足を失ったハ虫類

 ハ虫類というと何を思い浮かべるだろうか?トカゲ、ヤモリ、カメ、そしてヘビなどのなかまである。恐竜も思い浮かべるかもしれない。

 このなかで唯一変わっているのがヘビである。それは4つの足がないからだ。セキツイ動物の中で足がないヘビは珍しい。魚には足の代わりにヒレがある。いったいなぜヘビは足をなくしてしまったのだろう?

  四肢を失う進化(退化)自体は他にも見られる。両生類の無足類もまさに同様の進化を経た分類群である。現生のトカゲ類においてもアシナシトカゲやヒレアシトカゲのように四肢が無いかほとんど無いいくつかの群がある。

 鳥類ではモアが前肢(翼)を失い、哺乳類ではクジラやイルカの後肢が退化している。四肢に関しては現在もメクラヘビやニシキヘビ科など一部の原始的なヘビに腰帯の痕跡を持つ種類がある。

 一部のニシキヘビには大腿骨も残っている。なお、肩帯のある種類は現存しない。移動するための四肢を失ったとはいえ、ヘビはその細長い体によって地上や樹上、水中での移動を可能にし、高い適応性を示している。

 地上での移動方法にはいくつかの種類があり、代表的なのは以下のものである。 蛇行 直進(腹筋を動かして直進する) 横這い(上半身を移動する方向へ持ち上げた後、下半身を引き寄せる。「サイドワインダー」の語源) 体形に合わせて内臓も細長くなっており、2つの肺のうち左肺は退化している。

 原始的なヘビほど左肺が大きい傾向にある。 視力は人間などに比べると弱く、現存する種にも目が退化したものは多い。ただし、立体的な活動を行う樹上棲種についてはこの限りではなく、視覚が発達し大型の眼を持っている種もいる。

 初期のヘビ足があった

 今回、化石の分析によって、後ろ脚がヘビの祖先にとって役立っていた可能性が示唆された。ヘビは7000万年にわたり後ろ足を持っていたが、その後の進化の過程で失われた――。新たな化石を分析した結果として、11月20日の米科学誌サイエンスアドバンシズにそんな論文が発表された。

 ヘビは1億7400万年前~1億6300万年前に出現。その後の進化で手足のない生態に適応したが、これまでの限られた化石記録からは変化の様子が分かっていなかった。

 従来の説ではヘビに手足があった期間について、四肢のない現在の体形に適応するまでの過渡期に過ぎないとの見方もあった。しかし、新たに発見された保存状態のよい化石を分析した結果、長期間にわたり後ろ足があったことが判明した。

 分析対象となったのは、ナジャシュ・リオネグリナと呼ばれる初期の種。研究者はアルゼンチンのパタゴニア北部で8個の頭がい骨を発見し、そのうち1個はほぼ無傷の状態で見つかった。

 ナジャシュには頰骨弓などトカゲに似た原始的な特徴がある一方、頭がい骨から頰骨につながる骨がない点を含め、現在のヘビに近い特徴も併せ持つ。あごの関節の一部などにはヘビとトカゲの中間的な特徴も見られる。ナジャシュは7000万年の間、後ろ足を備えた体形で安定的に生息していた。この事実からは、後ろ足がヘビの役に立っていて、単なる過渡期ではなかったことがうかがえる。

 ヘビの進化

 ヘビの進化的起源には不明な点が多い。有鱗目のうち、トカゲ亜目の一部から進化したと考えられている。トカゲ亜目のなかではオオトカゲ下目(英語版)に近いとする説がもっとも有力だが、ヘビと同じく四肢の退化したヒレアシトカゲ科(英語版)やミミズトカゲ亜目を姉妹群とする説もある。

 1億4500万年前から1億年前の白亜紀前期に派生したと推測されている。 ヘビの祖先がどのような生活をしていたかについては、水生だったとする説と陸生・地中生だったとする説が対立しており、決着は着いていない。

 水生説では、ヘビがモササウルス科やドリコサウルス科のような海生オオトカゲ類に近縁であることから、それらから派生して海中で自在に動けるように進化したと考える。特に、約9800万年前の地層から見つかったパキラキスがオオトカゲ類の特徴を残す祖先的なヘビであるとする研究は、水生説を強く支持している。パキラキスは前肢を持たず後肢のみを持つヘビで、形態的な特徴から水生であったと考えられる。しかし、パキラキスが祖先的であることを疑う意見もある。

 水生説に対して、ヘビが中耳と鼓膜を失っていることや、進化過程で一度網膜が退化したとみられること、脳頭蓋が骨で保護されること、瞼が無く眼が透明な鱗で覆われていることなどは、ヘビの祖先が地中生活をしていたことを強く示唆する。ただし、固い地面を掘り進んでいたとすれば生じたはずの頭蓋骨の強化(ミミズトカゲ類には生じている)はヘビには見られず、地中起源だとしたら軟らかい土壌に住んでいたか、既にある穴や割れ目を利用する半地中生だったと考えられる。

 化石では、後肢と椎骨を残すナジャシュ、四肢を完全に失ったヘビの中では最古であるディニリシア(英語版)、頭部にトカゲの特徴(上顎の骨が頭骨に固定されている)を残し地中生だったと推測されるコニオフィスが陸生であることが、陸生説を支持している。

参考 CNN news:https://www.cnn.co.jp/fringe/35145757.html

  

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