のほとんどをこれらの造水プラントで生産している。日本からはササクラ、三菱重工業、IHI、日立造船等のメーカーのプラントが輸出されている。熱源としては発電所の復水や油井から上がってくる随伴ガスや精製時に発生するオフガスが利用され、冷却にはやはり海水が使用される。このため、海水淡水化プラントは精油所や火力発電所に併設される場合が多い。
サウジアラビアの海水淡水化公団では多段フラッシュ方式の大型海水淡水化プラントを多数稼動させている。例えば1981年に稼動したジェッダNo.4プラントの生産水量は日量22万トンであり、2005年9月現在の世界最大のプラントは同公団がアシュベールに持つ日量100万トンのものである。サウジアラビアではこれらを工業用水や一般家庭用水の主水源としており、さらに余剰の淡水を農業用水としても利用している。
逆浸透法 (RO:Reverse Osmosis)
海水に圧力をかけて逆浸透膜(RO膜、Reverse Osmosis Membrane)と呼ばれる濾過膜の一種に通し、海水の塩分を濃縮して捨て、淡水を漉し出す方式である。フラッシュ法よりエネルギー効率に優れている反面、RO膜が海水中の微生物や析出物で目詰まりしないよう入念に前処理する必要があること、整備にコストがかかること等の難点がある。
生成された淡水の塩分濃度は蒸留を行うフラッシュ方式と比較して若干高く、100ppm未満である。1990年代までは比較的小規模のものが多かった。しかし、近年は日量1万トンを超える大型プラントは、世界的に大部分がこの形式で建設されている。
RO膜は元の海水の塩分濃度が高いほど、また得ようとする淡水の塩分濃度が低いほど高い圧力をかけて濾過する必要があるが、例えば平均的な塩分3.5%の海水から日本の飲料水基準に適合する塩分0.01%の淡水を得る場合、2005年現在で最低55気圧程度が必要である。このためRO膜は圧力に耐えるよう、以下のいずれかの構造で造られる。
パスタ程度の太さで中が空胴の糸状に成型し、外側から内側へ濾過する(中空糸膜)。1枚の濾過膜を、強度を保つため丈夫なメッシュ状のサポートと重ね合わせて袋状に閉じ、これをロールケーキ状に巻いてその断面方向から加圧する(スパイラル膜という)。
加圧にはタービンポンプやプランジャーポンプなどの高圧ポンプが使用される。2002年時点で、㎥あたり3kwh程度で製造でき、単価は170円毎㎥以下という報告がある。
2005年10月現在、世界最大の逆浸透法海水淡水化プラントはイスラエルのアシュケロンにあり、日量33万トンの淡水を工業用や家庭用に供給している。他に中東地域、地中海沿岸、シンガポールなどに大型プラントが多い。日本最大のものは福岡市東区にあるまみずピアで、淡水供給量は日量5万トンである。
なお、2006年現在、世界で海水淡水化用の逆浸透膜を最も多く製造している国は日本であると推定されているが、生産国が日米欧以外の国々に拡大し、それらの国々での統計データが不明であることから、必ずしも正確ではない。(Wikipedia)
参考 National Geographic news: https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/011600037/
潮目 ―海水淡水化物語― | |
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水と水技術 No.9 淡水化・脱塩技術 (Ohm MOOK No. 82) | |
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