風台風と雨台風
台風19号は数々の爪痕を列島に残した。国土交通省によると、台風19号による豪雨で川の堤防が壊れる「決壊」が発生したのは、長野県の千曲川、宮城県の吉田川、福島県の阿武隈川など7県の52河川73か所。川の氾濫も国管理の24河川、16都県管理の207河川で発生した。NHKによると10月17日の時点の被害者は、死亡77人不明9人けが372人となっている。
2019年9月に関東を襲った台風15号は「風台風」で、各地で観測史上最も強い風が吹き荒れ、千葉県では鉄塔や電柱が倒れて大規模な停電が発生した。東京湾に到達した時点で中心気圧955ヘクトパスカル、最大風速45メートルと、関東に接近・上陸した台風としては「過去最強クラス」だった。
今回の台風19号は「雨台風」で、伊豆半島に上陸したのは10月12日午後7時前。台風本体の北側には厚い雨雲が張り出し、東海や関東地方では上陸前の日中から大雨に見舞われた。この日、24時間降水量の観測記録を更新した地点は16都県の84カ所に及んだ。雨が強まる時間が遅かった岩手県でも、13日までの24時間雨量を更新した地点があった。13都県で大雨特別警報が出され、東北から関東甲信にわたる広い範囲で河川が氾濫したり、土砂災害が起きたた。
これらの台風の原因は何だろうか?また今回の台風のニュースでは、気象庁から幾度となく呼びかけられた「特別警戒」、「50年に1度」という言葉が耳に残る。「特別警戒」とは何か調べてみたい。
台風19号、雨量が増えたメカニズム
東日本の広い範囲に記録的な大雨を降らせた台風19号。河川の氾濫(はんらん)が相次ぎ、大規模な浸水などの被害が各地で多発したのは、台風の規模に地形条件が重なったためとみられる。東北などでは、想定を超える事態への対応に追われた。
台風19号が伊豆半島に上陸したのは10月12日午前7時。風本体の北側には厚い雨雲が張り出し、東海や関東地方では上陸前の日中から大に見舞われた。12日に24時間降水量の観測記録を更新した地点は16都県の84カ所に及んだ。雨が強まる時間が遅かった岩手県でも、13日までの24時間雨量を更新した地点があった。13都県で大雨特別警報が出され、東北から関東甲信にわたる広い範囲で河川が氾濫したり、土砂災害が起きたりした。
広範囲に大雨を降らせた要因について、専門家は台風本体の大きさや勢力に、地形条件が重なったことを挙げる。台風19号は、今月6日に中心気圧千ヘクトパスカルで発生。その後、急速に気圧が下がり、8日には「猛烈な」強さの915ヘクトパスカルに。平年より1~2度高い海面水温によってその後も勢力は大きく衰えず、本州の半分ほどをすっぽり覆う大きさで上陸したため、広範囲で大きな被害につながったとみられる。
横浜国立大の筆保弘徳(ふでやすひろのり)准教授(気象学)は、「特殊な雨台風」と表現する。この時期の台風は、近づく前から秋雨前線を刺激し、2、3日前から雨をもたらすことが多い。これに対し19号は、台風本体の雲が1日で一気に大雨をもたらしたのが特徴だという。このため、あふれるほどの水が川に流れ込んだとみられる。
地形が大雨に拍車をかけた。山口大の山本晴彦教授(環境防災学)は「進路沿いには、丹沢山地や北上山地など山がちな地形がある。ここに台風から吹き出す南東よりの暖かく湿った空気がぶつかり、上昇気流を生んでさらに大雨になった」とみる。
日降水量の国内最高記録
大型の台風19号は関東を縦断して福島県付近から太平洋に抜け、13日正午の観測で日本の東で温帯低気圧に変わった。気象庁によると、神奈川県箱根町では12日の降水量が国内最高記録を更新。そのほかの地域でも各地の観測史上1位の記録を相次いで更新、大雨の記録を塗り替えた。
