海のゴミが集まる場所
海のごみが問題になっている。海のゴミは海岸に漂着してしまうと収集するのも大変。特にゴミのたまりやすいがけ海岸や石の大きな海岸はなかなか人も入りづらく、なかなか清掃できない。かといって、放っておくと事故や環境汚染を引き起こしたり、他の生物に絡まったりして殺してしまうことにもなりかねない。
海ごみの研究を進めていく中で、あることが分かってきた。それは、海にもゴミがたまりやすいところがある...ということ。
それが潮目である。潮目とは性質も速さも違う海流のぶつかるところで、海の上から見てもはっきりわかる。潮目にはプランクトンが多く、魚も多く集まる。なんとそこに海ごみも多く集まってしまうことがわかってきた。
海ごみの集まっている潮目で回収すれば効率よくゴミの除去ができる。ゴミを取ると魚も除去することになる...。ハワイ州カイルア・コナにあるNOAA海洋漁業局の野外実験室で潮目にあるゴミを採取し撮影してみると、プラゴミと同時に。エボシダイの仔魚やシイラの仔魚が見つかった。
魚を育む「潮目」に大量のマイクロプラスチック
米国海洋大気庁(NOAA)に勤務する海洋学者のジャミソン・ゴーブと魚類生物学者のジョナサン・ホイットニーは潮目で見られる仔魚の研究を3年近く続けているが、最近の調査でハワイ沖の潮目には魚とその餌以外のものも存在しているのを見つけた。プラスチックの小片「マイクロプラスチック」だ。それも大量に含まれていて、仔魚がそれを食べてしまうという。
生まれたばかりの魚は餌となる有機物が豊富な潮目に集まるが、餌と間違えてプラスチックを食べても栄養にはならず、次の餌にありつくまでに命を落とすおそれがある。
「潮目にいる仔魚は途方もない難関をかいくぐってきたのです」とゴーブは語る。「卵から仔魚になれる確率は0.1%。運に恵まれなければなれません。それなのに今、プラスチックという厄介ものが入り込んできました」
ホイットニーとゴーブは、ハワイ沖の潮目からプラスチックが見つかることは予測していた。ハワイ諸島が「太平洋ごみベルト」と呼ばれる海洋ごみが集中する海域に位置しているからだ。しかし、二人はマイクロプラスチックの研究に手を出すつもりはなかった。自分たちの研究はあくまでも仔魚に関するものだと考えていたが、採取する海水に含まれるプラスチックの量があまりに多かったため、それを無視できなくなったのだ。
目に見えないからこそ恐ろしい
プラスチックが及ぼす害については、科学的にまだ確認されていないが、ゴーブらの実験から、手がかりがいくつか見つかっている。たとえば、プラスチックを摂取した魚では、食欲低下や発育不全が見られるというのだ。こうした事態は、魚の繁殖に影響を及ぼし、最後には個体数の減少を招くおそれがある。
トビウオはとりわけ高い頻度でプラスチックを食べていると思われる。この魚は、サメなど大型の魚の餌になるだけでなく、ハワイに生息する海鳥にとっても主要な食べ物だ。そうだとしたら、鳥はトビウオと一緒にプラスチックまで体内に取り込んでいるのか? そのために何らかの影響を受けているのか? 一つの疑問が解明されるたびに、新たに10の疑問が湧いてくる、とゴーブは言う。
ゴーブとホイットニーが胃の中からプラスチックを見つけた仔魚のうち、最小のものは体長が6ミリほどしかなかった。つまり、魚たちが食べるプラスチック繊維はさらに小さいというわけだ。
「肉眼で見えるか見えないかの大きさです。1ミリもないですから」と、ホイットニーは話す。「それこそが恐ろしいのです。目に見えないような小さな欠片が問題を引き起こしているのですから」
参考 National Geographic news: https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/042300247/
今、世界で起きている「海洋プラスチック」の問題
洋服から自動車、建設資材に至るまで、私たちの生活のあらゆる場面で利用されているといっても過言ではないプラスチック。
手軽で耐久性に富み、安価に生産できることから、製品そのものだけでなく、ビニールや発泡スチロールなどの包装や梱包、緩衝材、ケースなどにも幅広く使われています。
しかし、プラスチックの多くは「使い捨て」されており、利用後、きちんと処理されず、環境中に流出してしまうことも少なくありません。手軽に使える分、手軽に捨てられてしまう、そうした面もあるといえます。
そして環境中に流出したプラスチックのほとんどが最終的に行きつく場所が「海」です。プラスチックごみは、河川などから海へと流れ込むためです。
既に世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン。そこへ少なくとも年間800万トン(重さにして、ジャンボジェット機5万機相当)が、新たに流入していると推定されています。海洋に流入する海洋プラスチックの年間推定量は重さにして、最低でもジャンボジェット機5万機分に相当します。
こうした大量のプラスチックごみは、既に海の生態系に甚大な影響を与えており、このままでは今後ますます悪化していくことになります。
例えば海洋ごみの影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしています。このうち実に92%がプラスチックの影響、例えば漁網などに絡まったり、ポリ袋を餌と間違えて摂取することによるものです。プラスチックごみの摂取率は、ウミガメで52%、海鳥の90%と推定されています© Nils Aukan / WWF
漁網に絡んで溺死したシロカツオドリ(ノルウェー)
このようなプラスチックごみは、豊かな自然で成り立っている産業にも直接的、間接的な被害を与え、甚大な経済的損失をもたらしています。例えば、アジア太平洋地域でのプラスチックごみによる年間の損失は、観光業年間6.2億ドル、漁業・養殖業では年間3.6億ドルになると推定されています。
一度放出されたプラスチックごみは容易には自然分解されず、多くが数百年間以上もの間、残り続けます。
海洋ごみが完全に自然分解されるまでに要する年数。
上記の内、アルミ缶以外は全てプラスチックが主成分の「海洋プラスチックごみ」
これらのプラスチックごみの多くは、例えば海岸での波や紫外線等の影響を受けるなどして、やがて小さなプラスチックの粒子となり、それが世界中の海中や海底に存在しています(※9)。5mm以下になったプラスチックは、マイクロプラスチックと呼ばれています。
マイクロプラスチックは、日本でも洗顔料や歯磨き粉にスクラブ剤として広く使われてきたプラスチック粒子(マイクロビーズ)や、プラスチックの原料として使用されるペレット(レジンペレット)の流出、合成ゴムでできたタイヤの摩耗やフリースなどの合成繊維の衣料の洗濯等によっても発生しています (※10)。
海洋に投棄されたプラスチックゴミはやがて微細なマイクロプラスチックとなり、食物連鎖を通じて多くの生物に取り込まれています。
製造の際に化学物質が添加される場合があったり、漂流する際に化学物質が吸着したりすることで、マイクロプラスチックには有害物質が含まれていることが少なくありません(※11)。そして、既に世界中の海に存在するマイクロプラスチックが海洋生態系に取り込まれ(※12)、さらにボトル入り飲料水や食塩などに含まれている可能性が指摘されています(※13)(※14)。
マイクロプラスチックについては、人を含む生物の身体や繁殖などに、具体的にどのような影響を及ぼすのか、詳しいことはまだ明らかにされていません。しかし、本来自然界に存在しない物質が広く生物の体内に取り込まれた結果を、楽観視することは許されません。
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