2019年を振り返って
2019年、平成31年、令和元年が終わろうとしている。来年は2020年令和2年になる。令和元年は短い。いつから平成でいつから令和かといえば、令和になったのが5月1日。2019年5月1日〜12月31日まで、この約8ヶ月間、245日が令和元年となる。
2019年の干支は己亥だった。亥年は十二支の最後にあたる。その意味するものは再生と復活の準備のための休息である。亥のように猪突するエネルギーに満ちているが、今は準備の時、迷わず信念を持って継続すれば吉運が舞い込むということだった。
今年1年振り返ると職場が変わり、変化の年であったが、じっくりと自分のできることに集中して取り組まねばならなかった。自分のできることに集中した年だった。
今年の科学ニュースは、どんなものが話題になっただろうか?嬉しいことでは、吉野彰さんのノーベル化学賞があった。吉野さんの開発したリチウムイオン電池は、持続可能な社会のためにエネルギーを蓄える電池として貢献している。吉野さんは同じ藤沢市在住だというのもうれしい。
また、はやぶさ2が、小惑星「りゅうぐう」に到達、数々のミッションに成功して、帰路に就いた。来年東京オリンピックが終わったころに地球に到着する。ミッションの中でも小惑星に穴を開けて、内部のサンプルを採取する技術は世界初である。サンプルの中に炭素の鎖構造が発見されれば生命誕生の謎に迫ることができる。
今年は日本の民間企業で初めて、宇宙空間に到達するロケット「MOMO3号」打ち上げ成功のニュースがあった。打ち上げには市販のノートパソコン、秋葉原で安く買い求めた電子部品などが使われたそうで、知恵と工夫で成功した日本の優れた科学技術の成果がうれしい。
来年も地道にコツコツと成果を積み上げていきたいと思う。今年の科学10大ニュースをあげてみたい。
2019年 10大科学ニュース
1位 リチウムイオン電池、吉野氏ノーベル賞
今年のノーベル化学賞はリチウムイオン電池の開発への貢献に贈られた。吉野彰・旭化成名誉フェロー(71)と米大学の2人の研究者が受賞した。
ノートパソコンやスマートフォンといった電子機器を持ち運ぶ「モバイル文化」を生んだほか、太陽光など再生可能エネルギーによる電気をためることで、化石燃料に頼らない社会の実現につながると期待されている。
リチウムイオン電池は繰り返し充電して使える二次電池で、吉野さんは、負極に出火の危険があった金属リチウムではなく炭素材料を使うことで、電池の安全性を大きく高めることに成功した。開発、実用化に日本の企業や研究者が貢献した。今後について、吉野さんはストックホルムであった記念講演で「持続可能な社会がまもなく訪れ、リチウムイオン電池が中心的な役割を担うだろう」と語った。
2位 はやぶさ2、小惑星に着陸
日本の探査機「はやぶさ2」が、最大の任務だった着陸を2度成功させた。人工のクレーターもつくって地下の砂を採取できたとみられる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の津田雄一・プロジェクトマネージャは「想定をはるかに超えた成果が得られた」と語った。
はやぶさ2は2月、小惑星「リュウグウ」に初めて着陸した。地表は事前の想定を超える岩だらけで、チームは時間をかけて安全な着陸手法を検討、精密に着陸させることに成功した。
4月には、地表に人工のクレーターをつくる史上初の試みにも成功した。2度の着陸で地下にあった砂や石も採取できたとみられる。地下の砂には生命に欠かせない水や有機物が残っている可能性がある。生命の起源の謎に迫ることができると期待されている。11月、地球に向けて出発した。来年末に帰還予定だ。
3位 ブラックホール、撮影成功
アインシュタインの一般相対性理論によって21世紀前に予言されながら、誰も見たことがなかったブラックホールの撮影に、日米欧などの国際研究チームが初めて成功し、画像を4月に公開した。予言された通りの「黒い穴」で、宇宙の成り立ちの解明にもつながると期待されている。
重力が極めて強いブラックホールは光すら吸い込むため、周囲を回る天体の動きから間接的に存在が確認されていたが、直接観測されたことはなかった。チームは2017年、南米・チリのアルマ望遠鏡など世界八つの電波望遠鏡を使い、地球から5500万光年離れた銀河「M87」の中心にある巨大ブラックホールの撮影を試みた。
最大約1万キロ離れた望遠鏡のデータを合成、約2年かけて解析することで、高温のガスを背景にしたブラックホールの姿が浮かび上がった。
4位 三つの台風、東日本に甚大被害
日本に今秋、三つの台風が豪雨と暴風で甚大な被害をもたらした。9月に千葉県や伊豆諸島を襲った台風15号は、コンパクトながら強風が特徴で、多くの家屋の屋根が吹き飛んだ。千葉で全半壊した住宅は4千棟を超え、送電線を支える鉄塔や電柱が倒れて大規模な停電が長期間続いた。
