クォークはどのように発見されたのか?
物質が原子でできており、原子が原子核と電子、さらに原子核が中性子と陽子からできていることはよく知られている。しかし、さらに細かいクォークやレプトンからできていることはどうやって解明されたのだろうか?
クオークに関する最初の情報は宇宙線から得られた。宇宙線は宇宙空間を飛び交う高速のエネルギー粒子で主な成分は陽子である。これが地球大気の窒素や酸素に衝突すると空気シャワーと呼ばれる2次宇宙線となって2次粒子が大量に発生する。
2次粒子を調べてみるとそれまで知られていなかった様々な粒子が発見された。例えば1931年には陽電子が発見され、1936年にはミュー粒子、1947年にはパイ中間子などが見つかった。
そこで陽子や中性子はもっと根源的な粒子でできているのではないかという考えを提唱し、ゲルマンがクォークと名付けた。宇宙線以外でも加速器という装置を使うことで人工的に様々な粒子をつくり出すことに成功した。
さまざまな粒子を総称して、フェルミ粒子(フェルミオン)という。これに属する粒子には、クォークやレプトンである電子やミュー粒子、ニュートリノがある。また、3つのクォークからなる複合粒子であるバリオンに属する陽子や中性子もフェルミ粒子である。
クォークは単独で存在することはまれで、2つないし3つのクォークが結び付いたハドロンとして存在する。もうひとつのレプトンは荷電レプトンとニュートリノに分類される。マレー・ゲルマンはクォークモデルの提唱者である。1964年当時クォークの存在は明らかになっておらず、彼はこれを仮の理論と考えていた。
1969年ニューヨーク州のブルックヘブン国立研究所にてゲルマンが予測した3種類のクォークが発見された。この成果によりゲルマンは1969年ノーベル物理学賞を受賞する。
しかし、ゲルマンとほぼ同時に同じ説を発表したジョージ・ツワイクはノーベル賞を受賞していない。また、ユヴァル・ネーマンに至っては、2年も早く発表しているがノーベル賞を受賞していない。これはノーベル賞選考方法の謎の1つとされている。
マレー・ゲルマン
マレー・ゲルマン(Murray Gell-Mann、1929年9月15日 - 2019年5月24日[1])は、アメリカ・ニューヨーク生まれの物理学者。表記はマレイまたはゲル=マンとも。1969年、「素粒子の分類と相互作用に関する発見と研究」でノーベル物理学賞を受賞。
「クォークの父」と呼ばれる。「複雑系(複雑適応系)」研究で有名なサンタフェ研究所の設立者のひとり。 13か国語を操り、心理学、人類学、考古学、鳥類学にも造詣が深い。クォーク、ストレンジネス、色荷(カラー)などを命名したことでも知られる。
イェール大学から物理学で学士号を、マサチューセッツ工科大学から同じく物理学で博士号を取得後、1951年からプリンストン高等研究所の研究員、コロンビア大学客員准教授、シカゴ大学准教授(1954-55年)を経て、1956年27歳でカリフォルニア工科大学の教授となる。
1950年代、加速器が奇妙な新粒子を大量に生み出し、そこからどうやって統一的な理論に組み上げるのかその膨大な量に素粒子物理学を扱う者らは途方に暮れていた。ゲル-マンは素粒子の対称性に注目して分類する枠組みを組み立てる。ゲル-マンはこれを冗談交じりで仏教から拝借した概念「八道説」と名づけている。
1964年、ジョージ・ツワイクと各々独自にハドロンの内部構造を記述するクォーク模型を提唱。陽子や中性子を構成するものを、ジェイムズ・ジョイスの小説『フィネガンズ・ウェイク』からとって「クォーク」と命名した。ゲルマン自身はあくまでクォーク模型は仮定の理論(クォークは仮定の素粒子であり実在しない)であり、これを元により確実な理論が構築された場合は捨てるものであると考えていた。しかしながら現在の所、クォークは実在の究極素粒子と考えられている。
他にも中野・西島・ゲルマンの法則(NNG法則)やくり込み群方程式、V-A相互作用の理論など多数の業績がある。
晩年はニューメキシコ大学、南カリフォルニア大学の特別栄誉教授の地位にあった。
「弱い相互作用」に関する理論研究でリチャード・ファインマンと共同作業を行ったゲル-マンであったが二人の論が加熱、激怒したファインマンは「今後、お前の名前の綴りからハイフンを消してやる!」と脅し、ゲル-マンは「じゃあ、お前の名前をこれからはFeyn-manと綴ってやる!」とやり返し、ゲルマンが命名したクォークのことをファインマンは「パートン」(部分子)と呼び、「ファインマン・ダイアグラム」のことをゲルマンは「ステュッケルベルク図」と呼んでいた。ファインマンとは幾度も対立、反目し合い、良き論敵関係にあった。
ジョージ・ツワイク
ジョージ・ツワイク(George Zweig, 1937年5月30日- )はアメリカ合衆国の物理学者、後に神経生理学者である。マレー・ゲルマン、ユヴァル・ネーマンとは独立して、クォーク模型を提案した。
カリフォルニア工科大学でリチャード・P・ファインマンのもとで物理学を学んだ。1964年、マレー・ゲルマン、ユヴァル・ネーマンとは独立して、クォーク模型を提案した。