神奈川県箱根町では12日の降水量が922.5ミリに達して国内最高記録を更新した。従来は高知県馬路村で2011年7月19日に観測された851.5ミリが1位だった。 気象庁によると、他に12日の日降水量は静岡県伊豆市が689.5ミリ、埼玉県秩父市は635.0ミリ、東京都檜原村は602.5ミリ、静岡市葵区は597.5ミリ、相模原市緑区は595.0ミリで、各地点で観測史上1位の記録を更新した。
13日は岩手県普代村で1時間に95.0ミリの雨が降り、同地点の史上最高記録となった。 降水量の観測史上1位を記録した観測点は12時間降水量で宮城県丸森町(13日午前1時半に517.5ミリを観測)など120地点、24時間は茨城県北茨城市(13日午前0時40分に457.0ミリを観測)など103地点。
過去に経験したことがない雨に襲われた人が多数いたことがうかがえる。 最大瞬間風速は12日に東京・神津島で44.8メートル、横浜市中区と東京・葛西臨海公園で43.8メートル、羽田空港で42.7メートル、東京都心部で41.5メートル、千葉市中央区で40.3メートルを記録した。 台風19号は温帯低気圧になった時点で中心気圧980ヘクトパスカルだった。12日午後6時に「大型で非常に強い台風」から「大型で強い台風」に変わり、13日午前3時に「大型の台風」に変わっていた。〔共同〕
「特別警報」命に関わる非常事態
平成30年7月の「西日本豪雨」。西日本を中心に川の氾濫や土砂災害が相次いで、犠牲者は200人を超え、平成で最も犠牲者が多い風水害となりました。この時、11府県に出されたのが大雨の「特別警報」。
「特別警報」は気象庁が平成25年8月に導入した。通常の「警報」の基準をはるかに超えるような重大な災害が起こる危険性が非常に高い時に発表される。「多くの命に関わる非常事態」になっていることを端的に知らせるための情報である。
これまでの災害では、「西日本豪雨」のほか、平成29年7月の「九州北部豪雨」、平成27年9月に茨城県の鬼怒川の堤防が決壊するなど大規模な浸水の被害が出た「関東・東北豪雨」などで発表された。平成31年4月1日現在、8回発表されている。
なぜ、通常の「警報」だけではだめなのか...?導入の背景には過去の大きな災害の際、「大雨警報」や「土砂災害警戒情報」など従来の防災情報を繰り返し発表しても避難や被害防止に結びつかなかった教訓がある。
特に、平成23年の「紀伊半島豪雨」では各地で総雨量が1,000ミリを超える記録的な大雨になったが、地元の自治体からは「雨量の数値だけを聞いてもどのくらい危険な状態なのかがわからなかった」という意見が相次いだ。
気象庁は強い危機感をわかりやすく伝え、身を守ってもらうために平成25年、法律を改正して「特別警報」の新設を決めた。
「特別警報」は災害の種類ごとに発表される。気象分野では「大雨」「大雪」「暴風」「暴風雪」「波浪」「高潮」の6種類。
「50年に1度」で発表
「特別警報」が発表される「重大な災害の危険性が非常に高い」とはどのような状況なのか。それは、「その地域で50年に1度あるかないかの現象」が起きている場合、または予想された場合である。
「西日本豪雨」「九州北部豪雨」などの大雨以外にも、台風で重大な災害が予想される場合、接近する前に暴風や高波、高潮のおそれがあるして発表されることもあります。これまで沖縄県で2回発表されているほか、過去の台風災害では東海地方が高潮に襲われ、5,000人を超える犠牲者が出た昭和34年の「伊勢湾台風」が該当する。
「特別警報」に該当する災害では多くの場合、甚大な災害につながっている。国の調査では大雨の特別警報が出た市町村のおよそ51%で被害が発生した。「特別警報」は、全国的に見ても、1年に1度あるかないかの極めて“まれ”な現象で、発表された場合は最大級の警戒が必要だ。
「特別警報」2つの問題
一方、私たちが避難などの行動につなげるために、大雨の特別警報には2つの大きな課題があることを知っておく必要がある。
1つは重大な災害につながる大雨でも発表されないケースがある。例えば、39人が犠牲になった平成25年の伊豆大島の土砂災害、77人が犠牲になった平成26年の広島市の土砂災害では特別警報は発表されていない。
