腸内環境改善する「プロバイオティクス」
私たちの身体のなかには、星の数ほどの微生物が棲んでいる。微生物たちはただ身体をすみかに借りているだけではない、私たちが生きていくために食べ物の消化吸収を手伝い、免疫力のバランスを調整し。肌荒れや病原菌の侵入を防ぎ、さらには僕たちの感情や思考に何かしらの影響を与えていることがわかってきた。
つまり私たちは微生物と一緒に生きている「共生」の関係にある。もし身体のなかの微生物たちに見放されたら、私たちは栄養失調か感染症で長くは生きられない。この身体のなかの微生物の生態系を「マイクロバイオーム(微生物叢)」という。21世紀に入ってからの微生物学の進歩によってヒトのマイクロバイオームの驚くべき世界が明らかになってきたのだな。
地球上のありとあらゆる場所に目に見えない微生物たちが膨大に存在している。そのなかでもとりわけ微生物の人口密度が高いのが生き物の体内で、私たち人間の体内にもたくさんの菌が存在している。
体内のなかで微生物密度が高いのは腸で、健康づくりにおける腸内環境の重要性に注目が集まっている。腸内細菌叢を表す「腸内フローラ」という言葉も周知されるようになった。一人あたり数十〜数百兆にのぼる多種多様な微生物が棲んでいる。
腸内環境改善のキーワードとも言える3つの用語「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「シンバイオティクス」という言葉がある。
人にとって有益な生きた菌を摂取することを「プロバイオティクス」という。プロバイオティクス食品として、生きた菌が含まれるヨーグルトなどの発酵乳、納豆などが挙げられる。
また、人にとって有益な菌の餌になる食品成分を摂取することを「プレバイオティクス」という。プレバイオティクスには、オリゴ糖などがよく利用されている。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたものを「シンバイオティクス」という。医療の現場では、感染防御や炎症抑制などにシンバイオティクスが応用されている。しかし、生物に潜んでいる微生物は腸内だけではなかった...。
人体に宿る無数の微生物
多種多様な微生物から成る「微生物叢」(マイクロバイオーム)の研究は比較的歴史が浅く、本格的に始まってから、まだ15年ほどしかたっていない。そのため、これまでの研究の大半が予備的で小規模なものだったといえる。科学者は微生物叢と疾患との間に一定の相関を見いだしてはきたが、膨大な数の微生物の集まりと、それらが宿主である人間に及ぼす意味については、いまだ明確な因果関係を伴う結論を引き出せてはいない。
微生物の数自体は、気が遠くなるほど膨大だ。平均的な若い成人男性の場合、主なものを挙げただけでも、大腸に38兆個、歯垢に1兆個、皮膚に1800億個の微生物がいると考えられており、これは人体のすべての細胞の数を上回る。そうした微生物の集まりを今後どのように活用していくか、期待が寄せられている。
最も楽観的な見通しをもつ研究者たちの話では、そう遠くない将来、プレバイオティクス(有益な微生物が育つ基質として働く化合物)やプロバイオティクス(有益な微生物そのもの)、便移植(健康なドナーから提供された微生物が豊富な便)などの形で、健康な微生物を人体に投与することが普通になるかもしれないという。それによって、私たちは理想的な体調を手に入れられるかもしれない。
微生物の顔ぶれに同じものはない
微生物叢について語る場合、私たちが主として話題にするのは、人体の微生物の9割以上が宿る大腸だろう。だが、ほかの器官にもまた、生き物がうじゃうじゃいる。微生物は目、耳、鼻、口、膣、肛門、尿管など、人体の内部が外界と出合う場所ならどこにでもすみつくのだ。そして、皮膚のあちらこちらにもいる。特に密集しているのは、脇の下や股間、足指の間、へその内部などである。
そして、驚くべきことに、一人ひとりの人間がもっている微生物の顔ぶれはそれぞれ独自のもので、ほかの誰とも違っているのだ。最新の観察結果に基づけば、ある二人の微生物叢に属する微生物の種がまったく重複していないこともありうると、米カリフォルニア大学サンディエゴ校で微生物叢を研究するロブ・ナイトは言う。
この微生物叢に特有の性質は犯罪科学に応用できるかもしれないと彼は考えている。「皮膚の微生物叢の痕跡と照合することで、犯人が触れた物体をたどって、本人までたどり着くことができます」。いつの日か、犯行現場に残された微生物のサンプルが決め手となって、犯人が特定される日が来るかもしれない。
参考 National Geographic news: https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/122400755/
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