ツワイクはこれらの素粒子が4つある素粒子のうちの3つであることを予測して、「エース」という名前をつけたが、クォークが一般的呼称となった。1970年代初めまでカリフォルニア工科大学で理論物理を研究したが、その後神経生理学の分野に転じ、特に聴覚の研究を行った。1975年に連続ウェーブレット変換を考案した。1981年マッカーサー賞、2015年のJ・J・サクライ賞を受賞した。
ユヴァル・ネーマン
ユヴァル・ネーマン(יובל נאמן Yuval Ne'eman, 1925年5月14日 - 2006年4月26日)はイスラエルの物理学者、後にイスラエルの科学大臣、エネルギー省大臣などを務めた。マレー・ゲルマンと同時期に、クォーク模型の考えを発表した一人である。
テルアビブに生まれた。テクニオンを卒業した後、軍人になった。ロンドンの駐在武官となった後、キングスカレッジの研究生としてアブドゥッサラームのもとで物理学を学んだ。1962年にマレー・ゲルマンとは独立してハドロンが3種類の粒子からなるモデルを提案した。
アメリカなどで研究する一方、1965年からテルアビブ大学に物理学部を設立し学部長になった。1975年からテルアビブ大学の学長、1982年から科学大臣、エネルギー省大臣などを務めた。
1969年にイスラエル国家からイスラエル賞を受賞したが、1992年に返上した。 1965年と1966年に、ノーベル物理学賞候補となっていたことが判明している。
1969年ノーベル物理学賞の謎
1969年の物理学賞は、「素粒子の分類およびその相互作用に関する貢献と発見(クォークの存在を前提とした)」に対してマレー・ゲルマンに授与された。
カリフォルニア工科大学の博士課程の学生であったジョージ・ツワイクは、クォークと本質的に同じものである「エース」(aces)の物理的存在を独自に信じていた。
残念ながら、ツワイクはノーベル賞の候補となる論文誌に研究成果を発表していなかったが、彼の研究はCERNのプレプリントとして広く利用できた。
イスラエルの物理学者ユヴァル・ネーマンは、1962年にゲルマンとは独立にSUフレーバー対称性によるハドロンの分類を発表しており、自身のクォークモデルに対して物理学賞を受賞できなかったのは不当だと感じている。
素粒子世界への探求
原子が原子核と電子、さらには原子核が中性子と陽子からできていることは、よく知られているが、さらに細かいクォークやレプトンからできていることはどうやって解明されたのだろうか?
クオークに関する最初の情報は宇宙線から得られた。宇宙線は宇宙空間を飛び交う高速のエネルギー粒子で主な成分は陽子である。これが地球大気の窒素や酸素に衝突すると空気シャワーと呼ばれる2次宇宙線となって2次粒子が大量に発生する。
2次粒子を調べてみるとそれまで知られていなかった様々な粒子が発見された。例えば1931年には陽電子が発見され、1936年にはミュー粒子、1947年にはパイ中間子などが見つかった。
そこで陽子や中性子はもっと根源的な粒子でできているのではないかという考えを提唱し、ゲルマンがクォークと名付けた。宇宙線以外でも加速器という装置を使うことで人工的に様々な粒子をつくり出すことに成功した。
様々な粒子はクォークの複合体でありクォーク2個でできた複合体をメソン。クォーク3個でできたものをバリオンと呼んでいる。そしてその両方をハドロンとよぶ。クォーク1個では存在できない。
ハドロンがクォークから構成されるというクォークモデルは、1964年にマレー・ゲルマンとジョージ・ツワイクによって提唱された。しかし、ユヴァル・ネーマンは1962年にすでに発表している。
陽子や中性子は2つのクオーク(アップクォークとダウンクォーク)から構成されるが、クォークにはチャーム、ストレンジ、トップ、ボトムを加えた6種類がある。これらは、実験によりその存在が確認されている。
また、レプトンは、現在の実験的事実から内部構造を持たないとされており、電荷を持つ荷電レプトンおよび中性のニュートリノと大きく分類することができる。
標準模型におけるレプトンは、荷電レプトンである電子・ミュー粒子・タウ粒子、およびニュートリノである電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの6種類があり、それぞれに反粒子が存在する。
現在までに全てのレプトンおよび反レプトンが実験により発見されている。しかし、宇宙で安定的に存在するのはアップクォークとダウンクォーク、電子とニュートリノの4種類しかない。それ以外は宇宙線の中からストレンジクォークやチャームクォークが中間子(メソン)の中に現れるだけである。
参考 東京大学素粒子物理国際研究センター: https://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/elementaryparticle/standardmodel.html
��潟�<�潟��