西日本豪雨でも、愛媛県では肱川の氾濫など大きな被害が出た7月7日の時点で、特別警報は発表されていない。(翌日の8日に発表)。理由は、特別警報が府県単位など、ある程度の広がりがある地域で、大規模な災害のおそれがあるときに発表されるから。重大な災害につながる大雨でも狭い範囲だと判断された場合は発表されないケースも多い。
もう1つの課題が平成29年の「九州北部豪雨」のようなケース。気象庁は午後5時50分ごろに福岡県に、午後8時前に大分県に大雨の特別警報を発表したが、実は発表した時点で、すでに各地で川の氾濫や浸水の被害が広がっていた。特別警報が発表された段階で状況が悪化し、危険な状態に陥っているケースもある。
この2つの課題から言えることは、大雨の際に「特別警報」の発表を待っていては、身の安全を確実に守ることは難しい。それでは、命を守るために何が大事なのか。それは「特別警報」を待つのではなく、自分の身は自分で守る、早めの避難を心がけること。
特別警戒の「レベル5」では遅い場合も...
ことし運用が始まる国の防災情報を5段階のレベルに分ける取り組みのうち、大雨の情報を例に説明する。この中で特別警報は最も高い「レベル5」とされている。
この前に4つの段階があります。レベル1とレベル2。数日以内に大雨が予想される段階や大雨の注意報が出される段階。レベル3。大雨の「警報」が出される。自治体の「避難準備の情報」もこの段階で出され、「高齢者などの早めの避難」が必要だとされる。
レベル4。土砂災害の危険性が非常に高くなり、「土砂災害警戒情報」が発表されます。各市町村はこうした情報が出た段階で、「避難指示」や「避難勧告」を発表する。
注意が必要なのは「レベル5」、つまり特別警報の発表される段階は、すでに災害が発生している状況であるとされていること。つまり、警報などの情報が発表された「レベル3」や「レベル4」の段階から早めに安全な場所に避難しておくことが身を守る上で最も重要なのだ。
「特別警報」があるからと言って通常の警報が軽いわけではない。「まだ『特別』じゃないから、大丈夫」という誤解は非常に危険。「特別警報」が発表される前に避難を完了しておくようにしよう。
しかし、どうしても避難が間に合わず特別警報が発表される状況になった場合、いま置かれている環境の中で「できる限り安全を確保する」ことが必要となる。
周りを確認して、外へ避難ができる状況であれば、直ちに避難所などの安全な場所へ避難する。ただ、周囲で浸水が始まるなど外に出るのが危険な場合は、頑丈な建物の2階以上に上がるなどの行動をした方が、助かりやすくなる場合もある。
さらに大事なこと 「事前の準備」を
命を守るために、さらに大切なことがある。事前の準備だ。自分の住む場所などがどのような災害の危険があるのか、どこに安全な避難場所があるのかを日ごろから確認しておくと、いざというときの行動につながる。
こうした情報は、地元の自治体の防災マップなどで確認できる。その上で、台風や大雨などの際には、テレビやラジオ、インターネットなどで「警報」など最新の情報を確認し、避難につなげよう。
災害から命を守るうえで、「特別警報」は万能ではなく、防災関係者の間では「最後の一押し」と呼ぶ人もいる。大事なのは「最後の一押し」の前に安全を確保しておくこと。どのような情報が発表されれば危険が迫っているのか、改めて確認し、早めの避難や行動を心がけよう。
引用 NHK news Web:特別警戒 https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/basic-knowledge/basic-knowledge_20190526_06.html
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