10月に東日本を縦断した19号は、記録的な大雨を降らせた。18都県の103地点で24時間降水量の記録を更新。中小河川を中心に140カ所で堤防が決壊した。総務省消防庁によると死者は80人超、床上・床下浸水した住宅は3万4千棟に上った。
その2週間後に21号も接近。再び大雨が降り、千葉県と福島県で13人が犠牲になった。
気象庁によると、15号と19号が強い勢力を保って日本に近づいたのは、日本の南海上の海水温が平年より1~2度高かったためだ。
5位 グレタさん、温暖化対策を訴え
「未来の全世代はあなたたちに注目している。もしも私たちを失望させるなら、決して許さない」。9月、米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)は、世界各国の代表に地球温暖化対策を強く迫った。スペインでの第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)でも演説。米タイム誌の「今年の人」に選ばれるなど、その言動が注目を集めた。
国内では、海洋プラスチックごみ対策が注目された。大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議では、2050年までにプラスチックによる新たな海洋汚染をゼロにすることを目指す方向を共有した。
来年7月にはレジ袋有料化も始まる。ただレジ袋は年約900万トンに上る日本の廃プラのごく一部。排出を大幅に減らす取り組みが欠かせない。
6位 女川原発2号機、新基準適合
東日本大震災で被災した東北電力女川原発2号機(宮城県)について、原子力規制委員会は11月、新規制基準に適合すると認める審査書案を了承した。東北電は新基準に基づく審査で、地震や津波の想定を大幅に引き上げ、全国の原発で最も高い標高29メートルの防潮堤も建設することにし、規制委は妥当と判断した。
一方、東京電力福島第一原発事故をめぐり、旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された裁判で東京地裁は9月、いずれも無罪を言い渡した。「巨大津波の具体的な予測は困難」と判断した。
日本はエネルギー資源の少ない国であり、たとえ放射能汚染の危険性があっても、効率の良いエネルギー資源を利用するしかないのが現状である。新しいエネルギー資源確保のための技術革新を待ちたい。
7位 AI兵器に国際的な規範
人工知能(AI)などの技術を搭載、自らの判断で標的を選んで攻撃するような完全自律型の兵器は「認められない」とする国際的な規範が今年、作られた。
スイス・ジュネーブで8月に開かれた特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の下の政府専門家会合で指針が合意された。
AI兵器が自ら標的を選んだり、攻撃を決断したりすることが技術的に可能でも、兵器を使用する責任は人間にあると規定。法的拘束力はないが、守らなければ大きな不利益を被りかねない規範性をもつと期待される。
8位 ゲノム編集、ルールづくり
生物の遺伝情報をピンポイントで書き換えられるゲノム編集技術の急速な普及に伴い、ルールづくりの議論が進んだ。
厚生労働省や消費者庁は9月、食品づくりにゲノム編集を応用する際のルールを定めた。
新たな遺伝子を加えるのでなければ、安全性は従来の品種改良とほとんど変わらないとし、事業者が任意で届けて表示すればいいことになった。
生殖医療についても、厚労省は12月、受精卵をゲノム編集して子宮に移植することを禁じるため、法規制を含めた制度を作るべきだとする報告をまとめた。
9位 むかわ竜、学名に「カムイ」
北海道むかわ町で2003年に化石が見つかった「むかわ竜」が新属新種と判断され、「カムイサウルス・ジャポニクス」という学名が付けられた。北海道大などの研究チームが9月に論文を発表。神を意味するアイヌ語「カムイ」を入れて、「日本の竜の神」という意味を込めたという。
むかわ竜は群れをつくって植物を食べるハドロサウルス科の恐竜。約7200万年前に海だった地層から見つかり、最終的に全身の約8割に当たる骨が採集された。海辺がハドロサウルス科の進化の上で重要な環境だったことがわかった。
10位 キログラムの定義を改定
質量の単位「キログラム」の定義が5月、130年ぶりに改定された。これまではパリ郊外に保管されている「国際キログラム原器」という分銅が定義だったが、量子力学などに登場する光に関係する物理定数「プランク定数」を基に定めることになった。
国際原器は1888年ごろにつくられた。厳重に扱われてきたが、各国の原器と1億分の5キログラム、指紋一つ分ほど重さがずれていることが判明。新たな定義で管理の手間や誤差の心配はなくなる。改定では電流や温度の単位(アンペア、ケルビン)なども改めらた。(朝日新聞より)
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